『罪深き眺め』ピーター・ロビンスン 創元推理文庫
2019-09-25
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バンクス警部はため息をついた。都会の喧噪を逃れて、ロンドンからヨークシャーの片田舎、ここイーストヴェイルに転属してきたというのに、このありさまはどうだ。今は秋。だから灰色の空、冷たい雨に祟られるのはやむをえないとしても、町にはのぞき魔が出没して被害が相つぎ、老人宅を狙った盗難事件も、いっこうにやむ気配がない。そして今度は、三日前に八十七歳の誕生日を迎えたばかりの老婦人が殺されたというのだ……。音楽を愛する首席警部イアン・バンクスの活躍を描いて独特の詩情漂う現代英国ミステリの新シリーズ、堂々の開幕! 内容紹介より
1987年に発表された作品です。
主人公は三十六歳の首席警部、家族は妻と一男一女。ロンドンから希望して地方に転属してきた人物です。舞台となるのは、人口一万四千人ほどの自然と歴史に恵まれた「絵に描いたような美しい町」ですが、中心部を外れると、荒廃が進む低所得者向けの市営住宅地が広がっているという状況です。その閑静な田舎町で、のぞき魔事件や強盗事件が頻発し始め、さらに他殺と思われる老婦人の遺体が発見されることに。視点は主人公やその妻、部下や町の住人に頻繁に入れ替わって進みます。主人公は人間臭く、等身大の人物で、のぞき魔事件の捜査に協力する美人心理学者に心が揺れ動いたり、部下に八つ当たりしたりします。物語は、主人公の妻がのぞき見の被害者になったり、強盗事件の犯人側からの視点が据えられたりと、なかなか変化に富んでいて進行も速いのですが、主人公と心理学者との序盤の会話部分にややもたつき感がありました。作品全体は地味な印象なのですけれど、三つの事件を捜査する展開は、いかにも警察小説らしく、犯人との直接対決、意外な真犯人、危機一髪の場面などが盛り込まれておりなかなかの出来映えだと思います。
『必然の結末』
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌