『クッキング・ママの事件簿』 ダイアン・デヴィッドソン 集英社文庫

2013-09-26

Tag :

☆☆

離婚後、ひとり息子をかかえ、ケータリング業に奮闘中のゴルディについに幸せの時が!今日はシュルツ刑事との結婚式なのだ。だが、教会で準備中の彼女に花婿から電話が入った。「結婚式は中止だ。牧師が殺された」おまけに当のシュルツまで行方不明に…。花婿は逃げ出したのではという噂にカッカしながら、ゴルディはまたもや事件に巻きこまれていく。事件と女の幸せは…?頑張れ、ママ探偵!! 内容紹介より



シリーズ四作目。
結婚式当日に花婿が現れないというたまにある状況設定ですけれど、本書の場合は花婿が逃げ出したわけではなく、式を執り行うはずだった牧師を殺した犯人に拉致されたということ。センセーショナルで巧い導入部になっています。しかし、本題に入ると、被害者である若手の教区牧師と古株の教区民とのごたごたなど教会に関する行事や出来事についての馴染みのない記述が多く、話にやや入り込み辛い感じがしました。花婿の生死も判らない事態にも関わらず、主人公の焦燥感とか緊迫感がさほど伝わってこないし、こういう状況を取り上げるのなら少なくとも24時間以内に事件を解決に持っていくようにしたほうが、スピード感を出すうえでも、また、いつまでも犯人が刑事を監禁しておく不自然さをなくすためにも良かったのではないかと思いました。まあ、そもそもそういうシチュエーション自体がコージーミステリには不向きなのかもしれません。真犯人の意外性はありますが、動機共々かなり強引のような気もします。

『クッキング・ママの名推理』
『クッキング・ママの捜査網』




クッキング・ママの事件簿 (クッキング・ママ) (集英社文庫)クッキング・ママの事件簿 (クッキング・ママ) (集英社文庫)
(1995/11/17)
ダイアン・デヴィッドソン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『沈黙の絆』 マイクル・ベイデン&リンダ・ケニー ハヤカワ文庫HM

2013-09-21

Tag :

☆☆☆☆

被害者の血が抜き取られる連続怪事件が起きた。ヴァンパイアと呼ばれる犯人の目的はなんなのか?見た目は冴えないが超一流の検屍官ジェイクは真相解明に挑む。だが、犯人の足取りがつかめないまま、ジェイクとつかずはなれずの付き合いを続ける美人弁護士マニーも事件に巻き込まれてしまう。ふたりはヴァンパイアの魔手から逃れられるのか?ベストセラー『永遠の沈黙』の名コンビが帰ってきた!シリーズ待望の第二弾



仕事以外の身の回りのことには無頓着でダサいが優秀な男とお洒落で買い物好きな遣り手の女のベア。つまりポルシェに乗り、グッチやシャネルを身にまとう美人弁護士といわゆる専門馬鹿の検屍官 。テーマは過去に起きた悲惨な歴史的事件に基づいたものであるにもかかわらず、作品から感じる軽さはこのペアのキャラクターによるところが大きいです。読みやすさに繋がるこの独特の軽さを娯楽小説としての軽快さととるか、あるいは浮薄さに感じるか、読む人それぞれでしょうが、個人的には妙な違和感はあったけれど口当たりは良かったのでした。
薬品を嗅がせて意識がもうろうとなった被害者から血液を採取する“ヴァンパイア”事件と郵便ポストに爆発物をしかけた“プレッピー・テロリスト”事件。無関係だと思われていた二つの事件に実は繋がりがあった……。こういう展開への持って行き方が結構巧いのですが、その後の処理の仕方が安直でぱっとしないような気がしました。獰猛な犬のいる部屋に監禁される場面とか、犯人の行動を狂気に求めたところとか。たまに進行が都合良すぎるところとか。

『永遠の沈黙』




沈黙の絆 (ハヤカワ・ミステリ文庫)沈黙の絆 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2010/05/10)
マイクル・ベイデン&リンダ・ケニー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『掠奪の群れ』 ジェイムズ・カルロス・ブレイク 文春文庫

2013-09-16

Tag :

☆☆☆☆

銃と友、そして反骨の心意気。それを武器に強盗人生に身を投じたハリーは、刑務所でジョン・ディリンジャーと出会う。出所したディリンジャーはハリーを救うべく脱獄計画を練るが……。大不況の時代に庶民の喝采を浴びた誇り高き無法者たちの栄光と破滅。『無頼の掟』『荒ぶる血』でミステリ・ファンを熱狂させた著者の最新作。 内容紹介より


有名な犯罪者ジョン・ディリンジャーの強盗仲間であるハリー・ピアポントを語り手にした史実に基づいた犯罪小説で、銀行強盗、刑務所からの脱獄、警察署襲撃、彼らの一味が起こしたこれらの事件が非常に痛快にエキサイティングに描かれています。アウトローとしての矜持を保ち続け、たとえ警察官といえども撃たれたら射ち殺す、まさにぱっと咲いてあっという間に散る打ち上げ花火のような彼らの凄まじい人生が活写されています。文中にあるとおり、人生の生き甲斐という点においては、彼らの何時間は凡人の何十年の人生よりも充実しているのでしょう。
大不況時代という時代背景もあって、彼らの、特に目立つことが好きだったディリンジャーのかかわった事件は大衆の注目を浴び、一部でヒーローのごとく扱われています。フィクションの世界ではなくて、現実にダークヒーローとなり、人生を華々しく駆け抜けていった悪漢たちの姿を、とても真似できないし真似する度胸もないわたしに描いて見せてくれた作品でした。

『無頼の掟』
『荒ぶる血』




掠奪の群れ (文春文庫)掠奪の群れ (文春文庫)
(2008/09/03)
ジェイムズ・カルロス・ブレイク

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『修道士の頭巾』 エリス・ピーターズ 光文社文庫

2013-09-11

Tag :

☆☆☆☆

―自らの土地を教会に寄進することで楽隠居を考えた荘園主が、食事中に悶死する。殺害に使われたのは修道士の頭巾の異名を持つトリカブトだった。それもカドフェル修道士が調合したものが悪用されたとあっては見過ごせない。ところが、カドフェル修道士が調査に乗り出してみると、荘園主の妻は42年も前に将来を誓い合った女性だった。甘酸っぱい哀しさを漂わすイギリス推理作家協会賞に輝いた会心のシリーズ第三弾! 内容紹介より



修道士カドフェルシリーズ3。
シュルーズベリの町が王位継承をめぐる闘いの舞台となり、殺伐として血なまぐさい雰囲気が漂っていた前作とは打って変わって、本書では争いも遠のき穏やかな日々が町に戻り、修道院では院長人事がもっぱらの関心事です。 そんななか、修道院の敷地内に移り住んできた荘園主が毒殺されるという事件が起きます。カドフェルは青年時代に恋人だった荘園主の妻から、殺人の容疑をかけられた彼女の息子を助ける よう求められます。事件の状況から、毒を入れられる場所と機会も限られているために、容疑者は被害者の家族と使用人に限定されているにもかかわらず、これぞ悪人という人物を設定していないので犯人の見当がつきません。逆にその設定を活かして作者お得意の人情噺へとクライマックスにかけて流れを持っていく手法は巧妙です。また、昔の恋人との再会をきっかけにカドフェルが自らの半生を顧み、別の人生を想い描きながらも、すぐに自分には安息の場所があることを悟る場面では、彼が聖職に道に進んだことで得たものと失ったものを考えて、主人公の人生の哀切さを感じさせられました。

『死体が多すぎる』
『修道士カドフェルの出現』




修道士の頭巾―修道士カドフェルシリーズ〈3〉 (光文社文庫)修道士の頭巾―修道士カドフェルシリーズ〈3〉 (光文社文庫)
(2003/05/13)
エリス・ピーターズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『琥珀蒐集クラブ』 スティーブ・ベリー ランダムハウス講談社

2013-09-06

Tag :

☆☆☆☆

ロシアが世界に誇る至宝「琥珀の間」。ナチスに略奪されて以降、歴史の闇に忽然と姿を消した。そしてこの謎に迫った者たちが今、次々と不審な死を遂げる。新聞記者、旧ソ連特別機関の関係者―誰もが“琥珀の間の呪い”と噂した。そんな中、世界有数の蒐集家に雇われた秘宝ハンターたちが、命を賭けて獲物に挑む!至宝に隠された歴史的トリックを、魔女伝説の残るドイツ・ハルツ山地を舞台に描く、歴史サスペンス大作 内容紹介より



人殺しも厭わない秘宝ハンターを主人公に据えるわけにもいかないので、内容紹介文にさえも触れられていない没個性的な一般人の元夫婦を主人公に持ってきています。しかし、ハンター同士の対決に巻き込まれたこのふたりのキャラクターがおとなしすぎて狂言回しみたいな存在になっています。これが作品の欠点で、蒐集家二人、トレジャー・ハンター二人の手強い悪役陣に対して、裁判官と弁護士という肩書だけが立派な正義の味方ではインパクトが弱すぎでした。その上、人物造形が、男女の違いはあれ同じようなトレジャー・ハンターとこれまた区別がつかないほど似ている彼らの雇い主たち、こんなのを二組も登場させず、一組は違った設定や関係性にしたほうが良かったのではないでしょうか。374ページでは、「フェルナーの書斎」とすべきところを「ロリングの書斎」と間違えているし。
ナチスの強制収容所から始まるプロローグと、それに続いて裁判所での改名の申し立ての場面を読んで人間ドラマに重きを置いているのかと期待していたら、どんどん娯楽性が強くなり、終いにはアメリカン・エンターテインメントの軽いノリになっていきました。つまり、非常に読みやすい代わりに歴史サスペンスにつきものの風情は感じられません。




琥珀蒐集クラブ (ランダムハウス講談社文庫)琥珀蒐集クラブ (ランダムハウス講談社文庫)
(2006/03/02)
スティーヴ・ベリー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『チェリーパイの困った届け先』 ローラ・チャイルズ RHブックス・プラス

2013-09-02

☆☆☆

早く帰りたいときに限って問題は起こるもの―。公園で開かれる手づくり菓子の販売会を、ボランティアで手伝うことになったスザンヌは、一刻も早く居心地のいい自分の店に戻りたかった。ところが、チェリーパイを取り置きしていった葬儀屋のオジーがいっこうに姿を現わさない。そこでパイ皿を手に、ひと気のない葬儀場を訪ねてみると、そこには息のないオジーが横たわっていて……。ケーキづくしの好評シリーズ第2弾! 内容紹介より



卵料理のカフェ2。
コージーミステリのイベント好きな傾向は以前にも書きましたが、今回は大小イベントてんこ盛り状態で、手作りケーキのコンテスト、食堂に併設された書籍コーナーと編み物コーナーそれぞれにおいて、作家のサイン会、編み物によるチャリティ・イベントが開かれ、新しく開店するブティックではヒロインがファッション・ショーのモデルになったりしています。食堂自体も繁盛して大忙しなうえに、お茶会なんかもやったりと、読んでいて良くも悪くも非常に慌ただしく感じました。このシリーズは、悩みや悲しみを心に秘めたアラフォーである三人の共同経営者の女性たちが、強い友情と絆を結んで、人生に前向きに生きている姿を描くのがコンセプトの一つになっているために、彼女たちが馬車馬のように働くのも致し方ないのでしょう。できれば、もうちょっと強弱を付けていただきたいところです。とりあえず、お約束のロマンスはあるのですけれども。
ミステリの部分では、ヒロインの推理力はあいかわらず拙いけれど、犯人の正体はかなり意外性があったし、コージーでは稀にしかお目にかかれない伏線が最終盤で回収されています。しかし、ネットでも指摘されている問題のケーキはヒロイン以外にも供されていたように思ったのですが……。

『あつあつ卵の不吉な火曜日』 ローラ・チャイルズ ランダムハウス講談社

ユーザータグ:ローラ・チャイルズ




チェリー・パイの困った届け先 卵料理のカフェ2 (RHブックス・プラス)チェリー・パイの困った届け先 卵料理のカフェ2 (RHブックス・プラス)
(2011/01/08)
ローラ・チャイルズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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