『放火』サンドラ・ラタン 集英社文庫

2013-11-28

Tag :

☆☆☆☆

バンクーバー近郊で連続事件が同時発生。誘拐された少女が続けて放火現場で発見され、レイプ被害者はみな消防士の妻か恋人で、放火当日、自宅で襲われていた。ある事件の痛手から互いに連絡を絶っていたノーラン、ハート、テインの3刑事は、町の暗部と過去の闇、警察内部の腐敗が絡みあう中、再度ともに難事件に立ち向かう。ざらつく警察のリアルな日常、不屈の刑事魂と人間ドラマが胸に迫る! 内容紹介より



以下、ややネタバレしています。ご注意下さい!

〈コクウィットラム連邦警察署ファイル〉というシリーズタイトルがついた第一作目。
内容紹介文に書かれている三人の刑事が痛手を受けたという「ある事件」の経緯が、ほのめかし程度にしか触れられていないので思わせぶりな感じがしてマイナスポイント。詳細は次回作以降で明らかになるみたいです。それから魅力的なヒロインひとりに、お坊ちゃんキャラと野性的なキャラの異なったタイプの男性を配するという食傷するほどのワンパターンな設定も、わたし的にはこれだけで評価が下がります。本当に女性作家はこの構図を好みますね。ヒロインと男たちとの間に交わされる、事件とは関係のない言葉の掛け合いにうんざりしました。また、囮捜査の囮役となった女性の暮らす家に警官が出入りし過ぎだし、彼女と犯人の一対一の対決がこちらの予想に反してなかったことも悪い意味で意外でした。ストーリー進行はカットバックを頻繁に用いて読みやすいけれど、なんだかテクニックに溺れてカットするセンスは無いみたいな、不必要な場面でも行っている気がしました。これは翻訳のせいもあるのかもしれませんが……。残念ながら本書からはジョゼフ・ウォンボーの作品ほどの「警察のリアルな日常」は読み取れませんでした。辛口なことを書きましたが、決して面白く無いわけではありません。




放火 コクウィットラム連邦警察署ファイル (集英社文庫)放火 コクウィットラム連邦警察署ファイル (集英社文庫)
(2010/06/25)
サンドラ・ラタン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『黒い蘭の追憶』カーリーン・トンプスン ハヤカワ・ミステリ

2013-11-23

Tag :

☆☆☆

キャロラインは最愛の夫とふたりの子供にかこまれ、なに不自由のない生活をおくっていた。だが、十九年前の出来事が脳裏から去ることはけっしてなかった。当時五歳だった娘のヘイリーが誘拐され、必死の捜査にもかかわらず、惨殺体となって発見されたのである。犯人が逮捕されぬまま月日はたち、キャロラインはつらい記憶を胸にしまいこんで、新しい家庭を築いた。キャロラインの身辺で奇妙なことが起きはじめたのは、生きていればヘイリーが二十四歳になる誕生日のことだった。死んだはずのヘイリーの声がどこからともなく聞こえてきたり、墓に黒い蘭の花束が供えられたりしたのだ。さらには、ヘイリーと一緒に消えたはずのピエロの人形が自宅に忽然と現れた。十九年前の誘拐犯がふたたびもどってきたというのだろうか?息詰まるようなサスペンスと意外な展開で全米書評子から絶賛をあびた大型新人のデビュー作、ついに登場! 内容紹介より



読んで感じたのは、巻末のあとがきで三回も名前が挙げられているように、メアリ・H・クラークみたいな作風のサスペンス作品だということでした。傍目には幸せな家庭が外的要因によって危機に瀕するというやつです。それから、どうもマイナーなロマンス小説出身なのではないかと疑わせるような人物造形を含めた筆遣いも気になりました。ヒロインにそれほど魅力がなく、その他の登場人物たちからも平板な印象を受けました(ヒロインの息子は作品中、ほとんど機能していない)。もう少し深みを出していて欲しいところですし、誘拐犯についてはもっと筆を費やすことでストーリー展開に強弱が生まれたのではないかと思いました。物語はオカルト風な色合いを強めていますが、真犯人の正体は本格探偵小説的消去法で選択していけば早々に見当が付いてしまいます。その犯人の過去にとった行動には腑に落ちない不自然な点があって、そんなところも登場人物のキャラクターの浅さとともに作品を、悪い意味でテレビドラマみたいに感じさせる原因なのかもしれません。




黒い蘭の追憶 (ハヤカワ ポケット ミステリ)黒い蘭の追憶 (ハヤカワ ポケット ミステリ)
(1992/01)
カーリーン・トンプスン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『邪悪なグリーン』アーロン&シャーロット・エルキンズ 集英社文庫

2013-11-19

☆☆

出場できる試合もなく、貯金も底をつきかけた女子プロゴルファー、リー・オフステッド。そんな彼女に会社役員の研修旅行でゴルフ・レッスンのアシスタントをする話が舞い込んだ。個性派ぞろいの役員メンバーや奇妙なゴルフ上達グッズを利用するインストラクターを相手に奮闘するリー。ところが会社CEOの妻が襲われ、その翌日には殺人事件も発生する。なぜ、遺体の喉には古い釘が?好調シリーズ第3弾。 内容紹介より



プロゴルファーリーの事件スコア3。
物語は昔、宝探しの船で発生した海難事故のプロローグから始まり、次にゴルフ場でのゴルフレッスンの最中にスラップ・スティックコメディみたいな誘拐未遂事件、その翌日にはその被害者の夫である会社経営者が喉に釘を打ち込まれた死体となって発見される猟奇的な殺人事件が起きるという、なにやら感覚的に高低差のある設定になっています。二十年前の海難事故が伏線になり、役員たちが殺人事件の容疑者となりうる動機に結び付けているところは地味に上手いかもしれません。しかし、いざ種明かしされると、なぜ真犯人はいとも簡単に殺人という極端な手段を選んだのか、その理由が腑に落ちないし、描かれているキャラクターからはそのような行動をとるのは不自然なように感じました。確かに意外性はありますけれど、ああ、そういえばあの時に……みたいな納得のできる前振りに欠けているように思います。ゴルフミステリは希少だろうから、ゴルフ好きな方には面白いかもしれないけれど、ヒロインのラブロマンスも目障りだし、ユニークな脇役も少ないから個人的にはもう読まなくて良いかもです。

『怪しいスライス』

タグ:アーロン・エルキンズ




邪悪なグリーン プロゴルファー リーの事件スコア 3 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫)邪悪なグリーン プロゴルファー リーの事件スコア 3 (プロゴルファー リーの事件スコア) (集英社文庫)
(2012/05/18)
アーロン&シャーロット・エルキンズ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『黄昏に眠る秋』ヨハン・テオリン ハヤカワ・ミステリ

2013-11-13

Tag :

☆☆☆☆

霧深いエーランド島で、幼い少年が消えた。母ユリアをはじめ、残された家族は自分を責めながら生きてきたが、二十数年後の秋、すべてが一変する。少年が事件当時に履いていたはずの靴が、祖父の元船長イェルロフのもとに送られてきたのだ。急遽帰郷したユリアは、疎遠だったイェルロフとぶつかりながらも、愛しい子の行方をともに追う。長年の悲しみに正面から向き合おうと決めた父娘を待つ真実とは?スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀新人賞に加えて英国推理作家協会賞最優秀新人賞を受賞した傑作ミステリ。 内容紹介より



エーランド島シリーズ四部作の第一作目。
ミステリとしては主に少年の祖父が探偵役となり、それとともにその娘であり少年の母親の再生、そして殺人者のたどった人生がバランスよく描かれている印象を持ちました。特に殺人犯とはいえ激しい望郷の念を抱きつつ惨めな人生を過ごした男の末路には哀れみさえ覚えます。子供の失踪に端を発しての離婚や家族との確執を経て、酒びたりで休職中のユリアは父親のもとに届いた靴に手がかりを求めて故郷に戻ってきます。バカンスシーズン以外には住人が極端に少なくなる村の様子や自然、父親を名前でしか呼べなくなっていた彼女の心が徐々に癒えていくシーンが上手く描かれていると思います。読後に気になったことは、ある登場人物の造形で、非常に重大な秘密を抱えているにも関わらず、葛藤、動揺、後悔、怯えといった感情がその人物から伝わってこなかったことです。過去に犯した行いと現在の振る舞いとの間に整合がとれていなくて矛盾しているように感じました。




黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2011/04/08)
ヨハン・テオリン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『黒い囚人馬車』マーク・グレアム ハヤカワ・ミステリ

2013-11-07

Tag :

☆☆☆☆

アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペーパーバック賞受賞作
1876年、建国百年記念万国博に沸き立つフィラデルフィア。だが会場の警備についている警官マクリアリーは失意に沈んでいた。事件解決の失敗で刑事の職を追われたのだ。おまけに今夜は金持ちたちを歓楽街へ案内しなければならない。しぶしぶ夜の街へ出るマクリアリーだが、退廃と虚飾に彩られたそのツアーの最後に、まさか少女の惨殺体を発見することになるとは……刑事魂がマクリアリーの胸に甦った。だが、上層部は彼を捜査から遠ざけようとする。事件の裏に何かが潜んでいるのか?力感溢れる筆致で描かれ、MWA賞に輝いた歴史ミステリの傑作 内容紹介より



ウィルトン・マクリアリー刑事を主人公にしたシリーズの第三作目で、邦訳されたのは本書が初めてです。作品の舞台となる国際博覧会記念万博は、「アメリカの世界へのデビューを誇示するパーティーであった。南北戦争の荒廃ののち、再統合されたアメリカが世界の列強の舞台に登場しようという最初のシグナルであった」(作者あとがきより)。このようにきらびやかで浮かれたお祭り騒ぎの喧騒のなかに、南北戦争に従軍し悲惨な体験をした(時代を替えたネオ・ハードボイルドの探偵みたいな)主人公を配して対照的な状況設定を用いています。しかも彼は過去に担当した事件で失態を演じている設定になっています。ただし、この事件についてはしばしば作品内で触れられますが、その事件が未約のシリーズ第一作目に関する内容なので、読んでいてもいまひとつぴんとこなくて、もどかしさがあるところは難点です。
非常に注目を集めたという日本の出展についても描かれている記念万博会場の雰囲気は活き活きと伝わってくるし、実際に起きた当時の事件をもとにして書かれた作品らしく、作者の取材が細部まで行き届いている印象を受けました。一方、どんでん返しに次ぐどんでん返しの趣向、特に真犯人については伏線の不足のせいもあっていささか強引なサプライズありきのような感じがしました。




黒い囚人馬車 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)黒い囚人馬車 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2001/10/10)
マーク・グレアム

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『罪と過ちの夜』アリソン・テイラー ハヤカワ・ミステリ

2013-11-03

Tag :

☆☆

P・D・ジェイムズと並び称される、英国本格の気鋭
ウェールズ北部の鉄道トンネルのなかで、全裸の少年の他殺体が発見された。被害者は、14歳の美少年アーウェル・トマス。アーウェルは死の直前、発見現場にほど近い児童養護施設〈ブロドウェル〉から脱走していたことが判明したのだが、彼の身体には、暴行されたあとがあった!〈ブロドウェル〉では、子供たちが虐待されているのだろうか?施設側は、マイケル・マッケナ主任警部らの捜査を、地元有力者の強力なバックアップを盾に、かたくなに拒否するのだが……『シメオンの花嫁』の作者が、英国社会にひそむ病巣を鋭くえぐる。傑作本格大作 内容紹介より



とにかく短い章で頻繁に場面転換が繰り返され、そのほとんどが会話の場面です。しかし、その内容は主人公の主任警部ともうひとりの誰かというワンパターンが多く、捜査会議とか取調べや聞き込みの場面などへ状況設定が変化しないので半分ほど読んだところで飽きるし、うんざりしてしまいました。会話の中身は人物や出来事に対する洞察めいたよしなしごとで、ああだこうだ語るのみで会話は進むけれど捜査は同じところをぐるぐる回っているばかりで、いっこうに進展しないのです。また、重要なある人物についての描写、背景説明が不足していることもこの作品の欠点だと思います。取り上げているテーマの持つ深刻さが目立つだけで、けっして「傑作本格大作」というほどの出来映えではありません。作者は実際にセラピストやソーシャル・ワーカーの経験があり、養護施設における児童虐待の問題を公的機関に訴えた経歴があるそうです。当然、本書もそういう経緯をふまえて書かれた作品でしょうが、いかんせんミステリとして見ると凡作だと思います。




罪と過ちの夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)罪と過ちの夜 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(1999/05)
アリソン・テイラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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