『支配人バクスターの憂鬱』ケイト・キングズバリー 創元推理文庫
2014-12-28
- Category : ☆☆☆
Tag :
「バクスター、まちがいなくあなたは太りだしているわよ」女主人セシリーの言葉に、支配人バクスターはただちに腹を引っ込めた。ここは紳士淑女御用達の隠れ家、ペニーフット・ホテル。いつになく暑い夏にホテルが賑わうなか、バクスターは不機嫌だった。新しいドアマンが、宿泊客になれなれしすぎるのだ。苦言を呈したものの、セシリーは取り合おうとしない。そんなとき、宿泊客のひとりがバルコニーから転落死した。ホテル内で起きた事件に、セシリーがおとなしくしているはずもない。堅物の支配人の憂鬱は深まるばかり。人気シリーズ第五弾。 内容紹介より
本書は、日本でいうホームドラマである、シチュエーションコメディの要素が強いような気がしました。ホテルのオーナー、その友人、支配人、従業員、常連客を登場人物として固定し、事件のためにゲストをそこに配置し、三人称多視点を取り入れ、場面転換を頻繁に用い、舞台はほぼペニーフット・ホテル内です。いうなれば“ペニーフット・ホテル繁盛記”なるもので、著者はこれらの取り回しに非常に長けている印象を受けました。今回はゲストに八歳のいたずら好きの悪がきスタンリーをトリックスターとして登場させ、彼とメイドの掛け合いによりストーリーに活気を与える効果をあげているように思います。一方、ミステリに関してはいつになくお手軽な処理に終わってしまった気がします。呪術ともうひとつのものがなにかいかがわしい側面を持っている点で、両者の区別があいまいなため真相が明らかになってもインパクトが薄いように感じました。また、伏線も見え見えでしたし。
ケイト・キングズバリー
支配人バクスターの憂鬱 (創元推理文庫) (2012/10/20) ケイト・キングズバリー 商品詳細を見る |
テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌