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『リスボンの小さな死』 ロバート・ウィルスン ハヤカワ文庫HM

2012-09-15

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☆☆☆☆

陽光あふれる港町リスボン。浜辺で発見された15歳の少女の絞殺死体は、レイプされていた。被害者と同じ年頃の娘を持つ、孤高の中年の警部コエーリョと、助手の若手刑事が事件の担当を命じられる ― 。時は半世紀ほど遡った第二次世界大戦中、ナチス親衛隊の上層部は大量のタングステンの買い付けのために、実業家のフェルゼンをポルトガルに送りこむ。だがその前途に待ち受けていたのは、思いもよらぬ運命の悪戯だった…… 内容紹介より



1999年英国推理作家協会賞受賞作。
199*年にリスボンで起きた少女殺人事件の捜査と1941年のベルリンから始まるある実業家の暗躍が軸となって物語が繰り広げられています。前半部分のほとんどはナチスに協力する実業家がタングステンを買い付けるため、地元の有力な協力者とともに策動する姿が語られるとともに、第二次大戦中は中立を保ったポルトガルの首都リスボンの特異な様子が描かれています。このイギリスとドイツそれぞれに向けた二つの顔を持つポルトガルという国の姿勢がユニークで興味をそそりました。実業家とその協力者はナチスの金によって戦後金融界の大立者にのし上がりますが、その後ある過去の行状によって二人の仲は破綻します。そしてその過去の出来事が半世紀近く巡り、数奇な運命によって少女の殺人へと繋がってしまうのでした。
綿密に練られ、紡がれた力作だと思いますが、ちょっと気になったことは、少女の死に繋がった過去の三つの鍵となる出来事がすべて同じ行為によるものだということです。この三つの重複は少々不自然でもあり、また、本書に登場する女性たちの大部分が悲劇に見舞われたり、弱者で報われなかったりする運命なのと同じく読後の気分をすぐれないものにさせる要因だと思うのです。
作者はもともと普通小説を書いていたひとだそうで、本書が初めてのミステリらしく、その辺りのキャリアが作品に良い面をもたらしている一方、ミステリ的には経験不足による若干の拙さを感じさせているような気がしました。





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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