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『ただでは乗れない』ラリー・バインハート ハヤカワ文庫HM

2017-11-27

Tag :

☆☆

私の追っていた弁護士は、レストランの駐車場で撲殺されていた。八百万ドルにも及ぶ横領が発覚し有罪となったが、証券取引委員会にすべてをぶちまけると宣言し、ある場所に隔離されていた男だ。こうなると、不利益を被った法律事務所からの依頼も水の泡だ。誰が何を目的として、彼を葬ったのか。私はいつのまにか事件に深入りし、気づいたときはのっぴきならない状況に追い込まれていた。ウォール・ストリートに巣くう巨大な悪にただ一人立ち向かう元ジャンキーの私立探偵の苦闘。アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞受賞の傑作ハードボイルド 内容紹介より



三十年前に発表された作品ですが、古めかしさは感じません。やや軽めのハードボイルド小説です。
主人公は元警官で離婚歴のある私立探偵で、現在は恋人の女性とその息子と同居中で、彼女に操を立て、薬物依存の過去から立ち直っています。ここまでは良しとしましょう。だがしかし、事件の調査を依頼された、殺された弁護士の娘と会った途端に発情するは、暴漢に襲われてぼこぼこにされると、痛み止め目的であっさりコカインに手を出すはで、しかも良心の呵責にさいなまれるとか、心理的な葛藤に苦しむとか、そういったことがまったく見られない無節操ぶりにはあきれて付いていけませんでした。人物造型が表面的で心理描写が浅く、どこにも“苦闘”など見当たらない主人公には人間的魅力を感じませんでした。かといってミステリ部分が優れているとも思えず、なぜこの作品がMWA賞の新人賞を受けたのか、私にはまったく理解できません。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『パーフェクト・ライフ』マイク・スチュアート 創元推理文庫

2017-11-21

Tag :

☆☆☆

始まりは自動車の盗難だった。続いて自宅に何者かが侵入し、受け持っていた女性患者が病室で殺される。精神科医の卵である青年スコット・トーマスを突然襲う事件の数々。自身に不利な状況証拠が積み重なった末、殺人の重要容疑者となったスコットは、真実を白日のもとにさらし汚名をそそぐべく、独力での調査を開始する。幼少時の火災で家族を失った天涯孤独な彼に罪を着せ、執拗に追いつめていくのは誰なのか?そしてその目的は?息を呑む展開の連続が興奮を呼ぶ、期待の精鋭によるサスペンス大作! 上巻内容紹介より



作者自身も真犯人の登場人物も策を凝らして策に溺れた感じです。600ページ近くあるので複雑に錯綜した物語を想像していたのですけれど、なんだか中身が薄いです。現代ミステリにおける、ハッカーという魔法使いを登場させて主人公に殺人犯の濡れ衣を着せるところに新味を出そうとしているのかもしれませんが、素材と料理の仕方が従来どおりのものでは、さほど効果が上がっているとはいえません。悪い王様に仕える悪い魔法使いと闘う騎士みたいなファンタジーの構図を思わせる話であり、老ブルースマンが老師、主人公の弟が妖術師または一癖ある騎士、敵方に奸婦役の看護士も配していますが、精神科医の卵というポイントが何ら有効に働いていない主人公に、まるで魅力がないところが致命的で物語が非常に平凡になってしまった原因なのではないかと思いました。後半部における主人公の弟とハッカーの関係性がよく分からなかったし、さらに看護士がいつのまにかフェードアウトしてしまってるし……。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『エジンバラの古い柩』アランナ・ナイト 創元推理文庫

2017-11-15

Tag :

☆☆☆

1870年夏、エジンバラ城の崖下で男の遺体が発見された。一見、宝石類を狙った泥棒の転落死と思われたが、ファロ警部補は納得できない。義理の息子の新米医師ヴィンスと独自の捜査に乗りだしたところ、現場付近で男性の肖像が描かれた高価なカメオを拾う。さらに警官だった亡父の行李から、40年前に城の壁の中から赤ん坊の遺体を納めた古い柩が発見されたという事件の記録と、現場で発見したものと対のメアリー女王のカメオを見つける。ふたつの宝飾品が示す驚愕の真相とは?歴史ミステリの大家が放つ、英国史を覆しかねない大胆な傑作! 内容紹介より



シリーズ二作目です。
スコットランド女王メアリーの出産にまつわる異聞に材を取った歴史ミステリです。メアリー女王の居城であったエジンバラ城の崖下で見つかった身元不明の男の死体、この事件と三十年前城壁から発見された幼子の遺体が納められた柩とそれに関係した人物たちの不審死がふたつのカメオによって結びつけられていきます。しかも後者の事件を調査していたのが、主人公の殉職した父親だといういわく付きの展開です。事件の真相というのがかなり意外なもので驚きました。しかし、そのスケールに300ページでは尺が足りない気がして、このアイデアならばもっと丁寧細密に膨らませて書き込んでも良かったように思いました。それから、ある秘密を守るために軍人、警官、作業員などが犠牲になっているのですが、なんであまり優秀とは思えない警視が大丈夫で大佐や中尉(メアリー女王に心酔しているという伏線があるけれど)が秘密を守れないという設定に難があってその判断基準が疑問です。また原文かあるいは訳出のせいか、文章にややぎこちない感じを覚えるところもあります。王位継承をめぐる大スキャンダルに発展する事件に偶然かかわり、人生を狂わされた人たちが描かれていて、大作ではないけれどテーマは重いです。

『修道院の第二の殺人』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ロックンロール・ウイドー』カール・ハイアセン 文春文庫

2017-11-11

☆☆☆

米ミステリ界最上のユーモアと最強の怪人物造型を誇るベストセラー作家、それがカール・ハイアセンだ。本書がその最新作。大物ロック歌手の変死事件を追い、死亡記事担当に左遷中の敏腕記者ジャックは深まる謎をかき回し、ついでにメディア王の奸計に挑む!気分が冴えない日に最適、石田衣良氏も愛する巨匠の妙技を堪能あれ。 内容紹介より



本書の後に発表された作品が、『復讐はお好き?』『迷惑なんだけど?』『これ誘拐だよね?』になるのですけれど、夫に殺されそうになった妻の復讐譚であったり、家族団らんを邪魔した電話セールスマンにきつい説教を試みたり、アイドル歌手の影武者が誘拐されたりする突拍子もない状況設定が据えられている、それらの三作品に比べるとハイアセンにしては、今回はなんだかおとなしめな印象を感じました。海で溺死した、世間から忘れ去られそうな往年のロックスターの話ですから、業界の奇人変人やそれにまつわるゴシップ(虚実ないまぜに)がわらわらと湧いて出てくるのかと思っていたら、そこら辺りは盛り上がりに欠けていました。主人公の新聞記者は株主総会での発言でオーナーの不興を買い、死亡記事担当へ左遷されてから、自分と同じ年齢で死んだ作家やアーティストの享年にパラノイア気味の強いこだわりを持つという事態に陥っています。そんなところは面白かったけれど、肝心のロックスターの未亡人を始めとして、奇人変人のぶっ飛び方が迫力不足に感じました。

ユーザータグ;カール・ハイアセン





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『幸福の選択』ダニエル・スティール 扶桑社エンターテイメント

2017-11-07

Tag :

☆☆☆

広告代理店に勤めるオリヴァーは、妻のサラと3人の子供たちとニューヨーク郊外の美しい家で、平凡ながらも幸せに暮らしていた。だが、もともと作家志望だったサラはそんな生活に飽き足らず、皆に内緒でハーヴァードの大学院への入学を決め、一人ボストンへ旅立ってしまう。残されたオリヴァーは悲嘆にくれるが、不安定な年頃の子供たちの動揺はさらに大きく、次々と問題がわき起こり……。父として、一家の主として奮闘するオリヴァーの姿を通して、家族の愛情、絆とは何かを探る好評のD・スティール第3弾! 内容紹介より



本来芸術家タイプの妻が家庭的な夫との結婚生活もとで、いつか小説を書こうと思いながら望まなかった妊娠と子育てを経た後に、大学院への入学通知がきたのを契機に、夫の反対を押し切って彼女は家族と別れ自宅から何百㌔も離れた土地で一人暮らしを始めようと決めます。もともと生き方や考え方が異なっていた男女が一緒になって、約二十年後に起きた出来事を原題「Daddy」とあるように夫、父親目線で描いた作品です。女性はこの妻であり母親の行動に共感するところもあるでしょうが、男性は結構反感を覚えるのではないかと思います。それは主人公のキャラクターがたいして欠点が見当たらない理想的な夫であり父親だからでしょう。さらに冒頭の60ページ弱しか妻の内面が語られず共感しにくいところも影響していると思います。彼女に限らず一家の長男の恋人とその母親が利己的に描かれ(描写される割合も非常に少なく)て、女性作家ながら、そういう点はかなり特異な感じがしました。物語は、それまでの主人公と子供たちという父子家庭に起こる問題を描いたものにたいして、350ページをすぎた辺りからはかなり大甘な緩んだものへと転調します。最後にある人物がとった決断は、女性読者からはブーイングが起きそうです。わたしは初ダニエル・スティールなので他の作品のことはまったくわかりませんが、作者は保守的な考え方をする人、いわゆる良妻賢母を支持する人なのでしょうか。いまひとつこの作者の人気の秘密がわかりませんでした。




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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『火焔の鎖』ジム・ケリー 創元推理文庫

2017-11-03

Tag :

☆☆☆☆

「あたしは嘘をついた」新聞記者のドライデンは、知人であるマギーの死に際の告白を聞く。27年前、アメリカ空軍の輸送機が農場に墜落した。彼女は乗客の赤ん坊を助け出したが、生後2週間の息子は死んだと語っていた。だが実際は自分の息子と死んだ赤ん坊をすり替えたのだ。なぜ我が子を手放したのか?少女の失踪や不法入国者を取材しつつ真相を探るドライデンは、鎖でつながれ拷問された男の死体を見つけてしまい……。大旱魃にあえぐ沼沢地を舞台に、敏腕記者が錯綜する謎を解き明かす。CWA賞受賞作家が贈る、現代英国探偵小説の白眉。 内容紹介より



27年前、英国内の基地から飛び立った米軍用機の墜落事故の巻き添えとなり、両親と生まれて間もない息子を亡くしたとされていた農場暮らしの女性。彼女と子どもの頃から親交のあった主人公は臨終の床で、墜落事故の際に、彼女が息子と飛行機に父母と乗り合わせていた赤ん坊とをすり替えたことを知らされます。その子どもはアメリカの祖父母に引きとられ成長した後、米空軍のパイロットになり、イラク戦争に従軍し捕虜となって過酷な体験をしたという経緯があります。その彼が事故機が飛び立った同じ基地に再び戻ってきて、本当の母親の告白を聞かされます。
新聞記者である主人公は、彼女はなぜ実の息子をすり替えたのか、という謎を探るとともに、安価な労働力としてアフリカから渡ってくる不法入国者と密入国ルート、違法なポルノ写真の流通とモデルになった少女の行方不明事件、これらを彼専属のタクシー運転手を伴って取材に飛び回ります。警察小説によく見られる、いわばモジュラー形式のミステリですが、主人公が新聞記者であるためいろいろな事件にかかわるというのは別に不自然ではないにしても、それぞれの事件に関連性が薄く、どうしても本筋の出来事の中だるみを避ける理由で二件の事件を持って来た、間に合わせみたいな印象が残りました。また、母親が我が子を手放した訳には、長々と引っぱったわりには拍子抜けしてしまいました。
過去に母親のついた嘘によって現在において翻弄されることになったひと組の男女たどった哀れな運命を、墜落事故での焼失、基地内での火災、野火という火焔とともに描き出しています。

『水時計』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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