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『エヴァ・ライカーの記憶』ドナルド・A・スタンウッド 創元推理文庫

2020-04-28

Tag :

☆☆☆☆

タイタニック号に関するノンフィクション執筆を依頼されたノーマン・ホールは、惨殺事件を契機に警察を辞職した苦い過去を持つ。取材を始めたノーマンは、沈没船からの生還者エヴァ・ライカーの封印された記憶を手がかりに調査を進め、時空を隔てた三つの出来事―1912年4月、処女航海中の豪華客船が大西洋で沈没。41年真珠湾攻撃の直前、ホノルルで起きたアメリカ人観光客夫妻惨殺。62年大富豪ライカー、タイタニック号の遺留品引き揚げに着手―が不可分に絡み合う衝撃的な真相に至る。謎解き、サスペンス、冒険小説等、幅広い要素を包含した、オールタイム・ベスト級傑作ミステリ。 内容紹介より



本作品は、1979年単行本として1982年に文庫本として文藝春秋から刊行されています。
主人公である作家ノーマン・ホールは、ホノルルでの警官時代に関わった殺人事件の被害者がタイタニック号の生存者であったことから、その船の乗客だった妻を亡くした富豪ライカーからの仕事の依頼に因縁めいたものを感じます。タイタニック号に関するノンフィクションを執筆する仕事を受け、彼は船の生還者であるライカーの一人娘にインタビューしようとしますが……。
世界のあちこちを飛び回り、殺人の容疑をかけられたり、殺されそうになったり、警戒厳重な屋敷に忍び込み、暗号を解き、警察のお偉いさんを顎で使う主人公たち。その姿は(犯罪者たちにも言えることですが)造形に深みがなく一面的であり、訳のせいなのか野卑な感じがします。さらに物語は、種々の要素も総花的な印象であり、アメリカのB級映画のノベライズみたいに浅い感じが否めません。歴史的大事件を主題にした時に物語ににじみ出てくるノスタルジックなロマンスとか哀切みたいなものを感じとれなかったところは物足りなかったです。しかし娯楽小説としては、オールタイム・ベストは大袈裟にしてもかなりの完成度と面白さは備えている思います。 繰り返しになるけれど、ノーマン・ホールがもっと魅力的だったらなあ。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『帽子屋の休暇』ピーター・ラヴゼイ ハヤカワ文庫HM

2020-04-25

☆☆☆

英国最大の避暑地ブライトン。光学器械店を営むモスクロップは、海岸でゼナという女性に一目惚れし、やがて彼女と近づきになる。ある朝、水族館で女性の片手が発見された。地元警察はスコットランド・ヤードに応援を求め、クリッブ部長刑事とサッカレイ巡査が駆けつけ捜査を開始する。一方、ゼナを見かけなくなったモスクロップは、彼女が殺されたのだと思い警察に赴くが……英国ミステリ界を代表する著者の初期の話題作 内容紹介より



なんといっても物語の導入部分が長い、光学機器店主が避暑地に到着し、双眼鏡で海岸にいる避暑客を眺める様子を約20ページ、気に入った女性に目を付けて跡を追いかけ、使用人に声をかけるまで約30ページかけています。1882年当時の避暑地の光景や風俗を詳しく描写しているにしても英国人ではないわたしには冗長に感じました。確かにこの部分では彼のストーカーじみた異常性に繋がるような奇妙さも匂わせているわけですけれど。話は水族館のワニ展示室で女性のものと思われる片手が発見され、地元警察がスコット・ヤードに応援を求め捜査官が派遣されて警察小説になり、店主モスクロップは狂言回し的な役に回ります。警察小説の部分では、これからも凶悪な犯罪を犯すであろうサイコパスの人物をどのように処遇するべきか、という難しいテーマを持ち出しています。また、それと関連付けるかのように、物語の最後でモスクロップが記したメモ書きが、彼の滑稽さの中にある気持ち悪さを指し示しているような気がしました。

ユーザータグ:ピーター・ラヴゼイ




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ハードシェル』ディーン・R・クーンツ ロバート・R・マキャモン他 ハヤカワ文庫NV

2020-04-22

Tag : 短編集 ホラー

☆☆☆☆

数あるホラー・アンソロジーの中でも独自の編纂で知られる〈ナイトヴィジョン〉シリーズ。三人の作家がそれぞれ250枚の中短篇を各巻に書き下ろすため、一作家一短篇に限られた従来のアンソロジーにはない満足感が得られる。本巻には、ベストセラー作家ディーン・R・クーンツ、SF界の実力派エドワード・ブライアント、クーンツをしのぐ人気作家ロバート・R・マキャモンの三人を収録する(序文/クライヴ・バーカー) 内容紹介より



収録作品
ディーン・R・クーンツ
「フン族のアッチラ女王」「ハードシェル」「黎明」
エドワード・ブライアント
「捕食者」「バク」「フラット・ラット・バッシュ」「亡霊」「荷物」「コルファックス・アヴェニュ」
ロバート・R・マキャモン
「水の底」「五番街の奇跡」「ベスト・フレンズ」

本書は1987年発表された〈ナイトヴィジョン〉シリーズの第四巻にあたります。
大盛望氏の解説では、邦訳された1990年はロバート・R・マキャモンの名前が日本でも超大物新人として噂され始めていた頃だそうです。

町の市営プールで一人息子を亡くした父親は、息子の体についた奇妙な痕に気づくとともに、ある年から水死者が増えているのを知って……「水の底」。仕事と出世のことしか考えられなくなった広告会社に勤める青年。時間に追われる彼が鉛筆売りの物乞いに出会う「五番街の奇跡」。病院を舞台に、少年が地獄から召喚した三匹の怪物と医師の激闘を描いたスプラッタホラー「ベスト・フレンズ」。

闇へ降りゆく』『嵐の夜』にそれぞれ収録されている「フン族のアッチラ女王」「ハードシェル」「黎明」。

故郷を離れて一人暮らしを始めた女性が同じアパートに住む男に脅かされる「捕食者」、長崎原爆投下計画に関わり、現在ではカリフォルニアに新しい原子力発電所建設計画に携わる男が見る悪夢を描いた「バク」、軍隊式のしごきといじめを受ける大学の友愛会見習い会員の反撃「フラット・ラット・バッシュ」、ニューメキシコをヒッチハイク中に一夜を過ごした廃屋で謎の生物によって宿主にされた青年と彼の初恋の滑稽な悲話「荷物」。




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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

『ウイニング・ラン』ハーラン・コーベン ハヤカワ文庫HM

2020-04-19

Tag :

☆☆☆

マイロンの前に現れた元恋人のエミリーは、病気の息子を助けてほしいと懇願した。遺伝性の貧血症を患う息子には骨髄移植が必要なのだが、手術を前に骨髄提供者が謎の失踪を遂げたのだという。突然の依頼に戸惑うマイロンに、さらに彼女は衝撃の告白をする。「子どもの父親はあなたなの」―死の淵に立たされた我が子を救うべく、消えたドナーを追うマイロンは、やがて哀しき真実にたどりつく……感動のシリーズ最高傑作。 内容紹介より



色々なプロスポーツ選手に降りかかった、さまざまなトラブルや事件に主人公が取り組むパターンが多いこのシリーズですが、今回は主人公自身に問題が発生します。それは学生時代に恋人だったものの、結局別の男と結婚した女性から難病の息子を助けて欲しいという依頼です。しかも、子どもの父親が主人公だと告白されるのです。さらに彼女が結婚した相手は主人公がプロバスケットボール選手を断念することになった怪我の原因になった因縁の人物です。調査するうちに姿を消したドナーと誘拐殺人犯との間に何らかの結び付きがあることが浮かび上がってきます。一方、主人公の父親が心臓に問題があることが明らかになり……。主人公と思いがけない息子の出現、その息子と法律上の父親、主人公と父親の関係の変化、そしてもう一組の父子の関係、このように「父親と息子」が分かりやすいテーマとして取り上げられています。これに残忍な誘拐犯を絡ませているのですけれど、個人的にはこれが余計に目立ちすぎて効果的だったかどうか迷うところです。また、ラストにかけての二重のひねりには煩わしさを感じてしまいました。

『沈黙のメッセージ』
『偽りの目撃者』
『ロンリー・ファイター』
『スーパー・エージェント』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『愛しすぎた男』パトリシア・ハイスミス 扶桑社ミステリー

2020-04-16

Tag :

☆☆☆☆

ニューヨーク郊外の紡績会社に勤める技術者デイヴィッドにはささやかな夢があった。「愛する人アナベルと結婚したい」という夢。しかし、あまりにも熱烈な彼の想いは、現実を離れ、一人歩きを始めていた。彼は、週末ごとに下宿を出て、誰もしらない一軒家で過ごしながら、愛する人アナベルとの結婚を夢見ていたのだが…。仮想世界での「恋愛」が破綻したとき、デイヴィッドの破滅がはじまった!今話題の「ストーカー」(追跡者)の世界を内側から描いた名手ハイスミスのノンストップ・サスペンス! 〈解説・吉野仁〉 内容紹介より


1960年に発表された作品です。視点をストーカー側に据え、彼の考え方、感情や行動を丁寧に描いているために、被害者側から描かれることの多い通常のストーカー物とは違い、読み進むと彼に感情移入をしがちです。想いを寄せる女性が他の男性と結婚し、子供を産んでさえも、彼は一筋に彼女を愛するわけですが、暴力や脅迫などの乱暴な行動には走らず、かえって下宿先での評判はちょっと変わっているものの理想的な下宿人で通っています。下宿とは別に彼が新婚用に購入し、愛する人との生活を夢想しながら週末を過ごしている一軒家に彼女の現実の夫が踏み込んできたことから彼の現実と妄想の微妙なバランスが崩れ始めます。さらに彼の友人や彼に恋する女性が現実を押し付けてくることも彼を苛み、精神の崩壊への引き金となってしまいます。誰もが主人公みたいに多かれ少なかれ執着心を抱えていたりするでしょうから、身につまされるかもしれません。六十年前の作品とは思えないくらい時代性を超え、無気味さより哀れみや切なさも湧いてくる迫真のサスペンス作品だと思いました。

『見知らぬ乗客』角川文庫
『妻を殺したかった男』河出文庫
『動物好きに捧げる殺人読本』創元推理文庫
『女嫌いのための小品集』河出文庫




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『悪友クラブの殺人』J・G・サンドム 扶桑社ミステリー

2020-04-13

Tag :

☆☆☆

〈ハンティング・クラブ〉……学生時代からつづく遊び仲間を男たちはそう呼んでいた。成功した株式仲買人のグレンをリーダーとする彼らは今も遊び仲間だ。メンバーの一人、トムの結婚式の三日前の夜、羽目をはずして飲みに出た四人は、ダンサーの女を買った。だが、四人目のジョンがセックスを終え、目覚めてみると女は頭から血を流して死んでいた。明るみ出れば人生はおしまいだ。男たちは女の死体を始末したが、事態は思わぬ方向に…。破滅に突き進むエリートたちを描いた異色サスペンス。〈解説・関口苑生〉 内容紹介より



物語は、親の引いたエリートコースからドロップ・アウトしたヘリコプターのパイロットであるペインの視点で、ニューヨークに暮らす遊び仲間のヤッピーたちがある事件を契機に堕ちていくさまを描いています。結婚を間近に控えた仲間の一人のために催したバチュラー・パーティー後、ストリップ・バーで羽目を外したメンバーの四人は、閉店後に帰宅途中のダンサーと出くわして彼女の部屋で飲みなおすことにします。酒とドラッグをきめた四人が彼女とセックスを行った後、彼らは頭から血を流して横たわるダンサーの死体を発見することに……。三十代半ばの彼らは妻や子供がおり、社会的地位もある人物であり、偶発的に起きた事件を隠蔽しようとして、それがまた新たな犯罪を起こしてしまうというややお決まりの展開をとります。メンバーの誰かの裏切り行為による脅迫でもなされるのかと想像していたのですがプロットはシンプルなもので、話にはやや強引さが目に付きました。事件に加担しなかったメンバーの役どころが物足りないのと、事件の捜査を行う刑事が添え物みたいに何の絡みもなく中途半端のまま終わったのはなにかの意味があったのでしょうか。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『北東の大地、逃亡の西』スコット・ウォルヴン ハヤカワ・ミステリ

2020-04-10

Tag : 短編集

☆☆☆☆

メイン州を転々とし、最後はヴァーモント州の伐採場に仕事を見つけたおれは、毎日チェーンソーを手に木と闘っていた。八月のある日、その伐採場の土のリングで二人の男が対峙する。ヒスパニックのエル・レイは間もなくプロデビューを予定する賭けボクサー。そして対するトムは腕っ節自慢の酔っ払い。荒くれたちがなけなしの金を賭けるなか、試合が始まる……そこがどんな場所でも、男たちは生き続ける。人生をしくじり、罪を犯し、麻薬にとらわれ、自分自身を裏切ったあげくに逃げ込んだ、その場所で。アメリカの片隅の男たちを描く傑作短篇集 内容紹介より



「寡黙」「野外作業」「エル・レイ」「変人とアンフェタミン」「球電」「野焼き」「虎」「線路」「簡易宿泊所」「核爆発」「北の銅鉱」「負け犬」「密告者」

隣人である警察の捜査官によって自分が育て上げた孫を逮捕された老女が、隣家との境に生える愛着のある老木を切り倒す。余命短い彼女のできる精一杯の意趣返しを哀切をもって描いた「寡黙」。この作品以外の主人公はすべて男であり、田舎町に住む、ほとんどが伐採業に従事する寡黙なブルーワーカーたちですし、汗と酒タバコ、薬物の匂いが漂ってきそうな作品ばかりです。「密告者」のなかで、「たいていの男はただ男というだけでなく、何かになる。息子、夫、父、友人。おれはそのどれでもなかった。なろうとしたが駄目だった」(p242)と「おれ」が話すように、子供の頃、酒で身を持ち崩した男と接した際、父親から諭されたにもかかわらず酒に溺れさすらう「簡易宿泊所」みたいに男たちが、酒や薬物、犯罪から身を離し、単なる男ではなく、夫や父親になりたいと焦がれあがく姿を描いています。しかし、それは叶わず結局逃亡者や負け犬になってしまうしかない彼らの人生のやり取りの一端を独特のタッチで見せています。なかでも「虎」は代表的な作品だと思います。普段あまり見聞きすることがないアメリカの一面を切りとった渋くて苦い味のある短篇集だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『階段の家』バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル) 角川文庫

2020-04-07

☆☆☆☆

女の魔性とさまざまな恋
エリザベスはタクシーの窓からベル・サンガーをみかけた。ベルは刑務所にいるはず……過ぎ去った日々がまざまざと甦る。1960年代を間近にひかえたロンドン。エリザベスはやがて発病するかもしれぬ遺伝性の難病におびえながら母の従姉妹コゼットを慕いよく訪ねた。未亡人コゼットは〈階段の家〉に住み、そこには恋愛やドラッグに翻弄される若者が集っていた。が、ベルはそんななかにあってなにかが違っていた。やがて明らかになるベルの魔性、コゼットの老いらくの恋。そしてあの忌まわしい事件が起きた…… H・ジェームズの「鳩の翼」に材をとり、ルース・レンデルがバーバラ・ヴァインの名で贈る傑作長編。 内容紹介より



本書は1988年にバーバラ・ヴァイン名義で発表された作品です。
物語の柱となる登場人物は、物語の語り手である作家のエリザベス、彼女の親戚のコゼット、そしてベルの三人です。エリザベスはコゼットを母のように慕い、ベルに対しては同性愛的感情を抱きます。エリザベスは遺伝性難病の発症を恐れて人生を刹那的に考え、従順な妻だったコゼットは夫の急死により、女としてもう一度一花咲かせたいと熱望しています。そんなコゼットが購入した〈階段の家〉には、お金持ちで気前のいい彼女を目当に大勢の男女が入り浸ります。しかし、ある日やってきたベルは、そういう様子は一切見せずに階段の家の一室で暮らし始めます。やがて彼女が兄を紹介したことから話が大きく動き始めます。
まったく性格の違う三人の女性たちの姿を緻密に描き、当事者の一人を語り手にすることでコゼットに起きたこと、またエリザベスに起きること、この二つのサスペンスを高めて物語は進み、その余韻を残して終わります。冷たい炎を胸の奥底で燃やしているみたいなベルという得体のしれない異種なるもの、非常に美しい花、その中にカマキリが潜んでいるみたいな不気味な存在感が特異であり、彼女の無口な静けさが話に張り詰めた緊迫感を醸し出しています。

ユーザータグ:ルース・レンデル




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『破壊者』ミネット・ウォルターズ 創元推理文庫

2020-04-04

Tag :

☆☆☆☆

女は裸で波間にただよっていた。脳裏をよぎるのは、陵辱されたことではなく、手指の骨を折られたことだった。―そして小石の浜に打ち上げられた遺体が発見される。被害者は長時間泳いだ末に力尽き、溺死していた。一方、死体発見現場から二十キロ以上離れた港町では幼女が保護される。彼女は被害者の三歳になる娘だった。なぜ犯人は母親を殺したのに娘を無傷で解放したのか​?海を恐れ船に乗らなかった女性がなぜ溺死したのか?凄惨きわまりない事件は、被害者をめぐる複雑な人間関係を暴き出す。現代英国ミステリの女王が放つ稀代の雄篇。 内容紹介より



解説によると本書は、『囁く谺』(1997)と『蛇の形』(2000)の間に発表された作品にあたるそうです。特徴としては、この作家には珍しく警察官を主人公にした、かなり警察小説寄りの物語になっているところだと思います。その点では、従来のヒロイン個人の感情の移ろいや揺れを事件に絡ませて進行していく作品とは違って、警察という揺るぎない権力を主軸に据えた、オーソドックスな型をとっているところに読みやすさを感じました。ただし被害者である女性の人物像を夫や姑、元同僚などによって浮かび上がらせる作業を丹念に行うとともに、彼女と容疑者側との関係も微細に描き彼らのエゴや欲望、思惑を表し出して見せています。悪女物語また犯罪小説の面を備え、そういうとことが単なる警察小説とは一味違うものにしている要因なのでしょう。胃もたれするみたいな話の中、田舎の巡査とうらぶれた旧家の母娘との交流が息抜きになっています。

『囁く谺』
『病める狐』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『シャドウ・キラー』ヴァル・マクダーミド 集英社文庫

2020-04-01

Tag :

☆☆☆☆

犯罪心理学者フィオナには悲しい過去があった。妹の殺害事件。それを阻止できなかった彼女は、プロファイリングの研究にいっそう熱を入れている。恋人のミステリー作家キットとの同居生活は順調だったが、彼に届いた一通の脅迫状と、彼の同業者が殺されたことで、二人の生活にも暗い影がしのびよってきた…。CWA(英国推理作家協会)ゴールド・ダガー賞受賞作家の話題の最新作登場。 内容紹介より



本書では三組の殺人事件、白昼の公園で起きた幼子を連れた女性の刺殺事件、被害者がスペイン・トレドの史跡で発見された二件の殺人事件、そしてミステリー作家を狙った連続殺人事件が描かれています。犯罪心理学者である主人公はそれぞれの事件を各警察の依頼を受けてプロファイリングしますが、最初の事件に関しては功を焦る警察当局によって別のプロファイラーが雇われるという苦い経験をしています。トレドで発生した殺人事件については、個人的にはあまり必要性を感じませんでした。物語の上での小手調べ的な挿話みたいなものなのでしょうか。またミステリー作家連続殺人事件はかなり動機がひねくれてこじつけているようなやや不自然な感じもしました。ただミステリ作家が自作で描いたとおりに殺害されるという意匠はなかなかユニークですし、フィクションとはいえ業界や同業者同士の様子を伺えて興味深いところもあります。それから主人公が行う犯罪者への分析が一般的なアプローチとは異なっている点は新鮮に感じました。

『殺しの儀式』
『殺しの四重奏』
『処刑の方程式』





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
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