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『ミッドナイト・ボイス』ジョン・ソール ヴィレッジブックス

2019-12-09

Tag : ホラー

☆☆☆

突然、通り魔に夫を殺されてから、キャロラインは必死で12歳の娘ローリーと11歳の息子ライアンを育ててきた。でももう限界—ところが、偶然出会った知的でハンサムでお金持ちの紳士トニーと恋に落ち、結婚することに。一家はトニーの住む高級アパートメントに移ったが、そこロックウェル館は“セントラルパーク・ウェストの大妖館”として知られる不気味な建物だった!毎晩、悪夢にうなされるライアン。みるみるやつれていくローリー。この建物にはいったいなにが巣くっているのか?親切だがどこか風変わりな住人たちの正体は?—名手ジョン・ソールが描く、恐怖と驚愕のホラー・サスペンス。 内容紹介より



ややネタバレ気味です。ご注意下さい!

本書の舞台はNYのセントラル・パークの西側にそびえ建つ古い高級アパートメントです。その古色蒼然とした外観から大妖館と呼ばれ、子供たちの間には魔女や吸血鬼が住んでいるという噂話が広まっている館です。そこに住むのは、養子に迎えられた女の子以外ほとんどが高齢の住人たちです。そして、そのアパートの住人の一人と再婚し、娘ローリーと息子ライアンとともに移り住んできたキャロライン。住人たちは子供たちが加わったことを喜び、彼女たちは皆から親切にされるにもかかわらず、ライアンは彼らを嫌い、ローリーは悪夢に悩まされるようになります。いわゆる幽霊屋敷ものの一つで、そこに変形した吸血鬼ものを組み合わせた物語になっています。やや珍しいのは魔物たちが人間からエネルギーを吸い取る手口くらいで、長いわりに高低の変化に乏しい感じがしました。キャロラインよりは子供たち、特にライアンの視点を中心に進行した方がサスペンスとしては盛り上がったような気もします。クライマックスは彼がメインを務めているわけですから。館が崩れ落ちたり、焼け落ちたりする定番のエンディングを採用せず、エピローグでかたを付ける形はスケールが小さくてちょっと不自然な感じがしました。

『闇の教室』扶桑社ミステリー
『マンハッタン狩猟クラブ』文春文庫




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『天使の鬱屈』アンドリュー・テイラー 講談社文庫

2019-12-06

Tag :

☆☆☆☆

夫と別居し、教会付属の図書館で働き始めたウィンディ。半世紀前の聖職者にして詩人フランシスのことを調べている彼女の身辺で、死の悲劇が相次ぐ。「醜聞の主」「立派な紳士」と人物像の定まらない詩人の過去を追っているもう一人の人物とは誰か?歴史の謎に彩られたミステリーの大聖堂!CWA賞受賞作。 内容紹介より



本書は、三部作Requiem for an Anjelの『天使の遊戯』『天使の背徳』につづく三作目にあたります。わたしは順番を違えて最終巻から読み始めてしまったのですが、やはり発表順どおりに読んだ方が良いみたいです。
夫の浮気現場を目撃したヒロインは、お金もないため学生時代の親友で、今は神学校の副校長をしている夫と娘と暮らす学生時代の親友の家に居候のような形で住み始めます。やがて神学校付属の図書館で蔵書整理の臨時仕事についた彼女は、五十年前に司祭だった人物が出版した詩集に出会います。女性司祭の登用や地域の貧困問題に取り組んだその地元で毀誉褒貶のある聖職者に興味を引かれたヒロインは、彼女の他にもその人物について調べ回っている男がいることに気づきます。物語は、この聖職者についての調査、親友家族との日常生活、離婚を考えて別居した夫に関すること、教会の敷地内という特殊な環境に入り込んだ彼女の視点から教会関係者やその家族についての日々の出来事を眺め暮らす様子 が綴られて進み、ミステリらしい事件が起きるのは最終盤になってからです。本書を読んだだけでは CWA賞受賞作として食い足りない感じが残りますが、主人公のユニークな造形が印象的な作品だと思います。

『我らが父たちの偽り』サンケイ文庫
『第二の深夜』 文春文庫




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『紙片は告発する』D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

2019-12-03

☆☆☆☆

お父さんが思ってるほど、あたしは馬鹿じゃない。誰かさんを刑務所送りにできる秘密を知ってるんだから—町議会議員の娘だが、周囲に軽んじられているタイピストのルースは、職場で拾った妙なメモのことを警察に話すと、町政庁舎(タウンホール)の同僚たちに漏らしてしまう。その夜、彼女は何者かに殺害された……!現在キルクラノンの町では、町長選出にまつわるいざこざが持ち上がっており、庁内には腹に一物ある連中がひしめいていた。即座に口封じに及んだのは誰か?地方都市を舞台に起こる殺人事件とその謎解きは、ディヴァイン犯人当ての真骨頂! 内容紹介より



1970年に発表された本書は、時代的に新しいわけでも、かと言って古めかしいわけでもないのですが、被害者の職業がタイピストというところに時代感を覚えました。一方、町議が職場で有能な女性に否定的であったり、面と向かってセクハラやモラハラ発言をしたり、性的少数者に世間の理解がまったくなかったりする傾向が当たり前であった時代でもあります。こういう要素が物語に組み入れている点などに時代の移り変わりを感じます。物語には、不正入札や職場内の不倫をはじめとした人間関係や出世競争といったかなり世俗的なテーマが盛り込まれ、公務員であるヒロインの視点でもあるために、二件の殺人事件のわりには全体的には地味目なトーンで推移していきます。しかし、役所内を主要舞台にした設定は一見社会派ミステリ風でもありますが、実際は作者らしいパズラー小説に仕上がっているという、ミステリにおける古典と現代の混在のようにも見えます。犯人の意外性はあると思うのですけれど、欲を言えば各容疑者にさらなる動機を付け足していたらもっとサスペンスが盛り上がったようにも思いました。

ユーザータグ:D・M・ディヴァイン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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