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『ダンスは死の招き』ロバート・フェリーニョ 講談社文庫

2020-03-29

Tag :

☆☆☆

最高裁判事の父親が殺された夜、事件記者クィンは別れた妻と愛娘のダンスを見に行っていた。そのステージに、死んだと思っていた「ダンスの天才」ジョーおじさんが車椅子で登場した!喜びもつかの間、愛する者たちに迫る殺人者の魔の手。犯人を捜すクィンだが……。最高傑作ハードボイルド・サスペンス! 内容紹介より



義理の父親である判事が最初の被害者となって始まった連続殺人事件を追う事件記者が主人公です。殺人犯の正体は物語のはじめで明かされていますが、その動機は伏せられています。次第に疎遠になったままの関係で亡くした義父への悲嘆を抱えつつ、また別れた妻と一人娘、そして現在の若い恋人、この二組の間を複雑な感情を抱いてうろうろする主人公の造形とその感傷がやや鼻についてしまいました。ハードボイルドとノワールをくっつけたみたいな作品ですけれど、主人公は今ひとつだし、殺人犯をこんなふうに奇天烈な造形にする必要があったのか不思議だし、裏で糸を引いていた人物も彼が持つ理想と比べて不自然だしで全体的に完成度が低いように感じました。なので個人的には決して「最高傑作」というほどの出来ではないという印象です。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『エアーズ家の没落』サラ・ウォーターズ 創元推理文庫

2020-03-26

Tag :

☆☆☆☆

この地方で、かつて隆盛を極めたエアーズ家は、第二次世界大戦終了後まもない今日では斜陽を迎え、広壮なハンドレッズ領主館に逼塞していた。かねてからエアーズ家に憧憬を抱いていたファラデー医師は、ある日メイドの往診を頼まれたのを契機に、一家の知遇を得る。物腰優雅な老婦人、多感な青年であるその息子、そして令嬢のキャロラインと過ごす穏やかな時間。その一方で、館のあちらこちらで起こる異変が、少しずつ、彼らの心をむしばみつつあった……。悠揚迫らぬ筆致と周到な計算をもって描かれる、たくらみに満ちたウォーターズの最新傑作。 上巻内容紹介より



時代背景は第二次大戦後まもない頃、労働党政権下で食料やガソリンなどの配給制度がしかれています。そのような中、由緒あるハンドレッズ領主だったエアーズ家は、経済状況の悪化により土地や家財を売って家計を支えている状態です。主要な登場人物は、エアーズ家の領主ロデリック、姉のキャロライン、彼らの母親で先代のエアーズ夫人、館の住みこみメイドであるベティ、そして物語の語り手ファラデー医師です。時代の趨勢により凋落していくエアーズ家と荒廃していくハンドレッズ館、その館を侵食するように手放した領地に労働者向けの住宅が立ち並ぶという構図を組み、館の元奉公人を母親に持つ医師がエアーズ家との交流から見た、館に起きた奇妙な出来事とその家族の悲劇を物語ります。物語の核心とは、エアーズ家の没落にとどめを刺したのは果して館で発生した数々の超自然現象なのか、あるいは人的なものなのか、ということなのでしょう。早世したエアーズ家の長女の霊または集団ヒステリー、あるいは館への執着心によって精神を蝕まれたと思えるある人物、様々に疑うことができます。作者は最後に匂わせてはいますがはっきりとした正解はないのかもしれません。下巻になると同様なことの繰り返しで、やや単調に感じてしまうところもありました。しかしすっきりした文体と、こなれた訳文で非常に読みやすかったです。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『Xに対する逮捕状』フィリップ・マクドナルド 創元推理文庫

2020-03-23

Tag :

☆☆☆☆

米国の劇作家シェルダン・ギャレットは自作公演でロンドンを訪れた。初日を成功裏に終え無聊を覚えた日曜の午後、立ち寄った喫茶店で女二人の会話を盗み聞きする成り行きに。いとも曖昧な断片ながら犯罪の匂いを嗅ぎ取ったギャレットは防がんと行動を開始する。相手にされないこと数度、やがてアントニイ・ゲスリンと面談。ゲスリンが動くや女の身許は割れたが行方は知れず、関係者の死、ギャレット自身も奇禍に遭うなど、行く手は困難を極めて……。興味深い発端、論理的な謎解き、緊迫の終局。巧みな展開が小気味よい、マクドナルドの代表作。 内容紹介より



本書は1938年に発表されたアントニイ・ゲスリン大佐を主人公にした作品です。ロンドンを訪れたアメリカ人が偶然立ち寄った喫茶店で二人の女性の間で交わされる、犯罪に関する密談を耳にしてしまいます。店を出た彼は彼女たちの後を追いますが、後ろ姿だけしか目にすることができす行方を失ってしまいます。身内が犯罪に巻き込まれたことがある彼は重大な犯罪が行われるのを危惧して警察に届け出ますが相手にされません。そこで彼は友人の伝でゲスリンと面会し、協力を頼みます。女たちの一人が喫茶店に置き忘れた切符と買い物のメモ書きから、彼らは行方を探ることに……。
犯罪を未然に防ごうと懸命な捜査を行うという珍しい趣向がとられている作品で、一片の紙切れから謎を解く妙味、犯行計画を解き明かすスリル、犯罪者からの反撃が生むサスペンス、それからロマンスも添えられている盛り沢山な良い物語です。でも、やはりちょっと古めかしくはあります。時々各章の導入部に映像を意識した描写を施しているところは、脚本家としても活動していた一面が現れているように思います。それから米英の話し言葉の微妙な違いや、イギリス人からはやや無礼とも思える直情径行なアメリカ人像が盛り込まれて、そこのところにロンドンにやって来たアメリカ人という設定が効いているみたいに感じました。

『鑢 名探偵ゲスリン登場』
『迷路』ハヤカワ・ミステリ
『ゲスリン最後の事件』
『ライノクス殺人事件』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『13時間前の未来』リチャード・ドイッチ 新潮文庫

2020-03-20

Tag :

☆☆☆☆

12時間以内に最愛の妻を殺した犯人を突き止めなければならない。13時間目には―。ニックは取調室にいた、容疑は妻殺し。彼女を殺すはずなどなかった。だが凶器の拳銃には自らの指紋。混乱するニックの前に謎の初老の男が現れ告げる。「きみには12時間ある」そして残された懐中時計……。第12章から始まり時間を遡る、異色かつ巧緻なタイムトラベル&タイムリミット・ミステリ! 上巻内容紹介より



不意に取調室に現れた謎の男から渡された懐中時計。その時計を持っていれば、2時間前にタイムスリップし、1時間が経てばその2時間前に。ただし13時間目からは時空はもとに戻るという具合です。妻殺しの容疑をかけられた主人公は、その時計を使って過去へと遡り真犯人の犯行を阻止しようとします。折しも旅客機墜落事故が起こり、街は混乱の渦中にあり騒然とした雰囲気に満ちている状況下にあります。殺人事件の犯人とその動機については割と早めに明かされるために謎解きの要素や意外性は少なめです。また、いかにもアメリカ的な娯楽作品ですので、人間像やその心理描写の掘り下げはなく極めて表面的であり、キャラクターは善か悪のいずれかに設定されています。SFとしてみても、タイムパラドックスに関しては一応パラレルワールドの概念を用いてように思えますが、過去に移動しても主人公が自分自身に会わないにもかかわらず、最後に懐中時計は二個に増えているみたいな辻褄の合わない部分も目に付きました。そういうことを気にしなければ娯楽小説としてはかなり面白い手法をとった作品だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『魔笛』ディラン・ジョーンズ 講談社文庫

2020-03-17

Tag :

☆☆☆

闇に響く口笛とともに黒いドレスの美女が惨殺された。猟奇的な連続殺人事件の現場で、なぜか耳にする恐怖の高音。心を病む弟への疑いと不安を胸に秘めながら、シカゴ市警ルー・ベック刑事は、必死に犯人を追う。動機は何か。次第に明らかになる恐るべき真相。戦慄のサイコ・キラーを追う長篇ミステリー。 内容紹介より



心に障碍を抱える弟が殺人事件を目撃したものの、血だらけになった彼の支離滅裂な話から兄であるベック刑事は弟の犯行なのではないかと危惧します。また母親の懇願で弟をかばおうとするも、当人は家を飛び出し行方がわからなくなってしまいます。ベックは弟と事件の関わりを隠して彼を捜しながら、捜査を別の方向へと導こうとしますが、英国から来た被害者の弟に不信感を持たれてしまいます。ベックのパートナーである女性刑事マッキーが被害者の弟と警察との連絡係になり、別の角度から事件の捜査を行うという内容紹介とは違った展開をとります。市に多大な経済効果を生むコンベンションの参加者が被害者になったため、なるべく事件を早期に解決したい市政側と警察上層部の思惑やマッキー刑事と大物企業家である彼女の父親との確執が話に絡んで進みます。ミステリとしてもサイコ・スリラーとしても目新しいものはなく、犯人も欲望に駆り立てられる変質者でしかなく深みや複雑さは見当たりません。舞台が米国のシカゴということもあいまって、イギリス人作家らしいものが作品に見当たらなかったことも物足りませんでした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『捜査官ケイト 消えた子』ローリー・キング 集英社文庫

2020-03-14

Tag :

☆☆☆

あの子が消えた……。旅の途中で突然姿を消した少女。ホテルの部屋には争ったあとはない。しかしその地域では女の子を狙う連続殺人犯が潜伏中だという。旅に誘った責任を問われるサンフランシスコ市警の捜査官ケイト。少女をつけまわしていた不審な人物はいなかったか。周囲の冷たい視線に耐えながら、必死の捜査が始まった…。MWA(アメリカ探偵作家クラブ)の最優秀長編賞にノミネートされたベスト・ミステリー。 内容紹介より



主人公ケイトの仕事のパートナー、アル。彼の婚約者の一人娘ジュールズから公園で知り合ったホームレスの少年の行方を捜して欲しいという相談を受けたケイト。彼女は捜索で踏み込んだホームレスのねぐらで頭部を殴られ意識を失う怪我を負ってしまいます。彼女は公傷休暇中、アルたちが新婚旅行の間、ジュールズと二人で旅に出ることにしますが……。物語の前半は少女ジュールズとの交流と姿を消したホームレス少年の捜索、そして同居していたケイトの恋人が家を出て遠い叔母の元で暮らし始めた問題が主になり、後半はジュールズの失踪とその捜査が描かれています。
恋人への喪失感と二人の関係の変化にたいする焦燥感がないまぜになり、憤りや不安が主人公に次々に湧き上がってくる心理描写が丹念になされている一方で、ジュールズの心の内に目覚めた思春期の複雑な心理状態や変化については描き方が今ひとつのような気が個人的にしました。突発的な行動を取ると思われる前兆が伏線として若干不足気味にも思います。

『捜査官ケイト』
『愚か者の町』
『夜勤』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『悪意』ホーカン・ネッセル 東京創元社

2020-03-11

Tag :

☆☆☆

「トム」
夜中にかかってきた一本の電話、それは二十年前に死んだはずの息子からのものだった。
「レイン」
亡くなった著名な作家の遺作には、母国語での出版を禁じ、翻訳出版のみを許可するという奇妙な条件が付されていた。
「親愛なるアグネスへ」
夫の葬式で久しぶりに会ったかつての親友。二人の交わす書簡はやがて……。

デュ・モーリアの騙りの妙、シーラッハの奥深さ、ディーヴァーのどんでん返しを兼ね備えた全五編の傑作短編集。 内容紹介より



「トム」
以前に読んだことがあるけれど誰の作品だったか思い出せないミステリのプロットに非常に似ています。ただ本作では最後にもう一捻りが施されています。

「レイン ある作家の死」
これもままあるトリックを使った作品です。
過去と現在、妻の失踪と作家の死、そして移ろう意識と観念的描写、文学的な表現など、少々読みづらいです。この作品の難点は死んだと思われる作家の死体が発見されていないこと、そしてその事実を裁判の場で誰の指摘しないままでいること、これはかなり不自然な成り行きであり、作者はこの問題に何らかの理由付けを行うべきではなかったのではないでしょうか。

「親愛なるアグネスへ」
作品中でも言及されているパトリシア・ハイスミスの作品から材を取ったみたいな物語ですが、残念ながらハイスミスほどにはサスペンスフルでもないし、まあこうなるだろうなと結末が予測しやすい話です。

「サマリアのたんぽぽ」
これまたどこかアメリカの田舎町で起きた、どこかで読んだことがあるような話で、男性(青年)側を魅力的に見えるように描いていないせいで物語に深みが足りないように感じました。

「その件についてのすべての情報」
深夜までかけて学校の課題を仕上げたことが遠因となって少女が命を落とした、と匂わせ、彼女が遺したその課題に優秀点をつけるという教師の立場、その無意味さ皮肉さ暗示しているのでしょうか、よく分かりません。

『終止符(ピリオド)』講談社文庫




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ジャンル : 本・雑誌

『ストーン・ベイビー』ジュールズ・デンビー ハヤカワ・ミステリ

2020-03-08

Tag :

☆☆☆

あいつはスロットマシンにもたれ、ビールを飲みながらこっちを見ていた。最初に気づいたのは、あいつの目、水晶のようなブルーで、奥から照らされているみたい。まるで動物のようだった……女性コメディアン、ジェイミーを夢中にさせた美男子ショーン。しかしマネージャーのリリーは、彼に生理的とも言える嫌悪感を抱く。はたせるかな彼女らと同居するようになったショーンは、徐々に暴力的な本性を露わにしはじめた。やがて明らかになる、ショーンの正体とは?英国芸能界の裏側を新鮮なタッチで描き、CWA賞にノミネートされたサスペンス 内容紹介より



新人の女性コメディアンジェレミーと偶然に出会い、親友になるとともに彼女の才能に惹かれてマネージャーになった「わたし」リリーの視点から物語られるサスペンス作品です。物語の前半はジェレミーとそのゲイの友人と三人での同居生活やコメディの舞台について話が語られて進みます。ジェレミーは幼少時代に受けた虐待のトラウマを抱え、それが原因で暴力的でつまらない男に惹かれてしまうという性癖があり、周囲の心配をよそに今度はショーンというマッチョな美男子とつき合い始めます。折しも世間では女性を狙った連続殺人事件が発生しているという状況で、生き残った被害者から犯人は黒人だったとの証言により街はやがて不穏な雰囲気が漂い始めます。実は物語の冒頭で殺人犯の正体は明かされ、犯人との出会いや出来事をリリーが振り返る形で描かれているために サスペンス自体の盛り上がりはさほどありません。さらにリリーの口述体が今風な軽い口調になっているので、事件の根底にある虐待や差別を取り上げながらも陰鬱な感じがかなり軽減されてサイコ・スリラー色は弱めになっています。そういった新しいスタイルとオルタナティブ・コメディアンを主人公の一人に据えてその世界を描いていることによってCWA賞新人賞候補にノミネートされたのでしょうか。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『夜は終わらない』ジョージ・ペレケーノス ハヤカワ・ミステリ

2020-03-05

☆☆☆☆

ワシントンDC。麻薬、貧困、人種間の争いが蔓延する街―。刑事ラモーンは、この街の犯罪との終わりなき闘いに日々神経をすり減らしている。そんな彼でさえ、やるせなくなる事件が起きた。犠牲者は少年で、しかも息子の友人。事件の解決を心に誓い捜査を始めたラモーンは、二十年前の未解決連続殺人事件との類似点に気づく。さらに他の殺人事件との意外な関連性も浮びあがった。事件をめぐり、人間の欲望と執念が交錯するなか、明らかになる真相は……。家族の絆を軸に描く、哀切に満ちた傑作長篇。バリー賞受賞作。 内容紹介より



ワシントンDCの一画にあるコミュニティ菜園で少年の遺体が発見されます。警察は現場の状況や殺害方法が二十年前に起きた少年が被害者の連続殺人事件に似ていることに着目します。被害者が息子の友人だったことから、刑事のラモーンは他人事とは思えず捜査に関わることになります。一方、事件の第一発見者であるラモーンのかつての同僚だった元警官ドクは、二十年前の連続殺人事件の捜査に執念を燃やした元巡査部長に接触します。物語はこの殺人事件の他に、暗黒街でのし上がる野望を持つ若者の姿も追っていきます。この二つの話は最後までリンクするわけではないのですが、作者の意図であろう人間像やその人生を描き出すという点で重要な役割を果たしていると思います。そして作者の一貫したテーマである、貧困、犯罪、人種差別、人種間対立が本書でも強く表されています。そういうことを考慮に入れるとすると、本作は〈ワシントン・サーガ〉の外伝、またはデレク・ストレンジシリーズのスピンオフみたいな立ち位置を取るのかもしれません。人種の壁への答えとして、白人と黒人のラモーン夫婦、同じく元警官と元巡査部長のコンビ、犯罪には強盗犯の更生した従兄弟を登場させているように感じました。さらに円熟味を増した作者による人間ドラマなのではないかという印象です。余談ですが、名前の表記がジョージ・P・ペレケーノスからジョージ・ペレケーノスに変わっています。

ユーザータグ:ジョージ・P・ペレケーノス




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『暗闇の囚人』フィリップ・マーゴリン ハヤカワ文庫NV

2020-03-02

Tag :

☆☆☆☆

夫の最高裁判事を爆殺した容疑で突如起訴された、美貌の女検事アビー。揺るぎない物証を揃え盤石の態勢を築く検察側は、さらに意表をつく証人を用意する。証人の名はディームズ、かつてアビーが訴追した卑劣な殺人狂だった。一方、弁護に立つのは、いまだ敗北を知らぬ辣腕弁護士レイノルズ。圧倒的に不利な状況下、彼に逆転の秘策はあるか?やがて熾烈な法廷戦の末、驚愕の真実が……仕掛けに満ちた、興奮のサスペンス 内容紹介より



夫の浮気を理由に離婚協議中の女性検事が、車に仕掛けた爆弾によって夫を殺害した容疑で逮捕されます。弁護するのは、幼い頃父親を冤罪より死刑で処せらたことで死刑訴訟を専門に扱うようになった辣腕弁護士です。爆発現場や被告人の自宅から発見された証拠品、さらに彼女から夫の殺害を依頼されたという証人まで現れて被告側は窮地に陥ります。さらに被害者付きの調査官殺害の容疑もかけられてしまう絶体絶命のピンチを弁護側はいかに逃れるのか。というリーガルサスペンスの醍醐味が十二分に味わえますが、それ以上に自分が持っていたリーガルサスペンスのイメージというものを覆すほどのインパクトのある作品でした。死刑訴訟の弁護に情熱をそそいできた優れた弁護士は、一方容姿にコンプレックスを抱え孤独な人生を送って来たという背景と、以前から被告人に対して彼が秘かに恋焦がれていた設定を用いています。キャラクター造形が弱いと言われる作者ですが、本書におけるこの弁護士の人間像は、二転三転する巧緻なプロットにも深く絡んでいる巧みな仕立てがなされていると思います。わたしがこれまで読んだ作品のなかでは本書が一番の出来だという印象です。

『黒い薔薇』
『炎の裁き』
『女神の天秤』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

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