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『死のオブジェ』キャロル・オコンネル 創元推理文庫

2017-10-28

Tag :

☆☆☆☆

画廊で殺されたアーティスト。胸の上には一枚のカードがタイトルのように「死」と告げていた。NY市警には、同じオーナーの画廊で12年前に起きた猟奇殺人事件との関連を示唆する手紙が届く。切り刻まれ、オブジェとして展示されたアーティストとダンサーの死体。捜査を担当したマーコヴィッツは、容疑者の自白を信じていなかった。マロリーの再捜査は関係者たちの秘密を容赦なく暴き、閉ざされた過去をこじ開ける。娘の死と同時に失踪した画家の行方は?膨大に遺されたマーコヴィッツのメモが指し示す真犯人は?伏魔殿のようなアート業界に踏み込んだマロリーに、市警を牛耳る何者かの捜査妨害が……シリーズ第3弾! 内容紹介より



スピンオフみたいに感じたシリーズ七作目の『陪審員に死を』に対して、正編らしい仕上がりの本書。『陪審員に死を』の雰囲気の中でその存在に違和感があったヒロインのマロリーのキャラクターが、本書ではぴったりとはまっていました。彼女のアンドロイドみたいな非常にクールでタフな面が作品のしっかりした軸になり、彼女を取り巻く同僚、友人知人たちが彼女に欠けている情緒面を担当している印象を受けました。その対照がヒロインを幼い少女のようにも感じさせるところもありますし、作品が殺伐としたものになっていない所以でもあります。また、警察という職場において、女性であることでの差別や偏見あるいは重圧といったことにまったく言及されない点は、他の作家による女性刑事ものとは一線を画しています。といっても、本書はどちらかといえば警察小説というより、一匹狼で単独行動が多い探偵みたいな行動をとっていてハードボイルドみたいですけど……。芸術が愛でるものから投機の対象のひとつになり、それが生みだす金に群がる芸術家、評論家、ギャラリーのオーナーの強欲、醜態を荒唐無稽になる一歩手前で描いた物語でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『石の微笑』ルース・レンデル 角川文庫

2017-10-23

☆☆☆☆

フィリップは暴力的で血なまぐさいことが嫌いな、ナイーヴな青年だった。彼が愛するのは美しいものだけ。わが家の庭に置かれた彫像・フローラと、姉の結婚式で花嫁付添人をしたゼンダ。白い肌、波打つ銀の髪を持つゼンダは、彼の目にはまるで愛するフローラそのものとして映った。一目で恋に落ちた二人は情熱的に愛し合うが、甘い日々は長くは続かなかった。ゼンダが二人の愛の証明として、驚愕すべき提案を持ち出したのだ。そして、フィリップは逃れようのない運命へと足を踏み入れていく……。衝撃の結末へと加速する、官能的で壮絶な愛の形。 内容紹介より



ゼンダに初めて逢った日に運命の人だと言われたフィリップは、彼女の美しさに魅了され、その日のうちに関係を持ってしまう。彼女の奇矯な言動に戸惑いながらも、彼女との関係に溺れてしまった彼は、二人の愛の証のために彼女が出した要求につい嘘をついてしまう。その嘘を信じたゼンダはフィリップへのお返しに、彼のためにある犯罪を犯したことを告白するのです。
ストーリーは、虚偽と真実、空想と現実がないまぜになったような展開で進み、その渦中にいるフィリップは翻弄され混乱した姿をさらします。表面的な美しさに魅入られ、その下にある本質を見誤った男が落ちていく闇は愛という狂気でした。社会人になったばかりの平凡な男であるフィリップがのめり込んだゼンダへの愛は、彼女のなかに秘めたものがそれに呼応し拍車をかけ、さらに狂気へと絡めとられていきます。異様な事態にフィリップの時々に浮き沈む感情の変化と同様に、読んでいるこちらも何が嘘でどれが本当なのか、混乱してしまい、気づいたら狂気が作り出した眼を背けたくなるような真実を突きつけられます。本来避けなければならない、住む世界が違った男女が偶然出会ったために起きてしまった悲劇と哀れなゼンダの姿が印象に残る作品です。

ユーザータグ:ルース・レンデル




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『愛の棘』クリス・ロジャース 講談社文庫

2017-10-19

Tag :

☆☆☆

保釈中に逃亡した容疑者を捕らえ当局に差し出すのが報奨金ハンターだ。凄腕の女性ハンター・ディキシーは逃亡犯ダンを連れ、猛吹雪の中をテキサスに向かっていた。少女轢き逃げの罪に問われた男の話を聞くうち、事件に不審を感じた彼女は、独自の調査を始めるが……。胸のすくようなロード・ノベル登場! 内容紹介より



1997年に発表された本書は、ジャネット・イヴァノヴィッチのステファニー・プラム・シリーズと同様にバウンティハンターをヒロインに設定しています。ただし、後者の第一作目が発表されたのは1994年です。作品の雰囲気は、毎回奇人変人が登場して騒ぎを起こすドタバタ劇のステファニー・プラム・シリーズにくらべるとおとなし目であり、どちらかといえばローラ・リップマンのテス・モナハン・シリーズに似ているかもしれません。ストーリーは、轢き逃げ事件を起こしたとされる保釈中の容疑者をヒロインが逃亡先で捕まえ、吹雪の中を約二千キロ離れたテキサス州ヒューストンまで護送する話が前半230ページほど、後半は、容疑者の話を聞くうちに事件の経緯に不審を抱いた彼女が彼を自宅に猛犬とともに軟禁して調査を始めると、轢き逃げ被害者の妹が事件後にキャンプ場の湖で溺死していたことを知るという展開です。前半部分だけが、あくまで薄いロード・ノベル風であって、そこら辺りを期待すると残念な気持ちになります。それからヒロインの子ども時代の背景からくるものでしょうけれど、元地方検事補の彼女が事件を児童虐待という視点にのみに偏った決めつけ方をすることに不自然さを感じました。そして、見方にもよりますが、やっぱりヒロインと容疑者のラブロマンスという設定は物語をぬるくする上に、さらに容疑者の男が人柄が良い好人物さらに仕事も優秀と来た日には……。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『呪われた少女』ディーン・R・クーンツ 扶桑社ミステリー

2017-10-15

Tag : ホラー

☆☆☆

精神科医キャロル・トレーシーが車でひとりの美しい少女をはねたのは、期待していた養子縁組が延期された直後のことだった。ショックで記憶喪失となった少女はキャロルに引きとられて、記憶を呼び戻すための催眠療法を受けることになった。ある日突然、少女はだれかの名前を呼んだ。同時に激しい苦痛に襲われながら、さらに別の二人の名前を呼び続けた。炎にまかれ、首を切断され、脇腹に斧を打ちこまれる。たて続けに起こる無惨な出来事。少女はいったい何者なのか?さらに家をゆるがすポルターガイスト。少女の周辺で起こるすべての出来事は、不吉で邪悪なものの存在を予感させた。全篇を恐怖の衝撃が走る! 内容紹介より



以下、ネタバレしています。ご注意下さい!

リインカネーションをテーマにしている物語です。ただし、その要素に憎悪も加味するやや珍しいアプローチをとっています。思春期の娘の母親への複雑な感情が、ある出来事によって憎しみへと変化し、娘が死んで生まれ変わった後も生前の憎悪を持ち続けてしまい、その感情を“悪”なるものがあおり立てて利用しようとするという話です。雷を落としたり、ポルターガイストを起こしたり、飼い猫をあやつったり、悪夢で悩ませたりというオーソドックスながら舞台効果はサスペンスを盛り上げてはいるのですけれど、裏で糸を引く肝心の“悪”を登場させないのは迫力に欠ける印象でした。
それからヒロイン夫婦と彼女の養母が見る悪夢が、当然といえば当然なのですが皆一緒で同じ話が繰り返されるところに芸が無い感じがしました。クライマックスも迫力や感動が乏しくてもうちょっと書き込んであれば良かったように思いました。全体的に、本来のクーンツが持つ良さがマイナスに働いてしまっている作品のような気がします。

ユーザータグ:ホラー




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『ほかほかパンプキンとあぶない読書会』ローラ・チャイルズ RHブックスプラス

2017-10-13

☆☆

秋も深まり、卵料理のおいしい店〈カックルベリー・クラブ〉では読書好きの男女を集め、お見合いパーティ兼読書会が開催された。好評のうちにお開きとなったが、参加者のひとり、町長候補であるチャック・ピーブラーが店を出たとたん、飛んできた矢が額に命中して即死してしまった。どうしてこんなことに?このままでは店にも影響が出る。スザンヌは真相究明に乗り出すが、また恐ろしい事件が起って……。素朴な家庭料理レシピつき、シリーズ第3弾! 内容紹介より



〈卵料理のカフェ〉シリーズ。
ハロウィーンを間近に控えたある夜、カフェで催された読書家限定お見合いイベントが終わり、参加者のひとりが店を出た途端にボーガンの矢で撃ち殺されるという事件が発生。イベント会場で被害者と口論になった女性が疑われたため、彼女と親しい主人公が調査に乗り出すけれど、おりしも被害者が立候補していた町長選挙間際であり現町長とその選挙参謀、被害者にストーカー気味の行為をされていたダンサーとその夫、違法な商売に手を染めているらしい刑務所所長など、容疑者が次々に浮かび上がってきます。
そうこうするうちに、また殺人事件が起きてしまうのですけれど、これがストーリー上で必要だったかどうかは疑問なところで、たしかにある容疑者に読者の眼を向けさせる事件ではありますが、残酷な犯行を立て続けに犯す犯人像と真犯人の日常の人物像とが、あまりにかけ離れたものになっている不自然さを感じてしまいます。それからコージーミステリとはいえ各種イベントを盛り過ぎ、これとロマンス話で物語をつないでいる気がしました。そういうわけで伏線を挟まず唐突な展開、場当たり的な行動が目に付くというコージーの悪いところが出ている作品のように思いました。ただ、中年女性同士の友情は微笑ましいです。

ユーザータグ:ローラ・チャイルズ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ジンジャー・ノースの影』ジョン・ダニング ハヤカワ文庫HM

2017-10-09

Tag :

☆☆☆

わたしが小さな町の競馬場にやってきたのは、自分の過去を取り戻すためだった。孤児だったわたしは、両親も生まれた場所もまったく知らない。唯一の手がかりはその競馬場にいたジンジャー・ノースという女性だったが、彼女は30年前に謎の自殺を遂げていた。厩務員として働くかたわら、わたしはジンジャーの死の真相と自分の出自を探るが、それを妨害する敵の魔手が!スリリングで謎に満ちた展開で贈る注目のサスペンス 内容紹介より



本書は、作者が注目されるきっかけとなった『死の蔵書』より十年以上前に発表された作品です。
警察官や新聞記者などの職歴を経て、ベトナム戦争に従軍したのを契機に自らを見つめなおすため、母親のことを調査した結果、田舎町の競馬場にたどり着いた主人公は厩務員として働きつつ自殺したという母親のことを探ります。しかし周りの人たちの口は堅く彼を煙たがります。彼のこれまでの調査の過程で、母親にかかわった男たちが殺されたり、不審な死を遂げていたことが判明していたのですが、さらに厩舎で殺人事件が起こり、主人公も何者かに襲われて大怪我を負います。
悪い男ばかりに引っかかるジンジャー・ノースの造形とか、何のために登場させたのかわからない主人公の妹の存在意味とか、襲われて深手を負いながら、そのことを警察に通報しない主人公の考えとか、全体的にプロットが粗い印象が残りました。また、読みどころのひとつであろう厩務員としての日常があまり描かれず、後半に主人公に腐りかけた脚で逃避行させる、作者の意図も無理矢理で理解し難く感じました。各登場人物の人物像の掘り下げが充分とはいえず、読んでいると錯綜してしまってかなり混乱しました。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『陪審員に死を』キャロル・オコンネル 創元推理文庫

2017-10-06

Tag :

☆☆☆☆

完璧な美貌をもつ天才的なハッカーにしてニューヨーク市警の刑事、キャシー・マロリー。彼女の相棒ライカーは四発もの銃弾を受け、瀕死の重傷を負った後遺症で現在傷病休暇中だ。弟の《ネッド事件現場清掃社》を代わりに経営し、警察に復帰する気がないかのようなライカーの態度にマロリーの苛立ちが募る。そしてジョアンナ・アポロ。ライカーの会社の清掃員として働くその女性にはFBI捜査官がつきまとい、彼女に嫌がらせをしていた浮浪者は惨殺された。ライカーが心を寄せる彼女は何者なのか。氷の天使マロリーが相棒ライカーの事件に挑む。 内容紹介より



本書はマロリー・シリーズの第七弾だそうです。わたしはこのシリーズは初読なのでマロリーと彼女の仕事上のパートナーであるライカー、この二人の他の作品における描写される比率がどのくらいなのかわかりませんが、S・J・ローザンの〈リディア・チン&ビル・スミス〉シリーズでの作品ごとに主役が交替する趣向のように、本書ではライカーがほぼ主人公役に当てはめられ、しかもマロリーの存在が作品の雰囲気に対してちょっと浮き気味な気がして、まるでスピンオフ作品みたいに感じました。ストーリーは、ある殺人事件の裁判で無罪の評決を下した陪審員たちが次々に殺される事件が起き、姿をくらました生き残った陪審員の行方を番組を通してリスナーに求めるラジオパーソナリティーの奇矯な行動を絡めて進みます。エキセントリックな人物が多く、読者に混沌として見せながら点と点を徐々に線で繋いでいきやがてうっすらと全体像が浮かび上がってくる手法を使っているせいで、読み始めはちょっと取っ付きにくいのですけれど、かかっていた霞の晴れていく具合が良く、とても印象的に描かれているライカーとある女性の愛情とマロリーの鋼のようなクールさとが非常に対照的に際立っています。ラストはセンチメンタルに偏っているとはいえ泣けます。




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『WORLD WAR Z』マックス・ブルックス 文春文庫

2017-10-01

Tag : ホラー

☆☆☆☆

中国で発生した謎の疫病—それが発端だった。急死したのちに凶暴化して甦る患者たち。中央アジア、ブラジル、南ア……疫病は急速に拡がり、ついにアウトブレイクする。アメリカ、ロシア、日本……世界を覆いつくす死者の軍勢に、人類はいかに立ち向かうのか、未曾有のスケールのパニック・スペクタクル。大作映画化。 上巻内容紹介より



本書は、原因不明の謎の疫病によるゾンビ化現象が発生した、各国のさまざまな地位や立場にいた人々への事後のインタビューという形式をとっています。わたしの知る限り、これまでのゾンビ作品は、限られた場所でのアウトブレイク、または世界的なパンデミックであっても特定のサークルを切り取って舞台にしたものが多数だと思いますが、ここでは全世界の場所を取り上げています。この二つが作品の大きな特徴なのではないでしょうか。そして、ゾンビという触媒を用いて、各国の政治体制、社会構造、軍事組織、経済構造、文化、科学、などが抱える矛盾なり問題点を浮かび上がらせるとともに、皮肉な苦い味付けをした作品であるように感じました。それは、これまでに使い古された“戦争”というキーワードに“ゾンビ”を付け加えたものともいえます。世界的な災厄をもたらしたという意味では、ヨーロッパにおけるナチスであるし、アジアにおける日本軍でも、あるいはISISに当てはまるかもしれませんが、彼らとは違い人肉を喰らい感染性をもつ、極めて異質で誇張された外敵に代えながらも、基本的なアプローチは従来どおりであり、ゾンビの生態は旧態依然のままなんら変更が加えられていないため、『ウェットワーク』みたいな新境地を開いているとは言い難いです。




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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