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『邪魔な役者は消えていく』サイモン・ブレット 角川文庫

2019-08-17

Tag :

☆☆☆

チャールズ・パリス、47歳。アル中気味の売れない役者である。彼が女優ジャッキの、冷たくなった愛人との仲を取りもってくれという頼みを引きうけたのは、最近ひまなせいもあった。ジャッキは彼に、数枚のいかがわしい写真を託した。彼女が買いとった脅迫写真である。それを渡して彼を安心させようにも、電話にも出ないという。引き受けたものの相手は難物だった。彼女の愛人とは、英国興行界の大ボス、マイルズ・スティーンなのだ。パリスは役者の特技、扮装・声色・演技力を動員して、マイルズへの接近を図った。だがその居場所さえつかめない。意を決してマイルズの別荘へ忍びこんだ彼は、大事件への発展を予想させる恐るべき発見につき当った…。 内容紹介より



本書は俳優探偵チャールズ・パリス=シリーズの第一作目にあたります。主人公の妻のフランシスとは別居中、娘のジュリエットには退屈な夫がおり、旧友で金儲けが趣味である弁護士ジェラルド、このような設定はすでに確立しています。本書では、第三作や四作目には(たぶん)見られなかった、ルパン並みに変装して聞き込みをするシーンがあって、役者探偵らしさを感じさせます。犯行動機にもなかなかの捻りが加えてあって意外性がありました。個人的に地味に可笑しいのは、主人公がかつて出演した各演劇(演技)にたいするメディアによる劇評が小さなコメントとして折に触れて記され、それが結構辛口だったりするところです。殺人事件や誘拐事件が発生し、主人公自身も銃撃されたりするのですけれど全体的にはこじんまりしたユーモアミステリの印象です。ただ、これが英国風なのかお色気シーンがなまなましく感じました。

『スターは罠にご用心』
『殺しの演出教えます』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『警視の覚悟』デボラ・クロンビー 講談社文庫

2019-08-14

Tag :

☆☆☆

亡き元妻と住んでいた息子・キットの親権も得て、警視キンケイドの一家は真の家族になりつつある。一家はキンケイドの故郷に里帰り。キットは従姉・ラリーに恋心を抱く。そこに乳児の遺体が見つかり、新たな殺人事件も発生。ラリーの友人の事故死にも疑惑が生じる。子どもが標的になる時、親ができることとは? 内容紹介より



シリーズ十一作目。クリスマス休暇でキンケイドの実家に戻った一家ですが、キンケイドの妹が手がけている農家の改築現場で乳児の年月の経過した遺体が発見されるという事件が起きます。物語は主人公たちが協力する捜査と並行して、彼ら一家に生じる様々な感情、妹夫婦間の不和と娘が持つ秘密、ナロウボート(運河用平底船)に暮らす家族とかつて彼らにたずさわった元ソーシャルワーカーの女性が抱える苦悩、こういった様々な心理描写がなされて進みます。ただ今回は公的機関が家族に介入するうえで生じる問題を主なテーマに絞るべきで、収賄とか青少年の薬物汚染や社会病質については余計に感じるほど詰め込み過ぎた印象を受けたし、これにそれぞれの心理描写が書き加えられるのですから、さらに若干の煩わしさを感じてしまいました。従来持っている著者の良い一面が本書ではマイナスになってしまったみたいな気がしました。

『警視の週末』
『警視の孤独』
『警視の偽装』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『呪われたブルー・エラー』ウィリアム・G・タプリー サンケイ文庫

2019-08-11

Tag :

☆☆

世界に一枚しかないという伝説の切手“ダッチ・ブルー・エラー”。その所有者で大富豪のウェストンのもとに一通の手紙が舞い込んだ。自分もダッチ・ブルー・エラーを所持しているので買いとってほしいというのだ。だが、売買の前日、思わぬ事件が起きた。手紙の主が撲殺され切手が消え失せたのだ。ダッチ・ブルー・エラーに隠された驚くべき秘密とは……!? 『チャリティ岬に死す』で大好評を博した新鋭の弁護士B・コイン・シリーズ第2弾。 内容紹介より



希少な切手をめぐる連続殺人。
弁護士志望をするロウ・スクールの学生で、主人公の弁護士事務所の臨時秘書となった黒人青年を登場させています。その彼を警察による黒人への人種差別、そして裕福な依頼人の顧問弁護士を務める主人公に対比して理想に燃える法科学生として象徴させているところが、物語の良いアクセントになっていると思います。端から見ると自分本位ともいえる理屈で離婚した元妻に対する複雑な感情とか、わびしい私生活を送る中年男性の姿と心情を描いたりする、こういうところが他のリーガル・サスペンスに出てくる色々と達者な主人公たちとの違いを感じさせます。しかし、それに比べてミステリ部分が非常に拙く前述の良さを損ねてしまっている印象です。犯行現場で目撃されている重要参考人と見なされる黒人の存在(臨時秘書との関連を疑わせる)が伏線として回収されていない、殺人事件の犠牲者が主人公に慌てて電話をしてきた理由が説明されていない、犯行動機が突拍子もなくて腑に落ちない感じが残るなど。

『チャリティ岬に死す』
『悪魔の仕事』
『狙われた大リーガー』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ブラディ・リバー・ブルース』ジェフリー・デーヴァー ハヤカワ文庫HM

2019-08-08

☆☆☆

急に開いた車のドアにぶつかり、ペラムは持っていたビールを落としてしまった。壜は壊れ、ビールは排水溝に。だがペラムの不幸はそれで終わりではなかった。ビールを台無しにした男たちが、その直後に組織犯罪告発の重要証人を射殺したのだ。ペラムは目撃者として、警察やFBIばかりか、殺し屋にも追われることになる。じつは何も目撃していないのに……映画ロケーション・スカウト、ジョン・ペラムを襲う最大の危機! 内容紹介より



本書は1993年に発表された「ジョン・ペラム」シリーズの第二作です。有名な映画賞の受賞経験もある元映画監督で、現在は日本でいうところのロケーション・ハンティングを生業としている主人公ですが、映画製作の夢を諦めていないという設定です。主人公がビールを買い出しに行った帰りに偶然に出くわした人物が、その直後、ある裁判の検察側の重要証人を射殺した事件の容疑者になったことから物語が始まります。殺し屋が降りてきた車に同乗していた殺しの依頼人とみられる人物の顔を主人公が目撃しているに違いないと決めつける警察にFBIも加わって証言するよう迫るうえに、さらに口止めを狙う殺し屋の影も……。犯人たちによって脅されたか金を貰ったかして口をつぐんでいると思い込んだ警察やFBIから嫌がらせを受けますが、しかし主人公は実際に何も見ていなかったのです。まず、映画ロケーション・スカウトという仕事内容が目新しくて興味深く、また映画製作の現場の様子も面白く読めました。捜査機関による理不尽な仕打ちを受ける主人公のほかに、殺し屋コンビと依頼人や事件の巻き添えになって負傷した警官などの様々な視点から描かれるお決まりのサスペンスです。相次ぐどんでん返しみたいな話も良いのですけれど、たまにはこういう物語も肩が凝らずに楽しめます。

ユーザータグ:ジェフリー・ディーヴァー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『殺す男』ミッキー・スピレイン ハヤカワ・ミステリ

2019-08-05

Tag :

☆☆☆

マイク・ハマーが事務所のドアを開けたとき、そこに見たものは、血まみれの秘書ヴェルダと、見知らぬ男の惨殺死体だった。男はハマーの椅子に縛りつけられたうえ、両手指を切断されていた。机の上には、“俺を殺したから、お前は死ぬのだ—ペンタ”という置き手紙。だが、ハマーの身に覚えはなかった。いったいペンタとは何者か?何の目的でこんな酷いことを?愛するヴェルダを半死半生の目に遭わされ、復讐を誓うハマーは、自らを囮として捨て身の調査を開始。ペンタがCIA局員を殺しており、また事務所で殺された男が元暗黒街の人間だったことをつきとめる。謎をめぐり美人検事補、CIA、FBI、国務省、マフィアが入り乱れるなか、やがてハマーが知る意外なペンタの正体とは!19年の空白を経て、探偵マイク・ハマーが甦った!巨匠スピレインが、冷酷な殺人を繰り返す暗殺者を追うハマーの壮絶な闘いを痛快に描く、ファン待望の最新作。 内容紹介より



典型的な私立探偵小説の体裁をとり、マフィアとコカインという定番の要素を組み入れ、そこに国際的な暗殺者を持ちこみ、CIAを混ぜる新機軸を盛り込んでいます。と言っても、わたしはマイク・ハマーものを読んだ覚えがないので適当なことを言っているのですけれど。冒頭、殺人現場となった探偵事務所に残された謎のメッセージには興味を引かれますが、主人公がうろちょろして、あちらこちらで聞き込みとも言えない無駄話をしているハードボイルド定番の展開が100ページあたりまで続き非常に退屈でした。“卑しき街を行く孤高の騎士”という従来の私立探偵像というものが、時代の変遷に伴っていかに浮いた存在になっているか、絶滅危惧種の生態を観察しているような前半から、意外な組み合わせの謎が解けていく後半は徐々に流れも良くなってクライマックスを迎えます。脅しと銃による聞き込みは、パソコンとネットに頼る情報収集というものに代わり、やがて美人検事補や魅力的なCIA局員とのやり取りはポリティカルコレクトネスによって糾弾される事態に陥るでしょう。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『モルディダ・マン』ロス・トーマス ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫

2019-08-02

Tag :

☆☆☆☆

合衆国大統領の実兄がリビアに誘拐された。自国側の大物テロリストがCIAの手に落ちたと考えたリビアが報復に出たのだ。しかし、CIAはその件には一切関与していなかった。一触即発の事態を収拾すべく、ホワイトハウスは“モルディダ・マン”を雇った—国際紛争のはざまで大国を手玉にとる男どもを描き、巨匠が真骨頂を示す傑作! 内容紹介より



かつてメキシコにおいて人質解放交渉をまとめあげたため、「賄賂を贈る者」というスペイン語の“モルディダ・マン”のあだ名を持つ主人公は、元陸軍大佐で元下院議員を一期務めたリスボン在住のアメリカ人。彼は大統領に近い筋から、その実兄のリビアによる誘拐事件の解決を秘密裡に依頼されます。リビアは自国が援助する国際テロリストのリーダーがCIAによって拉致されたと思い込み、テロリストと大統領の実兄を交換する目的で 犯行に及んだのです。しかし、CIAはまったく関与していなかったため、主人公の出番となったという訳です。ぐいぐいくる凄腕の交渉人というより、じわじわと周りから詰めていく、場合によっては自ら敵の懐に入るような策を練るタイプの人物です。訳者あとがきで山本やよい氏が書いているみたいに、話の展開が「予測ができなくなる。思いもかけない方向へ話が飛んでいく」(p405)流れになっても、最終的には何もかもが主人公の計画通りに進んでいくのだろうなという感じはします。ネットを使って違法に莫大な金を手に入れた富豪や彼の部下の元CIAと元FBI、現役のCIA局員が主人公に交じって虚々実々の策謀をめぐらす頭脳戦が面白かったです。ただ、テロリストグループのメンバーにも同じような存在感を発揮してほしかった感じはします。

『八番目の小人』
『黄昏にマックの店で』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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