『硝子の暗殺者』ジョー・ゴアズ 扶桑社ミステリー
2016-09-29
元CIAの暗殺者ソーンは、妻と娘を亡くして以来アフリカに移住していたが、突然、密猟容疑で逮捕される。だがこれは彼を秘密任務につけるためのFBIの罠であった。その任務とは新大統領の暗殺阻止。実は暗殺犯のコーウィンはソーンと経歴が瓜ふたつ。そこで、犯人と同等の力量を持つソーンにコーウィンを追跡させようというのだ。彼の過去に関する驚きの説明を受けたソーンは、すぐにコーウィンの調査を始めた……。スリリングな展開と意外な結末。ハードボイルドの巨匠が描く長編傑作ミステリー。 内容紹介より
ひとりはベトナムで、もうひとりは南米で狙撃手としての経歴を持ち、共に妻と娘を失っているという背景を持ちます。しかし、コーウィンの娘の死に関しての状況には謎があることがソーンの調査によって判明し、しかも、その事件についてのFBIの捜査にも不審な点を見出します。過去に秘密を抱える新大統領、倒錯した性癖の首席補佐官、出世指向のFBI特別捜査官、これらに対して元狙撃手のヒーロー型の二人を配置する構図が判りやすいです。読み始めてしばらくするとおおよその構図と展開がつかめて先も読め、それとともに物語の進展にじれったくなることもありますが、それでも冒険小説として面白く読むことができました。絶妙のタイミングでマンハントする側からされる側に立場が転換することで目先が代わり、ソーンの調査でもつれた糸が次第にほぐれていく過程も面白いです。ミステリとしてはかなり珍しく大それたことを登場人物にあっさりやらせてしまうクライマックスも思い切りが良い。
ユーザータグ:ジョー・ゴアズ
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『キングとジョーカー』ピーター・ディキンスン 扶桑社ミステリー
2016-09-26
- Category : ☆☆☆
Tag :
現実とは異なる家計をたどった英国王室。王女ルイーズは、いつもと同じ朝食の席で、父王の秘密に突然気づいてしまう。しかしその朝、とんでもない騒動が持ちあがった。食事の皿に、がま蛙が隠されていたのだ!こうして、謎のいたずら者=ジョーカーの暗躍がはじまった。罪のないいたずらは、ついに殺人に発展。王女は、ジョーカーの謎ばかりか、王室の重大な秘密に直面する……。CWAゴールド・ダガー賞2年連続受賞の鬼才が奇抜な設置と巧緻な謎解きを融合させた傑作、復活!〈解説・山口雅也〉 内容紹介より
もうじき十四歳になろうとする王女ルイーズの視点から主に描かれた物語で、子どもから少女へ、思春期を迎えた彼女が両親の関係、王室のなかの自分、などに思いを巡らし、その過程で今まで見えなかったり、気づかなかったりしていたものが、形を現わして彼女を悩ませたり、心配させたり、悲しませたりします。さらに宮廷内に現れた“いたずら者(ジョーカー)”という謎の人物が、人々を混乱に陥れる、というもの。
いわゆる歴史改変ミステリの一種で、エリザベス二世ではなく、ビクター二世が君主の宮殿内で、単なるいたずらと思われた出来事から殺人事件が次々に起きるなかで、自らの出自に苦しんだり、王室として期待される振る舞いをしなくてはならない、いわゆる「内と外」の問題に悩んだりする主人公の姿を王室家族の証言者ともいえる年老いた乳母の回想を挿んで軽妙に描いていきます。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『ER襲撃』グレッグ・ハーウィッツ ヴィレッジブックス
2016-09-23
- Category : ☆☆☆☆
Tag :
いつものように混雑するUCLAの緊急救命室(ER)に、アルカリ液を浴びたひとりの女性が転がりこんできた。悲惨なものを見つけているERの医師でさえ言葉を失うほどひどい化学熱傷を負ったその女性は、ERのナースだった!どうやらERスタッフを狙った無差別攻撃の標的になったらしい。誰が、なぜ、ERを狙うのか?病院になんらかの関わりを持つ者の犯行だと確信したER室長デイヴィッドは、病院内に精通する立場と、豊富な医学知識を駆使して犯人を捕らえようとするが、思いもよらぬ方法でさらなる攻撃が……。医療現場を舞台にした、迫真のメディカル・サスペンス。 内容紹介より
本書のなかのERの雰囲気は、TVドラマシリーズの『ER緊急救命室』とまったく同じ慌ただしさや混乱さを漂わせていますし、主人公の造形もドラマの登場人物をかなり意識しているように感じました。
印象に強く残ったのは、襲撃犯である男性の人物像です。残忍で凄惨な犯行を犯していながら、そういう行動に至らせた、彼の境遇の悲惨さと哀れさには同情する気持ちになります。ERのスタッフたちの中で反感を買い、孤立し、また、主人公が独自に調査を進めるうちに彼の母親が事件のきっかけとなったある研究に関わっていたのではないか、という疑念も持ちあがり動揺しつつも、医師として犯人を救おうとする信念を貫こうとします。
警察の捜査が後手に回ってばかりであり、また言葉は悪いですが、主人公が必要以上に出しゃばる、図らずもスタンドプレー的な行動をとっているような感じがしました。さらに、主人公の信念とは異なった犯人への対処の仕方をとる結末には違和感を覚えましたし、感傷におちるよりなんらかの救いを持たせるべきではなかったのか、という不満も残りました。
『犯罪小説家』
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『背後の足音』ヘニング・マンケル 創元推理文庫
2016-09-20
夏至前夜、三人の若者が自然保護地区の公園でパーティーを開いていた。18世紀の服装、音楽、美味しい料理、ワイン。物陰から彼らをうかがう目があるとも知らずに……。イースタ警察署に一人の若者の母親から、娘を捜してくれという訴えがあった。夏至前夜に友人と出かけて以来、行方がわからないというのだ。旅先からの絵はがきは偽物らしい。捜査会議を招集したが、刑事のひとりが無断で欠席した。几帳面な人物が、なぜ?不審に思ってアパートを訪ねたヴァランダーの目の前に、信じられない光景が。CWAゴールドダガー賞受賞シリーズ、第六弾。 上巻内容紹介より
幸せそうな人間を嫌う、という殺人者の理不尽な動機と彼のぼんやりとした捕らえどころのない不気味な人物像は、現代のスウェーデンに巣食う社会問題とそれが引き起こす社会不安とをシンボライズを意図して出来上がったものなのだと思います。そして、それがスウェーデン社会だけの特有のものではなく、どこの国も内包しているから、心に迫るものを感じるのでしょう。物語としては、そういう人物であるにもかかわらず、どういった経緯で主人公の同僚刑事と犯人との繋がりができたのか、という部分の説明に欠けていて不自然さを感じました。
407ページから408ページにかけてのくだりは、かつて警察を辞めたがっていた主人公が、これからますますひどくなる世の中の流れに抵抗するために、警察官を続けていこうとする覚悟を表したものであり、また、主人公を通しての著者自身が悪い流れに立ちはだかろうとする決意表明でもあるように感じました。
ユーザータグ:ヘニング・マンケル
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『湖は餓えて煙る』ブライアン・グルーリー ハヤカワ・ミステリ
2016-09-17
- Category : ☆☆☆☆
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ある冬の夜、湖に打ちあげられたスノーモビル。それは十年前別の湖で事故死した伝説的アイスホッケー・コーチが乗っていたはずのものだった。彼を失い衰退した町にかつての英雄の死への疑念が膨らむ。取材にあたるコーチの元教え子、地方紙記者のガスは、誰にも望まれぬまま町の歴史と最愛のチームの暗部に切り込んでいくことになるが—。アイスホッケー選手としても第一線の記者としても挫折したガスが、過去との対峙の末に見出すものとは?迫真の筆致と不屈のジャーナリスト魂が深く胸を打つ感動のミステリ。 内容紹介より
アイスホッケーの選手としての挫折から逃れるため、そして新聞記者としての成功を求めて、愛する女性も故郷の町に残し、都会へ出た主人公ははからずも町に舞い戻り地元の新聞社に勤めている。町では元チームメイトの二人が町の再開発を巡って対立しているなか、事故死した、彼らの元アイスホッケー・コーチに起きた出来事が再び町の話題にのぼるが、取材する主人公は妙に重苦しさを感じとる。
アイスホッケー・コーチのなにか訝しい素性と彼が抱える秘密は、読者には主人公よりも早々と見当が付くために、読んでいるとその辺りの進み具合がもどかしい感じを受けました。これは銃弾の謎についてもしかり。ミステリについては弱く物足りない印象で、読みどころは、大人になることを拒否した主人公を含むチームメイトの社会人になってからの行状と、主人公がゴールキーパーとして昔にやらかしたミスを克服し、事件の真相を暴き、記者としての信念を貫いて、ようやく精神的な成長を遂げる様子を描いているところでしょうか。少年時代を懐古した青春小説としてみるとなかなかのできばえのような気がします。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『ホテル探偵ストライカー』コーネル・ウールリッチ 集英社文庫
2016-09-14
ニューヨークの聖アンセルム・ホテルの913号室で、一人の男が飛び降り自殺した。翌年には婚約パーティで浮かれて帰ってきた男が、翌々年にはセールスマンが飛び降りた。たび重なる不可解な自殺にホテル探偵ストライカーは調査を始めた(「九一三号室の謎 自殺室」)。ウィリアム・アイリッシュの名で名作『幻の女』を描いたウールリッチのサスペンス・ミステリーの傑作集。 内容紹介より
〈世界の名探偵コレクション10〉シリーズの第9弾。
「九一三号室の謎 自殺室」「九一三号室の謎 殺人室」「裏窓」「ガラスの目玉」「シンデレラとギャング」
「九一三号室の謎 自殺室」と「九一三号室の謎 殺人室」は、物語を二つに分けてタイトルを付けただけです。部屋に遺書らしきものを残して転落死する宿泊客。ホテルの客室は決まって九一三号室。警察は自殺だと判断するが、ホテル探偵ストライカーは不審に思って独自に捜査する。彼は、九一三号室に隣接、またはその真下の部屋の長期滞在者の三組を怪しむのだが、確たる証拠も見出せないまま、またしても犠牲者が……。
囮を使っての捜査も実らず、ついに彼は自分自身が宿泊客を装って問題の部屋に泊まり込むことに。
「裏窓」
ヒッチコックの『裏窓』の原作として有名ですけれど、映画の内容は原作とかなり違っているようです。映画を観たことがないので判りませんけど。思っていたより淡々と進行し、主人公のキャラクターも地味でした。
「ガラスの目玉」
降格されそうな警察官の父親のために大きな事件を解決して、それを父親の手柄にしようとする男の子。わらしべ長者みたいな物々交換ゲームでガラスの義眼を手に入れた男の子は、義眼の持ち主がなぜそれを手放したのか、不思議に思って交換した友だちに尋ねると、彼はクリーニング屋の子どもからそれを貰ったという。さらにクリーニング屋の子どもはお客から預かったスラックスの折り返しに入っていたのを見つけたのだと話す。
「シンデレラとギャング」
風邪を引いたため一人で留守番をしていた少女のもとに、ある間違い電話がかかり、彼女を他の誰かと勘違いしている相手に話を合わせているうちに、暇を持て余していた彼女は興味本位で電話の相手に会ってみることにする。ところが相手はギャングであり、なにか凶悪なことを企んでいるらしい。ギャングが使う俗語を微妙に取り違えて判った気でいる少女の様子が面白い。犠牲者への感情移入は少々強引なような気がしました。
『暁の死線』
『黒いカーテン
『夜は千の目を持つ』
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『特捜部Qー知りすぎたマルコー』ユッシ・エーズラ・オールスン ハヤカワ・ミステリ
2016-09-11
- Category : ☆☆☆☆
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「特捜部Q」—未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の一部署である。「Q」が今回挑むのは、外務官僚の失踪事件だ。真面目で心優しいこの官僚は、出張先のアフリカからなぜか予定を早めて帰国後、ぷっつりと消息を絶った。背後には大掛かりな公金横領が絡むようなのだが……。事件のカギを握るのは、叔父が率いる犯罪組織から逃げ出したばかりの十五歳の少年マルコ。この賢い少年と「Q」の責任者カール・マーク警部補がすれ違い続ける間に、組織の残忍な手がマルコに迫るのだった!人気シリーズ第五弾 内容紹介より
新しい上司との関係、押しつけられた新人の部下、同居する寝たきりの元同僚、二人の女性の間で揺れる心などなど、公私に渡って悲喜こもごもな出来事や問題が持ち上がるなかで、失踪した外務官僚の行方を追う主人公、やがて浮かび上がってきたODA絡みの横領事件。一方、偶然に失踪事件の真相を知ったため、犯罪組織から追われて命を狙われる少年マルコ。特捜部Qチームの捜査とマルコの逃亡劇という冒険談の二つが展開して飽きることがありません。特にマルコの逃亡劇は、彼が不法入国者であり窃盗組織の一員だったことで警察の保護を受けることができず、頼れる人物もいない状況であるためにスリリングかつサスペンスに満ちています。
ユッシ・エーズラ・オールスン
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『野蛮なやつら』ドン・ウィンズロウ 角川文庫
2016-09-08
舞台はカリフォルニアのラグーナ・ビーチ。2人の若者ベンとチョンは、幼なじみのオフィーリアとの友好的な三角関係を愉しみつつ、極上のマリファナの栽培と売買で成功を収めていた。だがメキシコのバハ麻薬カルテルが彼らのビジネスに触手を伸ばす。傘下入りを断った2人に対し、組織はオフィーリアを拉致、彼女を取り戻すために、二人は危険な賭けに出るが—。鬼才ウィンズロウの超絶技巧が冴え渡る犯罪小説の最進化系! 内容紹介より
東江一紀氏のあとがきにあるように、文体は詩でありシナリオです。ミニマリズムとは違う、色々なものを取り去り、放り出しながらも言葉遊びを楽しみ、横道に逸れる、洒脱さ軽快さがあり、マリファナの煙の中にビートニクを思わせるようなアップビート感があります。相手の好みに合わせて調合するマリファナの売買で大金を稼いで気ままな暮らしを送る2人の若者、そして彼らのガールフレンド。彼らの稼ぎに目をつけたメキシコ・マフィアがガールフレンドを拉致して、組織の傘下に入るか、法外な身の代金を払うか、を要求してくるという展開です。窮地に陥った2人は組織に対して一計を案じるが……。
若者の1人であるチョンの造形が、よく目にするランボー系の亜種であって代り映えがしなかったこと、そして、ラストの処理の仕方に捻りがなく、あまりにもあっけなく安易に流れ過ぎたこと、が不満な点として残りました。ともかく、本書に対する評価は様々なようですが、個人的にはかなり楽しめた作品でした。
ユーザータグ:ドン・ウィンズロウ
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『事件現場は花ざかり』ローズマリー・ハリス ハヤカワ文庫
2016-09-05
- Category : ☆☆☆
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都会での仕事を辞め、田舎町で園芸家として開業したばかりのポーラ。大手造園会社に負けまいと地道な営業にいそしんでいたところ、とっておきのチャンスが訪れる。地元の名家の庭園修復作業を任されることになったのだ。意気込んで現場の下見に出かけたポーラだが、なんと、地中に埋まっていた赤ん坊のミイラを発見してしまう。いったい誰がこんなことを?赤ん坊の親はどこに?調べはじめたポーラだが、身辺で次々に不可解な出来事がおきはじめて……。アガサ賞、アントニー賞にノミネートされた陽気なガーデニング・ミステリ! 内容紹介より
イソラ文庫シリーズの一冊です。
テレビ番組制作会社で働いていたヒロインが心機一転して田舎町で造園業を始めた、というちょっと目新しめの設定をしたコージー・ミステリです。スノッブだけど気の良い、ヒロインの親友のテレビ番組制作者、気っぷのいい地元のダイナーの女主人、ヒロインとロマンティックな関係になりそうなメキシコ人、といった登場人物は個性なり存在感をそれなりに出しているにしても、ヒロイン自体が中庸でぼんやりした印象のキャラクターとあってはあまたのコージー作品の中に埋没してしまいます。やはりアガサ・レーズンくらいに強烈な存在感を発揮して欲しかったです。ヒロインに犯人が襲いかかるというおさだまりのクライマックスもしかり。内容的にほかと違ったのは、アメリカ人の間に根強く残るメキシコ人労働者への偏見、差別、無関心な態度を取り上げているところだと思います。それをストーリーに絡ませているのですけれど、もう少し掘り下げて扱っても良かったように感じました。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
『懐かしい殺人』ロバート・L・フィッシュ ハヤカワ文庫HM
2016-09-02
- Category : ☆☆☆☆
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英国ミステリ作家クラブの創立者である三人の老作家の経済状態は、まさに逼迫していた。原稿の依頼もなく、ただ世に容れられぬ身の不遇を嘆くだけ……そこで協議の結果考え出されたのが殺人請負業《殺人同盟》の結成だった。彼らの本領である伝統的な殺しのテクニックを駆使し、商売はそれこそ順風満帆だった。しかし、遂に彼らは失敗を犯してしまった!困り果てた老紳士たちは、英国法曹界きっての弁護士パーシヴァル卿に相談を持ちかけたのだが……。多才な著者が、その名人芸を遺憾なく発揮した、ウィットとユーモアに溢れる傑作。 内容紹介より
殺人同盟[1]と付いていますのでシリーズ化しているようです。
アメリカ人作家なのに舞台をイギリスに持ってきたところが、この作品の要でしょう。泰然自若で上品なイメージの英国紳士が、経済状態を改善するために殺人請負業をはじめてしまう、というなんともブラックな可笑しさ。そして英国社会を風刺しながらも、かつて英国の植民地の一つに過ぎなかったアメリカとアメリカ人を小馬鹿にする、という自虐的なユーモアも絡めています。主人公が殺し屋稼業を営む作品はけっして珍しくはありませんが、たとえフィクションでも読んでいるとなにか心に引っかかるものを感じてしまう場合があって、どうも金のために人を殺める主人公に感情移入できないときがあります。例えば、殺し屋ケラー・シリーズはそういう感覚が作品に独特の雰囲気を与えているような気がしますが、本書の主人公たちには暗さとかタブーな感じとかが微塵もなく、とにかくからっとドライ、あるいは年齢と同じく枯れているような心地良さを感じました。終盤にリーガルミステリみたいになって目先が変わるのも面白いです。ユーモアミステリ好きのは必読の作品です。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌