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『ゴーストダンサー』 ジョン・ケース ランダムハウス講談社

2012-11-02

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☆☆☆

ある冬の朝、ペンシルベニアの連邦刑務所を一人の男が出所した。出所したその足でかつての囚人仲間の元へ向かった男は、テロリストの手先として三角貿易に関わることになる。だが、テロ自体は彼の目標とするところではなかった。男の胸には、服役中に温めてきたある「計画」があった。そしてそれは、自他共に認める彼の天才的な頭脳と、テスラの「ノート」があれば、果たせるはずだった……。ベストセラー作家渾身のスリラー! 内容紹介より



国家機関による不当な仕打ちを受けた男が、ある過去の発明を改良し、復讐の計画を立て、その金をまかなうためにテロリストの資金調達の取引に協力する。男の銀行口座の開設を手伝った元カメラマンが、そのせいで捜査機関から嫌疑を受けてしまい、容疑を晴らすために男の行方を単独で追い始める。
実在の発明家、故ニコラ・テスラが発明したという設定の強力な装置を使って、男は復讐を企てています。その装置の機能についてはいろいろともっともらしく科学的な説明がなされているわけですが、なにせ途方もない力を持っている装置なので素人には空想科学か疑似科学みたいに思えて、設定が胡散臭く感じてしまいました。作品全体の印象は非常に平板なこと。特に、上巻は小さな波がふたつあるだけで、男がテロリストの武器取引に協力して、ロシアやアフリカのあちこちを旅して回るシーンが淡々と描かれ盛り上がりに欠けています。この原因は主人公の造形の淡白さにあるような気がしました。長期の独房生活によって心が麻痺しているという設定だとしても、当初から女性に興味を示しているのだからその理由付けは弱いような。作者は男が抱える憎悪や復讐心という感情をほとんど表出させていないし、また、男を徹底的に憎むべき悪役にしたてているのでもないため、とにかく書き込み不足で男の存在感が軽く薄っぺらいです。孤児として育ち、国の政策の犠牲になった同情すべき人物という位置付けは分かりますが、それが不特定多数の一般人を一瞬にして殺してしまう行動と釣り合いが取れるかというと……。
佐藤耕士氏の訳者あとがきによると、2007年のハメット賞にノミネートされた作品だそうです。




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