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『ジャクリーン・エス with腐肉の晩餐』 クライヴ・バーカー 集英社文庫

2013-08-27

Tag : ホラー 短編集

☆☆☆☆

スティーヴン・キング激賞!
私はホラーのジャンルの未来を見た。その名はクライヴ・バーカー。彼の仕事は、われわれが10年間いたずらに惰眠をむさぼっていたのではないかとさえ思わせる。彼の短編集は、怖くて文字通り一人では読めなかった作品。誰も足を踏みいれなかった身の毛もよだつ領域に、限界をこえて踏みこんだ作品に満ちている。恐るべきリアリティをもった文章にはウィットさえちりばめられ、凄まじい迫力で読者に迫ってくるのだ。



血の本[Ⅱ]

『腐肉の晩餐』
男女二人の大学生に近づき、彼らがそれぞれ心に秘めた恐怖を再体験させ、その様子を観察することで幼少期から抱き続ける自らの恐怖を取り除こうとする男。しかし、男はその実験により空想の世界にいた恐怖を現実の世界に創り出してしまう、という物語。実験台にさせられた学生が恐怖にさらされる様子がリアルであり、わたし自身が持つ恐怖にさらされそうな感じがして非常に嫌な気持ちになりました。ただ、男の恐怖の元になったイメージは凡庸か。

『地獄の競技会』
ロンドン市街地を走るチャリティ・レースに、世界を破滅させ、地獄が支配する勝負を賭けたランナーが参加していた。地獄の手下となっている国会議員の分身であるそのランナーは、次々に人間の走者を殺しゴールへと近づいていくが、それを知ったひとりのランナーとデッドヒートを繰り広げる。カーニバルなどのハレの舞台に魔界が紛れ込むという設定はよくあるけれど、勝者となった意外なランナーはもとより人間に混ざって律儀に走る魔物もユーモラスでした。

『ジャクリーン・エス 彼女の意志と遺言』
人生に倦んで自殺未遂を図ったヒロインは精神科医のカウンセリングを受けている最中、自らにサイキックの力があることを知る。彼女はその力の正しい使い道を求めて財界の大物に近づく。一方、彼女の愛人だった弁護士の男は彼女の行方を探し求めていた。
ロバート・R・マキャモンが短篇作品の「わたしを食べて」で、ゾンビになった男女の恋愛が成就する様を描き出したように、バーカーはこの作品において、スプラッタ・ホラーの世界でそれを見事に行ったと思います。

『父たちの皮膚』
かつてこの世には悪魔と女という二つの種族が共存していた。しかし、女が悪魔と協力して作った男がこの世を支配し最悪なものに変えてしまったため、その状況を正そうと悪魔はもう一度女と交わり、産まれた子供を男たちの世界に送り込もうと計画する。砂漠の中の小さな町を舞台に、ある夫婦の間に出来た子供を取り戻しに来た悪魔たちと町に住民との闘いを描いた作品。悪魔とはいっても、百鬼夜行みたいな様々な姿形をした怪物の群れであり、訳者の大久保寛氏があとがきで述べている「西部劇」に、メルヘンを融合させた感じがする特異な作品でした。

『新・モルグ街の殺人』
エドガー・アラン・ポーをリスペクトした作品なのでしょう。老画家と名探偵デュパンとの関係が殺人事件の遠因になり、それが殺人者を産んでしまうという設定が突飛すぎて腑に落ちない。なんだか馬鹿馬鹿しいけれど、「赤毛の若い女が、大きな醜男と腕を組み、サクレ・クール寺院の階段へぶらぶら歩いていった。太陽が彼らを祝福していた。鐘が鳴った。新しい日のはじまりだった」(p312)、この最後のシーンは、新しい世界の始まりという意味では不気味かも。

クライヴ・バーカー




ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐 血の本(2) (血の本) (集英社文庫)ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐 血の本(2) (血の本) (集英社文庫)
(1987/03/20)
クライヴ・バーカー

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

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