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『悪夢の優勝カップ』アーロン&シャーロット・エルキンズ 集英社文庫

2019-12-30

☆☆☆

賞金ランキング98位。ジリ貪生活を送る女子プロゴルファー、リー・オフステッドに信じられないことが起きていた。放つショットは全て理想的な弾道を描き、ツアー初優勝も見えてきた!と、その時。コース内で倒れていた男を助けようとしたばかりに初優勝は夢と消え、続いて発生した毒殺事件に巻き込まれ……。試合の陰で、一体何が起きているの?ゴルフ中継の裏事情も垣間見える、好評シリーズ第2弾! 内容紹介より



プロゴルファー リーの事件スコア2。
ランキングも低迷し、相変わらず貧乏生活のヒロイン。しかし、ニューメキシコで行われている試合初日になんと彼女は首位に立ってしまいます。早速、優勝賞金を調べたり、使い道を考えたりしていた、そんななか腕に痛みが走ります。診てもらったトレーナーによると軽いテニスひじということで、彼女は大会二日目を迎えます。しかし、試合が雷雨中断中、グリーン脇で倒れていた男性の救命処置の際ににさらに腕を痛めてしまい、彼女は棄権するはめに。そんな彼女を気の毒に思った放送スタッフから臨時に雇ってもらいゴルフ中継の手伝いをすることになります。日本でも女子プロゴルフの人気が盛り上がっていますが、本書はそんな選手たちのプレーを中継しているTVの裏側を垣間見せてくれる内容にもなっていて興味深いです。ミステリ的には容疑者と動機が分かりやすく提示され、ヒロインが九死に一生を得る場面も用意されてサスペンスも高まっています。専門家による科学的な見解などはスケルトン探偵を彷彿とさせますし、そつなく仕上げている全体の雰囲気はアーロン・エルキンズの色が濃いような印象を受けました。そのためか今まで読んだシリーズ作品のなかで一番出来が良いように思います。

これで今年最後の更新になります。この一年当ブログにお越しいただいた皆様ありがとうございました。良いお年をお迎え下さい。

ユーザータグ:アーロン・エルキンズ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『処刑の方程式』ヴァル・マクダーミド 集英社文庫

2019-12-27

Tag :

☆☆☆☆

1963年冬、イギリスのダービーシャー州の寒村から、13歳の少女アリスン・カーターが消えた。さっそく警察は捜索を開始するが、少女の行方は不明のまま。住民は無口で、よそ者に心を開かない。若き警部ジョージ・ベネットは殺人事件と考え、ついに被疑者を拘留する。死体なき裁判が始まった……。『殺しの儀式』でCWAゴールド・ダガー賞を受賞した作家の、話題の新作ミステリー 内容紹介より



名字が三つしかない、ほぼ孤立し閉鎖的な住民たちが暮らす小村で発生した少女の行方不明事件、捜索の指揮を執るのが若くして警部になった主人公です。新しく赴任した警察署で大学出と陰口を叩かれ、いまだとけ込めない彼が担当することになった行方不明事件は、さまざまな証拠から少女が犯罪に巻き込まれたうえに殺されたのではないかという疑いが浮かび上がります。コンビを組む巡査部長とともに憑かれたように捜査に打ち込む主人公はついに目を付けていた被疑者をある犯罪の容疑で逮捕にこぎつけますが、少女の遺体は結局発見されないまま、状況証拠だけで殺人事件の公判が開始されることになります。作品は三つの構成になっており、1963年にイギリスの閉鎖的な小村で発生した少女の失踪事件の捜査状況と被疑者の逮捕にいたるまでの警察小説、1964年の公判の様子を描いたリーガルサスペンス、1998年、事件に関するノンフィクションを執筆しようとする女性ジャーナリストの取材活動に分かれています。事件の内容は胸が悪くなるようなもので、事件全体の真相が発覚する最後半部分の出来事はやや強引な印象も受けましたが、作品全体は巧みな計算のもと緻密に構築されており、アクロバティックなクライマックスは少々の粗は消してしまっている印象です。

『殺しの儀式』
『殺しの四重奏』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『サンタクロースの一大事?』ヴィッキ・ディレイニー コージーブックス

2019-12-24

☆☆☆

一年を通してクリスマスを祝う「クリスマスの町」ルドルフ。クリスマス本番を目前に控え、雑貨店を経営するメリーは準備に追われていた。そんなある日、町いちばんの高級ホテルのひとり息子が遺体で発見された。彼は、安ホテルチェーンとフランチャイズ契約を結ぼうとしたり、美しい庭を潰して大型商業施設を誘致しようとしたりして、町中から嫌われていた。容疑者となったのは誰よりもルドルフを愛するメリーの父。そのうえ、父が命より大切にしているサンタクロース役を、町のイメージが悪くなるからと降板させられてしまう。サンタクロースがいなければクリスマスの魔法はかからない。メリーはひとりで犯人探しを始めるが、やがて意外な真相にたどりつき……!? 内容紹介より



赤鼻のトナカイの町シリーズ第二弾。一作目の『クリスマスも営業中?』は未読です。
ニューヨーク州北部の小さな町を舞台にしたコージー・ミステリです。そこには地元の衰退を防ぐために、町名と赤鼻のトナカイの名前が同じことに目を付けたヒロインの父親が、町おこしのために一年じゅうクリスマスを祝う町として売りだしたといういわれがあります。ヒロインは地元でクリスマス雑貨を扱う店の経営者です。その町の高級ホテルの経営者が病気で倒れたために、ひとり息子が帰郷してホテルの経営を一時的に担うことになったのですが、合理化や経費削減を進めようとしたうえに、ホテルチェーンのフランチャイズ化や大型商業施設の誘致を計画したりします。その計画に憤ったのがヒロインの父親ということで、彼が殺されたときに事件の有力な容疑者にされてしまいます。
「クリスマスの町」で例年サンタクロースに扮する町の立役者である父親の汚名をそそごうというヒロインが事件に首を突っ込む理由はまとも、犯行動機はしっかりしているものの、あまり怪しげではない容疑者たち、細いながらも一応の伏線はある真犯人の意外性などの要件を備えており、コージー・ミステリとしては割とまともです。しかしヒロインの造形が平凡な感じがして残念な気がしますし、コージー+クリスマスの設定だったらもうちょっとハートウォーミングな雰囲気作りがあっても良かったのではないのかなと思いました。

ユーザータグ:クリスマス・ストーリー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『警視の因縁』デボラ・クロンビー 講談社文庫

2019-12-21

Tag :

☆☆☆

幼子を預けたまま、妻が蒸発した。行方を捜す弁護士の夫も姿を消し、後日、他殺体で発見された。女性警部補・ジェマは、遺児シャーロットの面倒を見つつ、婚約者のキンケイド警視と共に、惨劇の真相に迫る。ロンドンを舞台に解きほぐされる、奇怪な人間模様。情と血が導いた「事件」と「結婚」の意外な結末。 内容紹介より



パキスタン人の夫と白人の妻。妻が幼子を残して失踪し、数ヶ月後に彼女の夫も姿を消してしまいます。彼のセラピストが親友の夫だったことから、個人的に事件に関わるようになったジェマは、残された女の子の面倒を見ることに。やがて行方不明だった夫は他殺体で発見され、事件の所轄署からの依頼でスコットランドヤードのキンケイドが捜査の指揮をとることになります。弁護士の夫と新進のアーティストの妻、何のトラブルも抱えていなかったと思われる二人に何が起きたのか、という謎に主人公たちの結婚問題を初めとする私生活を絡ませる定番のパターンで話は進みます。さらに過去のユグノーの入植から現在の南アジアからの移民、黒人奴隷貿易から現代の人身売買、この二つの問題を根底に据えています。しかし、この二つの問題は表面をなぞっているだけで、主人公二人に関する家族ネタ(結婚式がどうのこうの、母親の病気治療)の方が多く、これまでの作品のなかでもミステリ部分にくらべて私生活部分のバランスが取れていない感じがしました。

『警視の週末』
『警視の孤独』
『警視の覚悟』
『警視の偽装』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『スーパー・エージェント』ハーラン・コーベン ハヤカワ文庫HM

2019-12-18

Tag :

☆☆☆☆

万能スポーツ・エージェントのマイロンでもボディガードはお断りだ。が、予想外にも女子バスケ界の期待の新星ブレンダを脅迫者から守ると請け負ってしまった。一週間前、彼女の父親が失踪した直後から執拗な脅迫電話に悩まされているという。父親の行方を追う一方、マイロンは脅迫が20年前に姿を消したきりのブレンダの母親となにか関係があると確信するが……揺れる恋のなか、マイロンが見えない敵に敢然と挑む第5弾 内容紹介より



マイロン・ボライターシリーズの第五作品。
新たに立ちあげられた女子プロバスケット・リーグの開幕を間近にひかえ、そのリーグの目玉であるスター選手のボディガードを引き受けた主人公は、彼女が悩まされている脅迫電話の裏に、彼女の両親の失踪事件が関連しているのではという疑いを持ちます。一週間前に失踪した父親の行方を追うとともに、二十年前の母親の失踪に関して次期州知事に立候補している地元の名家出身の人物が浮かび上がってきます。かつて、その名家にメイドとして働いていた母親が、候補者の転落死した妻の遺体発見者となり、その後に失踪していたのです。物語は、脅迫事件の裏に、新リーグに対抗して別のリーグを立ち上げようと計画するギャングたちの陰謀説を匂わせながら、上流階級の名家と雇い人の間に起きた過去の醜聞説を柱として展開していきます。昔の醜聞がよみがえってくるパターンなど話として使われ過ぎており、新しくもなんともない印象ですし、恒例の主人公の軽口、減らず口に閉口し、恋人との面倒くさい恋愛事情を我慢し、彼の親友の相も変わらぬ、使い勝手の良いダークヒーローぶりにちょっと飽きつつ終盤近くまで読み進めると、何と事件の裏にはまったく予想していなかった真犯人の存在が用意されていたのでした。個人的にここ最近では一番のびっくりな犯人でした。

『沈黙のメッセージ』
『偽りの目撃者』
『ロンリー・ファイター』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『夢の棘(いばら)』ピーター・ロビンスン 創元推理文庫

2019-12-15

Tag :

☆☆☆☆

スウェインズヘッド丘陵の懐深く、平和を満喫していた縣谷(けんこく)。そのただなかで、ある日、腐敗し相好の区別もつかなくなった死体が発見された。他殺であることはまちがいなかったが、被害者の身元は杳としてつかめない。さらに、遡ること五年前、同地で時を同じくして発生し、ともに迷宮入りとなった殺人および失踪事件の存在がクローズアップされるに至って、事件は容易ならざる様相を呈しはじめる……!猶予(いざよい)の谷を舞台に繰り広げられるさまざまな物語は、人々の夢と慟哭を乗せ、バンクス警部をいかなる結末へと導くのか?悲劇が彩る第四弾。 内容紹介より



本書はアラン・バンクス首席警部シリーズの第四作品目です。
五月ののどかなある日、山歩きをしていたハイカーが発見した死体は、刺殺された上に、顔面を潰された状態で、死後数日がたっていると考えられました。その地では、五年前に私立探偵が被害者となった殺人事件と時を同じくした地元の女性の失踪事件が起きていました。今回の事件が過去の事件と関係があるのか、首席警部が捜査を進めると、地元の有力者兄弟、農場経営者、ゲストハウスの主とその妻が容疑者として浮かび上がってきます。物語は、首席警部とゲストハウスの妻の視点で描かれていくのですけれど、後者は幼くして、宗教に厳格な祖母に抑圧的に育てられたために非常に内向的で快楽を罪と信じ込んでいる女性で、暴力的な夫からの虐げられた生活から逃れられない状況に陥っています。そういう人物像を鮮明に描き出しているとことには作者の筆力を感じますが、彼女のもんもんと苦悩する姿が話の流れを若干よどませているような気もしました。主人公がカナダのトロントに出張して、捜査を行うかたわら当地の文化や風俗に触れる場面があり、またカナダ人の目から見たイギリス人の印象も添えられていて面白くもあり、カナダ在住のイギリス人である作者の一面が現れているように思いました。

『罪深き眺め』
『必然の結末』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ロスト・ファミリー』ローラ・リップマン ハヤカワ文庫HM

2019-12-12

☆☆☆☆

裕福な毛皮商ルービンの美しい妻ナタリーは幼い子供たちと一緒に突然行方不明になった。夫の主張によれば、何不自由ない暮らしをしていた貞淑な妻に失踪する理由などないという。だが、捜索を依頼された私立探偵テス・モナハンが聞きこみをはじめると、ナタリーに関するあまりに衝撃的な事実が次々と明らかに……テスの恋の行方にも新たな展開がみえるシリーズ第八弾。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞のノミネート作 内容紹介より



貞淑で従順だった美しい妻が子供たちを連れて突然失踪してしまった。警察に届け出るも事件性がないと判断されたため調査をしてもらいたいという夫からの依頼に、夫婦間のトラブル関しての仕事には気が乗らないまま、主人公は報酬の大きさに引き受けてしまいます。物語は、主人公と失踪した子供の一人である少年の視点などを交えて進むため、読者には失踪の理由は初めから判る仕掛けです。ただ、その裏に隠された真の計画は後半部分まで伏せられています。依頼人とは歳の離れた魅力的な妻の意外な姿が、夫の思い込んでいたイメージとはかけ離れていたという事実が話の核になっているほかに、ユダヤ人の血が半分入っている主人公と敬けんで人間的魅力がありながらも生粋のユダヤ人らしく仕事では冷徹な依頼人とのやり取りを通して、ユダヤ人の考え方や暮らしが垣間見えるところや、彼女やその仕事仲間たちが立ち上げた女性探偵の国内のネットワークにも面白さがあります。こういう具合にきちんと組み立てられて、全体的にバランスが取れた作品に仕上がっているように感じました。

ユーザータグ:ローラ・リップマン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ミッドナイト・ボイス』ジョン・ソール ヴィレッジブックス

2019-12-09

Tag : ホラー

☆☆☆

突然、通り魔に夫を殺されてから、キャロラインは必死で12歳の娘ローリーと11歳の息子ライアンを育ててきた。でももう限界—ところが、偶然出会った知的でハンサムでお金持ちの紳士トニーと恋に落ち、結婚することに。一家はトニーの住む高級アパートメントに移ったが、そこロックウェル館は“セントラルパーク・ウェストの大妖館”として知られる不気味な建物だった!毎晩、悪夢にうなされるライアン。みるみるやつれていくローリー。この建物にはいったいなにが巣くっているのか?親切だがどこか風変わりな住人たちの正体は?—名手ジョン・ソールが描く、恐怖と驚愕のホラー・サスペンス。 内容紹介より



ややネタバレ気味です。ご注意下さい!

本書の舞台はNYのセントラル・パークの西側にそびえ建つ古い高級アパートメントです。その古色蒼然とした外観から大妖館と呼ばれ、子供たちの間には魔女や吸血鬼が住んでいるという噂話が広まっている館です。そこに住むのは、養子に迎えられた女の子以外ほとんどが高齢の住人たちです。そして、そのアパートの住人の一人と再婚し、娘ローリーと息子ライアンとともに移り住んできたキャロライン。住人たちは子供たちが加わったことを喜び、彼女たちは皆から親切にされるにもかかわらず、ライアンは彼らを嫌い、ローリーは悪夢に悩まされるようになります。いわゆる幽霊屋敷ものの一つで、そこに変形した吸血鬼ものを組み合わせた物語になっています。やや珍しいのは魔物たちが人間からエネルギーを吸い取る手口くらいで、長いわりに高低の変化に乏しい感じがしました。キャロラインよりは子供たち、特にライアンの視点を中心に進行した方がサスペンスとしては盛り上がったような気もします。クライマックスは彼がメインを務めているわけですから。館が崩れ落ちたり、焼け落ちたりする定番のエンディングを採用せず、エピローグでかたを付ける形はスケールが小さくてちょっと不自然な感じがしました。

『闇の教室』扶桑社ミステリー
『マンハッタン狩猟クラブ』文春文庫




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『天使の鬱屈』アンドリュー・テイラー 講談社文庫

2019-12-06

Tag :

☆☆☆☆

夫と別居し、教会付属の図書館で働き始めたウィンディ。半世紀前の聖職者にして詩人フランシスのことを調べている彼女の身辺で、死の悲劇が相次ぐ。「醜聞の主」「立派な紳士」と人物像の定まらない詩人の過去を追っているもう一人の人物とは誰か?歴史の謎に彩られたミステリーの大聖堂!CWA賞受賞作。 内容紹介より



本書は、三部作Requiem for an Anjelの『天使の遊戯』『天使の背徳』につづく三作目にあたります。わたしは順番を違えて最終巻から読み始めてしまったのですが、やはり発表順どおりに読んだ方が良いみたいです。
夫の浮気現場を目撃したヒロインは、お金もないため学生時代の親友で、今は神学校の副校長をしている夫と娘と暮らす学生時代の親友の家に居候のような形で住み始めます。やがて神学校付属の図書館で蔵書整理の臨時仕事についた彼女は、五十年前に司祭だった人物が出版した詩集に出会います。女性司祭の登用や地域の貧困問題に取り組んだその地元で毀誉褒貶のある聖職者に興味を引かれたヒロインは、彼女の他にもその人物について調べ回っている男がいることに気づきます。物語は、この聖職者についての調査、親友家族との日常生活、離婚を考えて別居した夫に関すること、教会の敷地内という特殊な環境に入り込んだ彼女の視点から教会関係者やその家族についての日々の出来事を眺め暮らす様子 が綴られて進み、ミステリらしい事件が起きるのは最終盤になってからです。本書を読んだだけでは CWA賞受賞作として食い足りない感じが残りますが、主人公のユニークな造形が印象的な作品だと思います。

『我らが父たちの偽り』サンケイ文庫
『第二の深夜』 文春文庫




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『紙片は告発する』D・M・ディヴァイン 創元推理文庫

2019-12-03

☆☆☆☆

お父さんが思ってるほど、あたしは馬鹿じゃない。誰かさんを刑務所送りにできる秘密を知ってるんだから—町議会議員の娘だが、周囲に軽んじられているタイピストのルースは、職場で拾った妙なメモのことを警察に話すと、町政庁舎(タウンホール)の同僚たちに漏らしてしまう。その夜、彼女は何者かに殺害された……!現在キルクラノンの町では、町長選出にまつわるいざこざが持ち上がっており、庁内には腹に一物ある連中がひしめいていた。即座に口封じに及んだのは誰か?地方都市を舞台に起こる殺人事件とその謎解きは、ディヴァイン犯人当ての真骨頂! 内容紹介より



1970年に発表された本書は、時代的に新しいわけでも、かと言って古めかしいわけでもないのですが、被害者の職業がタイピストというところに時代感を覚えました。一方、町議が職場で有能な女性に否定的であったり、面と向かってセクハラやモラハラ発言をしたり、性的少数者に世間の理解がまったくなかったりする傾向が当たり前であった時代でもあります。こういう要素が物語に組み入れている点などに時代の移り変わりを感じます。物語には、不正入札や職場内の不倫をはじめとした人間関係や出世競争といったかなり世俗的なテーマが盛り込まれ、公務員であるヒロインの視点でもあるために、二件の殺人事件のわりには全体的には地味目なトーンで推移していきます。しかし、役所内を主要舞台にした設定は一見社会派ミステリ風でもありますが、実際は作者らしいパズラー小説に仕上がっているという、ミステリにおける古典と現代の混在のようにも見えます。犯人の意外性はあると思うのですけれど、欲を言えば各容疑者にさらなる動機を付け足していたらもっとサスペンスが盛り上がったようにも思いました。

ユーザータグ:D・M・ディヴァイン




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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