『世界のすべての七月』ティム・オブライエン 文春文庫

2015-05-31

Tag :

☆☆☆☆

30年ぶりの同窓会に集う1969年卒業の男女。結婚して離婚してキャリアを積んで……。封印された記憶、古傷だらけの心と身体、見果てぬ夢と苦い笑いを抱いて再会した11人。ラヴ&ピースは遠い日のこと、挫折と幻滅を語りつつなおHappy Endingを求めて苦闘する同時代人のクロニクルを描き尽くして鮮烈な感動を呼ぶ傑作長篇。 内容紹介より



弁護士、新婚旅行中にカジノで大当たりし、直後に離婚。元ストリート劇団員、大金持ちと結婚。二軒の家、二人の夫を持つ。徴兵を忌避してカナダ・ウィニペグへ。牧師、信徒の家に家宅侵入を図る。不倫相手が溺死。ビリー・マクマン(徴兵忌避者)の元恋人、乳癌を患う。退職者コミュニティーの代表、死亡。驚異的なダイエットに成功。ヴェトナム戦争で片足を失う。デイヴィッド・トッド(前記、戦傷者)の元妻。
大学の同窓会会場を舞台にした群像劇、各人物の交流はほとんど二人、稀に三人でそれ以上に発展せず固定されています。彼らの人生におけるハイライト(大部分がネガティヴな経験)と現在が描かれています。登場人物たちの年齢を五十代なかばに設定したことが絶妙な気がしました。もう若くはないけれど、年寄りでもない、社会的地位あるいは経済的に安定した世代でありながら、そろそろ先が見え、人生が固まりかけてくる年代。しかし、わずかながら生き方を変革するスペースもあるという感じ。そういう立ち位置で、じたばたする者や諦観する者、さらに傷つく者、幸せになる者、惑う者……。個人的には、ひとりの女性に執心したがために妻を失ってしまった男の話が印象に残りました。彼の人生はいったい何だったのか。ひとはみんな幸せになりたいと願っているのに、それはなかなか叶わないものですね。





テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『第七の戒律』ローレンス・サンダーズ ハヤカワ文庫NV

2015-05-26

Tag :

☆☆☆☆

高級宝石店の会長ルイスが散歩中に何者かに刺し殺された。会長に300万ドルの保険金がかけられていたため派遣された調査員ドーラは、会長の家族にまつわる怪しげな人々と出会う。会長未亡人にとりいる新興宗教の神父。ルイスの息子クレイトン社長の愛人である美女ヘレン。しかもヘレンの兄も会長の娘の心を虜にしていた……ニューヨークの富豪一家をめぐる愛と欲と殺人がおりなすサスペンス。〈汝姦淫するなかれ〉改題。 内容紹介より



宝石店の本店が大量の金地金を各支店に購入させて利益を上げる、この金取引に潜むあるからくりは結構ありきたりで、見当が付き易かったのですけれど、四件の殺人事件それぞれの動機と犯人については意外性がありました。しかし、なんといっても本書の核となるのは、身長百六十センチ、体重六十八キロのいかにも主婦然とした主人公ドーラの人間的魅力でしょう。「きみは十五キロ痩せたら、ずいぶん魅力的になるのにな」と、いきなり初対面の刑事に言われるぽっちゃりした体形ですが、出会った人を惹きつけてしまうものが、彼女の内面にあるのです。優秀な調査員ながら、ひらめき型ではなく、こつこつと歩きまわって真相を探っていくキャラも好感が持てます。
ストーリー全体にテンポが良く、各登場人物たちの心理や刻々と変化する状況が三人称多視点によって描き出されて、非常に読みやすかったです。タイトルは宝石店一族の人間関係に掛けているわけですが、それを主人公と刑事の間の感情に派生させ二重の意味をもたせるとともに、読者をちょっとやきもきさせるところも上手い。

『顧客名簿』講談社文庫









テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『七匹の蛾が鳴く』フランク・ティリエ ランダムハウス講談社

2015-05-24

Tag :

☆☆☆☆

愛する妻と娘を交通事故で失ったパリ警視庁警視シャルコ。以来、頭の中でたえず話しかけてくる妻の声に悩まされていた。そんな時、教会で死体が発見されたと警視庁から連絡が入る。現場には全身の毛を剃られた女性の死体、頭部に大きな蛾が七匹とまっていた。外傷はないが、明らかに監禁されていた跡がある。妻子の死を忘れるため、憑かれたように捜査に打ち込むシャルコ。だが、彼の精神は少しずつほころびはじめていた― 内容紹介より



パリ警視庁犯罪捜査部警視フランク・シャルコ(通称シャーク)を主人公とするシリーズ第二弾。
一作目の『タルタロスの審問官』と同様に、非常に凄惨でグロテスクな場面が多く描かれています。犯人が被害者に行う仕打ちの数々など、著者はまあよくこんなことを思いつくものだとちょっと引いてしまうくらいです。しかし、単に残虐な描写だけが売りの作品では当然なく、読者の意表をつく巧みな仕掛けがあちらこちらに仕込まれたものになっています。特に蛾を使って犯人のアジトを突き止めるアイデアはかなり見事で感心しました。また、読者にとって正体が早々にわかり易い謎の少女に関しては、あえて分からせておいて別の仕掛けを用意して驚かせるといった具合に、作者の手法は非常にトリッキーです。そういうふうに趣向を凝らしていることと主人公が常に疾走しているイメージのために、陰気でじめじめした感じはしませんでした。それから、主人公の単独行動がスタンドプレイ気味というか猪突猛進というか、前後の見境がない行動に思えるようなところもあって、ちょっとどうかなという気もしました。

『タルタロスの審問官』




テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『五人のカルテ』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫NF

2015-05-21

☆☆☆

原因不明の高熱、骨折、火傷、心臓停止、激しい胸の痛み。マサチューセッツ総合病院の救急治療室には、さまざまな患者が昼夜を問わず運ばれてくる。ここに医学生として勤務した体験をもとに、超ベストセラー作家が刻々と変化していく医療現場の実態をリアルに再現し、その裏側に隠された問題点を鋭くえぐる!全米で驚異的人気を誇るTVドラマ・シリーズ「ER(緊急救命室)」の原点となった話題の医学ノンフィクション 内容紹介より 



1970年に発表された作品です。
ドラマ「ER」のようなドキュメンタリー・タッチの人間ドラマを予想して読むと拍子抜けします。ドラマの雰囲気が感じられるのは、第一章「ラルフ・オーランド」の25ページから41ページの間だけでした。要するに本書で述べられているのは、医療や病院の歴史、技術,検査の発展、医療にかかる予算、患者の負担金、医者、彼らを補助するコンピューターシステムなどなど。章ごとにひとりの患者を登場させ、彼らの傷病について行われた診察、検査、投薬、処置や手術を記して、その後に関連した上記のテーマを語るという形をとっています。そのなかで興味をひかれたのは、第四章「シルヴィア・トムスン」のなかで、胸の痛みを覚えた彼女が空港の医務室で、オンラインによる遠隔診察を受ける場面でした。
「著者のノート 一九九四年」において、「私が『五人のカルテ』をかいてから二十五年が経つ。最近この本を読み返してみて、医学がいかに変わったか―また、それと同時に、いかに変わらなかったかという点で、大いに驚かされた」(p11)。本書で取り上げられていない重要なものは再生医学(医療)くらいでしょうか。コンピューターによる医療支援システムの開発、導入など、個人的にはあまり変わっていない気がしました。

ユーザータグ:マイクル・クライトン




テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『幽霊探偵の五セント硬貨』アリス・キンバリー ランダムハウス講談社

2015-05-19

☆☆☆

社交界の華と呼ばれた女性が殺された。そして今度は、事件の真相に迫った作家までが謎の失踪!?自分の店に招いた作家とあらば見過ごせない!真相究明に乗り出した書店主ペネロピーは、捜査の参考にと、店の倉庫に眠っていた幽霊探偵の事件簿を取り出してみることに。すると、中から一枚の五セント硬貨が転げ落ち……。この一枚がやがて、幽霊探偵とミステリ書店主の名コンビの命運を分ける!待望のシリーズ第2弾。 内容紹介より



ミステリ書店シリーズ第二作目。この回より、生前に幽霊探偵が持っていた五セント硬貨を身につけると、書店の外でもヒロインは彼と会話できる設定変更になっています。また、夢のなかで探偵ジャックが活動していた時代を彼女も訪れることが可能に。過去に探偵ジャックが依頼された恐喝と人妻の変死事件、現在の社交界で起きた殺人事件とそれをスキャンダラスに取り上げた本を出した作家の失踪事件、この二つの事件が描かれます。しかし、相変わらず、それぞれの事件には関連性はなく、幽霊探偵がヒロインに探偵術を教えるためという意味合いが強いだけです。
本書のなかでコージーミステリらしさがあったのは、ヒロインの店が所属する商店会の月例ミーティングの席上で今回の事件のことが取り上げられた場面でした。ヒロインの他、宿屋のオーナー、郵便配達人、食料品店主、金物屋などが、容疑者の若者に対して模擬裁判みたいなことを始める場面ははじめは面白かったですが、勢いがしりすぼみになってしまって残念でした。

『幽霊探偵からのメッセージ』
『幽霊探偵とポーの呪い』
『幽霊探偵と銀幕のヒロイン』




テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『五時の稲妻』ウィリアム・L・デアンドリア ハヤカワ文庫HM

2015-05-16

☆☆☆

八回裏のヤンキーズの攻撃に、満員の観客は湧きかえった。あのミッキー・マントルが代打で登場し、特大のホームランをかっとばしたのだ。ついに無敵のヤンキーズは逆転した―歓声がとどろくなか、客席の一角では、赤狩りの急先鋒をつとめる下院議員が暗殺されていた。犯人は逃亡し、ある有料道路のレスト・エリアで忽然と姿を消した。死体の第一発見者たる元野球選手ギャレットは事件の謎を追うが……やがて明らかになる、赤狩りにからむ復讐とミッキー・マントル殺害計画!1950年代、大リーグの神話時代を舞台に展開するサスペンス巨編。 内容紹介より



タイトルの『FIVE O`CLOCK LIGHTING』とは、“試合後半にヤンキーズが劇的な本塁打で逆転する様”(p75)を表す運動部記者の用語なのだそうです。
何度もリーグ優勝を成し遂げ、さらにはワールド・チャンピオンに幾度も輝いたニューヨーク・ヤンキーズ全盛期、その影を成すかのような猛威をふるうマッカーシズム。この二つを時代設定に持ってきて、ヤンキー・スタジアムでの議員暗殺事件でそれらを結びつけています。暗殺犯の正体と動機は物語の当初から読者に明かされ、かつてマイナー・リーグに所属し、朝鮮戦争で負傷して両脚に障がいを持つ主人公が警察に協力して犯人を追うという流れです。しかし、ストーリーは復讐譚と追跡劇には進まず、暗殺された議員のスポンサーだった人物の右腕の男が主人公とミッキー・マントルの命を狙って行動を起こし始めるという展開に変わります。個人的に首を捻ったのは、特に強い政治信条など持ってなさそうなこの男がふたりを殺すことに、何故これ程こだわるのだろうか、ということです。この辺の理由が読みとれなくて釈然としませんでした。同一章内における三人称多視点の移動がスムーズで巧みであり、それによる人物それぞれの心理描写がシンプルかつ上手く効いていると感じました。

ユーザータグ:ウィリアム・L・デアンドリア




テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ダルジール警視と四つの謎』レジナルド・ヒル ハヤカワ文庫HM

2015-05-13

☆☆☆

九十キロを越す巨体、無作法、口の悪さは超一級―そんな型破りの“アンチ・ヒーロー”、ダルジール警視は、その桁外れの魅力でミステリ・ファンの圧倒的な支持を受けてきた。本書では、彼が部下のパスコー警部とともに四つの難事件の謎に挑戦する。ダルジールとパスコーの出会いを描いたものや、2010年の近未来を舞台に、月面で初めて起きた殺人事件の顛末など、英国ミステリ界きっての実力派が贈る魅力あふれる中篇集 内容紹介より



「最後の徴集兵」
中部ヨークシャー警察に移動してきたパスコー刑事が、初めてダルジール警部(共に当時)と出会った日に遭遇した事件を描いた作品。徴収された乱暴者の兵士が軍のなかで問題を起こし何度も刑務所に収監され、そのたびに二年間の徴兵期間が延びてしまう。それが原因で母親の死に目に会えなかったことを逆恨みしたその男がダルジールと、居合わせたパスコーを拉致して監禁してしまうという話。男をだたの乱暴者に設定せず人情話を挟んでいるところに特徴を感じました。

「パスコーの幽霊」
幼馴染みと結婚した人妻の失踪事件を手がけるパスコー警部の話。幼馴染みの七人と失踪した人妻の兄、彼らの間に隠された秘密が徐々に明らかになっていく。果たして彼女は彼らのなかの誰かに殺されたのだろうか……。300ページ弱の読み応えのあるサスペンスに満ちた作品。なのですが、後半、私邸で事情聴取を行うという間抜けな設定は、結末へ繋げるためとはいえ興をそぐ気がしました。某大物作家の作品を思い出しました。

「ダルジールの幽霊」
パスコー夫妻の友人夫婦が改装した農場の中の一軒家で、奇妙な音や感じがするという。その話を聞いたダルジール警視によると幽霊には原因が三つあるそうで、それは、まずい料理、換気の悪さ、良心の痛み。そこで彼とパスコー警部はその正体を明らかにするため屋敷に一晩泊まりこむことに。だが、ダルジール警視のもくろみは別のところに。まあまあ。

「小さな一歩」
引退して年金生活をおくるダルジール元警視がヨーロッパ連邦司法省イギリス長官に出世したパスコーと共に、月面で起きた殺人事件を捜査するというSFミステリ。あまり食指が動かなかったのですが、読んでみたら捻ったうえにさらに捻るというしっかりしたプロットでした。ただ、面白かったかといえば、微妙。サイエンスの部分でなにか欲しかったところ。




テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『リチャード三世「殺人」事件』エリザベス・ピーターズ 扶桑社ミステリー

2015-05-09

Tag :

☆☆☆

幼王を殺害し、王位を簒奪した、英国史の極悪人リチャード三世。だが、彼の無実を証明する新たな史料が発見された!そのお披露目会が開かれる屋敷には、愛好家がリチャード三世にまつわる歴史上の人物に扮して大集合。ところが、参加者に次々と災難が降りかかる。しかも、各人が扮した人物の実際の死にざまを想起させるような形で……何者かがリチャード三世の殺人を再現しようとしているのか?MWA巨匠賞に輝くエリザベス・ピーターズが『時の娘』にオマージュを捧げた、伝説的名作! 内容紹介より



お金持ちの貴族の屋敷に集まったリチャード三世の愛好家たちは、貴族の遠縁にあたる母子、作家、軍人、牧師、医師、俳優、弁護士、アメリカ支部長、そしてアメリカ人の大学教授とその女友だちの司書。また、屋敷には執事もいるという盤石の古典探偵小説の舞台設定。探偵役を博識で弁が立つ美人司書が、ワトスン役を大学教授が務めています。さらに登場人物たちそれぞれはリチャード三世に関わる人物に扮しているという凝った状況設定になっているのです。読み始めこそ誰が誰で、誰が誰に扮しているか、さらに歴史上の人物たちはどんな役割だったのとか若干混乱しましたが、巻頭に薔薇戦争の主な出来事、それぞれの人物の説明、相関図が載せてあるので読み進めるうちに分かりやすくなりました。内容は邦題の殺人に「」が付いているようにユーモアミステリで、何者かが愛好家たちに仕掛ける「殺人」によって起きた騒動を描くという、なかなか面白い趣向をとっています。しかし、残念なことにミステリ自体はあまり鮮やかな手並みとはいえません。
リチャード三世や薔薇戦争についてちょっとした勉強になり、『時の娘』をまた読んでみたくなりました。




テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ふたりの逃亡者』ボブ・メイヤー 二見文庫

2015-05-05

Tag :

☆☆☆

合衆国の最深部に位置する極秘情報機関〈ザ・セラー〉。かつてその元工作員だった男が病でこの世を去ったとき、事件の歯車は動きはじめた―。死んだ男の恋人だったニーリーは、遺されたメッセージの断片を追ううち、夫が失踪した主婦ハンナとめぐりあう。すぐにふたりは気づいた。自分たちの伴侶が、何か国家的な秘密を隠していたことを。それは時の政権をくつがえすほどの危険なものであることを。突如、国家に追われる身となったふたり。命をかけ、嘘と謎におおわれた真実に迫ってゆくが……。 内容紹介より



女性ふたりが主人公の謀略小説、冒険小説、ロードノベルです。“極秘情報機関”なんてフレーズが現代にそぐわずコミカルな感じを受けますし、CIAなんかを顎で使うほどの権力を備えている組織なのにアナログっぽくてなにかしょぼい。ストーリーもプロットも今風ではなく、若干古めかしいかなと感じました。ボブ・メイヤーの作品を読むのはこれで三冊目ですけれど、人物描写はなかなか上手になっているような気がします。特に、ヒロインふたりの内面やその変化は、この作家にしては上手く表していると思いました。また、ミリタリー系出身の作家は武器についての説明(うんちく)や格闘戦のシーンにこだわりがあるために、かなり力が入ってしまい、読んでいてそこが煩わしく感じてしまいがちなのですが、この作者にはそういうところがあまり見られないのは良い点だと思います。
ヒロインがヒーローの庇護の下から離れて、活躍するようになって結構な年月が経ちましたが、この作品のようにラブロマンスが描かれるわけでもなく、片方が相手に依存したままでもない物語をこのようなジャンルの男性作家が普通に書く時代なんだなあという印象を持ちました。

『抹殺』
『報復の最終兵器』







テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ゴールド1/密室』ハーバート・レズニコウ 創元推理文庫

2015-05-01

Tag :

☆☆☆

病後療養中のゴールドに持ちこまれたパズルは、本物の殺人事件の真相究明だった。密室状態のアトリエのなかで血ぬられたナイフを持って、被害者のかたわらに茫然と立ちつくしていたジョナサン、状況はまさしく彼が犯人であることを示していた。だがこの若い設計技師こそ、奸智に長けた真犯人によって仕立てられた哀れな犠牲者ののではないか。とすれば真犯人は誰か、またどのようにして密室から抜け出せたのか、そして被害者が遺した落書きに込められた意味は何か?愛妻ノーマの協力を得て不可解な謎に挑戦する新しい名探偵、ゴールド初登場! 内容紹介より



1983年に発表された作品。個人的に重々しくて機械的なイメージが湧く本格古典の密室物に較べると、このおしどり夫婦による密室ミステリ(かつ安楽椅子探偵もの)は探偵のキャラクターが立っており、軽快な感じがしました。夫のアレグザンダー・ゴールドの偏屈で尊大な造形はちょっとやり過ぎな感もありますし、個性的であるぶん好き嫌いが分かれるかもしれませんが、語り手である妻ノーマがそこを補完ないし中和しているような気がします。
もともとわたしは密室物が不得手でその謎を解こうなどとは端から思っていなくて、期待するのは密室のからくりが解明された時の爽快感なのですけれど、本書ではあまりにも“なあんだ”という、肩すかしにされた気持ちが残りました。かなりあれもこれもと密室のハードルを上げておいて、この真相ではあんまりではないのかと……。良く言えば意表をついてはいるかもしれませんけれど。退屈になりがちな容疑者たちとの面談の場面は結構上手く処理して冗漫な印象は受けませんでした。

『音のない部屋の死』ミステリアス・プレスハヤカワ文庫









テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

カテゴリー

最近の記事

月別アーカイブ

04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

ユーザータグ

短編集 ホラー SF クリスマス・ストーリー アンソロジー ルース・レンデル アーロン・エルキンズ スティーヴン・キング デイヴィッド・ハンドラー キャロリン・G・ハート ジョージ・P・ペレケーノス ジョアン・フルーク ローラ・チャイルズ マイクル・クライトン ジョー・R・ランズデール ドン・ウィンズロウ ジェームズ・パターソン ジェイムズ・パタースン エド・マクベイン ジル・チャーチル C・J・ボックス ヘニング・マンケル ローレンス・ブロック ポーラ・ゴズリング リチャード・マシスン レジナルド・ヒル D・M・ディヴァイン ジャネット・イヴァノヴィッチ リリアン・J・ブラウン スチュアート・ウッズ ピーター・ラヴゼイ パーネル・ホール レックス・スタウト アリス・キンバリー S・J・ローザン ジョルジュ・シムノン ジョー・ゴアズ マーガレット・ミラー ウィリアム・カッツ クレオ・コイル カール・ハイアセン レスリー・メイヤー アイザック・アシモフ ヒラリー・ウォー エド・ゴーマン カーター・ディクスン マイケル・ボンド ルイーズ・ペニー マーシャ・マラー ジェフリー・ディーヴァー ジョン・ディクスン・カー リタ・メイ・ブラウン ジェームズ・ヤッフェ イーヴリン・スミス ジャック・カーリイ キャロリン・キーン ウィリアム・L・デアンドリア コリン・ホルト・ソーヤー ローラ・リップマン フレッド・ヴァルガス ポール・ドハティー ロブ・ライアン ジェフ・アボット G・M・フォード エヴァン・マーシャル オーサ・ラーソン ジョアン・ハリス サイモン・カーニック リン・S・ハイタワー ドナ・アンドリューズ ファーン・マイケルズ アンソニー・ホロヴィッツ ジャン=クリストフ・グランジェ スタンリイ・エリン レイ・ハリスン ケイト・ロス アンドレア・カミッレーリ レニー・エアース ジョン・クリード コニス・リトル デイヴィッド・マレル クリスチアナ・ブランド ウイリアム・P・マッギヴァーン ウィリアム・ランデイ ジャック・フィニイ リック・ボイヤー サキ ジェーン・ラングトン ユージン・イジー ウォルター・モズリイ アン・クリーヴス ビリー・レッツ イーサン・ブラック ダナ・レオン エーリヒ・ケストナー ウォルター・サタスウェイト スタンリー・エリン ポール・ドハティ トバイアス・ウルフ 

ブログ内検索

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

リンク

RSSフィード

最近のトラックバック

最近のコメント