『父の道具箱』ケニー・ケンプ 角川書店

2015-01-27

Tag :

☆☆☆☆

父の道具箱には、たくさんの思い出と教訓があふれていた。父はいま亡い。

理不尽な人間関係から職場を追われ、いつも寡黙で、ガレージで日曜大工に没頭していた父。父のことを真に理解するには長い年月と父の死が必要だった--全米を感動と涙に巻き込んだメモワール。ライターズ・ダイジェスト賞、自費出版部門グランプリ



原題は『DAD WAS A CARPENTER』、ノンフィクションです。難病で父親を亡くした著者が、父親の日曜大工の仕事場だったガレージの整理に実家へ赴くところから始まる、子供の頃からの父親の思い出を綴った18章でなり、各章の最初のページにタイトルと訓言が付けられています。実際には彼の父親の職業は病院の薬剤師だったのですが、身の回りの物を自作したり、修理したりすることに熱心で得意であり、その姿が大きく印象に残っているため大工に喩えたのでしょう。戦時中にB-24爆撃機のパイロットだったこと以外に人生に派手さはないけれど、家族思いで、信仰に篤く、実直な生き方をし、多くを語らず行動を示すことで子どもたちに手本を示すという理想の父親像の一つの形を描き出していると思いました。




父の道具箱父の道具箱
(2002/03/28)
ケニー・ケンプ

商品詳細を見る

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『ジャッキー・コーガン』ジョージ・V・ヒギンズ ハヤカワ文庫NV

2015-01-23

Tag :

☆☆

やつらが企んだのは、賭場を襲ってがっぽりって強盗だ。もちろん普通ならイタリア系の連中が黙っちゃいないよ。けど、その賭場を仕切っている野郎、前に狂言強盗を仕組んだことがあるんだ。わかるか?今度も、野郎またやりやがったってことになって、こっちは無事って仕組みさ。けどな、よりにもよってコーガンっていうスゴ腕が乗り込んできちまった。まあ無事じゃすまないよ……伝説の著者が放つ傑作クライム・ノベル 内容紹介より



スリルとサスペンスに富んだ娯楽作品というわけではない。けれどニューヨークその他の大都会の裏社会でいつも起きてそうな事件が描かれているようなリアリティは感じることができました。やくざ者のとりとめがない与太話みたいな会話が全編を通して行われるというスタイルは面白くもなくはないのですが、ストーリー自体は決して万人が面白いと思うようなものではないです。しかし、これだけ会話が多いにもかかわらず、わたしの嫌いな、やたら気の利いたふうな口を叩きたがる軽口饒舌系でないのはかなり意外でした。誰が一体何の話をしているのか混乱する箇所もありましたが、うんざりすることはありませんでした。小物かそれに毛の生えた程度の悪党たちが病気のことや家庭や女のこと誰かのうわさ話をしているのを読んでいると、なんだか江戸落語の長屋の住人たちの悪党版噺みたいに思えてくるのでした。決して笑えはしませんけれど。




ジャッキー・コーガン (ハヤカワ文庫NV)ジャッキー・コーガン (ハヤカワ文庫NV)
(2013/03/08)
ジョージ・V・ヒギンズ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『死が招く』ポール・アルテ ハヤカワ・ミステリ

2015-01-19

Tag :

☆☆☆☆

“フランスのディクスン・カー”直球勝負の本格探偵小説!
内側から錠がかかった密室状態の書斎で、ミステリ作家が煮えたぎる鍋に顔と両手を突っ込み銃を握りしめて死んでいた。傍らの料理は湯気が立っているのに、何故か遺体は死後二十四時間以上が経過していた!しかも、この現場の状況は、作家が構想中の小説『死が招く』の設定とそっくり同じだった……。エキセントリックな作家、追い詰められた夫人、奇術師、薄気味悪い娘、双子の兄弟、屍衣を纏った謎の老人―曰くありげな人物たちが織り成す奇怪な殺人ドラマ。犯罪学者アラン・ツイスト博士が快刀乱麻を断つ本格探偵小説! シリーズ第二作 内容紹介より



登場人物たちの内面を深く描いた今様のミステリももちろん良いのですけれど、この作者の作品みたいに密室殺人に特化した探偵小説も非常に魅力的です。それも百戦錬磨のミステリファンたちを唸らせる作品に仕立てあげているのですから大したものだと思います。ミステリ作品の数だけこなしていっこうに成長しないわたしのような読者でも、ハースト警部がたどるいわゆる一般的な読者の推理よりはやや小賢しさを備えているため、警部のように嬉々としてレッドヘリングを咥えたりはしないのですが、怪しいとは思いながらも作者が仕掛けた第二の罠に引っかかってしまうのでした。
こういう作品をミステリ初心者の頃に読んでみたなら、たぶん、驚きの度合いが格段に違って、ひっくり返るくらいの面白さを味わえたことでしょう。ディクスン・カーみたいに過度に凝った雰囲気作りをしていなくて、とても読み易いところも評価できると思います。

『第四の扉』
『狂人の部屋』
『七番目の仮説』




死が招く―ツイスト博士シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)死が招く―ツイスト博士シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
(2003/06/17)
ポール・アルテ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ウィンター・ムーン』ディーン・R・クーンツ 文春文庫

2015-01-09

Tag : ホラー

☆☆☆

LA市警の警官ジャックは、ガソリンスタンドへ滑りこむレクサスの美しいボディを見るともなく眺めた。いい車だな。が、死神はそのレクサスに乗っていたのだ。白昼の乱射事件。阿鼻叫喚。ジャックは犯人とおぼしき男を夢中で撃った。市民の味方。“天使の街”の英雄。が、彼の入院中、妻と幼い息子の身には思いがけないことが……。 上巻内容紹介より



物語は、まずジャックが遭遇したLAにおける、ドラッグを摂取した人物による銃乱射事件とその後の経緯を描くともに、大都市を蝕んでいる反社会的行為に言及します。そして一方、そういう問題とは無縁なモンタナの牧場の老管理人の前に現れた不可解な現象を取り上げます。LAとモンタナの二つの舞台が交互に転換して物語が進み、ジャックの家族が生まれ育ったLAを捨てモンタナへ移住することで二つの流れが一つになるという展開です。わたしが感じたのは、これまで読んだクーンツの作品に比べて、かなりメッセージ性が高いのではないかということでした。大都市において住人たちが抱える問題とモンタナに現れたエイリアンを表すものは、ともに“悪意”です。ジャック一家は理由なき“暴力”や“憎悪”から逃れたつもりが、より強いそれと対峙するはめになってしまいます。著者は、人間たちの間にはびこる不気味で理解不能な“悪意”というものをエイリアンを持ちだしてより鮮烈に描き出したかったのではないかというふうに感じました。

遅くなりましたが、皆さんにとって面白い本がたくさん読める一年でありますように。




ウィンター・ムーン〈上〉 (文春文庫)ウィンター・ムーン〈上〉 (文春文庫)
(1995/12)
ディーン・R. クーンツ

商品詳細を見る

ウィンター・ムーン〈下〉 (文春文庫)ウィンター・ムーン〈下〉 (文春文庫)
(1995/12)
ディーン・R. クーンツ

商品詳細を見る

テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

カテゴリー

最近の記事

月別アーカイブ

06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

ユーザータグ

短編集 ホラー SF クリスマス・ストーリー アンソロジー ルース・レンデル アーロン・エルキンズ スティーヴン・キング デイヴィッド・ハンドラー キャロリン・G・ハート ジョー・R・ランズデール ローラ・チャイルズ マイクル・クライトン ジョアン・フルーク ジョージ・P・ペレケーノス ドン・ウィンズロウ ポーラ・ゴズリング ジェームズ・パターソン エド・マクベイン ジェイムズ・パタースン ジル・チャーチル ヘニング・マンケル C・J・ボックス ローレンス・ブロック リチャード・マシスン D・M・ディヴァイン レジナルド・ヒル スチュアート・ウッズ リリアン・J・ブラウン ジャネット・イヴァノヴィッチ ピーター・ラヴゼイ パーネル・ホール アリス・キンバリー レックス・スタウト S・J・ローザン ジョルジュ・シムノン ジョー・ゴアズ マーガレット・ミラー ウィリアム・カッツ クレオ・コイル カール・ハイアセン レスリー・メイヤー アイザック・アシモフ ヒラリー・ウォー エド・ゴーマン カーター・ディクスン マイケル・ボンド ルイーズ・ペニー マーシャ・マラー ジェフリー・ディーヴァー ジョン・ディクスン・カー リタ・メイ・ブラウン ジェームズ・ヤッフェ イーヴリン・スミス ジャック・カーリイ キャロリン・キーン ウィリアム・L・デアンドリア コリン・ホルト・ソーヤー ローラ・リップマン フレッド・ヴァルガス ポール・ドハティー ロブ・ライアン ジェフ・アボット G・M・フォード エヴァン・マーシャル オーサ・ラーソン ジョアン・ハリス サイモン・カーニック リン・S・ハイタワー ドナ・アンドリューズ ファーン・マイケルズ アンソニー・ホロヴィッツ ジャン=クリストフ・グランジェ スタンリイ・エリン レイ・ハリスン ケイト・ロス アンドレア・カミッレーリ レニー・エアース ジョン・クリード コニス・リトル デイヴィッド・マレル クリスチアナ・ブランド ウイリアム・P・マッギヴァーン ウィリアム・ランデイ ジャック・フィニイ リック・ボイヤー サキ ジェーン・ラングトン ユージン・イジー ウォルター・モズリイ アン・クリーヴス ビリー・レッツ イーサン・ブラック ダナ・レオン エーリヒ・ケストナー ウォルター・サタスウェイト スタンリー・エリン ポール・ドハティ トバイアス・ウルフ 

ブログ内検索

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

リンク

RSSフィード

最近のトラックバック

最近のコメント