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『脅迫なんか恐くない』パーネル・ホール ハヤカワ文庫HM

2019-11-30

Tag : パーネル・ホール

☆☆

自分をゆすっている男に金を渡して—わたしを訪ねてきた美女は訴えた。が、彼女は何も事情を話さない。揉め事は苦手だが、法外な報酬につられ、わたしは脅迫者に会いにいった。そこでわたしが金と引き替えに受け取ったのは、見知らぬ男女が写っているポルノ写真だった。彼女と写真には何の関係が?謎だらけの仕事は、やがてわたしをとんでもない窮地に陥れるが……相も変わらず美女に弱い控えめ探偵が奔走する第九作 内容紹介より



地元ニューヨークを離れ、またシリーズの常連たちも不在だった第八作目の『俳優は楽じゃない』から、九作目の本書ではホームに戻り、脇を固める人物たちも頻繁に登場しています。特に、主人公の奥さんはこれまでにないくらい登場機会が設けられ、主人公と行動を共にしたりして積極的に調査に加わっているほどです。また、主人公の雇い主である弁護士や腐れ縁の殺人課の刑事とやり取りする場面もいつもより多い印象でした。これは各人との会話形式によって目先を変えながら物語進行させる工夫であるとともに、作者お得意の軽口を披露する機会を設けるためでもあるのでしょう。狙いどおりに話は、さほどだれることも少なく軽快に進み、脅迫事件と連続殺人事件の真相にはいっこうに迫っていきません。誰にも依頼されていないにもかかわらず、調査を続ける理由として、死体発見者の主人公が部長刑事に不当逮捕されてトラ箱にこう留されたことを根に持ち、その担当刑事に一泡喰わさてやりたいという動機を付けているところは妙に細かい。希薄な状況証拠ばかりで、犯人が自白してしまう安直さがどうしようもなく、どんでん返しとまでは行かないけれど、物証の一つでも用意して欲しかったところ。

ユーザータグ:パーネル・ホール



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『九十歳の誕生パーティ』レスリー・メイヤー 創元推理文庫

2019-11-27

☆☆

弁護士ボブがパートナーのシャーマンの死体を発見した。警察は自殺と判断したが、ボブはどうしても納得できず、パートタイムの新聞記者で、殺人事件を何件も解決(?)してきたルーシーに調査を依頼。一方、元司書のミス・ティリーの九十歳の誕生日に町を挙げてのパーティを開くことが決まり、親友スーの采配のもと、当然ルーシーもこき使われることに。思春期に突入した次女、大学での成績不振に悩む長男、おまけに夫ビルが仕事中に足を折る大けが。家族の世話に新聞記者の仕事、殺人事件の調査にパーティの準備と、主婦探偵は今日も大忙し! 内容紹介より



本書は、主婦探偵ルーシー・ストーン・シリーズの第九作目です。コージー・ミステリに欠かせない、今回のイベントごとは町の図書館で長らく司書をしていた女性の九十歳の誕生パーティです。町の住人の誰もが知っている彼女の誕生お祝いを、行政からでなく、友人たちが発起人となって計画し、企業や商店から寄付を募り、住人たちを巻き込んで進めていくという、おおらかでポジティブな活動が非常にアメリカらしさを感じました。こういう雰囲気を味わえるところがコージー・ミステリの魅力のひとつなのかもしれませんし、ミステリが拙いとか言っている場合ではないのかも。そしてヒロインは、不審な死を遂げた老弁護士の調査をするかたわら、新聞記者の業務に加えて、元司書である老婦人へのインタビューやら、さらに家族に持ち上がった色々な問題への対処、交通違反や事故、ダイエットに努めたり加齢に抗ったりと公私ともにてんてこまいの状態に陥ります。こんな日常を描き出すのもまた魅力なのでしょうから、ミステリの粗さには目をつぶっても良いのかもしれません。

ユーザータグ:レスリー・メイヤー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『闇と影』ロイド・シェパード ハヤカワ文庫HM

2019-11-24

Tag :

☆☆☆

1811年12月7日。ロンドン郊外ワッピング地区のラトクリフ街道沿いで服地商を営むティモシー・マーの一家を悲劇が襲った。マー夫妻と赤ん坊、それに住み込みの徒弟の四人が、無残に殺害されたのだ。恐怖に震えあがる人々は迅速な犯人逮捕を望むが、捜査は進まない。そこで、テムズ河川警察に所属するホートン巡査は独自の捜査を開始するが、やがて第二の事件が……犯罪史上に名高い未解決事件を描く、歴史ミステリの快作 内容紹介より



物語の構成は、1811年12月のラトクリフ街道殺人事件発生から1812年2月の捜査終結までと、1564年10月に始まる、結婚したてのビリーという名の若者が新生活の資金稼ぎのために船乗りになり、やがて奴隷貿易に携わる冒険譚、この二つが交互に差し挟まれて進みます。二百年以上もの隔たりがある二つの話がいったいどんな関連をみせるのか見当もつきませんでしたが、それはとんでもなく思わぬ形で結びつけられることになります。この力業じみた手法が面白く感じるのか、あるいは興ざめるか、評価が分かれるところだと思います。史実に則した殺人事件にオカルト的なものを導入していることには、わたし個人はあまり馴染みませんでした。大英帝国創設において奴隷貿易という暗部に焦点を当て、それを象徴するものとしてビリーという人物を作り出した作者の意図はわかりますが、今回わざわざそれを当該事件に接ぎ木しなくてもよいのではないかという気がします。それに赤ん坊までも手に掛ける犯行の残虐性が犯人の人物像に合っていないことも気になりました。ロンドン警視庁ができる以前のロンドンの警察組織と活動についてはなかなか興味深いところがありました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『黒い薔薇』フィリップ・マーゴリン ハヤカワ文庫NV

2019-11-21

Tag :

☆☆☆☆

ポートランドの弁護士ベッツィは破格の報酬で、建設会社の社長から、起訴された時には弁護するよう依頼された。その直後、彼は連続女性失踪事件の容疑者として逮捕されてしまう。十年前、ニューヨークでも今回と同様、現場に薔薇が残される失踪事件が起きており、彼と二つの事件との関係が疑われたのだ。やがてベッツィの身辺に危険が迫り、裁判の行方は混迷を極める……二転三転するダイナミックな展開の傑作サスペンス 内容紹介より



一輪の黒い薔薇と「去れど忘られず」と記された紙が現場に残された女性失踪事件が立て続けに起き、十年前にニューヨークで発生した同様の事件を手がけた刑事の情報により、地元の大手不動産業者の容疑者が逮捕されます。その容疑者の弁護を引き受けたのが、夫と別居中で幼い娘と暮らす主人公です。状況証拠ばかりの容疑であり、彼女は依頼人の保釈を勝ち取りますが、彼に不審なものを感じた彼女は彼の過去を調べ始めます。弁護士が主役のリーガルサスペンスといえば、冤罪を着せられた依頼人を不利な状況ながら一発逆転無罪を勝ち取るというスタイルが定番だと思うのですけれど、本書はそれとはまったく違うスタイルを採っています。十年前に起きた事件の真犯人に近い容疑者だった、 非常に怪しく好感の持てない人物を依頼人に仕立て、読み手はこれからどういう展開になっていくのか先が読めない状態になります。そんななか後半に入った頃、予想しない衝撃的な真実が明かされてびっくり仰天してしまうのです。しかし一方では種明かしされて、それ以降の流れはだいたい読めてしまうという残念なところも併せ持っている作品だと思います。サイコパス犯罪を逆手に取ったかなりユニークな作品だと思いました。

『炎の裁き』ハヤカワ文庫NV
『女神の天秤』講談社文庫




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『エンジェル・シティ・ブルース』ポーラ・L・ウッズ ハヤカワ文庫HM

2019-11-18

Tag :

☆☆☆

黒人の白人警官に対する憎悪が頂点に達し、暴動が発生—ロス市警の女性刑事ジャスティスは鎮圧に乗り出すが、暴動の最中、殺人事件が起きてしまう。しかも、被害者は、十数年前に彼女の夫と娘を射殺した黒人解放運動の元幹部だった。千々に乱れる思いの中、ジャスティスは事件の真相を追うが……。汚れた街を吹き抜ける荒荒しくも美しい一陣の風。深き心の傷に負けないニュー・ヒロインが活躍するマカヴィティ賞受賞作 内容紹介より



主人公は、ロサンジェルス市警強盗殺人課の女性刑事です。市民暴動への警備のために黒人居住地区に駆り出された彼女は、十三年前に彼女の夫と娘を殺して逃亡中だった男が、暴動現場近くで殺害されて発見されたという知らせを受けます。事件の関係者であるために、直接には捜査に関われない彼女は、管轄する別の署の刑事に協力する形で捜査に携わることになります。一応作品としては警察小説なのですけれども、コージーミステリっぽいものも感じました。特に、見当違いな人物に容疑をかけ、実はまったく話題にも上らず、それらしい伏線もなかった人物がクライマックスで急に姿を現す、という拙い展開や高校時代の憧れの男性がさらにパワーアップして再会するロマンスとか。こういうミステリとしてはかなり今ひとつなのに、なぜ本書がマカヴィティ賞(2000年)を受賞したのかというと、女性であり黒人であり、かつ警察官である主人公の社会的、人種的立場からくる差別、偏見、ハラスメントの問題を前面に打ち出して再確認しているところではないでしょうか。今からほぼ二十年前に、非白人の女性警察官が主人公になったミステリ作品は結構珍しいのではないかと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『珍獣遊園地』カール・ハイアセン 角川文庫

2019-11-15

☆☆☆☆

世界に二匹しかいないという珍獣が盗まれた。それがすべての発端。遊園地(テーマ・パーク)の広報課に雇われた元新聞記者のジョーは、珍獣盗難騒動にかんしてでっち上げ記事を描くように言われる。なにか怪しい。超過激環境保護団体を率いる老女、妙に義理堅い泥棒、素性が怪しい遊園地(テーマ・パーク)経営者……奇怪な人間が跳梁し、奇妙な事件が次々と起こる。抜群のユーモアが冴える会心の一撃。 内容紹介より



ディズニーランドに敵愾心を燃やす二流テーマ・パークのオーナーは、地元の不動産王でもあり、フロリダの自然豊かな地域をリゾート地として開発しようと計画を進めています。テーマ・パークで広報担当の元新聞記者の主人公が、珍しいハタネズミの盗難と、それに続く動物学者の失踪事件を契機にテーマ・パークのオーナーの悪巧みを調べ始めるという流れ。作者の人生のテーマと言えるであろう“悪質開発業者による自然環境破壊対環境保護”が、相変わらず彼の軽妙な筆致と奇天烈なプロットで表されブラックな笑いをまとった作品です。登場人物たちもこれまた相変わらず奇矯な者たちばかりで、当然常連である元州知事、すぐに銃をぶっ放す環境保護団体のボスである老婦人、彼女に銃で撃たれた凸凹コンビの泥棒たち、ミッキーとミニーの卑猥な刺青を入れたテーマ・パークのオーナー、ステロイドで増強した筋肉自慢の警備課長、そして人間だけでなく猥褻行為をはたらくイルカまで種々様々です。キー・ラーゴの現在の自然環境はどういう状況なのか、読後に、ああ面白かった、というだけでなく考えさせられる作品だと思います。

ユーザータグ:カール・ハイアセン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『見えない傷痕』サラ・ブレーデル ハヤカワ文庫HM

2019-11-12

Tag :

☆☆☆

デンマークの首都コペンハーゲンでレイプ事件が起きた。心身に深い傷を負った被害者は、犯人とインターネットで知り合ったのだと明かす。コペンハーゲン警察殺人捜査課の刑事ルイースは、少ない手がかりに苦戦しながらも捜査を進めるが、第二の事件が発生してしまう。内気な女性を罠にかける卑劣な犯人を、絶対に捕らえみせる!タフでワーカホリックな刑事ルイースが活躍するデンマークのベストセラー・サスペンス! 内容紹介より



ネット上のいわゆる出会い系サイトで知り合った男性から暴行を受けた被害者は、子供のころから母親の過干渉のもとで育った内気な性格の女性。その事件の担当になったのが三十代の女性刑事の主人公です。犯人は周到に自分に繋がる手がかりを消しているため、主人公は被害者の記憶に頼って捜査を進めざるを得ない状況ですが、さらに同様の事件が起きてしまいます。連続犯を扱った警察小説においては、犯人対警察という構図が物語の大部分を占めているのがあたりまえで、そのなかでの被害者はさほど顧みられることはない、極端にいえば消耗品あつかいされるような存在だったりすることがままあります。しかし、本書では被害者の存在が掘り下げられ、彼女がどんな人物なのかが主人公の視点から描かれています。一方、犯人の影は薄くて際立ったイメージが残りませんでした。恋人と同棲中の主人公の私生活もサイドストーリーとして挿まれているために、スピード感みたいなものはありません。暴行の前科を持ち、主人公を脅した人物が後半に絡んできたらサスペンスがたかまったのではないかという気はしました。北欧ミステリなのに、ほとんどそんな雰囲気を感じませんでした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『黒い壁の秘密』グリン・カー 創元推理文庫

2019-11-09

Tag :

☆☆☆

アバークロンビー・リューカーは『リチャード三世』の公演を終え、湖水地方の小村へ赴いた。風光明媚なこの地に近年ユースホステルができ、山や岩場に出かける人たちに利用されているという。数ヶ月前クライミング中に命を落とした若者の話を聞いているさなか、消息を断った友人を捜してほしいと男女が駆け込んできた。捜索の甲斐なく遺体が見つかり、事故と処理されかけたものの、検屍審問を経て殺人を視野に入れた捜査が始まることに。第二次大戦下の諜報活動で培った探偵としての嗅覚が、登山家でもあるリューカーを駆り立てる。手掛かりの乏しい峻鋒の果てに見出された真相とは。 内容紹介より



本書は1952年に発表された作品ですけれど、電話が各戸に普及していないところ以外は古めかしさは感じません。シェイクスピア俳優兼舞台監督リューカーが妻とともに休暇で訪れた湖水地方にある山麓の村で事件に遭遇するユーモアタッチの山岳ミステリです。彼は村に隣接したロッククライミングに適した岩壁の下を流れる滝壺で岩登りに来ていたと見られる女性の遺体が発見しますが、そこでは以前にも同様に転落死したと見られる若者が見つかっています。遺体の状況に不審を抱いた主人公は、かつて英国諜報部員時代の同僚だった地元警察の警部の依頼を受けて、被害者が宿泊していたユースホステルに事情を探るために泊まることになります。そこには被害者の友人である男女三名、彼女の元婚約者とその妹、中年男性の計六名の宿泊客と臨時の管理人一人が寝泊まりしています。有力な容疑者として彼らがあげられるのですが、早々に何名かは脱落してしまいます。オカルト的な風味付けがなされているにしても、色恋沙汰以外に全員に様々な動機を持たせたらもっと盛り上がったように思いますし、そこら辺りが結構淡白な感じがしました。個人的には、早々に犯行動機と真犯人の見当が付いてしまったので、ロッククライミングの場面ではらはらどきどきがもう少し強かったら良かったのではないかと思いました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『悪魔の星』ジョー・ネスボ 集英社文庫

2019-11-06

Tag :

☆☆☆☆

一人暮らしの女性が銃で撃ち殺され死体で見つかった。左手の人差し指が切断されていた上に、遺体から珍しいダイヤモンドが見つかると、猟奇的な事件に、注目が集まる。ハリー・ホーレ警部は、3年前の同僚刑事の殉職事件を捜査し続けていたが、証拠を得られず捜査中止を命じられ、酒に溺れて免職処分が決定。正式な発令までの間、この猟奇的事件の捜査に加わるが、事態は混迷を深めていく……。 上巻内容紹介より



連続殺人に死体損壊、犯人が意図的に置いた遺留品、それから警察内部の腐敗とアルコール中毒の刑事。こういう要素それぞれは珍しくもなければ新しい訳でもないし(特に、警察内部に犯罪ネットワークみたいなものが存在しているという話にはかなりの既視感を覚えました)、どん底に墜ちたヒーローが、何かの拍子に覚醒して手強い悪を倒す、という話をなぞっているプロットもオーソドックスなのですけれど、それらの材料の処理と手際がとても巧い作家だと思いました。上巻では、仕事を放棄して酒に溺れ悪夢にうなされる主人公の底まで堕ちた姿をこれでもかと描いているため話がちょっと停滞気味です。下巻に入って、犯人が残した逆五芒星を手がかりに捜査が進み始めますが、それに主人公の仇敵を絡ませて緊迫感を高めています。「殺人犯は完璧な暗号をわれわれに示して、日時と場所を教えてくれました。しかし、“なぜ”は教えてくれませんでした。そうすることで、犯人は動機よりも行動にわれわれの目を向けさせたんです」(下巻p334)、これは主人公が真犯人に目を付けた理由を説明した言葉で、猟奇殺人につきものの性的、変質的なものが事件の背景に見当たらなかったことを指していて、この視点を別方向からとらえているところに、従来にない何か目からうろこみたいな新鮮さを感じました。

『ザ・バット 神話の殺人』
『スノーマン』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『震えるスパイ』ウィリアム・ボイド ハヤカワ文庫NV

2019-11-03

Tag :

☆☆☆☆

英国の大学院生ルースは、母親のサリーが命の危険を感じて描いたという手記を読み、驚愕した。母親は本名はエヴァ・デレクトルスカヤといい、第二次大戦中は英国の諜報員として対独情報工作やアメリカを参戦させる作戦にも加わっていた。だがそこで彼女は死の危険に見舞われたのだった。そして1976年の今、母から依頼された調査を始め、ルースは驚くべき事実を知ることに。コスタ賞最優秀長篇賞を受賞した本格スパイ小説。 内容紹介より



物語は、主に1941年のエヴァ(サリー)と1976年のルース(エヴァの娘)の視点を交互に挿んで進みます。前者の時代背景は、英国が孤立主義をとる米国をなんとかヨーロッパの戦争に参戦させようと躍起になっていた時期で、対独情報工作をしていたエヴァの所属する組織は、ニューヨークに移って秘密工作をすることになります。ナチスによる米国への脅威を煽るための偽の情報を仕込む作戦を担当した彼女は、その現場において正体が暴かれ窮地に陥ったことで、ある疑念を抱き始めます。かたや後者は、ドイツのテログループの記事が紙面に載ったり、ロンドンに来るイラン王室に対する抗議デモがある程度で、博士論文を執筆中のルースは外国人に英語を教える仕事をしながら、一人息子を育てています。そんな日常を過ごすなか、彼女は母親から元スパイだったことをカミングアウトされることになります。このエヴァとルースの各章の緊張感の落差が緩急になって非常に良いテンポとバランスを作り出しているように感じました。またルースの章にも、ドイツからやってきた、彼女の元愛人の弟とその女友だちにまつわるテロリスト疑惑や警察から密告者(スパイ)にならないかと勧誘を受ける件など、ちょっとしたサスペンス風味を効かせた仕掛けもしてあるところなど作者の達者な一面がうかがえます。米国の参戦をめぐっての各国の思惑、歴史の裏に秘められた事実には意表を突かれるとことがありました。ル・カレでも007でもない、新しいスタイルを備えた完成度の高いスパイ小説ではないでしょうか。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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