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『自由への一撃』 エド・ゴーマン編 扶桑社ミステリー

2012-11-13

☆☆☆

現代こそ、ミステリーの黄金時代である―作家として、アンソロジストとして、またミステリー専門誌の編集者として、八面六臂の活躍をつづけるエド・ゴーマンが、現代をリードする作家たちの代表作を厳選。マーガレット・ミラーの鬼気迫る心理小説をはじめ、都会の孤独をえぐりだすローレンス・ブロック、現代最先端の名探偵群像にいたるまで、読後に忘れられない印象を残す不朽の逸品ばかりを収録。評論家ジョン・L・ブリーンによる現代ミステリー概説を巻末に付し、すべてのファンに贈る、ベスト・アンソロジー! 内容紹介より 



「現代ミステリーの至宝 〔1〕」というサブタイトルが付いてます。

「谷の向こうの家」マーガレット・ミラー
人里から離れた場所に暮らす三人家族の家の近くに新しく隣人が越してきた。一家のひとり娘はやがて新しい隣人夫婦と仲良くなり、学校にも行かずに隣家に入り浸りになるが、それを知った娘の両親がその家に押しかけると……。
少女の空想力が彼女の身の回りに別の世界を作り上げてしまうというオカルト的な話。かなり印象的。

「ボディガードという仕事」ローレン・D・エスルマン
エルヴィス・プレスリーをモデルにしたかのようなロック・シンガーのボディガードを依頼された主人公は、別件の仕事を引き受けていたために知人の探偵を依頼人に紹介するのだが、その探偵が警護中にロック・シンガーを襲った暴漢に射殺されてしまう。主人公が事件を調べると、失踪していた元ボディガードが射殺体で発見されたことが明らかになる。厳しいエンタメ業界の話。なかなか。

「チーの呪術師」トニイ・ヒラーマン
ナヴァホ族警察のチー巡査長が邪悪な呪術師の出現の噂を調査中に出くわしたFBI捜査官と彼らが匿う、ギャングにまつわる裁判の検察側証人についての話。オカルトチックな雰囲気から現実的なオチで終わる作品。地味、もうひとつ。

「湖畔」ロバート・ブロック
給料強盗殺人犯と刑務所で同房になった男が、生前に強盗犯から聞き出した話をもとに、とうとう発見されなかった奪った金のありかを捜すために犯人の妻に近づき、一緒に見つけ出そうとするが……。サイコ風ではないけれど鼠が怖い話。まあまあ、ちょっと古めかしい。

「恐ろしい女」シャーリン・マクラム
四人の子供が殺された事件の共犯者として二十四年間刑に服していた女が秘密裏に釈放され、人知れず暮らし始めるが、それを知った女性記者がスクープをものにしようと女に近づき単独インタビューに成功する。原題の「A Predatory Woman」どおり人を喰いものにする恐ろしい女が描かれています。なかなか。

「ラッキー・ペニー」リンダ・バーンズ
私立探偵兼タクシー運転手の主人公がタクシー強盗の被害に遭うが、その犯人は売り上げ金のうち紙幣をゴミ箱に残し、小銭だけを持ち去ったことが後に判明する。折りしも警察は最近発生した強盗殺人事件の捜査で忙しく、主人公は自ら捜査を始める。なぜ犯人は小銭が必要だったのか。エドワード・D・ホック調のまあまあなミステリ。

「二度目のチャンス」エドワード・D・ホック
平凡な人生を生きるのに飽き飽きしていた女性が、自宅に忍び込んできた空き巣泥棒とコンビを組み、彼の仕事を手伝うことに。やがて彼女自身も犯罪に手を染め、コンビの犯行は次第にエスカレートしていくという、したたかな女を軽く描いたクライムストーリー。

「最後の儀式」リンダ・グラント
高齢者用療養施設に入所している伯母の依頼で、施設内で深夜に起きた不審死を調べる女探偵の話。彼女はスピーチクラスの教師と身分を偽って潜入調査を開始し、施設内のさまざまな問題や出来事、老人たちの現状を見聞きしていくとともに、将来、自分にも訪れる老いについて考えをめぐらせる羽目に。スピーチクラスで発表した老人たちの人生のエピソードが面白かったです。なかなか。

「自由への一撃」ローレンス・ブロック
銃を衝動買いしたニューヨークに住む男の話。最初は銃を手に入れたことに途方にくれていた男が、ベッドサイドにしまっていた銃に実弾を込め、やがて持ち歩くようになり、身の危険を感じたときには銃を見せつけ、とうとう自ら危険な場所にまで足を踏み入れて行くという心理の変化を綴り、近い将来、男に降りかかるであろうバッドエンドを予感させて終わる佳作。

「少年」ウェンディ・ホーンズビー
老判事引退の新聞記事に接した、少年時代の彼のかつての担任教師が昔目にした出来事を回想する。厳しい自然の中で農業を営む貧しい移民一家の母親と利発な息子、悲劇とか罪とかを超えたところにある何かが余韻の残る話。

「近くの酒場での事件」ビル・プロンジーニ
<名無しの探偵>が地元で起きた連続強盗事件について、とある酒場で聞き込んでいるまさにその最中に、一人の強盗が店に押し込んで来てしまう。店主によって射殺されてしまったその強盗が一連の事件の犯人かと思われたのだが……。そこそこ。

「道化師のブルーズ」マーシャ・マラー
フェスティヴァル会場で従兄弟同士である著名な道化師コンビの身辺警護を依頼された主人公は、突然行方不明になったコンビの片方を捜すうちに、身元不明の男性の刺殺体を発見してしまう。しかも、男は失踪した道化師の衣装を身にまとい、顔にはメイクまで施していた。残された従兄弟の一人とその妻、コンビのマネージャーが問題や秘密を抱えていることに主人公は気付くが……。
いかにも〈シャロン・マコーン シリーズ〉らしい作品。

「ゴースト・ステーション」 キャロリン・ヴィート 
アルコール中毒治療を受け、職場復帰した女性巡査部長は、「女の酔っ払い」を嫌う巡査とコンビを組むことになる。深夜、彼女たちは落書き防止のパトロールを行うため、地下鉄で目的地へ向かうが、途中で乗り合わせた酔っ払いの老浮浪者の身を案じて途中下車し、地下構内へと彼の行方を追う。それは子供時代の主人公を可愛がってくれていた、やはり酒で身を持ち崩し、路上死した彼女のおじさんの姿を浮浪者に重ね合わせたせいだった。浮浪者におじさんを、そして自分自身の姿を重ね、軽蔑、嫌悪、悲しみ、哀れみ、愛情というさまざまな感情があふれ出す主人公の心理描写が印象に残る佳作。




自由への一撃―現代ミステリーの至宝〈1〉 (扶桑社ミステリー)自由への一撃―現代ミステリーの至宝〈1〉 (扶桑社ミステリー)
(1997/06)
エド・ゴーマン、 他

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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