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『メグレ警視 (世界名探偵 コレクション10)』 ジョルジュ・シムノン 集英社文庫

2012-03-04

☆☆☆

ブーローニュの森の番人が散歩道で死体を発見した。被害者は高名な医者で、夜会服を着たまま至近距離から拳銃で撃たれていた。パリ警視庁のメグレ警視が捜査にのりだす(「街中の男」)。メグレは犯罪よりも犯人に興味を持つ。彼は医者のように、弁護士のように、懺悔聴聞僧のように、犯人の心理に近づく。 内容紹介より



「月曜日の男」「街中の男」「首吊り船」「鑞のしずく」「メグレと溺死人の宿」「ホテル《北極星》」「メグレとグラン・カフェの常連」収録。

「月曜日の男」
ある医師の家で働いていたメイドが急死し、彼女の両親の訴えにより検死解剖が行われた。その結果、彼女が妊娠していたことと、死因はライ麦の芒(のぎ)によって腸に開いた小穴によるものだったことが判明する。何者かが食べ物に芒を混ぜ、被害者に食べさせていたのだ。そして、毎週月曜日に食事の施しを受けに医師の家にやってくる老浮浪者《月曜日の男》が、医者の子供たちのためにエクレアを持参していたことが明らかになり……。使用人を含めた医者一家内の醜聞沙汰と読み手に想像させた後、部外者の浮浪者に目を向けさせ、そして真犯人を暴くといった三段階の変化が上手いです。

「街中の男」
高名な医師の射殺事件に関し、ある男を追って、何昼夜も続く尾行。男は自宅に戻ろうとせず、厳冬のパリの街中をさまよう。やがて男の持ち金も尽きて……。尾行されていると判っている男の悲壮感や疲労、彼を追うメグレの一徹な執念、この二人の様子が鬼気迫る感じの異色作でした。
『街中の男ーフランス・ミステリ傑作選(1)』にも収録されています。

「首吊り船」
セーヌ河にある水門の堰に乗り上げそうな平底船で発見された男女二人の首吊り死体。男は平底船の老船長、女は彼のかなり年下の後妻だった。大金を隠し持っていると噂の老船長はケチなために妻とは不仲だった。その妻には若い愛人がおり、事件後に姿を消していた。自殺なのか殺人なのか、大金の隠し場所はどこなのか、それとも噂だけだったのか。三面記事にでも載ってそうな話。

「鑞のしずく」
パリから百キロほど離れた田舎の村で起きた二人暮らしの老姉妹の殺傷事件。金を溜め込んでいる老姉妹の家へよく無心に来ていた、殺された妹の息子が逮捕されるが、彼は容疑を否認する。しかし、状況証拠はすべて彼に不利な物ばかり。メグレは現場に残った小さな痕跡から事件の謎を解いていきます。メグレが見得を切るみたいな場面が「首吊り船」と同様。

「メグレと溺死人の宿」
出張先で起きた車の転落事故を調べる羽目になったメグレ。夜、川沿いの道の急カーブで、トラックが停車していた乗用車に衝突し、車は川に転落してしまう。その際、助けを求める声をトラックの運転手と近くにいた船頭が聞いていた。引き上げられた車内には人影はなかったが、トランクから女性の死体が発見された。車の所有者は、《溺死人の宿》とあだ名を付けられた、道路沿いに建つ宿屋に宿泊していた男女のカップルのひとりだった。なかなか凝った出来の良い作品。

「ホテル《北極星》」
二日後に警視庁を定年退職する予定のメグレが残務処理をしていた時、人気のない刑事部屋にかかってきた電話に、つい出てしまったせいで捜査を受け持つことになったホテルでの刺殺事件の話。メグレは事件現場に残っていた遺留品の持ち主と見られる若い女性宿泊客を連行し、取り調べを始めるのだが……。主に、取り調べを行うメグレの部屋を舞台にした尋問劇みたいなものでしょうか。

「メグレとグラン・カフェの常連」
メグレが退官後に隠居した別荘のある町で起きた殺人事件。被害者は町のカフェで行っている、メグレのカードゲーム仲間のひとりだった。動機は金目当てのものか、それとも、カフェのメイドを巡ってのトラブルによるものなのか。周囲からの好奇心や期待に反してメグレは事件早々、自宅に閉じこもったり、釣に出かけたりして、かかわり合いになるのを避けるのだった。事件についてメグレのもとへ、いろいろな人物が、調査の依頼に来たり、告白に来たり、相談に来たりする様子と、それに対してまったく素気無い態度を取るメグレが可笑しかったです。

ところで、作品とはあまり関係ないけれど、メグレ警視シリーズ作品中の天候というのは暗かったり、寒かったり、雨が降ってたりしているイメージが強いのですが、本書でも季節はすべて寒い秋か冬、三篇で雨が降り、一篇では氷塵が舞っています。

『メグレと老婦人』ジョルジュ・シムノン ハヤカワ文庫
『メグレ、ニューヨークへ行く』ジョルジュ・シムノン 河出文庫
『街中の男ーフランス・ミステリ傑作選(1)』ジョルジュ・シムノン 他 ハヤカワ文庫HM




メグレ警視 (世界の名探偵コレクション10) (集英社文庫)メグレ警視 (世界の名探偵コレクション10) (集英社文庫)
(1997/07/18)
ジョルジュ・シムノン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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