『殺人遊園地へいらっしゃい』クリス・グラベンスタイン ハヤカワ文庫HM
2018-06-09
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海辺の保養地シーへイヴンヘようこそ。ここでは誰もがのんびりする。臨時警官のおれだって例外じゃない。制服も拳銃もないが、帽子に輝く警察マークが女の子に受けるのさ……そんな平和が消し飛んだ。大富豪のハートが遊園地で殺されたんだ。唯一の目撃者、娘のアシュリーにも犯人の魔手が迫る。おれの使命は、相棒の超カタブツ警官シーパクとともに事件を解決することなんだ!アンソニー賞を射止めた新鋭のデビュー作 内容紹介より
保養地にある開園時間前の遊園地に娘と一緒にいた大金持ちが射殺されます。被害者は悪辣な手口で不動産開発をしていた人物で、目撃者の娘の証言によると加害者も彼に恨みを抱いていたと思われ、地元の薬物中毒のホームレスの男が容疑者として手配されます。事件当日、現場近くに居合わせ娘を保護した警官と相棒の臨時警官が捜査に加わりますが、その後、彼女が殺人犯によって誘拐されてしまいます。
ワトスン役の語り手である臨時警官の「おれ」によって描き出されるイラク帰りの元兵隊シーパクの造型が非常に好ましいです。饒舌と寡黙、地元っ子とよそ者、そして規範(コード)のあるなし、さらにいえば制服と拳銃の有無。単なる饒舌系コンビにはない、これらのコントラストが堅物シーパクのキャラクターを引き立てて見せています。彼の生真面目さが可笑しさを見せるとともに、戦争によるトラウマを抱えているという陰影も帯びさせて作者のテクニックを感じました。物語は軽快なテンポで進み、総じて明るい雰囲気のユーモアミステリ調ですけれど、事件の真相は後味の悪さを残します。続編が翻訳されないのが残念なシリーズ物です。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌