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『首なし騎士と五月祭』ケイト・キングズバリー 創元推理文庫

2018-09-29

Tag :

☆☆☆

ここは紳士淑女御用達の静かな隠れ家、ペニーフット・ホテル。そんなホテルの常連客フォーテスキュー大佐が、村のパブからの帰り道に首なし騎士遭遇。さらに必死で逃げる途中で、五月の柱(メイポール)に縛られた女性の死体を見たというのだ。酔っぱらいの大佐の言うこととて、本気にする者はなかったが、翌日、ホテルの宿泊客のひとりから、妻が行方不明との訴えが。近くの森にいたジプシーたちに疑いの目が向けられたが、ホテルの女主人セシリーは、どうしても納得がいかず、石頭の支配人の心配をよそに、またしても調査を始める。好評シリーズ第四弾。 内容紹介より



〈ペニーフット・ホテル4〉。
今回は、ホテルの常連客である退役したお年寄りの大佐ふたりが陰と陽に別れて話題を呼びます。ひとりは何日も自室に閉じこもりっぱなしで食事時にも姿を見せず、心配したメイドがドア越しに声をかけると「失せやがれ」と言い放つばかり、もうひとりの大佐は村のパブで寝酒をたしなんだ後、帰り道を間違えた先で馬を駆る首なし騎士に出会ったうえに、五月祭のダンスに使われる柱に縛りつけられた女性の死体に出くわします。さらに森に居着いたジプシーの集団やホテルの従業員を捜しにロンドンからやって来た娘の存在も。
五月祭を目当てにした大勢の宿泊客が見込まれるというのに、殺人事件によって五月祭自体が中止になってしまうことを心配した主人公がまたしても事件の調査に乗り出します。あまり「首なし騎士」というアイテムを生かしきれていなくてミステリに関してはいつになく見所がなかったような気がしますが、このシリーズの魅力はなんといっても、女主人に彼女の女友だち、支配人、メイドやシェフなどの従業員、常連客、彼らが醸し出すキャラクターとその間で持ちあがる出来事にあると思います。今回も意外な方向から波紋が広がってきます。時代設定も雰囲気も好きなシリーズなのに、五作目以降、邦訳が止まっているのは残念です。

『ペニーフット・ホテル受難の日』
『バジャーズ・エンドの奇妙な死体』
『マクダフ医師のまちがった葬式』
『支配人バクスターの憂鬱』



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ニューオーリンズの葬送』ジュリー・スミス ハヤカワ・ミステリ

2018-09-26

Tag :

☆☆☆

ニューオーリンズの街を熱くするカーニヴァルの興奮は、山車にのった〈王〉の登場で頂点に達した。そのとき、沿道のバルコニーにいたカウガール姿の人物が腰の拳銃を抜き、おどけた調子で〈王〉に狙いをつけると、引き金をひいた。次に瞬間、〈王〉は床にくずおれた!事件を目撃したスキップ・ラングドン巡査は、被害者を知っていた。学校時代の友人の父親—ニューオーリンズの政財界を牛耳るサンタマン家の主人チョンシー・サンタマンだ。市民権運動の熱心な活動家として人望も厚かった彼が、なぜ?サンタマン家の知りあいということで交通巡査から殺人事件の捜査に抜擢されたスキップは、初めての経験にとまどいと興奮を覚えながら捜査に当った。だが、旧家の歪んだ人間関係の裏には、思いも寄らない衝撃的な秘密が……。猥雑なエネルギーに満ちた街を舞台に、旧家の悲劇を重厚な筆致で描く、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。 内容紹介より



主人公は身長が180㎝を超える大女でそれがコンプレックス、警察官というブルーカラーになったために医者の父親とは長年口をきかないほどの不仲。そんな彼女がカーニヴァルの交通警備をしていた目の前で街の有力者が射殺されてしまいます。人権擁護や芸術家への支援など広く行って来た被害者が何故祭りの最中に殺されたのか、父親の職業柄街の上流階級の人間と知りあいだった主人公は巡査の身ながら事件の捜査に加わります。被害者の妻、息子、娘、一家の友人、そして主人公、この複数の視点が入れ替わって物語が進むのですけれど、被害者家族とその友人はどれもこれも過去の夫婦関係や親子関係、人間関係で常に悶々としているシーンばかり。事件を契機に明らかになる名家の醜聞という典型的なテーマで、登場人物たちの人間関係と彼らの心の動きを入念に描いた心理ドラマではあるものの、思わせぶりな傍白と報われない愛情と憎しみに懊悩とする姿がくどく、読み続けていくとかなり面倒くさくなりました。ベテランの殺人課の刑事に混じって、あまり期待されず独自に捜査を進める主人公なので、警察小説というより警察ミステリみたいな形態をとっています。被害者の家族と友人それぞれの視点から見た主人公の存在が各々違って面白いのと、鍵となる謎のコールガールの正体が意外なことぐらいでしたが、ユニークなヒロイン像ではあると思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『渇いた警官』ウィリアム・J・コーニッツ 扶桑社ミステリー

2018-09-23

Tag :

☆☆☆

クリスマス間近の雪のニューヨークで、ふたりの黒人女性が殺された。目撃者も、犯人の遺留品もなく、喉を掻き切られて殺されているのに、血痕すらもないのだ。人種問題をはらんだこの難事件の扱いに苦慮した刑事部長は、特捜班のチーフにジョン・ビンダ警部補を据える。その苛酷な犯人逮捕のやり口から、マスコミに〈処刑隊長〉と呼ばれ、閑職に追いやられた辣腕の刑事だ。だが、チーフとなったビンダを嘲笑うように、殺人事件は連続する……警察小説に独自の作風を築いた名手が、NYに展開する大捜査線を描く力作! 内容紹介より



処女作『燃える警官』発表当時は現役の刑事だった作者の第四作目だそうです。わたしは本書がコーニッツ作品の初読になります。NYを舞台にした警察小説で、猟奇的な痕跡を残す殺害方法による連続殺人事件が発生します。発生当初はふたりの黒人女性が被害者だったため人種問題を恐れたNY市警は、力量はあるものの過去にマスコミに叩かれ閑職に配置転換されていた主人公の警部補を捜査の指揮を執らせます。しかしその後、事件の被害者は白人女性にも及び、ある事件に有名女優がかかわる事態になったためマスコミの注目を集めることになってしまいます。殺人事件においても被害者の人種の違いによって、警察やマスコミの扱い方が微妙に異なる傾向を皮肉った展開で始まり、たとえ有能であっても事件解決に万一問題が起きれば格好のスケープゴートととして矢面に立たされる立場になるという警察内部の権力闘争も描かれています。他の警察小説と異なるところは、警察無線コードや内部書類の符丁が多用されている点で、その独特の言い回しや使い方にリアリティがあり、警察官出身の作家らしさが感じられました。一方、人物造型に関しては、亡くなった妻の面影を引きずる以外に主人公の内面が代わり映えしなかったり、同僚たちにもこれといった個性が見られなかったのは残念でした。同じく警察官出身のジョゼフ・ウォンボーの諸作品における登場人物の多彩な面々、小さなエピソードを挿むスタイルに比べると変化に乏しくやや単調であり、もの足りなさが残ります。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『グリーン・サークル事件』エリック・アンブラー 創元推理文庫

2018-09-20

Tag :

☆☆☆☆

中東世界を震撼させた“グリーン・サークル事件”に実業家マイクル・ハウエルが関わることになったのは、不幸な偶然の結果だった。中東で同族企業を営む、一介の民間人にすぎないハウエルが、ゲリラ組織〈パレスチナ行動軍〉の指導者サラフ・ガレドに全面的な協力を強要されたとき、自由な東地中海人(レヴァンター)としての誇りが心中で頭をもたげる。困難な状況をかいくぐり、みずからと会社を守りぬくため危険な賭けに出るハウエル。当事者自身が詳らかにする、事件の真相とは。スパイ小説の大家が円熟の筆致で描く、1972年度CWA最優秀長編賞受賞作。 内容紹介より



シリアを舞台にした巻き込まれ型国際謀略小説です。パレスチナ対イスラエルの紛争という定番の状況設定ですけれど、そこにアンブラーらしくまったくの素人であり部外者の会社経営者を主役に仕立てているところがユニークなところです。多国籍に商売を営み、海運業の他に製造業も行っている点に目を付けられた主人公の会社に、イスラエルへのテロ攻撃を企てるパレスチナの分派組織が入り込み、主人公を脅してテロ計画に協力させる、という話です。主人公は商売のためにシリアの要人と関わるくらいにすぎず、なんらかの政治的な指向が強い訳ではないという三代に渡る商売人気質の持ち主です。そういう主人公が突如としてテロ計画に協力させらる立場に陥ったら、どういう行動をとり何を考えるのかがテーマになっています。テロ組織の指導者から彼自身と会社を意のままに扱われる屈辱と反発心、そして「パレスチナ解放という正義の闘争を進めるかぎりにおいて、無辜の局外者など存在しない」と民間人を犠牲にするのも厭わないことを公言する指導者への嫌悪感を抱きながら協力せざるを得ず、場合によって商売人らしい抜け目のないしたたかさを見せたり、一方ではイスラエルの情報機関に接触したりするなど、主人公に内在する様々な人格的な側面が巧緻に描かれていると思います。派手な演出はないものの、大御所らしい隙のないどっしりした作品という印象を受けました。

『あるスパイへの墓碑銘』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『暗闇の岬』メグ・ガーディナー 集英社文庫

2018-09-17

Tag :

☆☆☆

浜辺で見つかった女子大生の絞殺死体が持っていたのは、わたし、エヴァン・ディレイニー名義のクレジットカード。そのうえ暴力的な男たちに、「金を返せ」 とわたしが追い回されて、いったい何がどうなっているの?怪しいのは、わたしの恋人ジェシーの弟PJ。殺された女子大生の元彼氏のPJは、じつはとんでも ない計画に加担していて……。エドガー賞作家の絶好調サスペンス・シリーズ! 内容紹介より



〈エヴァン・ディレイニー〉シリーズの第三作目。よく言えば非常に娯楽性に富んでいる内容です。しかし、個人的にはそのサービス精神がお腹いっぱいでもう沢山と思えて来ました。中身は、ヒロインの身に危険が迫る、かろうじて危機を脱する、恋人なり身内なりに軽口を叩く、恋愛問題についての深刻な葛藤が起きる、というパターンが幾度か繰り返されます。ここでイライラするのはヒロインの学習能力の欠如です。危険に遭った後、まるで記憶がフォーマットされたみたいに、また敵の術中に落ちてしまう状況には、とても弁護士資格を持つとは思えない頭の悪さを感じます。事態はめまぐるしく展開するものの、犯人の見当はついているのもかかわらず、状況は同じところをぐるぐるうろうろするばかりでもどかしいのは、シリーズ第二作目の『裏切りの峡谷』と同じです。さらに恋人以外にいけてる男も登場するロマンス要素も盛り込まれるという具合で、こういうところも第二作、四作目を読んだ感想と変わりませんので、作者のこのシリーズにおけるスタイルはすでに確立しているのでしょうし、残念ながらこれから変化するようなことはないのかもしれません。

『裏切りの峡谷』
『死の同窓会』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『死者の書』ジョナサン・キャロル 創元推理文庫

2018-09-14

Tag :

☆☆☆☆

気持ちのいい朝だった。少年が、アイスクリーム片手に歩いている。小型トラックがやって来て、少年をはね上げた。ぼくの目の前でだ。あわてて駆け寄ると運転手がこう言った。「こんなはずねえんだ。わかっちゃいたが」ぼくの後ろで女の声がした。「あんたじゃないはずなのに!」……ここゲイレンは、天才作家フランスが半生を過ごし、愛し、そして死んだ町。ぼくは彼の伝記を書くために逗留している。町の誰もが彼のことをよく知っていた。町の誰もが、互いのことをよく知っていた。ごくありふれた田舎の町。でも何かがおかしかった…… 内容紹介より



ジョナサン・キャロルは初読です。本書は作者の処女作であるファンタジィ・ホラーです。発表されたのが80年で、おそらく時代設定も同様なのだと思いますが、全体の雰囲気は戦前のようなのんびりのどかな感じがしました。三十歳台の主人公は私立学校の英語教師をしており、休暇を利用して彼が愛するある作家の伝記を書くために、主人公と同じくその作家のファンである女友だちとともに、作家が亡くなるまで住み、彼の娘が今でも暮らしている町を訪れます。そこはどこにでもあるような田舎町でした。主人公たちはある家に下宿して執筆のための下調べと取材に取りかかりますが、ある朝、男の子がトラックにはねられた事故を目撃した時から、主人公は町に漂う奇妙な気配に気が付き始めます。ファンタジーとホラーが混ざると独特の不気味さを醸し出すことがありますけれど、この作品も奇妙なものをおびていて、牧歌的な風景がバグってしまったような、ある部分がズレているような落ち着かない気分を覚えます。それを作り出すものが徐々に明らかになっていき、主人公自身が町を形作る歯車の一つになってしまい、彼が執筆する伝記が受け入れられた時に彼の身に悲惨な出来事が降り掛かって来ます。派手な事件が次々に起きるわけではありませんが、じわじわ来る奇なるものを感じられる作品だと思います。




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『海辺の幽霊ゲストハウス』E・J・コッパーマン 創元推理文庫

2018-09-11

Tag :

☆☆

ニュージャージーの海辺に建つヴィクトリア様式の屋敷を買ったアリソン。シングルマザーの彼女は、築百年以上のこの屋敷を自らリフォームしてゲストハウスにし、9歳の娘メリッサと新しい生活を始めようとしていた。だがひょんなことから、屋敷に取り憑いているふたりの幽霊が見えるようになってしまう。それは、屋敷の前オーナーでツンツンしたマキシーと、気弱な私立探偵ポール。誰に殺されたか調べてほしいというポールの頼みで、調査を手伝うことにしたアリソンだったが、事件が起きてしまい……。明るく楽しい、コージーミステリ・シリーズ。 内容紹介より 



幽霊探偵というと、アリス・キンバリーの〈ミステリー書店〉シリーズが浮かびます。幽霊が地縛霊みたいになって屋敷の敷地以外に移動できない設定は同じですが、本書には探偵以外に屋敷の前の女性オーナーもに幽霊なって登場しています。さらにヒロインの他にも幽霊を見ることが出来る人物も複数いるという設定です。その幽霊の一人がヒロインに対してあまり協力的でないところと、ヒロインが料理はからきし駄目なのに、亡き父親譲りのDIY技術に長けているという点が特徴的なところでしょうか。ちょっと面倒くさい母親におしゃまな娘、親友一家、心惹かれる二人の男性、といった要素はコージーミステリの類型的な構造パターンを備えていると思います。ミステリとして見るべき点も特になく、443ページがかなり長く感じてしまうくらい話の進展が遅くて、内容に乏しい感じがしました。シリーズ第一作目ですからこれから変わっていくのかもしれません。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『生、なお恐るべし』アーバン・ウェイト 新潮文庫

2018-09-08

Tag :

☆☆☆☆

ベテランの運び屋ハントは、ある受け渡しの現場を保安官補ドレイクに発見され、逃亡する。彼はやむなく“償い”として仲介者から提示された仕事を受ける。だが、実はその成就を待ってハントを始末すべく、嗜虐的な“調理師”が放たれていた。死闘の末に3人の男を待ち受ける運命とは—?緊密なプロットと鮮烈な人物造型で全米を震わせた超弩級新人のデビュー作、いよいよ上陸。 内容紹介より



競走馬用の牧場を妻とともに営むかたわら、麻薬の受け渡しを行っている初老の主人公、保安官だったにもかかわらず、同じく麻薬の受け渡しをしていた父親を持つ若い保安官補、相手をナイフで屠るのを好むサイコパスの殺し屋、主にこの三人の視点で物語が進んでいきます。主人公は若い頃犯した殺人事件に、保安官補は父親の犯罪に、それぞれ人生に負い目や引け目を感じて生きています。それぞれの贖いの気持ちから取った行動が大きな惨劇の引き金となってしまう、という展開です。たった一度の若気の至りで人生を誤った主人公のやや感傷的な内省が冒頭から続いて、本書のテーマが明らかにされます。ただ、そこからの広がりがさして大きくなるわけではなく、話はバイオレンス・サスペンスへと進み、自称“調理師”の殺し屋の派手な犯行に持って行かれ気味です。殺し屋や麻薬の運び先の住所が簡単にわかったり、偶然主人公と保安官補が電話で会話したり、色々と都合の良い場面が目立ったりしますけれど、非常にスピーディで勢いがあり、デビュー作としてはなかなかのものだと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『死を招く料理店(トラットリア)』ベルンハルト・ヤウマン 扶桑社ミステリー

2018-09-05

Tag :

☆☆☆

ローマへやって来た小説家は、ある料理店にかけあい、店を舞台に新作を書くかわりに、ただで食事をさせてもらう話をつけた。その作品とは、レストラン評論家が殺され、探偵が真相を追うミステリーだ。しかも、小説を書く作家自身の日常も並行して描くという野心作である。ところが、彼が作中で描いた犯罪が、実際に店内で起きてしまった!小説と現実、双方の事件は次第に錯綜し、作家は両面の謎に立ち向かうことになるが……凝りに凝った構成においしい料理を満載した、グラウザー賞受賞の傑作。 内容紹介より



作者の自己投影であろうドイツ人作家が真作の執筆のためにローマに滞在し、ある料理店で無料で食事をとらせてもらうかわりに、新作の中で店の宣伝を行う約束を取りつけます。新作の構成は、探偵が調査する店のオーナーに嫌疑がかけられた料理評論家殺人事件と作家自身「わたし」が体験した店で起きた毒殺事件の二つが並行して描かれる作中作、メタフィクションの形を取っています。一方はフィクションでもう一方はノンフィクションという体裁です。形式としては珍しいミステリだと思いますが、ミステリ自体の拙さを形で補完させようとしている気がして、真相に近づくにつれてどんどん面白くなくなっていきました。ジャガイモとソーセージばっかり食べているドイツ人の目に映るイタリア人の食への執心を若干揶揄してみせたような作風にも感じました。たまに混ざる観念的な表現も頭に入ってきません。ふんだんに描かれる多彩なローマ料理やローマ市内の歴史的な建物はとても印象深くて、旅情を感じるかあるいは観光ガイドブックにはもってこいだと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『陸軍士官学校の死』ルイス・ベイヤード 創元推理文庫

2018-09-02

Tag :

☆☆☆☆

ニューヨーク州、1830年10月。引退した名警官ガス・ランダーは、ウエストポイント陸軍士官学校のセアー校長に呼び出される。同校の士官候補生がひとり、首を吊って死んだのだが、その遺体が何者かによって動かされ、心臓がくり抜かれていたというのだ。この事件を内々に処理したい学校から依頼を受けたランダーは、捜査の過程でひとりの年若い協力者を得る。彼は軍人の卵らしからぬ、青白い顔の夢想家で、名前をエドガー・アラン・ポオといった—青年時代の文豪ポオを探偵役に迎え、優れた時代描写と詩情に溢れた歴史ミステリの傑作登場。 上巻内容紹介より



ニューヨーク市警の職を辞し転地療養のためにウェストポイントに移り住んだ主人公には、妻の病死とひとり娘の家出という辛い過去があります。一人暮らしの彼のもとへ、士官学校で起きた奇怪な事件の捜査依頼が舞い込んできます。士官候補生たちの内情を探るために協力者として選ばれたのがエドガー・アラン・ポオというわけです。
極端に言うなら、物語の大部分は残り数十ページのために設けられた非常に長い前フリに当ると思いますし、作者のミスリードにはまって提示されたオカルト的な事件の真相に納得したと思ったら衝撃的などんでん返しが控えていました。こんなに仰天したのはルース・レンデルの『無慈悲な鴉』以来だと思います。伏線のひとつになっている「美しい女性の死が、詩人にとってもっとも高貴な主題だといえるのか」という主人公によるポオへの再三の問いかけが彼の心の底からの叫びであり、その意味するところが最後になって判ります。ただ難癖を付けせてもらうと、伏線不足のためにそれまでの話の流れにたいして、真相の部分の継ぎ方がやや強引な力業みたいに思えるような気もします。ある超有名な古典ミステリ作品と同じ体裁をとるのだなという印象と、プロットの有効性さに、なんだか俳句に付ける“それにつけても金の欲しさよ”という万能の下の句が思い浮かびました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
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てんちゃん1号

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