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『血のケープタウン』ロジャー・スミス ハヤカワ文庫HM

2018-11-28

Tag :

☆☆☆☆

アメリカ人逃亡犯ジャックは妻子とともに再出発するため、ケープタウンへやってきた。だがある夜自宅に押し入った強盗を殺した彼は再び自分が破滅の罠に落ちたことを悟る。その強盗にたかっていた醜悪な悪徳警官に目をつけられてしまったのだ。事件を目撃した元ギャングの夜警や悪徳警官を追う内部捜査官らをも巻き込み、男たちの運命は破局へ向かい走り出す。圧倒のスピードとリアリティで描く苛烈な南ア・ノワール! 内容紹介より



大金とともに妻子をつれてケープタウンにやってきた主人公、警察内部の腐敗を追求する手が迫る悪徳警官、犯罪組織から足を洗った警備員、主人公が殺した強盗の妻である麻薬中毒の女、内部調査を担う特別捜査官、これらの主要登場人物が押し込み強盗によって繋がって物語が進みます。事件によって主人公夫婦の仲が不穏に陥り、主人公の正体をつかんだ悪徳警官が彼の持つ大金を狙い、その警官に大切なものを奪われた警備員が復讐を誓い、特別捜査官は悪徳警官に対して過去の恨みを抱いている、という具合です。苛酷な自然のした貧富の差が激しく、犯罪がはびこる社会状況、そのなかでうごめく者たちの欲望や絶望をリアルに描き出しているのは、南ア在住の作者だからこそのであり、まるで実在する終末世界を覗いたような筆致が冴える優れた作品だと思います。視点を次々にかえ、余分な描写を省くことでスピード感と軽快さを出してテーマまつわる余計な重さを軽減させている感じがします。『はいつくばって慈悲を乞え』より本書のほうが出来が良い印象を受けました。
余談ですが、ある日本人のモータージャーナリストが、南アで開かれたポルシェのオープンカーの試乗会に参加した際、主催者から街中では車をオープンにしないように、さもないと信号待ちで強盗に遭う恐れがあるという注意を受けた話を思い出しました。

『はいつくばって慈悲を乞え』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『二度死んだ少女』ウィリアム・K.クルーガー 講談社文庫

2018-11-25

Tag :

☆☆☆☆

行方不明になった女子高校生の捜索に加わった元保安官コークは、吹雪に行く手を阻まれるが、不思議な影に助けられる。その影こそが彼女の魂なのではないか?ミネソタの大自然と家族を愛する男は、広大な谷がのみ込んでいた真相に驚愕する。アンソニー賞最優秀長編賞を受賞した傑作ハードボイルド第4弾。 内容紹介より



〈コーク・オコナー〉シリーズは初読です。
本書を読むにつれ、大自然にインディアン、家族愛、(元)公僕、という共通の要素を備えるC・J・ボックスの〈ジョー・ピケット〉シリーズを思い出しました(訳も野口百合子氏です)。さらに両シリーズの主人公二人は、どこか不器用であり、頭脳優秀な奥さんがいます。
大晦日の夜、パーティに出席していた少女がスノーモービルで出かけたまま行方を断ちます。春になって発見された遺体には撲殺された痕跡が認められ、容疑者として彼女の元恋人だったインディアンの血をひく少年が逮捕されてしまいます。少年の小父に恩義を受けていた主人公が、少年の弁護を務める妻のアシスタントとして事件の調査を始めます。逃亡した少年が身を隠していた地で、彼はキリストに出会ったと言うのですが……。主人公が猛吹雪のなか、捜索中に見た行方不明の少女の幻影、少年とキリストの遭遇、少女の墓石に現われた血の涙と大量の薔薇、蛇の大群の幻、少年が起こした数々の奇跡。インディアンに伝わる土着信仰とキリスト教が語られ、特にキリスト教が備える人に対しての冷酷な部分や信仰する者が抱えがちな独りよがりな解釈、そういったものが引き起こす悲劇を描いた作品だと思います。そして捜査する上で容疑者たちに対する感情を常に内省する主人公は、一度は神を捨てた人物として描かれています。心の揺れを認め、真摯に自らに問いかける柔軟性を失わない主人公の男らしさは、“イノセンスな少年”が大人になった姿なのかもしれません。

『ありふれた祈り』ハヤカワ・ミステリ





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『インスブルック葬送曲』レーナ・ヴァンツィーニ 扶桑社ミステリー

2018-11-22

Tag :

☆☆☆

イザベルが死んだ。彼女は家族から離れ、オーストリアのインスブルックでピアノを学んでいた。心不全だったいう。妹の死に不可解なものを感じたヴェラは、真実を突き止めるべく、ミュンヘンからインスブルックに居を移し独自の調査を開始する。時を同じくして、切断された腕だけが発見されるという猟奇殺人が当地で発生した。チロル州警察主席捜査官のハイゼンベルクが捜査に当るが、事件はやがて連続殺人の様相を呈していく……。オーストリアの俊英が古都の闇を描き出す鮮烈なデビュー作。〈解説・酒井貞道〉 内容紹介より



ドイツ推理作家協会賞新人賞を受賞したオーストリア発のサイコサスペンスです。軽度の心臓疾患があり、拒食症の傾向のうえに過度の運動を行ったために心不全で亡くなった妹、その死因に不審な点はなかったものの、彼女と疎遠だったことを後悔した姉であるヒロインは、何故妹がそれほど痩せようとしていたのか、音楽学校での生活を調べるためにインスブルックへ移り住みます。折しもそこでは遺棄された女性のものらしい両腕が発見され、警察による捜査が始まったところでした。やがて事件はヒロインの身辺にも及んできます。
妹の死とヒロインの調査、それとはまったく関連がなさそうな連続殺人事件と捜査活動、そして殺人犯の独白、主にこの三つが入れ替わって物語が進みます。ヒロインの知人が犠牲者の一人となったことから、彼女にも容疑をかけられ、さらに次なる殺人が……という展開に至ります。本書は作者のミステリ第一作目に当るそうで、やはり書き慣れていない感が強くあります。まずミステリ以前に、ヒロインの性格が他人につっかかるばかりの一辺倒で変化に乏しく感情移入できない、舞台になっているインスブルックの街自体の印象が描き切れていない。ミステリとしては、警察官のキャラクターが表面的でぎこちなさを感じる、真犯人への伏線が絶対的に欠けている、ミスリードがあからさま過ぎる。特に真犯人のこじつけ方がサプライズありきの強引さを感じてしまいました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『Ker(ケール)死神の刻印』エメリー・シェップ 集英社文庫

2018-11-19

Tag :

☆☆☆

移民局職員が殺された。数日後、現場にいたと疑われる少年の遺体が発見され、彼のうなじに文字が刻まれているのを見て、女性検事ヤナは驚愕する。同じように自分にも「Ker」という文字が刻まれているのだ。少女時代の記憶のないヤナが事件に深くのめりこむにつれ、徐々に浮かび上がる真実。そしてヤナに、自分の過去と対峙する時が迫るのだった……。異色のスウェーデン・ミステリー登場! 内容紹介より



自宅で射殺された被害者と現場に残された子供の指紋、被害者の妻の証言から明らかになった夫の不行跡と何者かによる脅迫、さらなる殺人事件。事件の捜査とある少女の過去が挿まれて進行する物語は短い節で構成されているためスピーディーで読みやすいです。しかし全体を通してみると、前半部分の勢いとか緊迫感が後半ではだれてきているように感じましたし、地道な捜査によって点と点が繋がっていくというより、棚ぼた的に点のほうから勝手に浮かびあがって来るような展開で警察小説の醍醐味はさほど感じませんでした。それはダークヒロイン役の主人公が検事であり、彼女が独自に動き回っているのも一因かもしれません。プロットは中世イスラム発祥のアサシン伝説と現代の不法移民問題を掛け合わせたような印象を受けました。実際に不法移民や難民が入国の際に悪徳な仲介業者の犠牲になることがあるのは事実でしょうが、さらにその上を行く状況はやや荒唐無稽な感じが強くてしっくりきませんでした。本書が当初出版社に相手にされず、自費出版に頼らざるを得なかったという一端がなんとなく判る気がします。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『名探偵モンク モンク、消防署に行く』リー・ゴールドバーグ ソフトバンク文庫

2018-11-16

Tag :

☆☆☆☆

潔癖性、強迫神経症、高所恐怖症……妻を何者かに殺害されて以来、あらゆる神経症に悩まされる休職中の刑事モンク。が、捜査の腕は超一流、次々と難事件解決の依頼が持ちこまれる。少女に依頼され、モンクは消防署の犬を殺した犯人を追うが、やがて同じ夜に起きた不審な火事との接点に突きあたる。型破りの天才探偵が、オリジナル小説版で登場! 内容紹介より



物語は、主人公モンクのアシスタントを務めるナタリーによる一人称で語られます。依頼人は彼女のひとり娘です。火事で消防士たちが出動していた間に、署のペット犬が撲殺されてしまい、その犯人を見つけて欲しいという依頼です。近くで起きた火事は当初煙草の火の不始末による事故と思われていたものの、犠牲者の座っていた椅子の位置から殺人事件だということを主人公が見抜いてしまいます。変わり者で近所との軋轢があった被害者の老女は地元の土地開発に反対して、ただ一人自宅の売却を拒んでいた人物でした。警察に依頼された主人公は放火殺人事件の捜査も手がけることになります。
未解決殺人事件のファイルをぱらぱら見ただけで、次々に犯人を指摘していくほどの天才探偵は、数々の神経症による奇矯な言動でも目立っているのですが、その原因には妻を殺され事件を解決できていないという罪悪感が根底にあるという設定が、この物語をただのコミカルでへんてこな探偵物語にしていない陰影付けをしているでしょう。さらに空軍パイロットだった夫が戦死したために主人公と同じ罪悪感、喪失感を抱いているナタリーが彼を思いやる場面が印象に残りました。また、彼女が単なるワトスン役に止まらず、ロマンスを含めた彼女のサイドストーリーが用意されているところ物語に厚みを持たせています。ミステリ的にあっと驚くようなトリックが仕掛けられているわけではないけれど、軽快なストーリー展開が読んでいて楽しさや心地良さを感じました。

『名探偵モンク モンクと警官ストライキ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『フレッシュアワー氏の蝋管』スピア・モーガン ハヤカワ文庫NV

2018-11-13

Tag :

☆☆☆☆

銀行の金庫室に長年眠っていた大量の録音用蝋管。それは大恐慌下の1934年、検察官トム・フレッシュアワーが遭遇した事件の記録だった。当時、彼はアマチュア考古学者レイニーとともに遺跡発掘品収集家の首なし死体が発見された事件を捜査していたのだ。真相を追う彼らの前に次々と発生する凄惨な殺人と発掘品盗難。その末に浮かびあがる驚くべき事実とは?情感溢れる筆致でサスペンスフルに描く、アメリカ図書賞受賞作。 内容紹介より



「時は一九三四年。禁酒法は終わり、ニューディール政策は最初の大衝撃をもたらしたあと、一休みしていた。(中略)私は四十八歳やもめだった」(p19)。舞台はオクラホマ州境に接するアーカンソー州セバスチャン郡フォートスミス。主人公フレッシュアワーはインディアンの血が入った孤児で、現在検事側弁護士として郡検事補佐を務めています。インディアンの塚の出土品の収集家が殺された事件を、彼は郡判事の命を受け、故人の遺産を相続したアマチュア考古学者とともに調べることになります。大恐慌時代に地方にはびこる腐敗や犯罪、差別、特にインディアンを食い物にする者たちの暗躍、インディアンたちが遺した古代の出土品を巡る目論見を主人公たちが地道に暴き出していくという展開です。国の政策や役人の思惑によって翻弄され、人知れず消えつつあるインディアンの伝統文化と彼らが抱える問題を、ある田舎町に置き換えて縮図にした物語であり、憤りと諦観そして哀切の漂う作品だと思います。主人公たち対黒幕以外にも、突然仕事に目覚めた検事と悪徳保安官の対決という構図も描かれてなかなか面白く、主人公たちを補佐する初老の廷吏のタフガイぶりも良い味を出しています。大不況に加えて、戦争の影が忍びよる不吉な空気が覆い始める時代状況を背景にしたノスタルジックな作品でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『死の散歩道』キャロリン・G・ハート ハヤカワ文庫HM

2018-11-10

☆☆☆

難事件もなんのその、見事に解決する老婦人、ヘンリー・Oとはわたしのこと。今回も消えた娘を捜すうち、彼女の職場での孤立ぶりを早々と突き止める。さらに娘が謎の刺青の男に追われていた事実を知るが、順調なのはそこまで、わたしは先の見えぬ道に迷ってしまう。その矢先、例の男がわたしを脅してきた!人生は山あり谷あり事件あり、円熟のヒロイン、ヘンリー・Oはへこたれない。老練な推理が冴える本格ミステリ。 内容紹介より



舞台は、スペインやメキシコの文化や風俗が漂うテキサス州のサンアントニオ、そこに店を構えるアンティーク・ギャラリーです。来歴の正しい本物の品しか扱わないことから顧客の信頼があつい家族経営の店です。そこの従業員である孫娘からの連絡が突然途絶えたため、主人公の親友である祖母から様子を見に行ってくれないかという依頼があります。自宅の部屋は荒らされ仕事場からも急に姿を消したという娘の行方を捜すうちに、ヒロインは怪しい男と遭遇し、娘が持ち去った品物を返すよう脅迫されます。
アンティーク・ギャラリーとその顧客を泊めるホテルを経営する一族、その長である母親、兄弟とその妻たちや姉妹間の確執を事件に絡ませるというオーソドックスなプロットで、異国情緒を感じさせる風景、風物を混ぜ合わせて話を進める体裁をとっています。主人公である「わたし」のときどきの感情の動きを細かく描くのがこのシリーズの特徴だと思うのですが、それが齢を重ねた彼女の人生からなる人間的魅力、元記者の経験からくる洞察力を良く表し、また一族の複雑で微妙な関係や心情を解き明かしていく過程で効果的に働いているように思いました。ただミステリに関しては物足りなさを感じました。

ユーザータグ:キャロリン・G・ハート




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『何か文句があるかしら』マーガレット・デュマス 創元推理文庫

2018-11-07

Tag :

☆☆☆

身を固めることなんて考えもしなかったわたしが、まさか演劇修業で訪れたロンドンで出会った男性と、電撃結婚するなんて!愛しい旦那様のジャックと一緒に、故郷サンフランシスコに帰還したチャーリーだったが、ホテルのスイートで大量のプレゼンとともに新婚夫婦を出迎えたのは、身元不明の女性の全裸死体だった。これって不幸な偶然?それとも、このわたしに対する脅し?挑発?よろしい、ならば受けて立つわ。親戚やみずからの運営する劇団をおびやかす、謎の相手に立ち向かうセレブ探偵とその旦那様の華麗な活躍、シリーズ第1弾。 内容紹介より



非常にお金持ちで私設の劇団を運営するヒロインが新婚早々、夫を連れてロンドンから帰郷した途端、ホテルの浴室で死体を発見!それ以来、ヒロインに降り掛かるアクシデントの数々、夫の過去にまつわる疑惑、なんだかサスペンス小説みたいな展開ですがちょっと変わったコージーミステリです。
コージーとしてみたら、可もなく不可もないヒロイン夫妻以外の登場人物たちは、それぞれユニークなキャラクターの持ち主で良いと思うのですけれど、いかんせんミステリ部分が拙い感じがしました。ヒロインの夫を狙った犯行の数々が非常に回りくどくて犯人の意図が掴み辛いために、ミステリが希釈されているみたい薄く感じました。そのために話が全体的に長くなり、ヒロインの従妹の誘拐事件などはいったいどういう意味があったのかが不思議です。そのために話の先が読めないという作者の意図しないメリットはあるかもしれませんけれど、内容を切り詰めて方向性を修正したほうが良いのではないかという気もします。不慣れなのは否めませんが、なにか魅力を感じる作品でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クラッシャーズ 墜落事故調査班』デイナ・ヘインズ 文春文庫

2018-11-04

Tag :

☆☆☆☆

クラッシャーズとはアメリカ運輸省所属の航空機事故調査チームのことである。—ポートランド近郊で旅客機が墜落した。遺体検視の専門家トムザック、元潜水艦ソナー員で音声解析の天才キキ、元ロンドン警視庁の爆薬の専門家ロビーら調査チームは現場に急行、無惨な事故現場で地を這うような調査を開始するが……。圧巻の大型スリラー。 上巻内容紹介より



航空機の墜落事故が発生すると、現場に駆けつける調査チームはどのような専門家からなり、どんな調査方法や分析方法をとるのか、というところがとても詳細に書かれています。特に冒頭では、事故発生直後に偶然現場近くに居合わせた調査チームの病理医が負傷者救護と現場保存に関わる様子も描かれていて緊迫感と迫真性を感じました。またチームの一員である日系アメリカ人の調査官が行う連絡や調整といった事務的な仕事にも触れられて現実味を持たせています。墜落の原因が爆薬による爆発という可能性が否定され、機体や機器の損傷や故障、あるいは機長らの操縦ミスが疑われるのですけれど、死傷者の体内に残っている物品まで取り出し、その乗客がどの座席に着いて、どのようにその物が体内に入ったのかまでマッピングする作業も描かれています。ストーリーは事故調査と共にテロ計画を企む某組織の行動の二本立てで進み、テロ組織に潜入した元捜査官の行動も緊迫感を与えています。物語は最後半部に見せ場となるエンターテインメントに急進展するのですが、それが非常に現実離れ一歩手前で前半のプロの地味ながら緻密な作業と比べると、良いのか悪いのかすごくアメリカ的な展開に感じました。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『火星航路SOS』E・E・スミス ハヤカワ文庫SF

2018-11-01

Tag : SF

☆☆☆

地球=火星航路に就航中のアルクトゥール号が、何者かに襲われた。奇怪な光線により船体は分断され、緊急脱出した救命艇も牽引ビームで捕縛された。たまたま惑星間航行会社の社長令嬢を連れ、宇宙船下部のエンジン部門を案内していた計算士スティヴンスは、敵の隙をつき、閉じこめられていた区画を分離、脱出に成功するが、二人が漂着したのは、未知なる衛星ガニメデだった……“スペース・オペラの父”が描く宇宙冒険絵巻! 内容紹介より



ハードSFには苦手意識があるのですけれど、〈レンズマン〉シリーズのようなスペース・オペラは昔よく読んでいました。本書が発表されたのは1931年、〈レンズマン〉シリーズの前に書かれたノンシリーズ作品だそうです。地球人、金星人、火星人が良好な関係を保っている時代設定で、主人公が計算士として乗り込んだ火星航路の宇宙船が正体不明の宇宙船から攻撃を受けて航行不能に陥ります。主人公は航行会社の社長令嬢とともに船から脱出した後ガニメデにたどり着き、自給自足の生活を送りながら救助を求める通信機器を作り始めます。ガニメデには酸素もあり、森や川、獲物となる動物もいるという環境は、スペース・オペラのお約束の典型みたいです。しかも主人公は天才的なエンジニアで機械もそれを作る工具も一から手作りし、気丈な令嬢が彼を支え、時には動く食虫植物のような異様な姿形をした生き物と戦ったり、二人してロビンソン・クルーソーみたいな生活を送ります。やがて冒険は衛星カリストや土星にも及んだのち、木星の種族同士の戦争も描かれていきます。やはり全体的に時代を感じさせもしますが、刺激過多でない肩の凝らない冒険空想科学小説の魅力を感じました。

ユーザータグ:SF




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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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