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『休日には向かないクラブ・ケーキ』リヴィア・J・ウォッシュバーン RHブックスプラス

2018-07-31

Tag :

☆☆

海辺にある朝食つき民宿(B&B)の留守番を任されたフィリス。のんびりと休暇気分で、その朝も美しい景色に一杯のコーヒー、そして釣を楽しもうとしていた。それなのに桟橋で宿泊客の遺体を発見してしまい、お気楽な留守番は一転!死因が朝食のクラブ・ケーキだと判り、宿泊客が次々とキャンセルする事態に。なんとか混乱を収めようとするも、不愉快な遺族が押し掛けてきたり、料理人に容疑が掛かったり……。B&Bを守るため、フィリスは捜査に乗り出す! 内容紹介より



お料理名人の事件簿シリーズ4です。
今回はテキサス州の湾岸地域に実在する町フルトンが舞台で、いとこが営む海に臨んだB&Bの留守番役を引き受けたヒロインが、元教師の友人たちと事件に巻き込まれるというもの。宿の常連である無愛想な宿泊客が毒殺されます。不仲な被害者の娘息子たち、被害者の会社を買収しようとしていた大手企業の経営者など怪しい人物が現れ、またB&Bの料理人夫婦と宿泊客とのもめ事など明らかになり、さらに二組の夫婦で滞在していた常連客の一人が刺殺されるという事件が立て続けに起こります。凶器に指紋がついていた料理人が容疑者として逮捕されにあたって、B&Bの評判にかかわるとヒロインが調査を開始するものの地元を離れた場所での調査は勝手が違ってなかなか上手く進みません。コージーミステリのどのシリーズも、だいたいにおいて地元を離れる設定になると面白さのレベルが落ちる傾向があると感じているのですけれど、それは地元の脇役陣がいなくなってしまうからではないかと思います。しかし、このシリーズはもともと個性的な名脇役は存在していないので、その影響はないみたいな気がしますし、それよりキャロリンとイヴの地味な存在でしかない二人の下宿人の起用法をいい加減になんとかして欲しいです。それからミステリ部分のかなり強引な動機付けにはかなり飽きれてしまいました。

『桃のデザートには隠し味』
『かぼちゃケーキを切る前に』
『クッキー交換会の隣人たち』
『焼きたてマフィンは甘くない』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『フェイスフル・スパイ』アレックス・ベレンスン 小学館文庫

2018-07-29

Tag :

☆☆☆☆

アルカイダに潜入していた唯一のCIA工作員ウェルズは、大規模テロ作戦のため本国アメリカに送り込まれる。作戦の詳細を探るべく努力を続けるが、CIA 上層部からは9・11同時多発テロを警告しなかったことなどを理由に、二重スパイの嫌疑をかけられてしまう。信じてくれるのはかつて連絡担当だった女性局員ただ一人。一方、信頼を得ていたはずのアルカイダからも疑惑の眼を向けられて……。テロはいつ発生するのか、標的はどこか、その方法は?自らの矜持を賭け て職務を遂行しようとする男の孤高の闘いを描く、二〇〇七年度MWA最優秀処女長編賞受賞作。 内容紹介より



アルカイダに潜入しアフガニスタンで戦闘に参加していた主人公は、アメリカ本土で企てされているテロ計画を知らされないまま、アルカイダの高官によって母国へと送られます。CIA に接触するも、利用価値をなくしたと見られていた彼は二重スパイの疑いをかけられ拘束されてしまいます。逃亡した主人公は単身、アメリカに潜伏するテロの立案者であるアルカイダ幹部の行方を追い求めますが、そんななか爆破テロが発生してしまい、さらに大規模なテロが計画されていると信じる彼のもとへアルカイダからついに連絡が入ります。
いつしかイスラム教に入信していた主人公は、別れた妻やひとり息子への思いや、 CIA内で唯一心を許せる女性局員への思慕、アフガニスタンの貧しい現状と享楽を極めるアメリカ社会を目の当たりにしたときの葛藤、様々な感情と心の揺れを見せています。スパイアクションに出て来がちなスーパーヒーローみたいな派手さはないけれどとても人間的な造型が物語にリアリティを与えていると思いました。特に興味深かったのは、テロ計画で使用する大量殺傷兵器の種類とそれを主人公に運ばせる方法が意表を突いており、人目を引かずに、まったく警戒もされず、しかも持ち運びが楽で、予防措置がほとんど不可能なこの兵器が実際のテロ計画でも充分に利用可能なことでした。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『目は嘘をつく』ジェイン・スタントン・ヒッチコック ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2018-07-26

Tag :

☆☆☆

わたしは騙し絵画家。人の目を欺く幻影を生みだすのが仕事だ。そのわたしのもとへ、美術品収集家として名高い大富豪の老婦人がやってきた。屋敷の舞踏室に、壁画を描いてほしいのだという。しかし、屋敷でわたしを待っていたのは、十五年前に起きて迷宮入りした殺人事件の、今も消えぬ暗い影だった……読後に強烈な印象を残す、心理サスペンスの新しい傑作 内容紹介より



ヒロインは、自らを芸術家ではなく職人と考えている三十九歳独身の騙し絵画家です。彼女は名家の高名な美術品コレクターの老婦人から、かつて娘の社交界デビューのために建てられた舞踏室に壁画を描く仕事を依頼されます。ヒロインが調べてみると、その娘は屋敷内で刺殺され、犯人が判らぬままに事件が迷宮入りしていることが判明します。悲惨な出来事があったにもかかわらず屋敷に住み続ける老婦人は、なぜ今頃になってヒロインに仕事を頼むのか。やがてヒロインは自分が亡くなった娘とそっくりな容姿をしていること知るとともに、仕事と未解決の殺人事件にのめり込むようになっていきます。
トリックアートの世界は個人的に非常に興味があるジャンルなので、騙し絵画家が主人公の本書には別の意味でも期待しました。物語自体を騙し絵にしてしまおう、という作者の意図は伝わりますが、細部がかなりゆるい印象が残りました。ヒロインの友人である古美術商以外にも、第二第三の謀りのピースが欲しかったところだし、彼女の元恋人である作家にも企ての一端を担って欲しかった気がします。また、ショッキングな出来事も弱くて不足気味で、殺人事件の真相もそれほど意外性がなかったのも残念です。騙し絵や画家の実際の逸話など二三披露してもらえたら良かったかもしれません。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『グルメ警部キュッパー』フランク・シェッツィング ランダムハウス講談社

2018-07-23

Tag :

☆☆☆

大富豪インカが何者かに殺された。事件を担当するのは、いつも料理のことばかり考えている警部キュッパー。殺害現場の食べ物もつまみ喰い。容疑者を相手にレシピの交換。刑事としては優秀だけれど、こと料理となると盲目に。そんな彼が、味音痴の部下と一緒に難事件解決に挑む!ビアホールで呑むケルン名物ケルシュ、美人秘書の焼く魅惑のタルト・タタン……。美味しい料理とドイツ・ケルンの魅力たっぷりのグルメ・ミステリ。 内容紹介より



ドイツの食べ物というとまず思い浮かぶのがビール、ソーセージとザワークラウトくらいで、ドイツ人とグルメってあまりピンと来ません。しかし、本書の主人公はグルメでかなり食にこだわった人物です。
ただ、それが邦題として強調されるわりには、グルメ・エピソードがこれでもかというほど一貫して挙げられていないのは残念でした(巻末にケルンに実在するお勧めレストランが数件記されています)。そこら辺りが抑制されている点は、こういうテーマにおいては奇矯なほどにこだわリを見せるフランス人と違っているところでしょうか。事件は、大金持ちの女性が殺されるというもので、この被害者が典型的な悪女として描かれ、容疑者は夫、娘、共同経営者、さらに夫の影武者といった面々が揃います。ユーモア趣向の警察小説の体裁をとっていて、失恋したての主人公のちょっとした哲学的内省を軽く絡めながら、部下とのやり取りもなかなか面白く、物語は軽快に進み、クライマックスは動物園のライオン舍でのアクションシーンも用意されています。ミステリとしては古風なトリックが用いられているところしか見るべきところはありません。

『砂漠のゲシュペンスト』ハヤカワ文庫NV




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『レクイエムの夜』レベッカ・キャントレル ハヤカワ文庫HM

2018-07-21

Tag :

☆☆☆

心臓を刺されて死んだ若い男。警察署の〈身元不明死体の廊下〉に張り出されていた写真の一枚に、わたしは弟を見つけた。美貌の女装歌手として愛されていた弟はなぜ殺されたのか?絶対に殺人犯を突き止める。そう決意してひそかに調べはじめたものの、わたしの息子だと主張する謎の幼い少年が現われたことにより、社会の裏にうごめく様々な思惑と対峙することに—。ナチス政権前夜のベルリンに展開する慟哭のミステリ 内容紹介より



1931年のベルリンを舞台にした歴史ミステリです。大量の失業者と物価の高騰という状況のなか、ナチスが勢力を伸ばしユダヤ人排斥運動が激しくなっています。ヒロインは新聞記者で、取材のため警察署回りをしていた時、偶然、身元不明死体の写真のなかに弟の姿を見つけます。ある事情により弟だと届け出せない彼女は独自に彼が働いていた酒場や彼の友人に聞き込みを始めますが、彼女の息子だと言う男の子が現われ、また弟の遺品のなかに高価な宝石を見つけてしまいます。突撃隊の指揮官レームが重要な役割で登場しますが、それ以外には世相を反映するような出来事や歴史的著名人が描かれるわけではなくて歴史ミステリとしては物足りなさが残りました。ナチスの伸長とともに、ユダヤ人以外にも同性愛者への抑圧が強まっていく時代背景が息苦しさを感じさせ、それが大きなテーマになっています。ヒロインが恋する男性の造型は型にはまり過ぎ、ロマンスの展開も都合が良すぎてサスペンス小説としては興ざめする部分です。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『沈黙のメッセージ』ハーラン・コーベン ハヤカワ文庫HM

2018-07-17

Tag :

☆☆☆☆

スポーツ・エージェントのマイロンは、プロ入りを控えたフットボール選手クリスチャンの契約金の交渉を請け負った。ところが、オーナーはクリスチャンが恋人の失踪に関係があると疑い、契約金の引き下げを要求する。マイロンが調べると、彼女の父親が数日前に殺されたことが判明した。その直後、クリスチャンのもとに当の女性のヌード写真が……ナイーヴでセクシーなヒーロー誕生。アンソニー賞に輝く話題の新シリーズ! 内容紹介より



マイロン・ボライター シリーズの第一作目です。主人公はプロスポーツ・プレイヤーの代理人業をはじめて二年目の元FBI捜査官、彼の相棒は大金持ちの名家出身でサイコパスの傾向がある武術の達人、秘書は元女子プロレスリング選手。彼らの造型はややもするとアメリカンコミックの小説版になりそうなところをかろうじて踏み止まっているような印象を受けました。コメディアンみたいな言動をしたがる、子供っぽい一面を持つ主人公とスポーツ・エージェントという設定がいかにもアメリカ的です。そんな彼が将来を嘱望されているアメリカンフットボール選手の契約交渉を行うと、チームオーナーは選手にまつわる過去のスキャンダルを持ち出して交渉を有利に進めようとしてきますが、そのスキャンダルは主人公の元恋人の妹に起きた失踪事件でした。殺されたのではないかと思われていた女性から届けられたメッセ—ジの意図とは。主人公が口にするギャグやジョークを我慢して読み進めると、意外な真犯人が現われます。中津悠氏の訳者あとがきによると「このシリーズは登場人物が成長」していくという特徴があるそうなので、その点はおおいに期待したいです。

『唇を閉ざせ』講談社文庫




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『フェアウェイの悩める警部』バリー・コーク ハヤカワ文庫HM

2018-07-14

Tag :

☆☆☆

署長が探しておられます、警部。至急ゴルフクラブへ—休暇をとってろくなことのあった試しがない。全英オープンに参加したほどの腕前をいまさら見込まれたわけではあるないし、休暇中にどんな厄介事が持ち上がったのか。ところが、行ってみてわが目を疑った。神聖なるグリーンの芝生が見るも無残に掘り返されていたのだ!ビッグ・トーナメントを間近にひかえて、誰が、なぜこんな大それたまねを……ベストセラー作家で皮肉屋で、愛車マセラッティを駆って英ミステリ界に颯爽登場のストローン警部が、奇々怪々の事件にバーディを狙います。 内容紹介より



地方の警察署に勤務する36歳の警部が主人公です。彼は事件の捜査中に銃撃された傷による後遺症せいで、捜査現場から離れデスクワークに就いています。妻子がいましたが離婚して猫と一人暮らし、愛車は自著の歴史小説がベストセラーになったお金で購入したマセラッティです。二十代初めに全米オープンに出場した経歴を見込まれた彼は、休暇中にもかかわらずゴルフ場で起きたグリーンの毀損事件を調べるはめになりますが、事態はゴルフトーナメント妨害事件から恐喝事件に発展していきます。ページ数はわりと少ないのに死体の数は三人と一匹、イスラム原理主義派からフェミニズム運動家やUFO愛好家が登場し、十字弓の盗難やゴルフボール爆発事件も発生し、主人公もあわや殺されかけるという大騒動が起きます。昨今の精緻な心理描写に優れた作品を読みつけていると、本書の主人公のあっけらかんとした情緒の乏しさが気になるのですけれど、これも英国風ユーモアミステリにおけるひとつの風潮なのでしょうか。ゴルフ場の小さなトラブルが意外にも国際的な陰謀に繋がるのですが、ゴルフトーナメントの裏舞台もちょっとだけうかがえる作品でした。

『謎めく孤島の警部』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『消えゆくものへの怒り』ベッキー・マスターマン ハヤカワ文庫HM

2018-07-10

Tag :

☆☆☆☆

毎年夏に発生し、若い女性が犠牲になる「ルート66連続殺人」。FBIはおとり捜査のスペシャリスト、ブリジッド・クインの指揮で罠を仕掛ける。だが作戦は失敗。おとり役の女性捜査官の失踪で事件は迷宮入りに……七年後、退職していたブリジッドに、犯人逮捕の報が入った。だが犯人の自白に疑問が残る。事件解決への執念を再燃させた彼女は、再び捜査の前線へ!元おとり捜査官ブリジッド登場。期待の新鋭のデビュー作 内容紹介より



本書は2014年のMWA賞処女長編賞のノミネート作品です。ミステリ作家としてのデビュー作なのですけれど、あら削りな面もありながらつぼを押さえた円熟味も感じられる作品でした。何といっても目を引くところは、素手で人を殺せるテクニックを身に付けている主人公を五十代後半に据えたことでしょう。小柄で華奢な体形のためにFBIでおとり捜査のおとり役を務め、多くの犯罪者の逮捕に貢献した実績を持ちながら、連続殺人事件の捜査中、同僚が犠牲になった後彼女はFBIを退職しています。捜査官時代の陰惨な事件に関わった過酷な体験を心に秘めたまま、最愛の夫と暮らしていた彼女のもとに、迷宮入りしていた連続殺人事件の犯人が逮捕され、かつて捜査中に行方不明になった同僚の遺体の在処を自白したとの報せが入ります。自白を疑う女性捜査官とともに独自に調査を始める主人公の身にも危険が迫ります。愛した人が彼女の仕事上での体験を知ったがために離れていった過去のせいでFBI時代のことを隠し、職務のため常に他人を演じなければならない習慣のために本当の自分を表に出せない内面の苦悩が事件のせいで浮かび上がって来て、元司祭である夫ととの関係に危機が訪れます。孤立無援になった主人公の孤独のなかでの奮闘ぶりがクールです。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『要塞島の死』レーナ・レヘトライネン 創元推理文庫

2018-07-07

Tag :

☆☆☆

出産休暇の最後の週末を利用して、夫と娘とともにレードシャール島を訪れたマリア。かつて要塞だった島は、今は船舶塗料メーカー、メリヴァーラ社が購入し、一般に開放していた。マリアが島に行きたかった最大の理由は、昔の恋人がそこで事故死していたことだった。島から帰ってからも、メリヴァーラ一族との縁は切れなかった。息子が動物愛護のデモに参加し騒ぎを起こし、さらに経営者である当主が島で死体で発見された。休暇明け、警部に昇進したマリアが因縁の島で起きた事件捜査に奔走。フィンランド人気ナンバーワン作家のシリーズ第三弾。 内容紹介より



一年前にヒロインの元恋人で鳥類学者だった人物が事故死した島は、自然環境に優しいをうたい文句にする船舶塗料メーカーが所有しています。会社のオーナーが不審死をとげた日は、くしくも元恋人の遺体が発見された日と同じでした。捜査の結果、死因は他殺とみられ、被害者の妻、娘、息子、継母、異母弟、その友人女性、娘の恋人が容疑者として限定される状況と犯行現場が孤島であること、この二つの点はいわゆるクローズドサークルもどきです(ただし、事件当日の深夜に船のエンジン音が聞こえたとの証言があり外部の者による犯行の可能性もある)。そこでヒロインによる各容疑者への取り調べが始まる訳ですが、こういう事件での事情聴取の場面が退屈になってくるのは致し方ないものですけれど、容疑者たちの個性が地味目であり、やはりなにがしかの隠れた動機とか暴露話などが明らかになる展開が欲しかったところではあります。さらにヒロインの一人称であるので視点の変化がなく全体的に単調(読者の目を覚まさせるような爆弾も用意されてはいるにしても)になってしまっているような気がしました。警部に昇進し課長となったヒロインの職場での職務や人間関係、そして子育てを主とした私生活についてのこもごもの感情が描写されるとともに、環境問題やエコテロリストなどの社会問題も取り入れて物語にふくらみを持たせようとする作者の意図が感じられる作品でした。

『雪の女』
『氷の娘』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『うつろな男の死』キャロライン・グレアム 創元推理文庫

2018-07-03

Tag :

☆☆☆☆

誇り高きコーストン・アマチュア劇団は、今回『アマデウス』を演目に選んだ。膨大な数の出演者と三十一の場面から成るこの戯曲、そもそも素人の手におえる代物ではなかったが、団員たちのエゴと思惑もからみ、劇団内にはいつしか不穏な緊張が形づくられていく。そして訪れた公演初日。芝居が進行する舞台の上で、その緊張は思いもよらぬ形を取って爆発した……。満員の観客を前に行われた大胆不敵な凶行!“世界は舞台”を地でいく怪事件の顛末を、躍動する人物描写と自在な語り口で『人間喜劇』さながらに描き出す、女流英国本格派の会心作。 内容紹介より



舞台『アマデウス』の公演初日、観客が見守る舞台上でサリエリ役の劇団員が剃刀で喉をかき切って死んでしまう。劇中の小道具であるその剃刀に安全のため切れないよう刃先に貼られていたテープは剥がされていた。状況から部外者の犯行とは考えられず、劇団の主役でプライドが高く尊大だった被害者を嫌う団員は多かったが……。訳者の故・浅羽莢子氏と違ってわたしは“演劇ミステリ”とか映画撮影現場ミステリが苦手なほうで、それは登場人物がやたら多い、役名役柄でこんがらがる、引用される名作の名台詞を知らない、洒落た口の聞き方が気に障る、そしてもっともな理由は奇矯な人物が出て来るからです。しかし、本書は人物の造型と描写が非常に丁寧で上手であり、彼らの劇団内での立場などの人物相関図がとても判りやすく、かつユーモラスな語り口で面白いのです。個人的に抱える問題や人間臭い思惑がそれぞれの視点から描かれるために物語に入りやすかったです。料理下手の奥さんが劇団員である、捜査に携わる主席警部は地味ながら良い味を出しているように思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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