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『復讐のトレイル』C・J・ボックス 講談社文庫

2017-08-29

☆☆☆☆

その遺体には頭部がなく、狩られた獲物たちと同じような「処理」が施されていた。まるで狩猟が生き物を面白半分に殺す行為だと世界に訴えるように。ワイオミング州知事からの特命を受けた猟区管理官ジョー・ピケットは、ハンター連続殺人の背後に卑劣な人間たちの深い闇が潜んでいることをつきとめていく。内容紹介より



頭部が切断され、内蔵が抜かれた射殺体が発見され、ある遺留品から過去に事故死とされていた犠牲者たちも同じ犯人による犯行と判明する。反狩猟団体に共鳴する人物が犯人と推測されると、狩猟からもたらされる莫大な収入減を危惧した州知事が主人公に調査を依頼する。というわけで今回は狩猟と反狩猟という単純で判りやすいテーマが設定されています。また、ある場面において主人公の長女が明確な意思表明をして家族の絆を表しているところも感動を呼びますが、ストーリーの中ではやや一過性の流れです。それから、隠れテーマとして居留地に置ける先住民族の問題も描いてあります。それらの要素があるにもかかわらず、結局印象的であきれてしまったのは、主人公のやむを得ないとは言え衝動的に暴力をふるってしまう感情面でのコントロールのできなさ、そして粗忽とも思える行動でした。今回の主人公像は浅さが目立ってこれまでより魅力を感じませんでした。しかし、どつぼにはまった彼が次回作ではどうなっているのか、楽しみなところではあります。

ユーザータグ:C・J・ボックス




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『渚の忘れ物』コリン・コッタリル 集英社文庫

2017-08-25

Tag :

☆☆☆☆

失業中の犯罪報道記者ジム・ジェリー(♀)。母の経営するリゾートを仕方なく手伝う毎日だが、ある日、砂浜で生首を発見。村長に連絡するもその対応に疑問が残り、独自に生首の身元を探ろうとする。やがてジムは、タイに暮らすミャンマー人コミュニティに行き着き、事件はさらに暗い様相を示すのだが……。個性溢れるキャラクターにたっぷりのユーモア。CWA賞受賞作家が描く、社会派ユーモア・ミステリー登場! 内容紹介より



〈犯罪報道記者ジムの事件簿〉シリーズ第一弾。
CWA賞受賞作の〈シリ先生〉シリーズの舞台は約四十年前のラオスでしたが、本シリーズは現代のタイを舞台にしています。滋味深いユーモア人情ミステリーの〈シリ先生〉シリーズに比べると、ユーモア満載ではあるもののかなりはっちゃけた、しかし社会派のミステリーに変わっています。軍事政権下のミャンマーからタイに出稼ぎでやってきているミャンマー人たちの悲惨な境遇をメインに、ヒロインの母親が営むホテルに宿泊する母娘の謎もテーマのひとつです。記者魂にかられたヒロインが、浜辺に打ちあげられた生首の身元を追ううちに、偏見や差別の下で暮らすミャンマー人への権力が絡んだ犯罪行為の実態を知るという展開です。抗鬱剤の副作用で常に発情状態に陥ったヒロインの他に、何かズレてる心優しい母親、ハッキングが得意な性転換した姉(元兄)、マッチョながら気の優しい、母親と同じ年の婚約者がいる弟、優秀なゲイの警官、などを始めとしてシリーズ物には必須の愉快でかつ奇人変人の傍役たちが充実しています。かなり重いテーマを据えながらも、陰鬱にならない軽さ明るさがとても印象的な作品だと思います。翻訳が止まっている〈シリ先生〉シリーズも集英社文庫から出してもらえないでしょうか。

『老検死官シリ先生がゆく』ヴィレッジブックス
『三十三本の歯』ヴィレッジブックス




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『助手席のチェット』スペンサー・クイン 創元推理文庫

2017-08-20

Tag :

☆☆☆

リトル探偵事務所にある母親から持ち込まれた事件は高校生の娘の失踪だった。元刑事でバツイチの探偵バーニー・リトルは誘拐事件と判断、相棒の大型犬チェットと調査を開始したが、身の代金の要求はない。父親は単なる家出としてバーニーを懐古してしまう!警察犬訓練所を優秀な成績で卒業、はできなかったが、それでも優秀な相棒チェットは、おのれの臭覚を信じ、危険もかええりみず、バーニーをサポートする。チェットが犬の視点、犬の心ですべてを語り全世界の犬好きの心を鷲摑みにした史上最強の犬ミステリ『ぼくの名はチェット』改題文庫化。 内容紹介より



名犬チェットと探偵バーニー・シリーズ。
警察犬訓練所での卒業試験の最中に起きた猫にまつわる騒動が原因で警察犬になれなかった犬のチェットと離婚して息子の養育権も失った元警察官で私立探偵のバーニーのコンビの物語です。彼らが乗っているのは中古のポルシェのカブリオレ。物語の語り手はチェットなので犬らしく食べ物のこととか、臭いのこと、パートナーの人柄のこと、などなど考えがあれこれ移ろい、また、眠くなったら寝てしまうし、記憶力もさほど長続きする訳ではありません。こういう犬視点のいい加減というかゆるい感じが作品に良い雰囲気を与えています。そのゆるさに対して事件の部分に締まりがあればなお良かったのでしょうが、めりはりが乏しくちょっとぐだっている感じがしました。それから犬視点なので人物造形や心理描写の点でそれほど気をつかわなくてもすむのは良いのか悪いのか、個人的には物足りなさを覚えました。とりあえず犬が語り手という設定が肝であり、それ以上でもそれ以下でもない作品に思えます。あくまで猫派のわたしの意見でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ガラス瓶のなかの依頼人』シャロン・フィファー コージーブックス

2017-08-16

Tag :

☆☆☆

アンティーク雑貨の拾い屋ジェーンはついにお宝を引き当てた! とある老婦人の邸宅でひらかれたハウス・セールで、グラスやシェーカーなど、年代物の貴重な酒場グッズを手に入れたのだ。居酒屋の娘として育ったジェーンにとっては,どれも子どもの頃の思い出がよみがえる懐かしい品々。ところが、持ち帰った戦利品をほくほく顔できれいに洗っていると、そばにいた夫と息子の顔が凍りついた。その視線の先をたどると、なんと持ち帰ったガラス瓶のなかに、男性の親指が! わたしったら、またお宝でなく事件を掘り起こしちゃったの!? ジェーンは拾い屋のタブーを破って、売り主に事情を訊きにいくことに、すると出迎えてくれたのは、とても風変わりな老婦人で……!? 蒐集家の鋭い観察眼がきらりと光るシリーズ第2弾! 内容紹介より



シリーズタイトルは〈アンティーク雑貨探偵〉です。第一作目の『掘り出し物には理由がある』は未読。
とにかくアンティークというよりジャンクな品物についての話題が多くて、ミステリの部分がそれに埋まりそうになりかけているみたいな印象が残りました。しかもヒロインの興味はボタンとかベークライト、それに古い個人写真、私信といったものなので、アンティーク業界を舞台にしたミステリに付きものの家具や調度品についての、興味深いいわれやうんちくがほとんど語られないため魅力を感じませんでした。そもそも品物自体に百年以上の歴史がある「アンティーク」じゃなく、「ビンテージ」か「レトロ」という用語を使うべきではないのかと。ミステリ部分もなんだかよく判らないような,全体的に整理が付いていないような判然としない感じがします。大量のジャンク品がまき散らされなかで、ただ一点光るのがヒロインの誘拐された母親の活躍シーンで、こういうコミカルな部分を強調していく方向性のほうが良いのではないでしょうか。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『殺人者は夢を見るか』ジェド・ルーベンフェルド 講談社文庫

2017-08-09

Tag :

☆☆☆☆

1909年、摩天楼建築ブームにわくニューヨークにフロイトがユングとともに到着した夜、豪華アパートメント〈バルモラル〉で、若い娘が鞭打たれ、絞殺される。続いて襲われたノーラ・アクトンは記憶と声を失っていた。市長じきじきの依頼を受けたフロイトは、若き分析医ヤンガーとノーラの精神分析治療にあたる。内容紹介より



摩天楼がそびえ立つなか、道路には馬車と自動車が混じりあって行き交い、指紋が裁判では証拠として採用されないくらいまだ現代の科学捜査が一般的でない時代背景。そんなニューヨークへ、後に寝椅子に横たわって精神分析を受けるアメリカ人のイメージの発端とも言えるフロイトがユングらと共に訪れ、そのいわば接待役みたいなアメリカ人の分析医ヤンガーが主人公です。なのでフロイトが名探偵役として活躍する訳ではありません。しかし、NY市警のリトルモア刑事の飄々としたキャラクターがとても好感が持て、その存在感が安定し、捜査活動の軸になっている印象でした。主人公のシンガーもなかなか良いキャラなのですが、犯罪被害者の娘への恋愛感情を交えて描かれているためにそれほど突出したものがないように感じました。アメリカに置ける精神分析の黎明期と社会の転換期、猟奇的な犯行、大がかりな悪巧みを思わせながらの冒険小説風な展開に、さてこれからさらに面白くなるだろうと考えていたら、下巻の三分の二くらいで結局は男女の感情にスタンスをおいたからくりが明らかになって,別方向へ矮小化されたように感じて興味が冷めてしまいました。精神分析学が主題なだけに仕方ないのですけれど……。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『無意識の証人』ジャンリーコ・カロフィーリオ 文春文庫

2017-08-04

Tag :

☆☆☆☆

南イタリアの海辺の町で、九歳の男の子が殺され、出稼ぎのアフリカ人が逮捕される。圧倒的に不利な被告の弁護を引き受けたグイードは、妻に逃げられて憂鬱な毎日を送る三十八歳。正義を振りかざすような柄でもない……が、ジェフリー・ディーヴァーが「最良の法廷スリラー」と評した見事な論証で、物語は大逆転! 内容紹介より



何かの志や使命感を持って法律家を目指した訳ではなく、何がしたいのか見つかるまでの時間稼ぎで弁護士になった主人公は、まさしく中年になりかけたモラトリアム型人間です。彼の何となく生きてきた人生が妻との別居を契機に壊れそうになり、精神のバランスが崩れてしまいます。そんなどん底の状態で引き受けたのが殺人容疑で逮捕されたセネガル人の弁護です。物語は、リーガルミステリと主人公の再生過程の二つが割合を占め、こういうジャンルに付きもののどんでん返しによる急転直下の解決みたいな醍醐味は薄く、現実的な帰結ではあるもののディーヴァーの言葉にある「最良の法廷スリラー」とまでは感じませんでした。しかも、20ページに渡る最終弁論が意味もなく長過ぎでした。翻訳された文体を見ただけですが、アメリカ文化をかなり意識し,作品もアメリカナイズされているような印象を受けました。シリーズニ作目の『眼を閉じて』よりは出来が良いです。

『眼を閉じて』



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『騙す骨』アーロン・エルキンズ ハヤカワ文庫HM

2017-08-02

☆☆☆

妻ジュリーの親族に招かれメキシコの田舎を訪れたギデオン夫婦。だが平和なはずのその村で、不審な死体が二体も見つかっていた。銃創があるのに弾の出口も弾自体も見当たらないミイラ化死体と、小さな村なのに身元が全く不明の少女の白骨死体だ。村の警察署長の依頼で鑑定を試みたギデオンは次々と思わぬ事実を明らかにするが、それを喜ばぬ何者かが彼の命を狙い……一片の骨から迷宮入り寸前の謎を解くスケルトン探偵! 内容紹介より



古代の人骨やミイラ化した遺体に違和感のないメキシコという土地柄。しかし、のどかな田舎の村で不審な謎の死体が見つかるとなると話は別。骨に残った痕跡や特徴から死因や身元を判明させる手掛かりをいつものごとくギデオンが解き明かす展開へ。今回は、石臼でついた穀物を食べていた古代人とメタンフェタミン中毒者それぞれの歯の状態の話は大変面白かったです。主人公が命を狙われるけれども、サスペンス性はさほど効果的には盛り上がらなかったし、容疑者にあげられる人物も少なく、真相もたまに見かけるネタで予想がつきやすく意外性が感じられませんでした。歯の本数やある習い事はちょっと都合良くもって行き過ぎの気もしました。観光地としては地味で華やかさに欠けるし、メキシコを舞台にするならオカルトチックな話や出来事、影の部分を取り入れてミスリードしてみても良かったのでは。ギデオン夫婦の相変わらずの熱々ぶりに若干引き気味になりました。

ユーザータグ:アーロン・エルキンズ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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