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『悲劇のクラブ』アーロン&シャーロット・エルキンズ 集英社文庫

2020-01-26

☆☆

恩師がレッスン・プロを務める由緒あるゴルフ・クラブの百年祭に招かれ、ハワイを訪れたリー。マクベス城のような雰囲気のクラブハウスを持つこのゴルフ・クラブには奇怪な伝統が数々あった。その中のひとつ“誓いの詞”の意味を知っている唯一の人物、ハミッシュが殺される。これはハワイ原住民に伝わる呪いのせい?否応なしに巻き込まれたリーが探るうちに浮かぶクラブの暗い歴史。好評シリーズ完結巻。 内容紹介より



ハワイの伝統あるゴルフ・クラブの百周年記念祭にゲストとして招かれたヒロインは、第二次大戦時に行方不明になった宝石で装飾された優勝カップにまつわるトラブルがクラブに持ち上がっていることを知ります。また、そのカップに付属している遺物の人形をめぐる問題も発生しているなか、クラブの古参である会長が撲殺された姿で発見されます。ヒロインが初めてゴルフを習った恩師であるクラブ所属のレッスンプロが容疑者となったことから、彼女は婚約者と親友の助けを借りて調査を始めることに。今回はプロ相手のトーナメントではなく、クラブの会員を相手にゴルフをやったり競技を見たりする程度なので緊張感はかなり薄れています。ミステリ部分は、クラブ入会時に暗唱する“誓いの詞”に含まれる暗号解きやクラブ内にある秘密の通路探しといった古典的な定番要素が盛り込まれています。それからヒロインが危機に陥る場面もありますが、全体的に使い古されたアイデアを踏襲しているだけで新しさを感じませんでした。ハワイのゴルフリゾートで読む本としては最適でしょうけれど。

ユーザータグ:アーロン・エルキンズ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『その犬の歩むところ』ボストン・テラン 文春文庫

2020-01-23

Tag :

☆☆☆☆

ギヴ。それがその犬の名だ。彼は檻を食い破り、傷だらけで、たったひとり山道を歩いていた。彼はどこから来たのか。何を見てきたのか……。この世界の罪と悲しみに立ち向かった男たちと女たちと、そこに静かに寄り添っていた気高い犬の物語。『音もなく少女は』『神は銃弾』の名匠が犬への愛をこめて描く唯一無二の長編小説。 内容紹介より



物語の語り手は、イラクから帰還した元アメリカ海兵隊員。彼が偶然出会った一匹の犬が経験した出来事を過去にさかのぼって綴っています。それは犬の父親がモーテルの女主人のもとへたどり着いたときから始まり、仔犬の頃、ミュージシャンの兄弟にさらわれ、その後のタトゥー・アーティストの少女との出会いと別れ、そして元兵士との出会いという具合に進んでいきます。その文体は『凶器の貴公子』ほどではないにせよ大仰な印象を受け、まるで犬版のオデッセイアみたいに感じてしまいました。一匹の犬と様々な人物とのかかわり合いを通して、それぞれの人生の一片を描き出す手法はよくとられていますが、本書では語り手であるイラク帰還兵の他に朝鮮、ベトナムからの帰還兵も登場させているところが特徴ではないでしょうか。そのなかのひとりがベトナムにおいて、終戦後アメリカ軍の軍用犬が当地に捨てられたことに触れ、軍から同じようなひどい仕打ちを受けた自分たちの姿を重ねあわせる場面があります。また、9.11で姉を亡くし、激戦で戦友を失い、自らも負傷しサバイバーギルトに苦しみ、名誉勲章授与でいわば処理された帰還兵の姿も鮮明に描いています。神が天地創造の際、地上を人間の住む場所とそれ以外の生き物が住む場所を深淵によって二つに分けた時、その深い溝を犬は人間が住む側へと跳躍した、という話を作者は引き、「さて、人は底知れぬ深淵を跳んだ生きものに値する生きものたれるや否や」(p293)と結び、それは国民と国との関係にも当てはまるものだと暗示しているようにも感じました。

『音もなく少女は』
『凶器の貴公子』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『おやすみなさい、ホームズさん』キャロル・ネルソン・ダグラス 創元推理文庫

2020-01-20

Tag :

☆☆☆

職を失いロンドンの街をさまよっていた私ペネロピー・ハクスリーは、ふとしたことからアイリーン・アドラーという美女と知りあい、生活をともにすることになる。彼女は女優であり、オペラ歌手であり、そしてときには探偵でもあった。宝石商ティファニー氏からマリー・アントワネットゆかりのダイアモンド捜しの依頼を受けたアイリーンは、私を助手に調査を始めるが、それは数年にわたる壮大な冒険の始まりだった!名探偵ホームズに敬意をいだかせた唯一無二の女性を主人公にした魅惑のシリーズ〈アイリーン・アドラーの冒険〉、ここに開幕。 上巻内容紹介より



本書は、シャーロック・ホームズものである『ボヘミアの醜聞』に登場したアイリーン・アドラーを主人公にしたスピンオフ作品であり、下巻の後半部分は『ボヘミアの醜聞』を彼女側から見た物語に仕立てています。ペネロピー・ハクスリーをワトスン役に据えて、後にその日記が時を経て発見されるという体裁をとっています。物語は、マリー・アントワネット由来の失われたダイアモンドの装飾品捜しを依頼されたことから動き始め、その調査活動中にオスカー・ワイルドのペンダント捜しを挿み、ボヘミアでのアイリーンと後のボヘミア王とのなりそめへと続いていく構成になっています。小事件を絡ませながら舞台はロンドンからボヘミアへ、そして逃避行を経てまたロンドンへと移りかわり、クライマックスで描かれるアイリーン側の視点から見た、ホームズの鼻を明かす場面は結構痛快でもあります。わたしのようなホームズ・パスティーシュに興味がない者でも、別の角度から見たホームズものという趣向はなかなか面白かったです。またミステリとは別に、女性を主役に据えているため、ホームズと同時代の女性の社会的地位や認識を前面に打ち出し、さらにアメリカ人で進取なアイリーンと牧師の娘で保守的なペネロピーを対比させてもいます。

『黒猫ルーイ、名探偵になる』ランダムハウス講談社




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『モンキー・パズル』ポーラ・ゴズリング ハヤカワ文庫HM

2020-01-17

☆☆☆☆

第一の被害者は、胸をめった突きにされ、舌を抜かれた英文学の教授。二人目は耳を切り取られた学部長。厳冬の大学町を襲った異常な事件を、新聞は“見ざる聞かざる言わざる”の諺に見立てて「猿の殺人鬼」と書き立てた。狂気の業としか思えない凶行の目的は何か。ストライカー警部補の必死の捜査が探りだした犯人は?サスペンスの女王が意欲も新たに本格推理に挑んだ傑作。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞受賞作 内容紹介より



第三の犠牲者は両目をくり抜かれた警備員。大学の英文学部構内を舞台にした連続殺傷事件の始まりは、ことあるごとに同僚に対して悪意ある言葉で攻撃していた男性教授です。同僚各人が抱えている隠し事を探り出しては、それを当人たちにほのめかしていた被害者に敵意を持っている者が大勢いる状況です。被害者は強打され、さらに幾度も刺されたうえに、舌を切りとられており、現場には糖尿病を患っていた被害者の中身が薄められたインスリンのアンプルが残されていました。大勢の容疑者があがるなかで、通常ならば読んでいて誰が誰でどういう人物なのか混乱しがちになるのですけれど、それを同僚の女性講師の視点を用いることによって、それぞれの人となりを約2ページの描写で書き分けている点は作者の小技が効いている感じがしました。さらに事件の一部始終を偶然に目撃した人物を脅迫者として登場させているところもスパイスを加えている巧いアイデアだと思います。一方、主人公と女性講師の間に起きた過去のエピソードについてはあまり必要性を感じませんでした。彼女が受け持つ推理小説に関する講義の内容にもう少し詳しく触れられていたなら面白さが増したような気もします。

ユーザータグ:ポーラ・ゴズリング




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『猫好きに捧げるショート・ストーリーズ』ロアルド・ダール アリス・アダムズ ロズ・チャスト他 M・J・ローゼン編 国書刊行会

2020-01-14

☆☆☆

ロアルド・ダール、アリス・アダムズ他、現代英米の短編の名手たちが描く猫物語20篇。『ニューヨーカー』常連の漫画家ロズ・チャストの「漫画組曲」、トニー・メンドサの猫写真14葉も収録。 内容紹介より



「賢いわたし」パメラ・ペインター
三匹の猫を飼っている「わたし」が、もう一匹猫を飼いたいと言うと同居中の彼から反対される。それならばと三匹の猫に新しい名前を付けて呼ぶことにしたら、これまた彼には不評。賢い「わたし」が次にとった措置とは。
「猫を飼う」フィリップ・ロペイト
実は猫など飼いたくなかったのに、憧れている老作家から、なりゆきで仔猫を貰い受けて飼うことになった「ぼく」。嫌々飼っているうちに次第に変化していく心情を描いた作品。
「二匹の猫と」ロプリー・ウィルソン
二匹の猫と暮らす離婚経験のある中年女性が偶然に精神科医と知りあい交際することに。彼は彼女の猫への愛着を面白がったり、職業柄アドバイスをしたりする。一緒に暮らそうともちかける彼への返事は……。
「危機」モリー・ジャイルズ
夫と息子と娘、そして犬と三匹の猫と暮らす専業主婦。中年の危機を迎えた主婦の心の動きを迷い込んできた仔猫に絡めて描く。
「猫が消えた」アリス・アダムズ
飼い猫とともに両親の所有する別荘で週末を過ごしたソーシャル・ワーカーの女性。帰り際に猫がいなくなったことから、彼女の心の底にあった不安や恐れが浮かび上がってくる様を描いた作品。
「土地っ子と流れ者」ボビー・アン・メイソン
両親が引っ越した後、八匹の猫がいる実家の農場で暮らす女性。夫が新しい仕事で別の土地に新居を探しに行った留守中に、彼女に恋人ができてしまう。このまま農場に止まるか、それとも新しい土地で夫とともに暮らすのか。
「シカゴとフィガロ」スーザン・フロムバーグ・シェイファー
フィガロという名の猫がでてくる良く理解できない物語。
「お気をつけて」カティンカ・ラサー
これまた良く理解できない、二度も泥棒の被害にあった家の主婦の日常の一片を切りとったかのような作品。ホワイトという名の二匹の猫を飼う彼女の漠然とした不安。
「絵の中の猫」ライト・モリス
妻と二人暮らしの絵を趣味にする退役した大尉の家に猫が紛れ込んでくる。猫を可愛がる妻、その姿に疎外感を抱く彼がしたちょっとした悪戯が思わぬ事態を招いてしまう。
「つれあい」アーテューロ・ヴィヴァーンテ
普段はキャンパス内のアパートで暮らし、週末に妻のいる自宅に帰る日課にしている大学で教えている彼。ある日、彼は一人暮らしで老猫の世話をして過ごしている妻の孤独に気づく。
「漫画組曲」ロズ・チャスト
猫の漫画あれこれ。
「屍灰に帰したナッシュヴィル」エイミー・ヘンペル
獣医だった夫を亡くして、猫一匹、犬二匹、九官鳥一羽と暮らす女性の夫の思い出やペットたちの生活を描いて、老いていく彼女の虚しさやあきらめを浮かび上がらせている作品。
「暴君エドワード」ロアルド・ダール
自宅に迷い込んできた猫を音楽家リストの生まれ変わりだと信じる妻、それに対する夫のとった行動は……。
「屋根裏部屋の猫」ヴァレリー・マーティン
飼い猫を溺愛する奔放な人妻。その猫が行方不明になったことから起きた出来事を愛人の視点で描いた、どこか古めかしい感じがする作品。
「テッド・ローパーを骨抜きにする」ペネロピ・ライヴリー
村中の猫を妊娠させてまわる猫とその飼い主の不良老人。彼らに憤った村の主婦たちの恐い企み。
「愛情」コーネリア・ニクソン
子猫時代から可愛がって育ててきた猫が別の家に住み込んでしまった少女。彼女の猫へ複雑な想いと思春期の感情を描いた作品。
「フェリス・カトゥス」ジーナ・ベリオールト
新婚夫婦に起きた猫と姉妹をめぐる色々なトラブルを描く。
「老女と猫」ドリス・レッシング
子供たちに顧みられなくなった老女と飼い猫の哀しい話。
「ラルフ」ウィンディ・レッサー
病気で鼻をなくした飼い猫について思うこと。
「ふれあいは生き物の健康にいい」メリル・ジョーン・ガーバー
次第に増えていくペットたちの世話と家事に追われる主婦のもとにさらに一匹の子猫が現れる。飼うことに反対する夫を説得する方法。
「こっちを向いて、ビアンカ」モーヴ・ブレナン
飼い猫が行方不明になってしまった「わたし」。猫の思い出と喪失感を描く。宙ぶらりんの気持ちのままでいなければならない辛さ。

雑誌『ニューヨーカー』に掲載されているような雰囲気の作品がいくつかあって、解説を読むと実際に掲載された作品や発表の場としている作家が書いた作品が収録されているようです。なので似たような傾向の作品が多く、あまり変化に富んでいるとは言えません。

今年もよろしくお願い致します。



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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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