『クッキング・ママの召喚状』ダイアン・デヴィッドソン 集英社文庫

2015-03-27

Tag :

☆☆

トム・シュルツ刑事との新婚生活は順風満帆、欲を言えば新妻ゴルディのケータリング業のほうも、といきたいところ。だが、引き受けたミニョン化粧品の午餐会は“低脂肪料理”の条件つき。猛暑にもいためつけられながらも、苦心のレシピ作り。なんとか会場へ乗りこんだが、駐車場で助手ジュリアンの恋人が何者かに轢き殺されてしまう。現場に落ちていたブルーの薔薇は何を意味するのか…。また、また、ママ探偵の血が騒ぐ! 内容紹介より



ひき逃げ事件の他にも殺人事件が起きるのは良いとしても、親友が心臓発作を起こしたり、ケータリング以外にフードフェアのイベントに出店したり、動物実験反対のデモ隊が騒いだり、漂白剤を掛けられたり、全編を通してドタドタバタバタと非常にせわしない。こういう雰囲気はどうも好きになれません。ヒロインがフェイシャルエステを受けるシーンは一体どういう必要性があるのでしょうか?その場面のヒロインのやたら気弱な姿が浮いているような気がしました。化粧品業界が消費者に対し不安感を煽ってほとんど必要のない、効果も期待できない商品を売りつける経営体質とそれに踊らされる消費者心理を揶揄しているのでしょうけれど、全体にまとまりがなくごちゃごちゃしすぎ。さらにそこに料理や食べ物に関する描写も加わるわけですから余計にとりとめがなくなっている感じを受けてしまいます。もっとメリハリをつけましょう。登場人物に魅力的なキャラクターが見当たらないし、ミステリ部分は平凡でした。




クッキング・ママの召喚状 (集英社文庫)クッキング・ママの召喚状 (集英社文庫)
(1996/08)
ダイアン ・デヴィッドソン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ワイルダー一家の失踪』ハーバート・ブリーン ハヤカワ・ミステリ

2015-03-23

Tag :

☆☆☆

他の人達は病気で死んで行く、おたふく風邪か老衰か、熱病か肺炎かで、でもワイルダー家の人達は消えていく―1775年のジョナサン・ワイルダーの失踪にはじまって、これまで五人のワイルダー家の当主が、不可思議な状況のもとで姿を消していた。最近では、一年前、フレッド・ワイルダーが、三階の、窓がひとつあるきりの自分の事務所から消え失せていた。
ニューヨークのジャーナリスト、レイノルド・フレームが、雑誌の仕事で“古き良きアメリカ”を取材するためにワイルダーズ・レーンにやってきた日にも、一年前に失踪したきりのフレッド・ワイルダーの下の娘エレンが伯母の家へ行くとバスに乗ったきり行方知れずになってしまった……。が、失踪した他の人達がそれきり消息不明だったのに対し、エレンは、翌日、無残な撲殺体となってワイルダー家代々の墓地に埋められているのを発見された!なぜ、エレンだけが死体となって……?フレッド・ワイルダーの姉娘コンスタンスの経営する下宿屋に間借りしたレイノルドは、否応なく事件に巻きこまれていった。彼が暴いた五人のワイルダー達の失踪の秘密とは……。

ブリーンの作風はカーを継承するものである。中心興味が手品趣味であること、筋が複雑でこんぐらがっていること、催眠術、心霊現象その他オカルティズムの智識を脚注まで入れてふんだんに披瀝していること、等々、カーの手法に酷似している。 江戸川乱歩(解説より) 内容紹介より



確かにオカルト趣味あるいは綺談系の趣向を取り入れたところは独特の雰囲気作りに効果的に働いていると思います。しかし、人間消失という高いハードルを掲げた謎の設定が徐々に解明されていく過程で、ハードル以上のさらなる驚きが準備されているのか、という期待はちょっと肩透かし気味です。真犯人の動機も良いところを突きながら、なにかもう一歩の踏み込みが足りない気がしました。銃痕のある二体の遺骨の真相やフレッド・ワイルダー消失のからくりは結構うならせます。また、主人公たちの目と鼻の先で起きた消失事件もストーリーの流れ的にかなり上手いタイミングでショッキングな効果を与えているように思います。一方、砂浜に残った足跡が途中で途切れた失踪事件の動機はなかなかですけれど、そのトリックについては残念。それから、こうも怪奇で不可解な消失劇が立て続けに起きているにもかかわらず、ワイルダー家の女主人の心理描写が淡白なところは不自然に感じました。もっと心の乱れ、焦燥、切迫とか動揺などの感情表現を描いたほうがサスペンス性が高まったのではないかという気がしました。




ワイルダー一家の失踪 (ハヤカワ・ミステリ 104)ワイルダー一家の失踪 (ハヤカワ・ミステリ 104)
(1953/11)
ハーバート・ブリーン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『英国風の殺人』シリル・ヘアー 国書刊行会

2015-03-16

Tag :

☆☆☆

「ウォーベック邸に神のご加護を!」
クリスマスを言祝ぎ、シャンパンを飲み干した青年は、次の瞬間その場に倒れ伏した……。雪に降り込められたカントリーハウス、一族を集めたクリスマス・パーティーの夜、事件は起こった。病の床につく老貴族、ファシストの青年、左翼系の大蔵大臣、政治家の妻、伯爵令嬢、忠実な執事と野心家の娘、邸内には事件前から不穏な空気が流れていた。地域を襲った大雪のため、周囲から孤立した状況で、古文書の調査のため館に滞在していた歴史学者ボトウィンク博士は、この古典的英国風殺人事件に如何なる解決を見いだすか。「クリスティーの最上作を思わせる」傑作と呼び声高い、英国ミステリの伝統を継ぐ正統派シリル・ヘアーの代表作。 内容紹介より



カントリーハウス、限られた登場人物、探偵役の異邦人、そこにクローズド・サークルを持ってきたらクリスティー風ミステリの出来上がり。しかし、なにか薬味が足りないような。それは登場人物たちの個性の弱さにあるような気がします。彼らのキャラクターがかなり表面的で腹に一物あるとか、秘められたものがあるとか、いわくありげな様子に乏しいのでこの状況設定にしてはサスペンス性がなく、物足りない感じが残りました。そして彼らの人間関係が錯綜しているどころか、かなり平明なのもあっけないです。さらに動機が「英国風」すぎるところも、事件の詳細が明らかになってからも膝を打てない原因なのかもしれません。真犯人や犯行動機に意外性はあるのですけれど、全体的にみると『自殺じゃない!』のほうが、一風変わったアイデアやアイロニカルな趣向、不条理な感覚、ユーモラスな点で代表作にふさわしいような気がします。

『自殺じゃない!』シリル・ヘアー 国書刊行会





英国風の殺人 世界探偵小説全集 (6)英国風の殺人 世界探偵小説全集 (6)
(1995/01)
シリル・ヘアー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『医者よ自分を癒せ』イーデン・フィルポッツ ハヤカワ・ミステリ

2015-03-11

Tag :

☆☆☆☆

イギリス南部の風光明媚な町ブリッドマスの市長アーサー・マナリングが殺害された事件は、一大センセーションを巻き起こした。町の発展のために別荘地の開発に精力的に乗り出して財をなした不動産業者であると同時に、貧民対策事業に多額の金を投げうって賞賛を一身に浴びているこの人物を、誰が、なぜ殺さなければならなかったのか?だが、人々の異常なまでの関心を事件に引きつけたのには、もうひとつ別の要素があった。それは、事件の有り様が、七年前のちょうど同じ日に起きた被害者の息子ルウパート殺害事件にあまりに酷似していたことだった。現場は、景勝地マッターズ沼地のまったく同じ場所、しかも左のこめかみから撃ちこまれた銃弾が頭蓋を通り抜けている点も同じだった。二つの事件を結びつけて考えないものはなかった。しかし、スコットランド・ヤードが七年前と同様、一番の腕利き刑事を派遣してあらゆる努力を続けたにもかかわらず、謎は再び未解決のまま残されてしまった。迷宮入りの二重殺人は永遠の謎を秘めたまま葬られようとしていた……だが、30年後、マックオストリッチ医師の手記が事件の恐るべき真相を白日のもとにさらけだす!
『赤毛のレドメイン』『闇からの声』と並び、大作家フィルポッツの代表的ミステリ。格調ある文体で悪の心理を容赦なく追求する心理ミステリの傑作。 内容紹介より



「私」ことマックオストリッチ医師が死後に公表する目的で書いた手記という形をとった犯罪小説です。「私」が遭遇した第一の殺人事件、事件を知らせるために訪れた被害者の家族の印象、被害者の父親への不快感と次第につのる嫌悪感、その娘への恋愛感情、などなどが一人称で語られていくのですが、読み始めから湧き上がってくる「私」に対する嫌な印象がずっと続きます。それはひとえに「私」が独善的、利己的で計算高い、上っ面だけの鼻持ちならない俗物に描かれているからです。作者のこの造形力というのはとても見事なもので、このキャラクターを現代に持ってきても違和感がないくらいにまったく時代を感じさせません。なぜ第一の殺人事件の加害者を被害者の父親だと思い込むようになったのか、という点ではミステリとしては確証に乏しい気がしますけれど、彼への高まる憎悪がその思い込みに拍車をかけたと捉えると、「私」の偏執的な心理状況をよく表しているともいえると思います。




医者よ自分を癒せ (ハヤカワ・ミステリ 294)医者よ自分を癒せ (ハヤカワ・ミステリ 294)
(1983/09)
イーデン・フィルポッツ

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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