『運命のボタン』リチャード・マシスン ハヤカワ文庫NV

2017-02-26

☆☆☆☆

訪ねてきた見知らぬ小男は、夫婦に奇妙な申し出をする。届けておいた装置のボタンを押せば、大金を無償でご提供します。そのかわり、世界のどこかで、あなたがたの知らない誰かが死ぬのです。押すも押さないも、それはご自由です……究極の選択を描く表題作をはじめ、短篇の名手ぶりを発揮する13篇を収録。スピルバーグ、キング,クーンツら世界中のクリエイターたちに影響を与え、彼らに崇拝される巨匠中の巨匠の傑作集 内容紹介より



収録作品、「運命のボタン」「針」「魔女戦線」「わらが匂う」「チャンネル・ゼロ」「戸口に立つ少女」「ショック・ウェーヴ」「帰還」「死の部屋のなかで」「小犬」「四角い墓場」「声なき叫び」「二万フィートの悪夢」。

ふしだらで傲慢なある女性を殺したいほど憎んでいる“わたし”はヴードゥーの呪い(これがマシスンの得意ネタらしい)を用いて目的を果たそうとする「針」、世俗とか常識を受け入れてしまうと純真な心にあったものを失ってしまうことの過酷さを伴う悲劇を描いた「声なき叫び」、純粋であるからこそ持つことのできる能力と、その心のななかに潜む残酷さを描いた「魔女戦線」、この二つの作品は大人たちの利己的な動機によって犠牲になる子供たちの姿も現わしていると思います。匂いと怪談を組み合わせた「わらが匂う」、「戸口に立つ少女」、追い払っても始末しても舞戻ってくる白い犬「小犬」、処分されることに気づいたパイプオルガンの最期の咆哮、ブラドベリ風な「ショック・ウェーヴ」、タイムトラベルとホラーの組み合わせ「帰還」、砂漠地帯の田舎町のはずれに建つ喫茶店を舞台にした蒸発失踪もの。短篇であるため紙数に制限があること、地元の保安官が被害者よりであることで、サスペンス性と登場人物たちとの駆け引きがもう一つに感じられる「死の部屋のなかで」、コナン・ドイルの短篇「大空の恐怖」と同様に空に棲む怪物が登場する非常に印象に残る作品、オムニバス映画『トワイライト・ゾーン』の「2万フィートの戦慄」の原作ですが、主人公が精神的な問題を抱えている設定が効いています。短篇集『リアル・スティール』に収録されている「リアル・スティール」と同じ作品です。編者の尾ノ上浩司氏によると「リアル・スティール」のほうは、「四角い墓場」に手を入れているそうです。取り調べを録音した形式で綴られたモンスター系の作品でジャンク・ホラーっぽい「チャンネル・ゼロ」。あり得ない状況設定の流れのなかで、オチが実に現実的なものが意外に感じた「運命のボタン」。

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ジャンル : 本・雑誌

『夜がはじまるとき』スティーヴン・キング 文春文庫

2017-02-23

☆☆☆☆

悲しみに暮れる彼女のもとに突如かかってきた電話の主は……愛する者への思いを静かに綴る「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」、ある医師を訪れた患者が語る鬼気迫る怪異譚「N」、猫を殺せと依頼された殺し屋を襲う恐怖の物語「魔性の猫」ほか全6篇を収録した最新短篇集。巨匠の贈る感涙,恐怖、昂奮を堪能ください。 内容紹介より



「N」「魔性の猫」「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」「聾唖者」「アヤーナ」「どんづまりの窮地」

本書は、『夕暮れをすぎて』に続く、短篇集『Just After Sunset』(2008年)の二分冊目。こちらにもサンセットノートという著者による作品説明文が付いています。

「N」のどかな田舎にできた異界に通じる裂け目。そこから出て来て世界を滅ぼそうとする怪物を防ぐためのストーンサークルを偶然管理するはめになった男。クライヴ・バーカーの「髑髏王」(『セルロイドの息子』収録)も岩で封印してましたけど、鬼とか悪魔とかの封印系のよくある話に強迫性障害を組み合わせたところがとてもユニークな作品。

「魔性の猫」新薬開発のために動物実験によって大量の猫を殺し、その成果で莫大な財産を築いた製薬会社のオーナーのもとを訪れた殺し屋は、自宅の飼猫を殺すよう依頼される。
妖猫と殺し屋の闘いをストレートに描いたもの。

「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」飛行機事故の犠牲者になったはずの夫からの電話。夫を想う妻の心情がしんみりくる話。

「聾唖者」ヒッチハイクで乗せた男が口と耳が不自由だと知ったセールスマンは、妻の不倫や浪費について愚痴をこぼし始め、さらに彼女が引き起こしたとんでもない大問題も明らかにする。車内と教会の告解室、このふたつの密室で行う告白の場面が面白い二重性を形作っているように思える。

「アヤーナ」末期癌で寝たきりになった老父のもとへ、ある日突然現われてキスをした盲目の少女。その出来事を機に状態が改善し、歩けるようになったのだが、その場に立ち会った息子にもある能力をもたらす。派手さは無いけれど心に残る作品です。

「どんづまりの窮地」土地の所有権について揉めている男が相手にある場所に閉じこめられてしまう。読むとしばらくの間、幻臭を感じる気がする話。

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ジャンル : 本・雑誌

『リアル・スティール』リチャード・マシスン ハヤカワ文庫NV

2017-02-20

☆☆☆☆

人間同士のボクシングが禁止された近未来、リングで闘うのは人間ではなく精巧なロボットたちになった。しかし変わらないものもある。華やかな勝利とは裏腹の負け犬は今でも存在する。旧式のロボットを抱え、落ちぶれて金もなく窮地に追いつめられた元ボクサーの男は、起死回生の手段に打って出る……名作「四角い墓場」(『運命のボタン』所収)を改題した表題作をはじめ、ホラーからユーモアまでを網羅した、巨匠の傑作集 内容紹介より



50年代から70年代に発表された作品を集めたものです。
「リアル・スティール」「白絹のドレス」「予約客のみ」「指文字」「世界を創った男」「秘密」「象徴」「おま★★」「心の山脈」「最後の仕上げ」

「リアル・スティール」小型ロボット同士を格闘させる競技会は日本でも催されているようですが、この作品は六十年前に時代を先取りしていた作品で、しかも、人間そっくりの人型ロボットが登場しています。ロボットの格闘シーンにリアルに迫力があります。

「白絹のドレス」有名なあの母親と息子の話ではなく、母親と少女のパターンをとったサイコスリラー。少女のこどもっぽい独白で構成されるストーリーがじわじわと恐い。

「予約客のみ」金銭欲、魔術、意外な舞台設定、この三要素を見事に絡めてまとめあげたショートショートのお手本のような作品に感じました。

「指文字」日常と異界の境界線、もしくはグレーゾーンに踏み入ってしまった異様な体験を描いたような作品。

「世界を創った男」フレドリック・ブラウンの短篇にもありそうな小話。自分が世界を創り出したのだ、と言う男が精神科医のもとを訪れ診察を受ける様子を台本形式で描いた作品。

「秘密」サスペンスを徐々に高め、なにやら悲劇的な様相も盛り上げ、若い男女のメロドラマぽいものも取り入れ、ピークに達したところでどすんと落とす作品ですが、注釈がなかったらわたしにはオチが理解できなかったでしょう。

「象徴」食べ物や嗜好品がタブー視され、不変であることが規範となっている統制社会に住む家族を描いた作品。科学的合理性にそわない物事は排除される社会に疑問を抱いた人々が隠れて受け継いでいるアンチパターンを象徴する品物とは……。

「おま★★」これまた食べ物が忌諱されている未来世界が舞台。タイムマシンに乗ってその世界に研究にやってきた科学者が食べ物を所持していたために引き起こしたドタバタ劇。

「心の山脈」中庸で良いのですけれど、もうちょっと捻ったラストが用意されているのかと思っていました。ブラッドベリの感傷、あるいはマキャモンの奇想が欲しいところ

「最後の仕上げ」ホラー要素を絡めているが、さすがにスタイルが古めかしい。

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ジャンル : 本・雑誌

『夕暮れをすぎて』スティーヴン・キング 文春文庫

2017-02-17

☆☆☆☆

愛娘を亡くした痛手を癒すべく島に移り住んだ女性を見舞った想像を絶する危機とは?平凡な女性の勇気と再生を圧倒的な緊迫感で描き出す「ジンジャーブレッド・ガール」、静かな鎮魂の祈りが胸を打つ「彼らが残したもの」など、切ない悲しみから不思議の物語まで、天才作家キングの多彩な手腕を大いに見せつける傑作短篇集。 内容紹介より



「ウィラ」「ジンジャーブレッド・ガール」「ハーヴィーの夢」「パーキングエリア」「エアロバイク」「彼らが残したもの」「卒業の午後」、サンセット・ノートという著者による作品説明文があります。

「ウィラ」乗っていた列車の脱線事故のため、片田舎の駅で代替列車の到着を待つ乗客たちの話。婚約者の姿が見えなくなった若者は数キロ離れた町の酒場へ捜しに出かけます。どういう伏線なのかは早々に見当が付いてしまうし、よくあるパターンを採っているのですが、カップルがそういう状態にあることに気が付いてからの展開が同様のアイデアを使った作品とは違う意外な進み方をしているのが印象的です。

「ジンジャーブレッド・ガール」赤ちゃんを亡くした女性が走ることに目覚めて夫との関係がぎくしゃくしたため、島にある父親の別荘で別居生活をすることになります。季節外れの閑散とした別荘地に、金持ちの男がいつも違った“姪っ子”を連れてやってくる、という話を聞いた彼女はちょっとした好奇心で噂の別荘を覗いて見るのですけれど……。子供を失った母親の心の内を描いたドラマからサイコがらみのバイオレンス・スリラーへの転換が鮮明ですが、その変化の具合にちょっとあっけにとられたような。

「ハーヴィーの夢」倦怠期でありながらも平穏な毎日に浸っている主婦が、いつものように始まったある朝に夫から聞かされた不吉な夢の話。それは彼女の家庭に起きた不幸な出来事の夢だったらしいが、詳しい内容を言い渋る夫に、ひとに夢の話をすれば、それが正夢になることはない、と彼女は促す。夢を題材にしたストレートな話でもうひと捻り欲しい気もしました。

「パーキングエリア」著者がパーキングエリアで実際に経験した出来事をもとに書いた作品だそうです。人気のない深夜のパーキングエリア。トイレに行こうとした男は、女性用トイレで連れの男から暴力を振るわれている女性の声を聞く。作家である男は自分がどう対処すれば良いのか、ということをながながと考え込み、葛藤する話。本題に入る前のプロローグというか導入部というか、そこが長い、まるでスタンダップコメディみたいな饒舌さが気になりました。

「エアロバイク」健康診断の結果でコレステロールの数値が標準値より高かった男は、健康を維持する身体機能を作業員にたとえる話を医者から聞かされる。運動不足を解消するためエアロバイクをこぎ始めた画家である彼は、エアロバイクに向き合う壁に田舎道の風景画を描き、ロードマップを買って空想の自転車旅に出る。コレステロールの数値も体調も良くなった彼だが、彼の体調を維持管理している架空の作業員たちにも変化が現れる。この短篇集のなかでは一番キングらしさが表れているように感じました。

「彼らが残したもの」9・11事件から題材をとった作品。保険調査員の主人公は、会社をずる休みした日にその事件が起き、彼のオフィスが入っていたビルが崩壊してしまう。その事件から一年になろうかという日に、買い物から帰った彼は自宅のテーブルの上に見覚えのある奇妙な形をしたサングラスが置かれているのに気が付く。さらに野球バット、ブーブークッション、貝殻などが現れるが、それらの品は事件で亡くなった同僚たちの馴染みの持ち物だった。この作品も饒舌さが気になるものの、サバイバー・ギルトとは違った、生き残った者が果たすべき、亡くなった人たちへの義務ないしは責任をテーマにしているように感じられる非常に切ないレクイエムともとれる物語。彼らの遺品がおかしな物だったりするのが、その身に起きた悲劇をよりあらわにしているように思います。

「卒業の午後」上流階級に属する恋人を持つ女子高生の視点から、彼の卒業とその後のパーティー、恋人とのこれからの関係、彼女の将来の夢、今日やるだろうこと、人生のハレの日と世界の破滅の日を淡々と描いた作品。

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テーマ : 海外ファンタジー
ジャンル : 本・雑誌

『73光年の妖怪』フレドリック・ブラウン 創元SF文庫

2017-02-09

Tag : SF

地球から73光年の彼方にある惑星からアメリカに飛来した知性体という奇怪な生物。これは自由自在に他の動物にのり移れるという不可思議な力を備えている妖怪だった。知性体の到来とともに、その地方には人間や家畜や野生動物が自殺するという異様な現象が起り始めた。この怪現象にいち早く注目したのは、たまたまその土地に来ていた天才的な物理学者だった。この姿なき怪物の正体を看破して人類を破滅から救おうとする教授の頭脳と、知力の塊ともいうべき知性体が演じる虚々実々の知恵くらべ! 内容紹介より



侵略ものSFでよく名前が挙げられる作品のひとつです。
母星で犯罪を犯したために追放され、ランダムに瞬間移動させられた場所が地球だったという異星人。姿形は亀の甲らに似ていて移動ができないかわりに、他の生き物の心を乗っ取って自由に操る能力を持っています。その能力を使うには距離的な制限があり、また、相手が眠っていなければならず、そして乗り移った生き物から元の身体に戻るには、その生き物つまり宿主が死んでしまう必要があるという設定です。異星人は人間をはじめ鼠や犬猫、鳥などの心を乗っ取り、目的を果たすとかれらを自死させますが、この設定が、ブラウンの持つ軽妙さに加えて作品にグロテクスな雰囲気を与えるとともに、地球人の主人公の注意を引いてしまうキーポイントとなり、クライマックスのスリリングな場面への伏線にもなっている、そういう巧みさを備えているように感じました。異星人と地球人の二人の主人公の視点から事件出来事が描かれて緊迫感がつのり、余計なもの(例えば、あえてラブロマンスに仕立てていない)を省いているところ、こういうポイントが発表されてから半世紀経つにもかかわらず、現在でも色あせずに第一級のSF娯楽小説として楽しませる所以なのかもしれません。しかも、著者はそれをわずか254ページで成し遂げているのですからたいしたものだと思います。

ユーザータグ:SF




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テーマ : SF
ジャンル : 本・雑誌

『ビースト』ピーター・ベンチリー 角川ホラー文庫

2017-02-06

Tag : ホラー

☆☆☆☆

それは、長いあいだ、誰にも知られることなく生存していた。深く喰らい海の中で、獲物を求めてただ漂っていた。それは、眠りというものを知らなかった。そして、自分がどれほどの力を持っているのか知らなかった。唯一の天敵をのぞいて、全ての生き物は獲物だった。それは、ひどい空腹を感じていた。自然環境の変化で、獲物が激減していたのだ。それは、深海からゆっくりと浮上した……。戦慄の長編、待望の文庫化。 内容紹介より



内容紹介文だけを読むと、シオドア・スタージョンの短篇「それ」が頭に浮かんできたのですけれど、中身は海洋パニックスリラー系の話でした。舞台となるのはバミューダ諸島、長期間に渡って外洋をヨットで旅する夫婦、ダイビングを趣味にしている、金持ちの親を持つ双子の兄妹、彼らに雇われた漁師、動物カメラマンと彼女が乗船した潜水艇のスタッフ、などの“それ”の獲物となる被害者が大勢登場して、それぞれにまつわるエピソードを添えて話を進めていくという、パニックスリラー物の常套の手法をとっています。そして、地元の賢人といえるような老漁師が当地に駐留している海軍中尉とともに“それ”と立ち向かう(立ち向かわなければならなくなる)、という展開です。そこに一つの主要なテーマとして、“それ”が深海から人間たちの前に現われざるを得なくなったそもそもの原因に、漁業による水産資源の枯渇や、それに伴う海洋生態系の破壊をあげています。日本の漁船による底引き網漁にも言及してあって、日本人としては耳の痛い話ですが……。主人公である漁師の造形はしっかりしていて存在感がありますが、環境破壊や汚染についてたびたび触れる以外には、全体的にはオーソドックスなパニックスリラーそのもので、それ以上でもそれ以下でもなく、特別に目新しい点が感じられなかったのは残念でした。

ユーザータグ:ホラー




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『みんな行ってしまう』マイケル・マーシャル・スミス 創元SF文庫

2017-02-03

Tag : 短編集 ホラー SF

☆☆☆

『スペアーズ』『ワン・オヴ・アス』で知られる鬼才作家M・M・スミスが贈る、哀感と郷愁に満ちたSFホラー傑作集。小品ながら忘れがたい味わいを残す表題作を巻頭に、奇跡の医療用ナノテクがもたらした人類の意外な終末「地獄はみずから大きくなった」、田舎町に暮らす不思議な絵描きを巻き込んだ事件を描く英国幻想文学大賞受賞作「猫を描いた男」、近未来の巨大ハイテク・テーマパーク兼養老院での奇怪な冒険劇「ワンダー・ワールドの驚異」まで12編を厳選して収録。 内容紹介より



「みんな行ってしまう」「地獄はみずから大きくなった」「あとで」「猫を描いた男」「バックアップ・ファイル」「死よりも苦く」「ダイエット地獄」「家主」「見知らぬ旧知」「闇の国」「いつも」「ワンダー・ワールドの驚異」

子供が成長して大人になっていく過程で少しずつ失っていったもの、消えていったもの、無くしたものを少年の形にして表した、ブラッドベリ風な感傷性をもった物悲しい作品「みんな行ってしまう」。ナノテクに医療科学を組み合わせた最先端医療用ソフトとハードウェアを開発しようとした三人組。その中のひとりが研究中に亡くなったため、研究目的はまったく違った方向へ向かってしまう。医学と心霊の取り合わせが、この作品においては木に竹を接いだみたいな心地悪さを感じさせる「地獄はみずから大きくなった」。交通事故で突然に愛妻を失った夫のとった行動は……。愛さえあれば奇跡が起き、愛ゆえに何ごとも成し遂げられる、ということでしょうか。これまでのホラー作品を一歩進めたような物語「あとで」。夫による家庭内暴力から妻や子供が逃れてくる場面が、三回繰り返されるところがワンパターン気味に感じられました。全体的に振り切れていない、詰めが甘い印象が残った「猫を描いた男」。幸せの頂点と感じられる瞬間をバックアップして、なにか不都合が生じたときにバックアップした時点へ戻ることができるサービスを受けていた男。妻子を事故で亡くした時、彼は過去に戻ろうとするが……、「あとで」の流れを汲んでいる話ですけれど、かなり苦い結末が待っている「バックアップ・ファイル」。「死よりも苦く」「家主」「見知らぬ旧知」「闇の国」、これらは心の影の部分をテーマにした作品ですが、それゆえに少々インパクトがなく、全体的に平板な感じがしました。「闇の国」は、実際に見た、ただ厭な夢を物語に仕立てただけのような。これまでのサイズのジーンズが履けなくなった男が、ダイエットも運動もくそくらえと思って、タイムマシンを作り昔の体形を取り戻そうとする、おバカSFの「ダイエット地獄」。母親を亡くした娘に父親がクリスマスプレゼントとにラッピングした贈り物。センチメンタルな「いつも」。テーマパーク内に設けられた老人向けの住居で犯行を重ねる殺し屋。依頼を受けた彼は、ターゲットの老女が暮らす屋敷に入り込むのだが。テーマパークが帯びる狂気、奇妙さを描いた「ワンダー・ワールドの驚異」。

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テーマ : ホラー小説
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