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『ハサウェイ・ジョウンズの恋』カティア・ベーレンス 白水社

2014-05-11

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☆☆☆

史実を基にした「小さな大傑作」
 時代はゴールドラッシュ、アメリカ西部のログ河沿いを、ラバに乗ったハサウェイ少年が往来してい た。仕事は砂金とりたちのもとに荷物や手紙を届けること。何日も一人旅する心には、いつも「物語」が生まれていた。そして、農場の少女で、ピアノを弾くフ ロラを好きになった。初恋だった。河の支流には様々な人びとが、それぞれの「秘密」を抱えながら生活していた。
 やがて、ハサウェイとフロラは心を通わせ、少年は自分の「物語」を話して聞かせ、やがて結ばれる。しかし二人を待っていたのは、思いもかけない殺人事件と、運命だった……。
  荒々しい自然に人びとの心はすさみがちになる。愛が生まれ、嫉妬、憎しみ、争いも生まれる。そうした思いや感情が、胸が震えるような力をもって迫ってく る。物語るときは饒舌だが、ふだんは不器用で寡黙なハサウェイ少年の、純朴で清新な初恋が、その心の揺れが、愛おしく思える。 力強い詩的な描写、緊張感 をはらんだ語り口で、複数のエピソードが並行して進み、恋人たちの運命をはらはらしながら追わせる。史実に基づいた「小さな大傑作」(『ツァイト』紙)。 《ルクス児童青少年文学賞》受賞作品。 白水社ホームページより



著者はベルリン生まれで、翻訳家としてアメリカ文学の翻訳があり、作家となってからはアメリカ滞在、また各国を遍歴した経験を持っているそうです。この作品をジャンル分けするならばヤングアダルトに入るのでしょうが、それを踏まえて本書を読むと、残酷な出来事や殺人事件が多いところなどにやや違和感があるかもしれません。ここに出てくる諍いや憎悪は大人たちの間に持ち上がっているものであり、それを見聞きする思春期の主人公は傍観者の立場にあるからです。自然や動物を含めた野生対人間によってもたらされる死ではなく、人間対人間による死が多く描かれているのは、作品中で“インディアン”の娘が「動物は、こわくなかった。こわいのは、人間だった」と言うように、心の醜さや愚かさといった負の人間性をテーマの一つにしているからでしょう。十九世紀半ば、ゴールドラッシュに湧くアメリカ西部の厳しい自然と過酷な事件、そのような異質な舞台と状況が描写されているなかで、世界のどこへ行こうと今も昔も変わらないもの、それが物語に河のように一貫して流れているハサウェイ・ジョウンズの「恋」です。誰もが経験している恋の芽生え、やきもち、はじめての喧嘩、そんな初恋がみずみずしく、素朴に描かれています。




ハサウェイ・ジョウンズの恋ハサウェイ・ジョウンズの恋
(2009/01/24)
カティア・ベーレンス

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テーマ : YA(ヤング・アダルト)
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

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