『悪意』ホーカン・ネッセル 東京創元社
2020-03-11
- Category : ☆☆☆
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「トム」
夜中にかかってきた一本の電話、それは二十年前に死んだはずの息子からのものだった。
「レイン」
亡くなった著名な作家の遺作には、母国語での出版を禁じ、翻訳出版のみを許可するという奇妙な条件が付されていた。
「親愛なるアグネスへ」
夫の葬式で久しぶりに会ったかつての親友。二人の交わす書簡はやがて……。
デュ・モーリアの騙りの妙、シーラッハの奥深さ、ディーヴァーのどんでん返しを兼ね備えた全五編の傑作短編集。 内容紹介より
「トム」
以前に読んだことがあるけれど誰の作品だったか思い出せないミステリのプロットに非常に似ています。ただ本作では最後にもう一捻りが施されています。
「レイン ある作家の死」
これもままあるトリックを使った作品です。
過去と現在、妻の失踪と作家の死、そして移ろう意識と観念的描写、文学的な表現など、少々読みづらいです。この作品の難点は死んだと思われる作家の死体が発見されていないこと、そしてその事実を裁判の場で誰の指摘しないままでいること、これはかなり不自然な成り行きであり、作者はこの問題に何らかの理由付けを行うべきではなかったのではないでしょうか。
「親愛なるアグネスへ」
作品中でも言及されているパトリシア・ハイスミスの作品から材を取ったみたいな物語ですが、残念ながらハイスミスほどにはサスペンスフルでもないし、まあこうなるだろうなと結末が予測しやすい話です。
「サマリアのたんぽぽ」
これまたどこかアメリカの田舎町で起きた、どこかで読んだことがあるような話で、男性(青年)側を魅力的に見えるように描いていないせいで物語に深みが足りないように感じました。
「その件についてのすべての情報」
深夜までかけて学校の課題を仕上げたことが遠因となって少女が命を落とした、と匂わせ、彼女が遺したその課題に優秀点をつけるという教師の立場、その無意味さ皮肉さ暗示しているのでしょうか、よく分かりません。
『終止符(ピリオド)』講談社文庫
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌