『時の扉をあけて』ピート・ハウトマン 創元SF文庫

2015-12-31

Tag : SF

☆☆☆☆

ここはどこだ?冬はどこに行った?ある冬の夜、扉を開けた少年が見たものは、心地よい夏の夜だった―。いつも飲んだくれている父。気丈ではあるものの、父の暴力に何もできずにいる母。そんな両親の喧嘩に耳をふさぎ、逃げるように屋敷の閉ざされた三階へと上がった少年は、丁寧に隠されていた扉を見つける。その扉は信じがたいことに、五十年前の世界への入口だったのだ。たったひとつの願いを胸に、過去へと旅立った少年が得たものは、ささやかな青春のひとときと、哀しみに満ちた運命。感動のタイムトラベル・ファンタジー。 内容紹介より



五十年前の世界へ通じる扉。
人口四十人ほどのメモリーという小さな田舎町。昔、住んでいた家族が不可解な失踪を遂げた屋敷。また、そこは主人公の少年の祖母が姿を消した場所。その屋敷を遺した祖父が死に際に「殺してやる」と言いながら、なぜ少年の首を絞めたのか。少年の目には見えない老人の正体とは。老人が唱える「めぐるめぐるよ、因果はめぐる」という言葉が意味するものは。
物語の前半はタイムトラベルものに感じるわくわくする要素があるものの、後半になり上記の謎が解けていくにつれ重いテーマが浮かび上がり、さらに主人公は第二次世界大戦に巻き込まれていきます。救いがあるとはいえ、時に囚われて翻弄される主人公の運命には悲哀に満ちたものがあります。記述は主人公の手記の形をとったり、報告書の形式だったり、手紙だったりと趣向が変えられて読みやすかったです。タイムトラベルものの秀作でしょう。

さて今年最後の更新になります。当ブログを訪れてくださった皆様、大変ありがとうございました。
2016年という新しい扉が開きます。どうぞ良いお年をお迎えください。




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テーマ : SF
ジャンル : 本・雑誌

『解雇手当』ドゥエイン・スウィアジンスキー  ハヤカワ文庫HM

2015-12-26

Tag :

「これからきみたち全員を殺す」社長がそう宣言したとき、36階のオフィスは脱出不可能の牢獄と化していた。通信回線は不通、携帯電話は使えず、エレベーターも止められた。階段のドアには猛毒のサリンを噴出する装置が仕掛けられている。閉じ込められた男女は毒を飲んで自殺するか、射殺されるか、究極の選択を迫られる!脱出するのは誰か?それとも全滅か?読者の度肝を抜くハイパー版『そして誰もいなくなった』 内容紹介より



CIAをしのぐ極秘情報機関のフロント企業の社長が管理職会議の席上、会社が廃業するため、毒を飲んで自殺するかあるいは射殺されるかを選択するように七名の出席者に求める、というぶっ飛んだ事態から話は始まります。そして、あるアクシデントが起き、出席者の一人が同僚たちを狩りはじめるのですが、そのアクシデントもまえもって仕組まれていたもので、さらにオフィスの様子をいたるところに仕掛けられた監視カメラで見守る者がいる、という展開。
アメリカンコミック風味のスパイ、クライム、バイオレンスアクションでサイコスリラーも混ぜている印象ですけれど、全体的に設定のゆるさや詰めの甘さを感じてしまいました。特に巨大な情報機関の実態がつかみどころがなさすぎ、また、同僚を処分しようとする人物のそもそもの動機が感傷に寄りすぎている気がします。その他にも登場人物たちの造形がぱっとしない、描き分けが不十分などが気になりました。『そして誰もいなくなった』という言葉に釣られると期待を裏切られます。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クリスマス・プディングの冒険』アガサ・クリスティー ハヤカワ文庫HM

2015-12-23

☆☆☆

イギリス政府から持ちこまれた重大かつデリケートな依頼―ある外国の王子が由緒ある高価なルビーをだましとられた。もしそれが王子の手もとに戻らなければ政治上の悲劇を招くので、ポアロの力で取り戻して欲しいというのだ。しかし、そのポアロを待ちうけていたものは、新雪を真っ赤に染めた死体と、意外な結末……名探偵の鮮やかな推理と見事な策略を描く上記表題作をはじめ、ポアロ物5篇、マープル物1篇を収録 内容紹介より



クリスティー短篇集13。あいかわらず「甥」へのイメージは良くない、また、変装物が好みなのでしょうか。ポアロの女性秘書との会話がおかしかったり、天才的名探偵を証人として利用しようとする大胆不敵な計画があったり、行動心理学的な話題があったりする短篇集。

「クリスマス・プディングの冒険」
クリスマス真近、田舎の名士の屋敷でポアロを待ちうけていたのは、評判の良くない青年と交際する孫娘を心配する老夫妻、そして、子どもたちが企む悪戯だった。という具合に物語をルビーとそれを騙しとった女の行方を調査するのにあてるのではなくて、家庭問題を中心にして進めているところ、つまり読者の目を別の方に向け、さらにある悪戯を派手な演出に使っていきなりのクライマックスを迎える手品的手法が見事。

「スペイン櫃の秘密」
友人たちが集まって催された内輪のパーティーの翌日、会場となったアパートの一室に置いてあったスペイン櫃のなかから刺殺体が発見される。被害者は急用ができたからと、パーティーを直前になって欠席した友人たちのひとりだった。新聞で事件を知ったポアロが誰からも依頼されていないのに調査を始めるというもの。

「負け犬」
「塔の部屋」と呼ばれる書斎で屋敷の主が撲殺死体で発見され、犯行当夜、酒に酔って帰り、被害者と口論していた甥が逮捕される。甥の無実を主張する被害者の妻も同夜被害者と口論している、その彼女に犯人だと指摘される被害者の秘書、未亡人の話し相手として雇われている若い女性は何らかの秘密を抱えている、アフリカ帰りの被害者の弟は気性が荒く、アフリカで殺人を犯している。

「二十四羽の黒つぐみ」
あるレストランに十年近く前から毎週火曜日と木曜日の夜に訪れ食事をする老人。ところが彼が月曜日の夜に現れ、普段頼まない料理を食べたのだとウェイトレスから聞かされたポアロ。ポアロの友人は老人が何かの事情で取り乱していたからだと推測する。そして、その老人が一週間ほどレストランに姿を見せないと知ったポアロは……。

「夢」
毎晩、決まって同じ時刻にピストル自殺をする夢を見るという資産家の男。相談を受けたポアロは男の様子に違和感を抱く。一週間後、ポアロは依頼人がピストル自殺を遂げたとの連絡を受け、さらにその状況は依頼人が語った夢のとおりだったことを知る。

「グリーンショウ氏の阿房宮」
マープル物。地元の人たちから「グリーンショウ氏阿房宮」と呼ばれている奇館。そこの女主人が何者かに弓矢で射られて殺されてしまう。動機を持つのは、家政婦、庭番、被害者の甥、だが、三人共にアリバイがあった。

タグ:クリスマス・ストーリー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『サンタクロースは雪のなか』アラン・ブラッドリー 創元推理文庫

2015-12-20

☆☆☆☆

クリスマスの季節がやってきた!だけど、サンタなんていないと姉たちは言う。だからこの問題にけりをつけようと、今年はサンタ捕獲のとっておきの計画を立てている。でもうきうきしてばかりもいられない。一家の困窮を打開するため、バックショー荘を映画撮影に貸しだすことになったのだ。それに便乗して、司祭の願いで協会への寄付金も集めるべく、大女優フィリスに『ロミオとジュリエット』を屋敷で演じてもらうことに。けれど村人が集まった上演の夜、大雪で屋敷が孤立して……。CWAなど九冠受賞の少女探偵シリーズ、新展開の第四弾! 内容紹介より



二、三作目は未読です。姉たちに対抗して自家製鳥もちでサンタを捕まえようと画策したり、クリスマスの夜に自作のロケット花火を打上げようとしたりする、この化学、特に毒物の知識に精通している十一歳の少女はあいかわらず非常に魅力的でした。一方、ミステリの部分が弱いところも第一作目と同じ気がします。せっかくのクローズドサークルの設定も活かしきれていない、というか別に活かす気もないのかもしれませんけれど。事件は映画撮影のために屋敷に滞在していた大女優が自室で絞殺されているのを主人公が発見するというもの。もちろんこの女の子は死体に臆することもなく、体をあらためたり、持ち物を探ったりしてまわります。想像すると結構グロテスクだけれどブラックな笑いを感じさせる場面でもあります。子どもが登場し、奇跡が起きる、というクリスマス・ストーリーの条件を満たしている、ちょっとせつないけれど心温まる本書はこの季節にピッタリな作品だと思います。

『パイは小さな秘密を運ぶ』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クッキー交換会の隣人たち』リヴィア・J・ウォッシュバーン ランダムハウス講談社

2015-12-17

Tag :

☆☆☆

クリスマス目前。テーブルには色とりどりの美味しそうなクリスマス・クッキーが並び、フィリスの開いたクッキー交換会は大盛況。ところが、おすそわけを持っていった隣家で、絞殺された老女を発見し、楽しい夜は一変。なぜ無害な老女が狙われた!?フィリスはクッキーのおすそわけを口実に隣人たちの聞き込み捜査を開始。すると、良き隣人だと思っていた人々にも、暗い秘密や殺人の動機がみつかり……。シリーズ第3弾 内容紹介より



〈お料理名人の事件簿〉シリーズ3。
ころんだ拍子に腰の骨を折り、歩行器に頼っている一人暮らしの優しい老女に誰が殺意を抱くのか?という主人公の疑問に対して、遺産目当ての経済的に苦しい状況にある被害者の息子、あるいは奇癖を隠し持っていたり、殺人を犯した過去があったり、家庭内暴力の問題を抱えていたりする隣人たちの秘密が次々と浮かび上がってきます。さらに被害者自身の真の姿も家族の口から語られます。これらの秘密がクッキーを手土産代わりに持っていった主人公と隣人との会話で明らかになるのですけれど、あからさまに都合良すぎる展開にちょっと笑えました。しかし、飲食系コージー作品の割にはそれなりに動機を持った容疑者を取り揃えていますし、犯人の靴以外には伏線も張られて回収されていますから、本シリーズの中でもミステリ的には良く出来ていると思います。ただ、毎回感じますが、二人の女下宿人にはもう少し重要な役回りを与えないと、なかでもイヴ・ターナーはかなり存在感が希薄です。

『桃のデザートには隠し味』
『かぼちゃケーキを切る前に』
『焼きたてマフィンは甘くない』



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『危険なやつら』チャールズ・ウィルフォード 扶桑社ミステリー

2015-12-15

Tag :

☆☆☆☆

元警官のラリー、敏腕セールスマンのハンク、パイロットのエディー、貴金属ディーラーのドンの四人は親友だった。ある日彼らは、プレイボーイのハンクが、一時間半以内に女をひっかけられるかどうか賭けをする。だがそれが、思いもかけないトラブルの始まりだとは、彼らには知るよしもなかった!―平凡な四人の男が、ふとしたきっかけで犯罪に手を染め、殺人さえ犯していく過程を、乾いたタッチで描く。ブコウスキーやジム・トンプスンと並び称される伝説のカルト作家ウィルフォードの傑作犯罪小説!〈解説・滝本誠〉 内容紹介より



以下、ややネタバレしています。ご注意ください!

独身者専用アパートに住む親友の四人組。彼らのひとりがもっともナンパしにくい場所ドライブインシアターで女を短時間でひっかけられるか、という賭けを持ちかける。そして、ナンパしてきた少女が薬物の過剰摂取の疑いで急死してしまい、事情を説明しようと拉致してきた少女の知り合いの男は麻薬の密売人だった。四人は男が隠し持っていた大金を奪うが、その後、重大なアクシデントが起きて……。クライム小説だとこれから麻薬密売組織からの追跡が始まり、悪徳警官が絡んできたり、やがて仲間内での不仲や裏切りが始まる、っていう展開になると予想するのですけれど、話はまったく意表を突く方向に流れていきます。各章ごとにある人物は一人称で語り、また、ある人物は三人称で描かれて、これがどういう意図なのかは理解できませんでしたが、緊迫感や先行きの見えない不安感を煽っているような気がしました。解説によると本書は作者自身が「傑作」と称したそうで、わたしも彼の作品の中では一番だと思います。誰の前にも犯罪という扉があり、意図せずそれを開けてしまった男たちの人生の一部分を切り取り、人の死に対しても感覚が麻痺していく様をオフビートに描いた、いかにもアメリカ的ながらも異色のパルプ・ノワールでした。

チャールズ・ウィルフォード




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『原潜バラクーダ奇襲』パトリック・ロビンソン 二見文庫

2015-12-12

Tag :

☆☆☆

幼い頃にイランから英国に渡ったレイ・カーマンは、いまでは将来を嘱望されるSASの指揮官となっていた。ところがイスラエルでの作戦任務中に虐殺されるパレスチナ人を見て体内に流れるイラン人の血に目覚め、ハマスに身を投じる。かくして伝説のテロリスト、ラビ・ラシュードが誕生する。イスラエルの刑務所に囚われていた政治犯達を解放し、テル・アビブの銀行を襲って巨額の金を奪うなど目覚ましい活躍を続けるラビは、ロシアから原潜を購入し、米国攻撃を企てる。今、原潜バラクーダが米国西海岸へと針路を取った。 内容紹介より



テロリスト(ハマスを一概にテロ組織と言うのはちょっと違うと思うけど)を主人公にして好意的に描いた作品は非常に珍しく、特に米国寄りの英国人作家が書いたとなると異例なのではないでしょうか。まあ、パレスチナ紛争の大本を作った英国人が自国の特殊部隊出身者を優秀な主人公に据えて、中露政府を狡賢く描き、米国本土を攻撃させる、といういいとこ取りをちゃっかりやっているようにも見えますけれど……。ストーリーに関してはスリリングな場面がほとんど無くて万事順調に進み過ぎているのが冒険小説としては味気ない気がしました。唯一、日本の漁船の底引き網に引っ掛かってしまう出来事が起きますが、これはとても高度な隠密性を誇る原潜がっていうユーモアなのでしょうか。それから超タカ派の大統領補佐官を登場させて、やたらカーターとクリントン元大統領二人を実名を上げて貶しているのですけれど、著者が英国人と知らなかったら絶対に全米ライフル協会に加入している米国人だと思っていたはず。ともかく軍事スリラーの力作ではあります。

『ニミッツ・クラス』角川文庫
『キロ・クラス』
角川文庫




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『アンティーク鑑定士は疑う』エミール・ジェンキンス RHブックスプラス

2015-12-08

Tag :

☆☆☆

数々の骨董品が眠る、豪邸ウィンダリー。主を亡くした後はひっそりと博物館として利用されていた。ところが最近になって強盗事件が起きたため、鑑定士スターリングは盗難品の査定に赴くことに。すると、不可解な点に気づいた。屋敷の貴重なコレクションのなかに、明らかな偽物がいくつも混ざっているのだ。とても同じ収集家が集めた品とは思えない。矛盾だらけのコレクションの鑑定を進めていくと、やがて屋敷の意外な過去と秘密が明らかになってきて……。 内容紹介より



第一作目の『アンティーク鑑定士は見やぶる』はかなり貶してしまいましたが、今回はなかなか良かったように感じました。作者は鑑定士が本職であり、ミステリ作家としての経歴は短いので推理小説としてはまだまだ弱いのですけれど、人間ドラマとしてみると微妙な味わいを持った作品に仕上がっていると思います。物語は、現在は博物館になっている南部の名家で盗難事件が起き、その被害額を調べるため保険会社からの依頼でヒロインが当地に赴くところから始まります。調査を開始すると彼女は屋敷内に展示されている骨董品に贋作が含まれていることに気づきます。なぜ裕福な名士の家に偽物が置かれているのか、そこから話はすでに亡くなっている屋敷の所有者夫妻の謎と秘密に繋がって進んでいき、南部人の気質、当時の女性の心構え、夫への愛情などが哀切をともなって浮き彫りになっていきます。不慣れな推理小説として体裁を整えるよりも、本書のように骨董品を通して過去の人物の心理を読み解くという趣向は面白いと思います。

『アンティーク鑑定士は見やぶる』ランダムハウス講談社



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『自分を消した男』デイヴィッド・ハンドラー 講談社文庫

2015-12-05

☆☆☆

《アンクル・チャビー・ショー》は、全米最大の人気番組だ。「俺はテレビで一番笑える男なんだぜ」主演のライルは、カリスマ的な人気を誇るコメディアン。だが、スタッフの誰もが憎む暴君だった。自叙伝執筆を引き受けた“”ホーギーはTV業界の陰謀渦巻く制作現場に乗り込む。そこでは不穏な空気が立ちこめてた……。 内容紹介より



シリーズ六作目。
「作者ハンドラーは事件とその解明というよりは、事件を引き起こしてしまう人間の業とそれに立ち会わざるを得ない人々(主人公のホーギーを含めて)を描いて、独自の世界を築き上げている」(p633)、と北沢あかね氏が訳者あとがきに書いているように、このシリーズにおいて作者が構築するもうひとりの主役である自叙伝の依頼者たちの人物像というのは非常に真に迫っているし、それを創り上げる緻密な作業には毎回感心させられます。ただ、今回のTV業界、コメディ番組、TVスターの取り合わせから想像する状況設定が予想の範囲を超えていないため、どこかで観たり読んだりしたことがあるような、かなりステレオタイプに見えてしまいました。一世を風靡するシチュエーションコメディ番組の主役である下品で横暴なスターと彼に公私に振り回される役者や製作スタッフたち、スキャンダルによってスターとしての地位も番組の存続も危うくなるコメディアン、それぞれの思惑や目論みが人間関係と共に入り混じった状況でトラブルが続発し、ついに殺人事件が起きる、という展開で犯人の見当は早めに付いてしまいます。

タグ:デイヴィッド・ハンドラー



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ローラーボール』ウィリアム・ハリスン ハヤカワ文庫NV

2015-12-01

Tag : 短編集

☆☆☆

究極の管理社会となった未来で、暴力を求めてやまない人間の本能的欲求を満たすために作り出されたスポーツ、ローラーボール。骨を軋ませぶつかり合う肉体、飛び散る血しぶき。血に飢えた観客のエスカレートする要求に、ルールは次々と改変されてゲームは過激さを増していった。その花型プレイヤーの悩める姿を描き、二度にわたって映画化された表題作他、斬新な想像力を駆使して描かれた作品12篇を収録する傑作短篇集。 内容紹介より



「ローラーボール」「戦士」「世捨て人」「青い穴の中へ」「暴食の至福」「ピンボール・マシン」「惹句王」「ある料理人の話」「よろこびの炎」「良き船 エラズムス」「床の下」「涅槃と神々の黄昏と砲丸投げ」「気象観測官―ある神学的独白」

主な感想、
「ローラーボール」
各国のコロシアムを転戦して行われる殺戮ゲームのスター選手。書物さえなくなった世界で、彼は精神が肉体に従属している今の現状に疑問を持ちはじめている。派手な戦闘シーンと空虚感が醸しだされる内省が対照的なバイオレンス作品。

「戦士」
傭兵として世界各地を渡り歩いた男の独白。良き妻と可愛い子どもに恵まれ、経済的にも裕福に暮らす彼が語るのは別荘地に集まった安寧を貪る人々に対する銃や爆弾を使う狂ったテロ計画。

「世捨て人」
殺人の罪で三十年間服役した後、父親が遺した雪深い無人の牧場に棲み着いた世捨て人。彼のことが気になって仕方がない日用雑貨店の自称世捨て人の店主。世捨て人の追想と店主の関心事を描いた作品。

「青い穴の中へ」
霊能者が多く住む小さな町。そのなかのひとりである“ぼく”は超常現象を起こして見せて金を貰っている。人生に孤独を感じる彼はしだいに消失術の時に降りていく〈青い穴〉に惹かれていく。

「暴食の至福」
無感動気味な“ぼく”がおばさんに感化され、椅子、ランプシェイド、絨毯、テレビ、ミニカー、鉄柵など、木や草以外のなにからなにまで食べ始める。奇想天外な話。

「ピンボール・マシン」
親戚を含めた大所帯を養う理髪店の主人。彼の困窮ぶりを見かねた馴染みの客が古いピンボール機を譲りたいと申し出る。かつてギャンブル三昧の生活をしていた理髪店主とその家族に起きた騒動を子供の目を通して描いた

キャッチフレーズやコピーライティングが持つ大仰さ、軽薄さ、胡散臭さを描いた「惹句王」。
「料理人」は、心のなかにある料理人ではない一面を打ち明け、話し合いたいと切望する主人公が若い人妻と交わす情事を描く文芸的な作品。




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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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