『異国に死す』ドナ・レオン 文春文庫
2019-07-21
死体は運河のくすんだ水にうつぶせに浮いていた—被害者はアメリカ人青年。単なる物取りの犯行と決めつける上司にさからい、ブルネッティ警視は執拗に事件を追うが、その背後には巨大な闇の力が存在していた!サントリーミステリー大賞受賞作家が、観光都市ヴェネツィアの素顔と多彩な人間模様を丹念に描きこんだ異色作。 内容紹介より
著者は、グイード・ブルネッティ警視 シリーズの第一作目である『死のフェニーチェ劇場』(文藝春秋)でサントリーミステリー大賞、『ヴェネツィア殺人事件』(講談社文庫、著者の表記はダナ・レオン)でCWA賞を受賞しています。本書は1993年に発表されたシリーズ第二作目にあたります。イタリア在住の作者による、部外者のフィルターがかかったヴェネツィアという華やかで賑やかな世界的観光地の観光客の目に触れない裏側や影の部分、風土や住人気質が良く描かれているように感じます。家庭においては思いかけず手に入った大金の使い道(娘のパソコンや家族旅行)をあれこれ悩んだり、思春期の息子の初恋にうろたえたりと、どこにでもいる夫であり父親で、仕事では地道な捜査を続ける公務員タイプの主人公ですが一本芯が通った正義感の持ち主です。そんな彼が手がける事件は、イタリアにある米軍基地に所属するアメリカ兵刺殺事件です。手がけるうちにイタリア社会に存在する暗部に足を踏み入れてしまうことになります。巨大な闇の力、隠然たる勢力に対して、主人公はどのように立ち向かうのか。諦観と義憤のなか、力の及ぶ限り筋を通そうと努める姿が印象に残る作品です。深く大きな闇を背景にした普通の家庭(人)を描くのが本シリーズの基本テーマなのでしょう。
『ヴェネツィア殺人事件』講談社文庫
『ヴェネツィア刑事はランチに帰宅する』講談社文庫
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌