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『氷の天使』キャロル・オコンネル 創元推理文庫

2019-06-30

Tag :

☆☆☆

キャシー・マロリー。ニューヨーク市警巡査部長。主にコンピュータ・ハッキングで発揮される天才的な頭脳と、張り込みや尾行ができないほどの鮮烈な美貌の持ち主。盗みと逃走に明け暮れ、孤独を友とした幼年時代ゆえに心に深い傷を持ち、感情を他人に見せることはない。彼女には善も悪もない。あるのは目的の遂行だけ。里親である刑事マーコヴィッツが捜査中に殺され、勝手に捜査を引き継いだ彼女は、裕福な老婦人ばかりを狙う連続殺人鬼を追いはじめる。怪しい霊媒、大魔術師の未亡人、自閉的なチェスの天才児……奇矯な人物の絡み合いに隠された真実は?ミステリ史上最もクールなヒロインの活躍を描くシリーズ第1弾! 内容紹介より



連続殺人事件を捜査中に三人目の犠牲者とともに刺殺された警視、それがヒロインの養父です。被害者の身内ということで捜査から外され、強制的に休暇をとらされた彼女は、故人の遺した捜査メモや同僚刑事から得た捜査情報をもとに単独で犯人を追い始めます。触れなば凍傷を負いそうなクールなヒロインの際立つ個性、それを回りの知人、同僚たちによって浮かび上がらせる手法がシリーズ一作目から確立されている印象です。さらに奇矯な登場人物たちを配し、彼らのいわく付きの過去を背景に置くことで目くらましを行う趣向もこのシリーズの特徴のひとつなのかもしれません。本書では、興行中に事故死した魔術師の霊能力を持つ未亡人、日常生活の能力に欠ける天才チェスプレイヤー、ある事件の被害者でトラウマを負うその従妹、奇態な霊媒師など、彼らと彼らの物語がいかにして真相へと収束していくのか、読んでいて予想が付きかねるくらいに各面々がページ上に放散していきます。その構成がやや読みづらさを感じさせるのかもしれません。コンピュータとネット社会の申し子的なヒロインがすごく今風な印象を与えています。

『死のオブジェ』
『陪審員に死を』
『愛おしい骨』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『遭難信号』キャサリン・ライアン・ハワード 創元推理文庫

2019-06-27

Tag :

☆☆☆

アイルランドの小さな町で、ハリウッドを夢見て脚本を書き続けてきたアダム。恋人のサラが仕事でバルセロナに出張し、まったく連絡がとれなくなってしまう。だが出発から数日後、アパートにサラのパスポートが郵送されてくる。それには「ごめんなさい—S」とサラの字で書かれた付箋が貼ってあったが、封筒の文字は別人のものだった。彼女に何があったのか?アダムは恋人を追い、手がかりをもとに地中海クルーズ船に乗り込む。千以上もの客室を持つ豪華客船で暴かれる、予想外の真実。巧みな構成力と謎解きの妙味を味わえる衝撃のサスペンス! 内容紹介より



主人公アダム、セレブレイト号の客室係、ミロという少年、この三人の視点で物語が展開していきます。客室係は船内にいる人物を密かに捜すという目的を持っているらしく、一方少年については母親に疎まれている不幸な生い立ちが描かれていきます。ハリウッドに脚本が採用されてやっと才能が日の目を見た時、 主人公の不遇な時期を支えてきた恋人が出張先で突然連絡が取れなくなってしまい、彼女のパスポートが別れを匂わすメモとともに彼の元へ郵送されてきます。自分のみならず両親、親友とも連絡を絶った彼女の行動に疑問を持った主人公は警察へ捜索願を提出するのですが、事件性がないことを理由に真剣に取り合ってくれません。やがて恋人の親友から意外な事実を打ち明けられるのですが……。その後、同様な経験をした人物とともに客船に乗り込み、調査を始めることになります。
船上で起きた事件や事故を揉み消そうとしがちな船会社の思惑と船籍や捜査権の関係でそれが行いやすくなっている点など豪華客船が抱える影の部分が物語の核となっています。その闇に飲み込まれたかのような恋人の行方を追う、ヒーロー然とは異なる主人公の憔悴し精神的に追い詰められていく等身大の姿が印象的です。彼以外の二つの視点で描かれる話が失踪事件とどう交わってくるのかという興味も引かれます。ただ、その設定が非常に効果を及ぼしているかというと残念ながらインパクトが弱くて付けたした感があるような気がしました。話の展開が最終盤でやや強引であり、事件の真相も捻りは加えてあるものの衝撃度はそれほどではなかったです。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『楽園の世捨て人』トーマス・リュダール ハヤカワ・ミステリ

2019-06-24

Tag :

☆☆☆

男の子は生後およそ三ヶ月。海岸に遺棄された車の後部座席でダンボール箱に入れられたまま餓死していた。故国デンマークを捨ててこの島に来てから18年、これといった生きがいもなく、怠惰に齢を重ねてきたタクシー運転手兼ピアノ調律師のエアハートだったが、警察がこの事件をうやむやに葬ろうとしているのを知り、何かを感じた。彼は憑かれたように、がむしゃらに真相を追う……大西洋に浮かぶカナリア諸島を舞台に、67歳の素人老探偵が哀しく奇妙な事件に挑む!北欧ミステリの最高峰「ガラスの鍵」賞を得た傑作 内容紹介より



主人公はカナリア諸島のフエルテベントゥラ島に住むデンマーク人で、職業はタクシー運転手兼ピアノ調律師です。詳細は明らかにされていませんが、彼はデンマークに家庭を捨て島で一人暮らしをしています。町から離れた掘っ立て小屋で二匹のヤギと暮らす彼は島民から「ガイジン」とか「世捨て人」と呼ばれています。赤ん坊の遺体が残された車の発見現場に居合わせたこと、そして、その事件の真相が曖昧なまま警察によって処理されようとしていることを知って、主人公は独自に調査を始めます。赤ん坊の母親だと名乗り出た娼婦、失踪した主人公の親友と何者かに襲われ昏睡状態で発見されたその恋人。彼が調べるうちに様々な出来事が絡まりあい、事態は意外な方向に進み始めます。67歳の世捨て人というと飄々としたイメージが湧きますが、主人公の心情は生々しく、とても枯れているとは言えません。一貫して主人公の視点で描かれるために、彼の懊悩、情欲という心理状態が表されるので余計にそういうところが強く感じらるうえに、心の機微まで挿まれるので正直580ページは読んでいてきついものがあります。個人的に、ある人物を監禁したこと、また別の人物を匿ったこと、主人公がしでかしたこの現実離れした二件の行動にはかなりな違和感を覚えて、それが彼に感情移入をできない“ずれ”として心に最後まで引っかかっていました。田舎のタクシー運転手の業務内容は目新しく映り、乗客の一人である心に障碍をもった男性との交流の場面にはなごむものがあります。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『リヴァイアサン号殺人事件』ボリス・アクーニン 岩波書店

2019-06-21

Tag :

☆☆☆☆

十九世紀末パリ。大富豪が怪死をとげた。唯一の手がかりである「金のクジラのバッジ」が指すのは。イギリスからインドへ向かう豪華客船リヴァイアサン号。見え隠れする「消えた秘宝」の謎と、それぞれいわくありげな乗客たち。—このなかに犯人がいる!日本赴任の途上に船に乗りあわせたロシアの若き外交官ファンドーリンが、快刀乱麻の推理で事件に挑む。 内容紹介より



シリーズタイトルは「ファンドーリンの捜査ファイル」です。時代設定は1878年、舞台は英国船籍の豪華客船リヴァイアサン号。物語はパリ市内の邸宅で起きた大量殺人事件を報じる新聞記事から始まり、その内容は何者かが屋敷の使用人たちを毒殺した後、主を撲殺してそのコレクションである黄金の像を奪ったというものです。犯行現場に残された金のバッジを手がかりに、パリ警視庁の老練な警部が犯人を追って処女航海へ向かうリヴァイアサン号に乗り込みます。容疑者はすべて一等船客であり、彼らの国籍は、イギリス、イタリア、スイス、ロシア、日本。職業は、貴族、外交官、医師、軍人、主婦など様々。計画により偶然を装って集められた容疑者たちのグループ内に、身分を偽った警部が加わり、彼らを監視することになります。各国にわたる容疑者たち、マハラージャに由来する秘宝、暗躍する妖婦、豪華客船というクローズドサークルなど、探偵小説の黄金時代を彷彿とさせる時代ミステリであるとともに、各国のお国柄、からかいや軽い侮蔑を含む対抗心、そしてカリカチュアされたような日本人像など登場人物たちの造形が面白いです。視点も警部や各容疑者に入れ代わり、時には新聞記事からの引用を用いる構成をとって飽きさせません。全体的にユーモラスな雰囲気を用いながら、悲劇的なエピソードも添えて物語に深みを持たせていると思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『血の流れるままに』イアン・ランキン ハヤカワ文庫HM

2019-06-18

Tag :

☆☆☆☆

エジンバラ市長の娘が誘拐される事件が発生。リーバス警部は容疑者の少年二人を見つけるが、追い詰められた彼らは身を投げ自殺してしまう。時同じくして、銃を持った元受刑者が議会議員を急襲するが、元受刑者は議員を殺さず、自らを撃ち抜き死んでしまう。一見なんの関係もない三人の自殺を調べるリーバスに、なぜか各方面から捜査中止の圧力が……世界のミステリ界をリードする著者が描く、一匹狼リーバスの単独捜査。 内容紹介より



市長の娘を誘拐した容疑で追跡中だった二人の少年の投身自殺と出所したばかりの元受刑者が区議会議員の面前で起こした銃による自殺、主人公が出くわした不可思議な二件の自殺を調べるうちに、政界や官界を巻き込んだ企業犯罪に行き当たってしまうというハードボイルド風味な社会派警察ミステリ。アルコール依存気味な離婚歴のある中年男性で、一匹狼で職場でも問題行動が多いにもかかわらず、部下から信頼されているという設定が魅力的です。なぜか自殺事件の捜査に中止の圧力がかかり、主人公は強制的に休暇をとらされるも持ち前の反骨精神で地道に調べを続けます。昔気質というか泥臭く非常にあくが強く、とてもスマートとは言いがたい、あがきながら信念を貫く主人公像って、下手をすると古臭いのですけれど、けれど、どこにでもいそうでいない感じが新鮮に映りました。ただ少年二人の死は衝撃的ではあるものの、それほど物語に効果を与えている訳ではないように思いましたし、女友だちの飼い猫の一件などいったい何が示したいのか理解しかねます。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『炎の裁き』フィリップ・マーゴリン ハヤカワ文庫NV

2019-06-15

Tag :

☆☆☆☆

裁判でミスをしたピーターは、大物弁護士の父により勘当同然に片田舎の町へと追いやられ、細々と公選弁護人をつとめていた。そんなある日、地元の女子大生が惨殺され、障害のある青年ゲイリーが殺人容疑で起訴される。世間注視のこの裁判で勝利すれば、檜舞台に復帰できる……不純な動機からゲイリーの弁護を引き受けたピーターだったが、検察側の態勢はまさに盤石。はたしてピーターは圧倒的に不利な状況を覆せるのか? 内容紹介より



若い女性が犠牲になった二件の猟奇的な殺人事件が起こった町で、さらに女子大生が惨殺される事件が発生します。事件当夜、知的障碍のある青年が別の女性をめぐってトラブルを起こした酒場に犠牲者が居合わせたことから彼が警察に目をつけられます。警察による誘導尋問や状況証拠によって逮捕され、さらに青年が罪を告白したというある人物の証言から青年は圧倒的に不利な立場に陥ることになります。その容疑者の弁護を引き受けたのが、多額の賠償金がかかった民事裁判で、父親の指示に逆らった上に重大なミスをして敗訴した主人公である若手弁護士です。父親の庇護でこれまでの人生を渡ってきた力量のない主人公は、しでかした失敗により父親の弁護士事務所を解雇され、都会から右も左も分からない片田舎へと放り出されたところでした。彼は千載一遇とばかり目先のことしか考えずに重大な刑事裁判の弁護士を引き受けたのです。自分勝手で甘っちょろいヤッピーが被告との触れ合いや公判を通じて精神的な成長を遂げていくリーガルミステリになっています。法廷ものにつきものの大どんでん返しによる圧倒的なカタルシスを得られる趣向ではなく、なんというか良い意味での言葉尻を捕えるみたいな、読者の注意を引かずにヒントをさりげなく出して置く手法の面白さがあります。「キャラクター造型に難点がある」(解説より)と言われることがある著者が、その点に力を入れた作品だそうですが、それでも主人公をはじめとした人物造形はちょっと月並みかも。特にある女性とくっつく安易な展開とかは。

『女神の天秤』講談社文庫




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ラスト・プレイス』ローラ・リップマン ハヤカワ文庫HM

2019-06-12

☆☆☆☆

これは仕掛けられた巧妙な罠か?私立探偵テスは、市の福祉団体から数多の家庭内暴力による殺人事件から無作為に選ばれた五件の追跡調査を依頼された。だが調べを進めるうちに、それぞれの事件に奇妙な符合があることに気づく。被害者たちは殺される直前に、理想の男性と出会っているのだ。これが偶然でないなら、どんな意味が……。仇敵の影に絶体絶命の危機に陥ったテスの猛反撃が始まる!テスの新たな旅立ちを描く衝撃作 内容紹介より



私立探偵テス・モナハン シリーズの七作目。過去に起きた家庭内暴力で亡くなった犠牲者たちについて、警察による捜査が適切に行われていたのかどうか、地元の非営利団体からその追跡調査を依頼された主人公。数々の事件から無作為に選ばれた五件の事件の調査に取りかかると、単なる強盗事件や放火事件にしか考えられないようなものから、被害者とされる人物が生存していることが判明したりします。ただ何件かの事件には、それぞれ状況に似たようなものがあることが主人公の目に止まります。彼女の視点に謎の人物からの視点を挿む構成をとり、サスペンスやミステリを高めています。概して犬も歩けば的な行き当たりばったりの展開になりがちな私立探偵ものとは一線を画し、出来の良い警察小説並みの謎を徐々に解きほぐしていく進み方をしている点は、このシリーズのなかでは一番優れていると思いました。それはかつて事件にかかわった元警察官をパートナーにし、地元警察に対して協力をする立場になったことも一因だと思います。巧妙な姦計をめぐらすサイコな犯人像に、気の強い主人公の造形が巧くマッチしていて、これまで鼻の付きがちな彼女の性格が今回はさほど気になりませんでした。犯人がなぜ主人公に近づくために回りくどくてリスクの高い計画を巡らさなくてはならなかったというところは理解できません。

ユーザータグ:ローラ・リップマン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『コールド・ロード』T・ジェファーソン・パーカー ハヤカワ文庫HM

2019-06-09

Tag :

☆☆☆☆

サンディエゴ市の富豪ピート・ブラガの撲殺事件を担当することになった刑事トム・マクマイケル。ブラガ家とマクマイケル家の間には三世代におよぶ忌わしい確執があったが、トムは捜査に全力をつくす。まもなくピートの付き添い人で看護婦のサリーが捜査線上に浮上する。が、トムは容疑者である彼女と愛し合うようになってしまい……。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を二度も受賞した著者が放つ、感動の人間ドラマ。 内容紹介より



マグロ漁船の船長からサンディエゴ市長にまでのし上がり、引退後も地元の政財界に大きな影響力を持つ老富豪が殺されます。捜査の担当になった主人公の家と被害者との間には因縁があり、それは祖父が金銭トラブルが原因で被害者に殺された事件、また被害者の息子が何者かに強打されて脳に障碍を負った事件は主人公の父親がかかわっていたのではないかという疑惑、そして主人公と被害者の孫との仲を裂かれた若い頃の出来事です。被害者の付添い看護士が有力な容疑者として浮上する一方、捜査を進める過程で被害者にはあちこちに敵がいたことが判明します。物語は非常にバランスがとれたものになっています。警察小説としての捜査活動はもちろん、不正行為を働いた元同僚とのやり取り、仕事が原因で離婚することになった夫婦生活の苦い思い出や別れて住むことになった一人息子へそそぐ愛情、さらに酒浸りの父親への複雑な想い、そして容疑者を愛することのジレンマ、様々な側面から主人公の心理を描き出していると思います。物語自体には大掛かりなトリックや派手な暴力シーンはありませんが、軽口を叩くこともなく、地道な捜査を行う、いたって等身大な主人公の姿に好感が持てました。

『ブラック・ウォーター』
『嵐を走る者』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『警視の孤独』デボラ・クロンビー 講談社文庫

2019-06-06

Tag :

☆☆☆☆

ヴィクトリア朝の歴史ある館が火事になった。持ち主は、地域の再開発に反対していた大物政治家。焼け跡からは女性の遺体が見つかる。警視・キンケイドと警部補・ジェマをあざ笑うかのように、犯人は第二、第三の放火を企て、行方不明者は10歳の少女をはじめ、女ばかり3人に。警視の家庭にも危機が迫る! 内容紹介より



シリーズ十作目。放火の疑いのある火事が起きた歴史的な建物、火災現場から女性の遺体が発見されます。そこの所有者で高級マンションに改築しようとしていた労働党所属の政治家。その計画が彼のこれまでの政治信条と相容れないという微妙な問題が持ちあがったため、スコットランドヤードの上層部の政治的判断によりキンケイド警視が捜査を命じられます。亡くなった女性の身元を探るうちに、現場周辺で行方の分からない女性が浮かび上がるとともに、建物の所有者の娘、そして女の子とその母親の二人の行き先が不明であることも判明します。犠牲者の身元を捜査中、さらなる放火事件や殺人が発生して謎が深まっていくという趣向です。これらの事件とは別に、キンケイドの子供をめぐる親権争いが描かれて公私ともに、主人公カップルに難題が降り掛かってきます。各登場人物への手なれた視点の切り替え、彼らに付随するエピソードの創り方、また、放火、殺人、誘拐といった本題に主人公の私生活に関する問題を絡ませる手法、これらがまさに名人芸並みに昇華しているような感じです。ただ、三つの事件を据えているけれども、各事件の関連性が希薄なせいでやや盛り込み過ぎのような印象も残りました。

『警視の週末』
『警視の偽装』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『スターは罠にご用心』サイモン・ブレット 角川文庫

2019-06-03

Tag :

☆☆☆

ウェスト・エンドのミュージカルへの出演依頼、チャールズにとっては願ってもないことだった。しかし、役者としての腕を見込んでというより、彼の素人探偵ぶりを買っての依頼というのが皮肉ではあったが…。弁護士の話だと、何者かがこの大興行の妨害を図っているフシがあるという。すでにキャストの二人が不可解な事故にあっていた。一人は空気銃で撃たれ、一人は階段から落ちて。しかも同じ曜日の同じ時刻に…。チャールズの役目は、舞台の上から不審な動きに目を光らせることだった。稽古は順調に進んだ。主役の若手スターの異常な横暴ぶりを除いては。だがやはり舞台に罠はあった。まず最初の事件は通し稽古の日に起きた— 内容紹介より



俳優探偵チャールズ・パリス=シリーズの第二作目です。TVの喜劇番組で人気絶頂の若手スターを目玉にしたミュージカル劇に出演予定だった俳優の代役として主人公に依頼が来ます。劇の出演予定者たちが、空気銃で手を撃たれり、階段から落ちて足を骨折したりする事件や事故が続くため、これ以上のトラブルを防ぐために、ミュージカルに出資している関係者の弁護士から主人公に目を光らせていて欲しいとの役目も負わされます。稽古から試演、地方公演から本公演へと、劇がどのような仕組みで成り立っていくのかが描かれているのはもちろんですが、終始ユーモア・ミステリの雰囲気のなかにありながらも苦味も加えてあり、天才的な喜劇スターが持つエゴや演技に対する病的な執着心という内面の闇が描かれるとともに、情事にも倦んで別居中の妻が恋しくなったり、役者として大成する見込みも薄れ、酒に頼りがちな中年の危機を迎えて哀愁を漂わせた主人公の姿も目を引きます。殺人が起きないので後口は悪くありません。

『殺しの演出教えます』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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