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『猟犬』ヨルン・リーエル・ホルスト ハヤカワ・ミステリ

2018-01-31

Tag :

☆☆☆☆

17年前の誘拐殺人事件で容疑者有罪の決め手となった証拠は偽造されていた。捜査を指揮した刑事ヴィスティングは責任を問われて停職処分を受ける。自分の知らないところで何が行われたのか?そして真犯人は誰なのか?世間から白眼視されるなか、新聞記者の娘リーネに助けられながら、ヴィスティングはひとり真相を追う。しかしそのとき、新たな事件が起きていた……。北欧ミステリの最高峰「ガラスの鍵」賞をはじめ、マルティン・ベック賞、ゴールデン・リボルバー賞の三冠に輝いたノルウェーの傑作警察小説 内容紹介より



DNA鑑定の結果、犯人特定に至った、犯行現場で採取された煙草の吸い殻が、捏造された物だと指摘する容疑者側の弁護士の告発を受け、当時捜査責任者であった警部である主人公が停職処分を受けます。
彼の娘は、その告発を大々的に報じた新聞社の記者でもあります。そんななか新たな若い女性の失踪事件が発生します。物語はふたりの視点から描かれていきます。主人公が深夜の警察署に忍び込むという行動をとったりしますが、作者は、父親には主に推理を担当させ、娘は取材や尾行などの行動を受け持たせる役割分担を行っているようです。猪股和夫氏の訳者あとがきにもあるように、この静と動の対比が作品にめりはりを与え、かつ過去と現在の事件を絡めることで話に深みを付けているように感じました。父娘と元鑑識員以外の登場人物の印象が薄いようで残念な気もしますけれど、それも父娘にスポットライトをあてるという意味では上手い効果を上げているのかもしれません。作者は元警察官だったそうでが、新聞記者の取材活動の細かなところにもリアリティがあって面白く感じました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ロボット・イン・ザ・ガーデン』デボラ・インストール 小学館文庫

2018-01-25

Tag : SF

☆☆☆

AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に就くアンドロイドが日々モデルチェンジする近未来のイギリス南部の村。弁護士として活躍する妻エイミーとは対照的に、親から譲り受けた家で漫然と過ごす三十四歳のベン。そんな夫に妻は苛立ち夫婦は崩壊寸前。ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけた旧型ロボットのタングを発見。他のアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、作り主を探そうと、アメリカへ。中年ダメ男とぽんこつ男の子ロボットの珍道中が始まった……。タングの愛らしさに世界中が虜になった、抱きしめたいほどかわいくて切ない物語。 内容紹介より



ロボットのまるで幼い子供(作者は子育てから本作のヒントを受けたそうです)みたいな喋り方としぐさ、主人公のモラトリアムをこじらせたみたいな造型と彼とロボットとの会話の様子が個人的に甘すぎて肌が合いません。イギリスからサンフランシスコ、ヒューストン、東京、パラオを巡るロードノベルであり、その過程で、両親の死と志望する仕事からの挫折といった人生のつまずきから引きこもり状態に陥ったいい大人の主人公が、ロボットとの道中で父性が芽生え、妻への愛情に改めて目覚めるという成長小説でもあります。それらが感傷、叙情、メルヘンという液体に頭までひたひたに漬かって描かれているので私的には勘弁して欲しい感じがおおいにしました。悪い意味での大人の童話なのですが、セックス関連のエピソードを抜きにしても、こんなあまあまな物語はヤングアダルトでもちょっとどうかと思われそうです。しかし、一般的な評価は高いので興味のある方は一読の価値があるでしょう。




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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

『ブラック・キャブ』ジョン・マクラーレン 角川文庫

2018-01-20

Tag :

☆☆☆☆

難病の娘を救うため、なんとしても治療費五十万ドルを稼がねば……。冴えない中年タクシー運転手のレンは、運転手仲間、女たらしのテリーとIQの高い天才アインシュタインを引き入れ、一攫千金計画を練る。客の情報を盗み聞きし、株で一山当てようというのだ。だが、情報源の一人がタクシーの中で殺されてしまい……。資金稼ぎと犯人探し、でこぼこ三人組の涙ぐましい努力と奮闘は果して実を結ぶのか?スリルと笑いがたっぷりの、痛快マネーゲームミステリー! 内容紹介より



ロンドンを舞台に、タクシー運転手の三人組を主人公にしたユーモアミステリですが、読みどころは、英国のある銀行とそこにヘッドハントされて来た米国人らがスイス人を交えて仕掛ける敵対的買収計画の顛末、そして、それを嗅ぎつけた主人公たちの奮闘ぶりで、殺人事件に関してはそれより面白さがやや劣ります。さらに三つの国の人物を登場させ、落ちぶれかけたプライドの高い英国人、非常に実務的で悪辣な米国人、冷徹で威圧的なスイス人、とそれぞれのお国柄を描き、さらに内面ではお互いを馬鹿にしたり嫌ったりしているところがも可笑しかったです。そういうエリートに挑んで一泡吹かせようとするのがまったく階級の異なるタクシー運転手に据えたアイデアが非常に気が利いていると感じました。しかも難病の娘を助けるための資金を稼ごうという錦の御旗を用意しているために、マネーゲームの話ながら読後感がすっきりしています。登場人物たちの個性がひかり、彼らの虚々実々の駆け引きも面白い秀作です。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『フリント船長がまだいい人だったころ』ニック・ダイベック ハヤカワミステリ

2018-01-15

Tag :

☆☆☆

アメリカ北西部の海辺の町ロイヤルティ・アイランドでは、男たちは秋から半年ものあいだ厳寒のアラスカで漁に励み、妻たちは孤独に耐えながら夫の帰宅を待つ。十四歳の少年カルは、いつか父とともにアラスカに行くことを夢見ていた。しかしある日、漁船団のオーナーが急死し、町の平穏は崩れ去る。跡継ぎのリチャードが事業を外国に売りはらうと宣言し、住人との対立を深めたのだ。その騒動のなかでカルは、大人たちが町を守るために手を染めたある犯罪の存在に気づく。青春の光と影を描き切った鮮烈なデビュー作 内容紹介より



アメリカを舞台にした少年小説には惹かれるので期待して読んだのですが今ひとつでした。この作者は港町に暮らしたことがあるのだろうか、と思うくらいに海や魚の臭いが行間から漂っても伝わってもきませんでした。さらにテーマは深いにしても、その料理の仕方はすごく単純すぎて上っ面を撫でただけのような印象が残りました。頭の中でこねくり回して、それを思わせぶりな表現で表したみたいな感じが終始しました。町に金をもたらす漁師たちを束ねる有力者である父親から、彼らの仲間になる道を閉ざされてわだかまりが生まれ、町と住人たち自体にも複雑な感情を抱く跡取りの青年、父親の死によってこの対立があらわになり、漁師の息子でありながら彼と交わるにつれ、その考えを理解できるようになった少年の存在。父親を含む漁業に携わる者、青年、主人公の少年という三者の構図に、夫が漁期に長期間不在となることの孤独に蝕まれる妻たちを周囲に配しているのは巧みです。父親と同じ道を進みたかった主人公の少年は、ある事件によって、望みながらも受け入れてもらえなかった青年と同じ運命をたどることになってしまいます。プロットの構築には優れた、かなり期待のもてる作家だと思います。ただクライマックスにおける少年が下した伏線のない、いきなりな判断と行動にはついていけなせんでした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『家政婦は名探偵』エミリー・ブライトウェル 創元推理文庫

2018-01-11

Tag :

☆☆☆

ウィザースプーン警部補は医師の死体を前に困りはてていた。名刑事として認められつつある彼だが、無類の好人物であるものの、実は捜査の才能は皆無なのだ。警部補の立てた手柄はすべて、屋敷を取り仕切る家政婦ジェフリーズ夫人が先に真相を解明したうえで行う、さりげない誘導のたまものだった。今回の開業医殺害事件でも、苦戦する主を見かねた真の名探偵ジェフリーズ夫人と、屋敷で働く使用人一同からなる探偵団が、解決目指して警部補には内緒で動きだす。ヴィクトリア朝ロンドンを舞台にした、明るく楽しいミステリ・シリーズ第1弾。 内容紹介より



犯行現場での捜査が苦手で、署内の記録係だった頃を懐かしむ人の良い警部補が、彼を慕う使用人たち(家政婦、メイド、料理人、従僕、馭者)による密かな助けを借りて、開業医毒殺事件の謎を解くと言うお話です。警部補の面目を保つために、使用人たちが陰で調査していることは彼には内緒にしていますが、同僚の警部補は怪しんでいるらしいという設定がしてあります。米国在住のアメリカ人作家なのでほとんどヴィクトリア朝英国の市井の雰囲気が伝わってきませんし、使用人たちのキャラクターもステレオタイプなイメージでそれぞれの個性が強調されているわけではありません。特に警部補のキャラは確立した方が良いのではないかと感じました。ただ、いわゆる古典には見当たらない使用人に光を当てる趣向は面白いし、ミステリの具合など総合的に見るなら各自バランスがとれているようには思います。そういう意味では非常に気軽に息抜きとして読むことができる作品です。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『野良犬トビーの愛すべき転生』W・ブルース・キャメロン 新潮文庫

2018-01-07

Tag :

☆☆☆☆

兄弟姉妹に囲まれ、野良犬としてこの世に生を受けた僕。驚くことに生まれ変わり、少年イーサンの家に引き取られ、ベイリーと名づけられる。イーサンと喜びも悲しみも分かち合って成長した僕は、歳を取り幸福な生涯を閉じる。ところが、目覚めると今度はメスのエリーになっていた!警察犬として厳しい訓練を受け、遭難した少年の救助に命がけで向かうが……。全米ベストセラー。 内容紹介より



ケン・グリムウッドの『リプレイ』(新潮文庫)の主人公は、前世の記憶を保ったまま同じ青年時代に何度も立ち戻る設定でしたが、本書の主人公の犬は、やはり前世の記憶を留めたままではありますが、まったく境遇の異なった時代や場所に生まれ変わるという設定です。最初は野良犬として、その後はブリーダーのもとに生まれ偶然にある少年の家に引き取られます。少年とともに過ごした幸せな一生が主人公の心に強く残り、犬としての使命を全うしたと考えて生を終えます。ところが今度はメスの警察犬として生まれ変わることになります。誘拐された被害者や行方不明者を何度も捜し出し、救助したりする活躍をみせ、警察官のハンドラーの人生にも深くかかわり充実した一生を終えます。しかし、またもや生まれ変わったため、主人公は一体なぜ何度も転生を繰り返すのか、その意味するところを深く考えていくのです。犬を愛するがために多くの野良犬を保護し、そのために役所から眼をつけられる女性、犬に対してまったく愛情を持たない、金儲けが目的のブリーダー、こういう人間たちを登場させて、生涯や境遇を人間任せにしかできない犬(ペットの動物)たちの運命、そして飼い主たちの人生が主人公の視点で語られる物語です。犬派の方には特にお勧めです。

新年明けましておめでとうございます。皆様にとって良い一年になりますように。




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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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