『ジュリエットと気まぐれ詩人』エレン・ポール ヴィレッジブックス

2016-03-31

Tag :

☆☆☆

スランプに悩む人気ロマンス作家ジュリエットの元へ、かねてより文通していた愛読者のエイダが訪ねてくることになった。ジュリエットはいい気晴らしとばかり歓待するが、現れたのは意外や意外、ど派手な格好をした気まぐれおばあさんだった!詩の朗読会に若い男性とのデートと精力的にニューヨークを楽しむエイダだったが、やがて価値のある古文書を持ったまま行方不明になってしまう。慌てたジュリエットは、かねてよりお気に入りのニューヨーク市警刑事マレーの助けを借りて、エイダの残した詩を手がかりに独自の捜査を始めるのだが……。ユーモラスでありながらエレガント、おしゃれなミステリー。 内容紹介より



本書の主人公同様に、著者もリージェンシー・ロマンス作家だそうで、ミステリ作品は『嘆きのパ・ド・ドゥ』(未読)に続くナイン・ミューズシリーズ二作目になるそうです。マレー刑事絡みで一作目の事件について触れる箇所もありますが、前作を読んでいなくても差し障りはないと思いました。登場人物では華やかな老詩人エイダが目立ちます。精力的で活動的、性的魅力をまき散らし、己の楽しみのためには他人の犠牲も厭わない奔放なタイプです。それに対してヒロインは内省的で頭でっかちな面があり、事件に関わって容疑者扱いされた友人たちに申し訳ない気持ちを抱いたりしています。彼女の心理描写の塩梅と語り口のリズムはかなり気に入りました。そういうところはロマンス作家出身の良い点だと感じましたが、ミステリの面ではまだまだ馴染んでいない印象を受けました。特に、ラストのクライマックスシーンをヒロイン以外の人物に当てているところは一考の余地がある気がします。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ヴァーンスの死闘』クレイ・ハーヴェイ 扶桑社ミステリー

2016-03-26

Tag :

☆☆☆

かつて軍の秘密任務についていた、〈おれ〉タイラー・ヴァーンスは、ノース・カロライナ州の田舎町で五歳の息子とともに平穏な生活を送っていた。しかしある日、おれは、銀行強盗の現場で、四人組の強盗団のうちふたりを撃ち殺してしまう。弟を殺された強盗団の首領は復讐を誓い、おれを狙ってきた。おれはみずから敵と直接対決することを決意した!愛する家族を護るため、ふたたび戦いに身を投じた男を描いて、ジャック・ヒギンズ、ロバート・B・パーカーに絶賛された俊英のバイオレンス・スリラーデビュー作! 内容紹介より



主人公は、著者と同じく銃器関係の本や記事を執筆しているという設定で、特殊部隊に所属していた過去がある、というからきっと銃器や格闘戦、サバイバル・テクニックなどのミリオタの細かい知識がひけらかされるのかと思っていたけれどそうでもありませんでした。こうした主人公の経歴と妻を亡くし田舎で子どもと二人暮らしという境遇、また昔の上官が登場するところから映画『コマンドー』をちょっと思わせますが、娯楽性やスピード感、アクション場面など比べるまでもありません。
こういう展開で500ページ弱の作品は間延びして長すぎるように感じましたし、クライマックスも盛り上がりに欠け、作者は悪党たちに何をさせたかったのか意図が不明でした。新境地を開くのでもなく、あっと言わせる趣向が凝らしてあるのでもない、ただ運が良くて強いだけの男の話ではこのジャンルでやっていけるのでしょうか。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ありふれた祈り』ウィリアム・ケント・クルーガー ハヤカワ・ミステリ

2016-03-22

Tag :

☆☆☆☆

あの夏のすべての死は、ひとりの子供の死ではじまった―。1961年、ミネソタ州の田舎町で穏やかな牧師の父と芸術家肌の母、音楽の才能がある姉、聡明な弟とともに暮らす13歳の少年フランク。だが、ごく平凡だった日々は、思いがけない悲劇によって一転する。家族それぞれが打ちのめされもがくうちに、フランクはそれまで知らずにいた秘密や後悔に満ちた大人の世界を垣間見るが……。少年の人生を変えた忘れがたいひと夏を描く、切なさと苦さに満ちた傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作! 内容紹介より



マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』からマキャモンの『少年時代』、キングの『スタンド・バイ・ミー』、ランズデールの『ダークライン』などなど、少年小説というか、田舎を舞台に少年を主人公にした小説を書かせるとアメリカの作家は伝統的にとても巧い作品を生み出すのですけれど、本書もその中に入るでしょう。ただ、この作品は、前半部分に見られるやや思わせぶりな記述、主人公が都合よく盗み聞きする場面の多さ、テーマの一つであるにしても“死”の数の多さ、といったものが少々気になりました。一方、鉄道事故で亡くなった男の子の葬儀での追悼の言葉や食前の祈りを行う「ありふれた祈り」などの感動的な場面、町での暮らしの様子、自然描写は印象に残るものがありました。特に、死者と「わたしたちをへだてているのは、ほんのひと息、最後の一呼吸にすぎない」(p389)。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『闇へ降りゆく』ディーン・クーンツ 扶桑社ミステリー

2016-03-14

Tag : 短編集 ホラー SF

☆☆☆

ベトナム戦争から生還し、アメリカで再起を果たしたジェスが手に入れた念願のマイホームには、地下室へ降りる階段があった。深く暗い闇へと続く、彼にしか見えない階段が……モダン心理ホラー「闇へ降りゆく」。遺伝子工学の誤算がもたらした、恐るべき鼠との対決を描くSFサスペンス「罠」。スリのビリーが遭った災難をグロテスクに描いた「ひったくり」。サスペンスからホラー、初期のSFまで、ジャンルの枠を超えたベストセラー作家クーンツの傑作集〈ストレンジ・ハイウェイズ〉からなな編をおさめた第2弾!〈解説・三橋暁〉 内容紹介より



〈ストレンジ・ハイウェイズ2〉。
〈ストレンジ・ハイウェイズ〉の日本での刊行順は、『奇妙な道』、本書、『嵐の夜』です。

「フン族のアッチラ女王」
田舎町に現れた異星人による地球侵略SFで、人間にとり付いて精神を操るこの異星人のタイプはちょっとだけハインラインの『人形つかい』に似ている気がします。しかし、異星人に対抗する手段は、愛の力です。清々しいまでにストレートなテーマなうえに、さらに幸運な結末が良いです。

「闇へ降りゆく」
ベトナム戦争中、捕虜収容所で拷問虐待された経験がある主人公。良き夫であり父親である彼は一生懸命働きようやく家を購入したけれど、キッチンの壁にあるはずのないドアを見つける。それを開けると漆黒の闇、地下へ降りる階段があった。誰の心にも潜む邪悪なもの、醜悪なもの、それに誘惑されてしまいそうになる危うさを描いた、不安な余韻が残る心理サスペンスホラー

「オリーの手」
手で触れることで他人の心を覗き、操ることのできる超能力者と自殺未遂の若い女性の話。彼はその能力を使って彼女を救い、共に生活を始めるが……。超能力を持つが故の孤独、超能力者の影の部分を描いた作品。

「ひったくり」
『ナイト・ソウルズ』に収録されているキングの短篇「ポプシー」は、人間ではない子供を拐った男の話でしたが、この作品は、老婆が持っていた大きなハンドバッグをひったくった男の話です。その中からはもちろんあれが。

「罠」
遺伝子工学によって高い知能を得た鼠が研究所から抜けだして、雪に閉ざされた農場の母子を襲う話。設定が古くなっている感じがしました。

「ブルーノ」
スピルバーグが反重力ブーツを発明し、ディズニーは武器製造業者であるパラレルワールドから、凶悪なエイリアンを追ってやって来た熊の刑事、それに協力する私立探偵の話。〈ホーカ・シリーズ〉とか、『さらば、愛しき鉤爪』などが頭に浮かんでくるSFハードボイルド。

「ぼくたち三人」
新しく出現した種族が現人類を滅ぼし、さらに別の種族を生み出す話。

ディーン・クーンツ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ピグマリオンの冷笑』ステファニー・ピントフ ハヤカワ文庫HM

2016-03-11

Tag :

☆☆☆

1906年ニューヨーク。ブロードウェイの劇場で美しいコーラスガールが殺された。死体はきらびやかに飾り立てられていた。猟奇的な連続殺人事件が起きているのだと気づいた刑事ジールは、以前ともに捜査を行なった風変わりな犯罪学者シンクレアに再び協力を求める。華やかな演劇界で若い女優たちを狙う、残虐非道な犯人ピグマリオンの正体とは?犯罪学黎明期の刑事&犯罪学者コンビの活躍を描く歴史ミステリ・シリーズ! 内容紹介より



シリーズ第一作目の『邪悪』の内容は当然まったく記憶にありませんが、今回感じたのは犯罪学者であるシンクレア教授のキャラクターがあやふやなイメージではっきりした形が見えないというところでした。年齢的には五十代だと思うのですけれど、それ相応に齢を重ねたものや深みが伝わってきませんし、優秀な犯罪学者にしては特に役に立つような学説なり知見を披露しているわけでもない。“犯罪学黎明期”を売りにしているにしては、ここら辺がシリーズの弱い点なのではないのかと思いました。また、今回も前作同様に社会風俗や庶民の暮らしぶりなどの時代ミステリ特有の読みどころが活かされていないのも残念な点です。
ミステリに関しては、真犯人に意外な協力者が存在したところは良かったのですが、犯人の正体が見当を付けやすかったのはいまひとつ。といったように色々残念なところがあるにも関わらず、個人的にこの時代を舞台にしたミステリは好みですし、何かのきっかけで化けそうな作家のような気がするので今後に期待したいです。

『邪悪』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『コールドマウンテン』チャールズ・フレイジャー 新潮文庫

2016-03-07

Tag :

☆☆☆☆

南北戦争の末期、負傷した南軍兵士インマンは、収容された病院から脱走―恋人エイダが待つ故郷へ向けて、500キロの徒歩の旅が始まった。多くの危険と困難に遭遇し、誘惑や裏切りの試練にさらされながら、彼が遭遇する様々な出来事、そして人々。時には翻弄され、またある時は救われるインマンの過酷な運命……。壮大なアメリカの原風景を丹念に描いた叙事詩、至高のラブストーリー。 上巻内容紹介より



戦場で地獄を見た兵士の帰還の苛烈な旅をロードノベルとして描いた冒険小説、そして、芸術や文学の知識のみの箱入り娘である神父の娘が心身ともにたくましく育つ成長小説、この二つの物語を大自然を背景に交互に紡ぎ出した作品だと思います。読み始めはやや感傷的な口当たりのよいロマンス小説に感じましたけれど、作者の低く語りかけているような筆致(訳文)と描写される様々に移り変わる自然、その下でうちのめされそうな人々、戦争で壊された家庭、功徳を施す者、あるいは人生を諭す者、それぞれのエピソードから、まさしくオデッセイとして描かれているのだという印象を受けました。過酷であり、時に豊穣である自然にたいする敬畏が通奏低音として表されています。一方、ペネロペにあたるエイダは農場にとどまり、親友の助けを借りてその切り盛りを始めます。それにまつわる出来事ややり取りも楽しく面白く、インマンの辛く困難な旅と比較して静と動の良いアクセントになっている気がしました。たくさんの時間と思索をかけたであろう、デビュー作とは思えないような秀作です。




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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『雪の死神』ブリジット・オベール ハヤカワ文庫HM

2016-03-03

Tag :

☆☆☆

目も見えず口もきけない、全身麻痺のエリーズは、二年前に解決した殺人事件が小説化され、一躍有名になった。雪山を訪れた彼女に偏執的なファンから立て続けに不気味なプレゼントが届く。警察に届けたところ、麓の町で発生した惨殺事件と繋がりがあるという。彼女のファンがその殺人鬼で、彼女も狙われているのか?史上もっとも非力なヒロインが苛酷な運命に頭脳で抗う。読書界を驚嘆させた傑作本格『森の死神』の続編 内容紹介より



『ジャクソンヴィルの闇』(未読ですが)からの『闇が噛む』『死の仕立屋』からの『神のはらわた』、そして『森の死神』からの本書を読んでみて、ホラーにせよシリアルキラーやサイコパスものにせよ、作者は本道の正編にたいしてその続編はかなり突飛な設定なりプロットなりをとる傾向があるように思いました。ものすごくぶっ飛んでた『闇が噛む』、なかなかぶっ飛んでた『神のはらわた』からすると本書はかなり大人しめではありますが、それでも正統派風シリアルキラー・ミステリの流れで来ておいてからの唐突にバイオレンス・アクション気味になる終盤の転換にはあっけにとられました。ヒロインが魅力的なだけに前作を踏襲する形でも十分な作品になったでしょうが、作者はイメージの固定を嫌うのか変化を好むのか、一筋縄ではいかない発想が豊かなひとだなあと感じました。それ故に読者の好き嫌いも分かれるような気もします。

ブリジット・オベール




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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