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『踊らされた男たち 大統領候補の系図を追え』ダンカン・カイル 新潮文庫

2019-04-28

Tag :

☆☆☆

大統領候補の系図は呪われている!?—潔癖なイメージを売り物にする民主党次期大統領候補・ライデンの家系調査を依頼されたトッドは、図らずもライデンの祖父の忌まわしい過去を知るが、事実の公表を恐れた選挙参謀は彼を追う。調査を続けるトッドはさらに深刻な事実を突きとめ、恋人のロビンとともに候補者に会おうとするが……。大統領選挙の舞台裏に展開する異色の冒険小説。 内容紹介より



1985年に発表された作品で、時代背景は恐らくレーガン大統領の任期中だと思われます。民主党次期大統領候補者たちが熾烈な指名争いを繰り広げているなか、有力なアイルランド系候補者の選挙参謀の依頼により、ロンドン在住の系図調査員である主人公が調査を始めます。候補者の祖父はアイルランドからの移住者で、彼は妻とともに馬車にはねられ事故死しますが、その妻は男児を出産した後に亡くなります。そのため馬車の所有者がその子を養子にして育てたという経緯があります。主人公は候補者の曾祖父が兵隊だった頃の不行跡、そして性犯罪の常習者だったことを突き止めます。それを知った候補者の異父弟は、選挙戦に与える重大なダメージを恐れて調査を止めさせようと画策します。主人公は調査している男の子孫が米国の大統領候補者だとは知らず、自身に危険が迫っていることなど夢にも思っていないので、本人が受ける緊張感なりサスペンス性はかなり後半になるまで高まりません。そういう点は物足りなさがありますが、公文書館などの施設を訊ねてまわり、軍籍簿や航海日誌を調べ、目的の記録を探しだすという家系調査の部分はとても興味深く感じました。タイトルにまつわるある真実に繋がる何気ない伏線の張り方が見事なように、捻り技がかなり効いている異色作だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ヴァイオリン職人の探求と推理』ポール・アダムス 創元推理文庫

2019-04-25

Tag :

☆☆☆☆

ジャンニはイタリア・クレモナの名ヴァイオリン職人。ある夜、同業者で親友のトマソが殺害されてしまう。彼は前の週に、イギリスへ“メシアの姉妹”と言われるヴァイオリンを探しにいっていた。それは一千万ドルを超えるの価値があるとされる、幻のストラディヴァリだった。ジャンニは友人で刑事のグァスタフェステに協力し事件を探り始めるが、新たな殺人が……。虚々実々のヴァイオリン業界の内幕、贋作秘話、緊迫のオークション、知られざる音楽史のエピソード。知識と鋭い洞察力を兼ね備えた名職人が、楽器にまつわる謎を見事に解き明かす! 内容紹介より



クラシック音楽とストラディヴァリがセットになって出てくるだけで、なにやら高尚なミステリ作品に思えてくる歴史的ブランドに弱いわたしですけれど、作品に組まれているミステリ自体(特に真犯人へ導く伏線の乏しさ)はコージー並みのレベルでしかありません。読みどころは、とうていイタリア人男性とは思えないもの静かで控え目な初老の主人公のキャラクターと彼が押しつけがましくなく披露する古典音楽やヴァイオリンにまつわる逸話や秘史にあります。妻は亡くなり、子どもたちは成長して孫もでき、人生の終わりの始まりに差し掛かった主人公の内省的であり、強い意志を備えたその姿はとても魅力的に映ります。また彼と音楽友だちが自宅に楽器を持ち寄って四重奏を奏でる、物語の導入部のシーンには引き込まれました。物語の構成はイタリア国内に留まらず、イギリスの荒涼とした場所に主人公たちが赴くシーンも設けてあり、そこら辺りは英国冒険小説の一端をかいま見たように感じましたし、これは英国出身の作家のなせるわざなのかも知れません。これから期待できるシリーズだと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『破戒法廷』ギ・デ・カール 創元推理文庫

2019-04-22

Tag :

☆☆☆☆

年に数回、それも浮浪者の弁護に立つくらい。それが活動のすべてである老弁護士のもとに、実にセンセーショナルな事件が持ちこまれた。大西洋横断汽船内で発生したアメリカ青年殺し。すでに犯行を自供しているのは、目が見えず、耳が聞こえず、口もきけない巨大な体躯の男。犯行現場からは、この男の血まみれの指紋も採取されている。しかも彼は、裁かれることをひたすら望んでいるのだ!誰もが有罪は確定的だと思った。だが老弁護士は、一見怪異な容貌の下に隠された男の真の姿を見逃さなかった……。感動を呼ぶフランス法廷ミステリの傑作! 内容紹介より



三重苦である自身をモデルにした小説が評判になったアメリカでの妻を伴った講演旅行後、フランスへの帰国途中の船内で若手作家はアメリカ青年の刺殺体とともに発見されます。彼は犯行を自供した後、沈黙を貫き通すために前任の弁護士から匙を投げられ、主人公の老弁護士に依頼が舞い込みます。自供や状況証拠から被告人の犯行は明らかに見えるものの、見ず知らずの人物を殺害した動機が不明な不可解な事件の弁護を主人公は引き受けることになります。盲人たちが象を触る、という寓話がありますが、この法廷劇は象を三重苦の青年に、盲人たちを証人たちに見立てた、アイロニカルな一面も持つ物語に感じました。容姿は醜い巨漢であり、発する声は動物の咆哮のような被告人について、母親と姉、義兄、恩師、学友、妻、これらの証人たちの証言から見た被告人について暴力的、わがまま、純粋、知性的、などの様々な証言がなされます。そんな思い込みや誤解や恣意的な証言の中で、被告人に教育を施した学院長の人物像と彼の証言はとても印象的です。プロットとしては古典的な形式で主人公の造形は時代を感じさせますが、なかなか妙味のあるリーガルサスペンスではないかと思いました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『将軍の末裔』エレナ・サンタンジェロ 講談社文庫

2019-04-19

Tag :

☆☆☆

弁護士から平凡なOLのパット宛に突然手紙が届いた。見知らぬ91歳の老女が、田舎の広大な土地を彼女に遺すつもりだというのだ。現地に滞在して歴史を深く知るうちに、過去の激しい戦闘の様子を幻視するようになるパット。死の気配が漂う土地でついに事件は起きた!伏線を張り巡らせた骨太の傑作ミステリ。 内容紹介より



荒涼とした古戦場、陰鬱な古い館に狂気をはらむ老女主、身の回りで起きる不気味な現象に正気を失いつつあるヒロイン、内容紹介を読んだかぎりでは、そんな重厚なゴシック・ロマンかと思っていました。しかし、南北戦争の舞台になった土地ではありますが、そこには自然や野生動物が一杯、四十年間教師を勤めたかくしゃくたる老女が住む屋敷には家電はもちろんパソコンもレーザープリンターも備えられています。普通の会社員であるヒロインは、つまらない仕事に嫌な上司を銃撃することを夢想するやや戦闘的な今時な女性です。そんな彼女が辺りで開発が進む土地を遺贈する話につられて当地に滞在すると、やがて幻視、幻聴、幻臭などが身に起きるようになります。物語は現代と南北戦争当時のある人物の話とが交互に語られて進んでいきます。ヒロインに起きる幻覚の訳とは。過去の人物の目的は何なのか。広大な土地を廻っての住民の思惑、戦争によって一家に起きた悲劇が明らかになり、やがてヒロインに危険が迫ります。ミステリに関しては、真犯人の意外性のみが重要視されて、その人物につながる伏線がおろそかになっており、人物を見分ける経験を充分に積んだ者がその人間性に気付かなかったという点には不自然な感じがしました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『掘り出し物には理由(わけ)がある』シャロン・フィファー コージーブックス

2019-04-16

Tag :

☆☆

アンティークのボタンに陶器、絵葉書に古い結婚式の写真—興味のない人にはただのがらくたでも、蒐集家(コレクター)にはうっとりするような宝の山。そんな貴重なアンティークを探し出すのが、蒐集家にしてフリーランスの「拾い屋(ピッカー)」であるジェーンの仕事。といってもまだ駆け出しで、ついつい自分の好きな雑貨に目がいってしまうのが玉にきず。その日も七つ道具をひっさげ、お宝をさがしに朝からガレージセールへ、美しい植木鉢と出あい、最高に幸せな気分で帰宅した彼女に予期せぬ事態が!隣家の主婦が何者かに殺されたのだ。そして、遺体の服から消えていたアンティークのボタン。いったいなぜ?蒐集家の鋭い観察眼で事件の真相に迫る! 内容紹介より



〈アンティーク雑貨探偵〉シリーズの第一作目です。ふだんジャンク品や雑貨を漁ってばかりのヒロインが古美術や由緒ある陶磁器に手を出さない理由は、もちろん予算の関係が大きいのですけれど、やはり元の持ち主の愛情や思い入れを品物から感じ取れるからです。そういう彼女の姿勢がこのシリーズの魅力になっているポイントだと思います。本書では、広告代理店を辞めた彼女は専業主婦のかたわらアンティーク雑貨の拾い屋として活動し、プロになろうかと考えているところでしたが、隣人とのある出来事を契機に夫婦間のすれ違いが表面化して、彼女は夫と別居中の身になっています。これまでの夫への言動を省みて後悔したりする場面が、それほど深い掘り下げている訳ではありませんが、ヒロインの内面を描いている点は好ましく思えます。また彼女の母親のユニークなキャラクターも印象的ですし、それ以外にも彼女の親友やコレクターの師匠みたいな人物みたいに味のある登場人物が多く揃っています。ミステリとしてはコージーの域を出ていないものの、読みどころはそういうところにあるように感じました。拾い屋たちの生態は興味深いので、これに骨董品に関するうんちくやこぼれ話がもっと多く披露されていれば良いのですけれど。

『ガラス瓶のなかの依頼人』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『邂逅 シドニー州都警察殺人捜査課』キャンディス・フォックス 創元推理文庫

2019-04-13

Tag :

☆☆☆

シドニーのあるマリーナで、海底からスチール製の収納ボックスが発見される。1メートル四方の箱には、傷だらけの少女の遺体が収められており、周囲から同じような遺体の入ったボックスが20も見つかった。シドニー州都警察殺人捜査課に異動してきた刑事フランクは、新たに相棒になった署内一の敏腕女性刑事エデンと共に未曾有の大量死体遺棄事件を追う。だが、以前の相棒が犯罪者に撃たれ殉職したばかりだというエデンは、何か秘密を抱えているようで—。オーストラリア推理作家協会賞を2年連続で受賞した、鮮烈な警察小説シリーズ開幕! 内容紹介より



異動してきた警察署の殺人捜査課で、「わたし」が相棒になった女性刑事の兄もまた同じ課に所属する同僚刑事。兄妹刑事と担当する死体遺棄事件の捜査を「わたし」から、そして犯人側からの視点も挿みつつ、また兄妹が幼かった頃に降り掛かったある事件と、その後に彼らを育てた人物との物語が過去にさかのぼって描かれる形式をとっています。事件その物は興味深いのですけれど、この作品の欠点はメインキャラクター三人の造形の浅さにあるように思います。恐らく「わたし」は本シリーズではワトスン役になるのでしょう。彼は二回の離婚や同僚の自殺を経験して、かつての自身の人間性に対して自責の念を抱いていたりする訳ですが、それ以外はかなり魅力に欠ける人物です。これから主役になるのであろう女性刑事は、キャロル・オコンネルのキャシー・マロリーみたいなクールでタフな鉄の女なのか、今ひとつイメージがはっきり固定していません。さらに一番ひどい彼女の兄は優秀で斜に構えている感じがするものの、刑事として一向に活躍する気配を見せない表面的な人物像です。物語は、これからクライマックスへとなだれ込もうという時になって、恋愛ドラマと共に、「わたし」の内省が挟み込まれて話の勢いが鈍るという具合でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ホテル1222』アンネ・ホルト 創元推理文庫

2019-04-10

Tag :

☆☆☆

雪嵐の中、オスロ発ベルゲン行きの列車が脱線、トンネルの壁に激突した。運転手は死亡、負傷した乗客たちは近くの古いホテルに非難した。ホテルには備蓄がたっぷりあり、救助を待つだけのはずだった。だが翌朝、牧師が他殺体で発見された。吹雪はやむ気配を見せず、救助が来る見こみはない。さらにホテル別棟の最上階には、正体不明の人物が避難しているとのうわさが。乗客のひとり、元警官の車椅子の女性が乞われて調査に当るが、事件は一向に解決せず、またも死体が……。ノルウェーミステリの女王がクリスティに捧げた、著者の最高傑作! 内容紹介より



雪嵐に閉ざされたホテル、次々に増える死体、さらにクリスティへのオマージュともなれば、ミステリ好きなら期待して手に取って読んでみたくなるのは必然。しかも探偵役は安楽椅子ならぬ車椅子の元女性警察官です。さらに牧師、医者、弁護士とクリスティ作品に欠かせない職業人も揃えられ、ミス・マープルみたいな終始編み物にいそしむ老婦人も居ます。だがしかし、ホテルに閉じこめられた人数は、避難した乗客に加え、ホテル従業員、もとからいた宿泊客を入れると200人近くにもなるというもの。そんなスケールの大きなクローズドサークルには、公的機関から厳重に警護されている謎の人物の存在というおまけも付いています。過去に犯人を逮捕する際に銃撃され下半身不随になった、人嫌いでぶっきらぼうな主人公に、頭脳明晰で自信家の小人症の医師や実直な地元弁護士、さらにホテルの女性支配人などの個性的な人物が登場しますが、サスペンス性やミステリ部分についてはかなり水準が低いと思います。この状況下で起きる互いの反目や疑心暗鬼、緊迫感が乏しく設定を生かしきれていない感じがしました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『燃える天使』ジェイムズ・リー・バーク 角川文庫

2019-04-07

Tag :

☆☆☆

刑事ロビショーは、街に舞い戻った一匹狼の犯罪者ソニー・マーサラスから、謎の手帳を託される。ソニーは、ニュー・オーリンズを支配するマフィア、ジアカーノ一家の逆鱗に触れ、中米に潜伏している筈だった。手帳のコピーを持つソニーの恋人が何者かに惨殺されたのは、直後のことだった。ソニーはなぜ危険な街に戻ったのか。手帳に記された秘密とは何か。不穏な動きを続けるマフィアの狙いは。答えを求めて動き始めたロビショーを、不気味な男たちが執拗につきまとう……。ミステリというジャンルを超越し、未踏の境地を独り行く巨匠バークの最高傑作。 内容紹介より



本書は、デイヴ・ロビショー シリーズの第8作品目に当ります。このシリーズ作品って、警察ミステリ、ハードボイルド、バイオレンス、クライムノベルという要素であらかた出来上がっていると思うのですけれど、こういう具材とその配合と調理法はもうそろそろよいかなあ、というのがシリーズ作品を三冊読んでみての感想です。まずバイオレンスの部分、主人公と友人が犯罪者にキレて殴る蹴るの暴行を加える場面があるのですが、その犯罪者がマフィアとかポン引きだったりして、それ相応の残忍で卑劣なことをやっているのだとしても、彼らの犯したその犯罪場面が描かれていないために読者には主人公たちの怒りの素が共有できていないので、一方的な暴力に若干引き気味になってしまうのです。それから登場人物たちが共通して持つベトナムや中南米での戦争や傭兵体験による深刻なトラウマからくる悪夢だったりイメージの奔流に苛まれる設定(本書は米国で1995年刊行、日本では2002年)が、ちょっと現代と時代のずれを感じてしまうし、食傷気味になってしまうところも感じます。親しかった死者との会話から今回は幽霊が出てくる展開になってちょっとだけホラー要素も入っています。それはそれで面白いのですが、それ以外は主人公たちの行動パターンが同じに思えて、シリーズを通して同じ具材をグツグツ煮込みすぎ、とても濃厚になったために好き嫌いがわかれてしまうような印象が残りました。

『ブラック・チェリー・ブルース』
『過去が我らを呪う』
ビリー・ボブ・ホランド シリーズ
『シマロン・ローズ』
『ハートウッド』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『死を哭く鳥』カミラ・レックバリ 集英社文庫

2019-04-04

Tag :

☆☆☆

酒を飲まない雑貨店経営の女性がパートナーとの喧嘩直後、飲酒運転で道路脇の木に突っ込み即死した。事故として処理しようとしたパトリックだったが、なぜか気になって資料室にこもるうちに、数年前の泥酔自殺に辿り着く。偶然、二つの出来事のあり得ない共通点を見つけ、さらに、スウェーデン各地で同じような事故と事件が起きていることが判明して…。世界で1000万部突破の大人気シリーズ第4弾! 内容紹介より



〈エリカ&パトリック事件簿〉シリーズ。
酒を飲まない女性が大量の飲酒後に車を運転して事故死したものと思われる状態で発見されます。遺体の状況を不審に思った主人公が事故現場の遺留品を手がかりに調査を進めると、同じような事故や事件が各地で起きていたことが判明する、という興味をそそられる掴みです。また各章のはじめには思わせぶりな独白が挿まれる仕様になっています。パトリック刑事が主体となった警察小説に、パートナーであるエリカとの結婚式に向けてのエピソードや彼女の妹をめぐる話、さらに当地に撮影にやってきたテレビ番組のリアリティショーとその出演者たちの話題も付け加えられて物語は進んでいきます。リアリティ番組の件はミステリに絡ませているとはいえ、さほど必要性があったのかどうかは疑問で、単なる話題性で取り入れたような印象がしました。各主要登場人物について目配りが利いており、それぞれの心理描写も大なり小なりなされていると思うのですが、なんだか全体的に掘り下げ方が不十分で浅さを感じてしまいました。特にリアリティ番組の出演者は、いわゆる今時の若者風な軽佻浮薄なイメージ付けがなされているために作品全体の印象に影響(サスペンスTVドラマみたいな)を与えているのかもしれません。そういう上っ面な造形の登場人物が多いなか、警察署長に関しては前作同様にキャラクターが際立っていて非常に人間的魅力を感じました。

『氷姫』
『説教師』
『悪童』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ナイト・ドッグズ』ケント・アンダースン ハヤカワ文庫NV

2019-04-01

Tag :

☆☆☆☆

ヴェトナム戦争直後のオレゴン州ポートランド。戦争の後遺症により街は荒みきっていた。凄惨な殺人、暴行、コカインの蔓延。元特殊部隊員のパトロール警官ハンソンは、相棒のベテラン警官とともに、次々と起こる犯罪と闘っていく。戦場の悪夢と孤独にさいなまれながらも彼は暴力も辞さずに街を守る、一匹の盲目の老犬だけを心の友として……現代ハードボイルドの巨匠ジェイムズ・クラムリーが絶賛した話題の警察小説。 上巻内容紹介より



特に物語の軸になるような大事件が据えられることはなく、担当地区で起きる様々な犯罪や法律違反、または事故や諍いなどの出来事を処理していくパトロール警官本来の姿が描かれていきます。そういうところと、ともに元警官の経歴がある点では、ジョゼフ・ウォンボーとその作品に共通点があるように思えます。しかし本書の時代背景はヴェトナム撤退後であり、主人公は特殊部隊員として苛酷な体験し、多くの戦友を亡くしたトラウマを抱える帰還兵です。自らが法の番人となって貧困地域の秩序と住人の安全を守る仕事を気に入っている主人公ですが、戦友とともに命をかけて戦った国が犯罪や麻薬に汚染されていく状況を目の当たりにしなくてはいけないという現実にも日々晒されています。変人扱いされている職場には信頼するパートナーと主人公を目の敵にする刑事がいるなか、仕事への熱意と無力感、二つの間で微妙なバランスをとっていた主人公の状態が、同じく帰還兵の壮絶な死にかかわったことや麻薬の売人になった元戦友の出現により変化を見せ始めます。そしてたて続けの死を体験したことによって、疲弊していた主人公の心は……。元警官の作者はまた実際に特殊部隊に所属していた帰還兵という経歴を持っているため、警察官の私生活やパトロールなどの職務内容はもちろん、ヴェトナム戦争当時のエピソードにもリアリティを感じました。ミステリ性は低いのですが、いわゆる文学よりの作品として秀作だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
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てんちゃん1号

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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