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『哀しきギャロウグラス』バーバラ・ヴァイン(ルース・レンデル) 角川文庫

2020-05-31

☆☆☆

鬱の病を持つ青年ジョー。病院から追い出された上に、里親からも見棄てられ、絶望した彼は遂に自殺をはかる。その命を救ったのは、謎のインテリ青年シャンドー。この時からジョーは、彼の服従者(ギャロウグラス)になることを決意する。今まで愛された経験のないジョーが、初めて出会った「運命の人」であった…。実は、大富豪夫人ニーナの誘拐を、シャンドーは企てていた。その彼に、ジョーは邪険にされ、冷たく利用されても、盲目的に愛を捧げ続ける。しかし事件は意外な展開へ……!無気味とユーモア、欲望と狂気、悲劇と喜劇が交錯する、異色の力作。 内容紹介より



本書は1990年に発表されたバーバラ・ヴァイン名義の四作目の作品にあたります。
愛情のない里親の家庭で育ったジョーは、精神病院を退院させられ、親からも独り立ちするように告げられます。途方に暮れた彼が地下鉄の電車に飛び込みそうになるところをシャンドーと名乗る青年に救われます。定職を持たない彼らは安宿を転々としますが、やがてシャンドーが身代金目的の誘拐事件を企てていることを打ち明けるのです。目当ては元モデルのニーナなのですが、彼女は前夫とともにイタリアで暮らしていた時に誘拐された過去があります。現在の夫は警備会社を営む大富豪で、要塞のように警備を固めた屋敷で暮らしています。物語は大部分がジョーの視点で語られますが、富豪の住み込み運転手ポールの視点も混ざります。ある人物に対して狂気をはらんだ執着心を抱くシャンドーの造形や彼の対して同性愛のような危うさを帯びた(彼本人はそれを否定しながらも)想いを寄せるジョーの心情が物語の奇妙さを際立たせているように見えます。さらにジョーと同じく里子の姉ティリー、この二人には社会病質を思わせるような薄気味悪さを感じさせるところも作者の筆致の冴えを思わせます。終盤の展開はレンデルらしいかなりトリッキーな様相を見せて本領を発揮していますが、ぷつんとぶった切ったみたいな事件の決着の付け方がなんだか不自然な感じもしました。ポールのその後も含めて。

ユーザータグ:ルース・レンデル





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『木曜日の朝、いつものカフェで』デビー・マッコーマー 扶桑社セレクト

2020-05-28

Tag :

☆☆☆☆

夫を亡くし孤独な日々を送る五十七歳の病院事務局長リズ、離婚した夫が許せないクレア、手芸洋品店を経営するジュリア、女優を夢見る若いカレン―四人は、ふとしたことから知り合い、毎週木曜日の朝にカフェで、近況を語りあう。年下の小児科医に惹かれるリズ、高齢での妊娠に動揺するジュリア、もと夫の末期ガンを知ったクレア、姉が家庭内暴力被害者と知って悩むカレン。四人の女性は励まし合い、支えあいながら、それぞれの解決を見つけていく。女性小説の巨匠が描く感動の人間ドラマ! 内容紹介より



未婚で特定の恋人もいない女優志望のカレン、家庭環境に恵まれ、念願の手芸店を開いたジュリア、長年連れ添った夫が家族を捨てて若い女性のもとに走ったクレア、夫を交通事故で亡くし、子どもたちとも離れて暮らすリズ。この年齢も職業も環境も違う四人の女性に降りかかった出来事をそれぞれが綴る日記の内容を挿んで描いている物語です。過干渉の母親との関係に悩むカレン、予期せぬ妊娠に動揺するジュリア、怒りと憎しみしか覚えていなかった元夫の病気を知ったクレア、そして、孤独ながらも一人暮らしの気楽さを感じている日常のなか、女たらしと噂のある男性が気になってしまうリズ。
世代や境遇を超えた女性たちの芯の通った友情を描いた作品です。彼女たちはさまざまな感情を共有し、励まし支え合い、また相手の家庭状況をも共に抱え込むような絆を表してみせます。この物語は、四人それぞれの人生の一端を切り取りながらも、一人の女性の半生を四つのエピソードを通して見ることも可能にしているような気もします。




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テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『スフィア-球体-』マイクル・クライトン ハヤカワ文庫NV

2020-05-25

☆☆☆

航空機墜落調査班のメンバーである心理学者ノーマンは、召集を受け、南太平洋へ飛んだ。海底に沈んでから少なくとも三百年は経過している宇宙船が発見されたというのだ。ノーマンをはじめとする科学者チームは、海底居住施設を拠点にして、船内の調査を開始する。未知の生命体との遭遇に脅えながらも船内深く到達した彼らの前に、不思議な球体が出現した!『ジュラシックパーク』の著者が放つ傑作エンターテインメント 上巻内容紹介より



本書は1987年に発表された作品です。
政府の依頼でかつて未知の生命体との接触に関する報告書を提出した経歴を持つ心理学者ノーマンは、南太平洋に沈んでいる謎の宇宙船の調査チームに参加することになります。彼以外に宇宙物理学者、数学者、動物学者、そして米国海軍兵士が海底に作られた施設で調査を始めます。やがて船内に入った彼らは宇宙船の来歴について意外な事実を発見し、さらに不可思議な球体を発見します。それ以来、海底施設の周りに不思議な現象が起こり始めます。
SFと海洋冒険小説に作者お得意の最新テクノロジーを加えた物語なのかという思い込みは読み進めると意外な方向に展開していきました。本文中でも登場人物たちが心理学が科学と言えるかどうかという会話を行っていて、この定番の言説の成否は置いといて、いわゆる科学者たち(物理、数学、生物)の中にいる心理学者の立ち位置みたいなものと、科学技術(宇宙船、海底施設、潜水艇ほか)のなかにある球体の存在は、科学(数式)で量れるものとそうではないものという関係性を表しているように思えました。テクノロジーに対しての心(精神ないしは心理)、この図式はテクノロジーへの過度の依存や偏重についての警鐘と人間性の重要さをあらためて問いているのでしょうか。さて、それが娯楽小説として面白かったかといえば、話のスケールが矮小化されて今一つだった気がします。

ユーザータグ:マイクル・クライトン




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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

『甦える警官』ウィリアム・J・コーニッツ 文春文庫

2020-05-22

Tag :

☆☆☆☆

犯人逮捕の際に撃たれて片脚を失い、また愛も失ったスキャンロン警部補にあらたな事件が舞いこんだ。白昼のキャンディ・ストアでの不可解なショットガン乱射事件、そして同僚警官の無惨な死。疲労感と孤独のなかで、なおかつ警官であることをやめない男のタフな男ごころを描く、「燃える警官」の作者の進境めざましい長篇第二作 内容紹介より



強盗犯との銃撃戦の最中に撃たれて左脚を失ったニューヨーク市警警部補が主人公です。彼の復職に手を貸した警部補がキャンディ・ストアでその店の女主人とともに撃ち殺される事件が発生します。捜査を進めると警察内部での評価が高かった被害者には女性関係のスキャンダルがあったことが浮かび上がり事件は彼を狙ったものではないかと推測が流れます。ところがキャンディ・ストアの女主人の息子夫婦が自宅で射殺される事件が起き捜査は混迷を深めることになります。
現役のNY市警警部補が作者だけあって、警察内部の慣行や職務規定、各分署との関係や、署内の雰囲気や人間関係、符丁とか書式が詳しく書かれて非常にリアリティを感じましたし、ジョゼフ・ウォンボーの作品を彷彿とさせます。片脚を失ったことで性的不能に陥り、恋人にも去られた主人公の内面の苦悩や葛藤を描いて人間味を出し、懇意になった娼婦との交流を始めとして私生活部分もしっかりと書き込んであるように思います。読み応えのある警察小説だと思いますが、結末のイレギュラーな決着の付け方より正統的事件解決で終わってほしかったような気がします。1986年の作品ながら古臭さは感じません。

『渇いた警官』扶桑社ミステリー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『水晶玉は嘘をつく?』アラン・ブラッドリー 創元推理文庫

2020-05-19

Tag :

☆☆☆

ジプシーの占い師から、水晶玉に将来の姿が見えると言われたフレーヴィア。亡き母を思い出して動揺したあまり、ちょっとしたアクシデントでジプシーのテントを炎上させてしまい、自宅の屋敷近くの林へこっそり彼女を招待することに。その夜、屋敷に侵入した村の厄介者を追い出したあとで、ジプシーに大変なことが起きているのを発見し……。内緒で屋敷へ泊めることになったジプシーの孫のお世話に、姉たちのいじわるへの仕返し、そして殺人事件の捜査と、今日もフレーヴィアは大忙し!CWAなど九冠受賞の世界中で大人気の少女探偵シリーズ! 内容紹介より



シリーズ第三弾。
ジプシーの占い師の言葉にうろたえてテントを燃やしてしまった主人公は、ジプシーの馬車を自宅の地所に父親に内緒で駐めさせることにします。具合の悪いジプシーの見舞いに行った彼女は、頭から血を流して倒れているジプシーの姿を発見してしまいます。さらにその夜に屋敷に侵入していた密猟者の男の死体に遭遇したりなどの大事件が降りかかるうえに、二人の姉にいじわるをされたり、ジプシーの孫娘を秘密に自室に匿ったり、屋敷の財政問題が深刻な状態になったり、亡き母の肖像画を発見したり、小さな出来事も主人公の身の回りに次々と発生します。
姉たちに対して口では一歩もひかない、化学(特に毒物)の知識に長けたおしゃまな11歳の少女の強烈なキャラクターは相変わらず健在です。また、ミステリ部分の弱くてゆるいところも相変わらずで、今回の真犯人は特にいきなり感が強いです。しかし、普段のおてんばでおませな姿とは別に、自転車を友として語りかけたりする際にうかがえる彼女の寂しさや孤独な心情、それを隠そうとする健気さみたいな別の一面を感じてやるせない気持ちになったりするところもシリーズの魅力なのでしょう。

『パイは小さな秘密を運ぶ』
『サンタクロースは雪のなか』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『過去、そして惨劇の始まり』デイヴィッド・マーティン 扶桑社ミステリー

2020-05-16

Tag :

☆☆☆

ワシントンD.C.郊外の古い1軒家〈カル・デ・サック(袋小路)〉。ポール・ハミルトンはこの邸宅を買い取り、転売のために修復にあたっていた。妻のアニーは、その屋敷に住み込んで仕事をしている夫を久し振りに訪ねる。が、夫と対面した彼女は仰天した。夫は不可解な言葉をつぶやきながら、何かにひどく怯えている様子なのだ。その夜、屋敷に泊まった彼女の前にも見知らぬ男が姿を現し、謎めいた言葉を残すと姿を消した。思いあぐねた彼女は、かつての恋人テディ・キャメルに電話をかけた―。〈解説・茶木則雄〉 内容紹介より



親友や知人の偽証によって殺人の罪を着せられ、さらに刑務所で受けた虐待によって精神を病んだ男の壮絶な復讐譚に、『嘘、そして沈黙』の主人公であるテディ・キャメルがかつての恋人を介して事件に巻き込まれてしまう、サイコとオカルトとバイオレンスなどの風味がてんこ盛りの物語です。さらに復讐の話は「象」「写真」というキーワードが絡んで被害者と容疑者たちを結びつけて進みます。自らを悪魔に仕立て上げる男の存在感は非常に強いものがあるとともに、彼が受けた仕打ちと境遇にはかなりの哀れみを感じさせる二面性を持たせているところは印象に残る姿になっています。それに比べるとテディ・キャメルのイメージはおとなしめであり、物語に別の側面を与えているにしても、かつてのラブロマンスの場面は、事件の荒々しさの前では霞んでしまっているように感じました。

『嘘、そして沈黙』
『誰かが泣いている』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『鉄槌』ポール・リンゼイ 講談社文庫

2020-05-13

Tag :

☆☆☆☆

大都市シカゴの刑務所に、移動も無害化も不可能な超大型爆弾が仕掛けれれた。自らも犯罪に手を染める(!)FBI捜査官キンケイドは、正義感の強い同僚オールトンとコンビを組み、捜査に当たることになる。だが、緻密にして大胆な犯人の真の目的が明らかになったとき、事件は思いも寄らない方向へ動き出す! 内容紹介より



爆弾犯の真の目的は、三年前に娘が被害者になったまま未解決になった誘拐事件の再捜査をFBIにさせることです。捜査の指揮を執る有能な現場指揮官である新任のシカゴ支局長、その部下に出世主義の副支局長、悪性腫瘍で片脚を切断してまもない実直で頑固な黒人捜査官、そして型破りで異彩を放つ直感型の主人公が登場します。それぞれに異なるキャラクターを持つ四人が非常に分かりやすい対比を取っているところが設定の妙であり、元FBI捜査官の経歴を持つ作者が特に描きたかったFBI内部の実情につながっている箇所なのでしょう。物語は爆弾事件から過去の誘拐事件の真相に迫る展開に移りるとともに、捜査官として優秀な素質を持ちながら、私生活では自堕落ともいえる日々を送る主人公の姿を描いていきます。できれば彼のキャラクターをもっと掘り下げて人物像を浮き彫りにして欲しかったように感じました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ゴーストマン 時限紙幣』ロジャー・ホッブズ 文藝春秋

2020-05-10

Tag :

☆☆☆☆

決して盗んではいけないカネ―連邦準備銀行の新札。それを盗んだ者はアメリカの全捜査機関に地の果てまで追われることになる。現金輸送車を襲った二人の犯罪者が奪ったのはそれだった。一人は現場で死亡。もう一人は逃亡、雲隠れした。犯罪の始末人たる私は、強盗犯を追い、カネを奪還する仕事を命じられた。デッド・リミットは48時間。紙幣に仕込まれた爆薬が48時間後に炸裂する。面倒な仕事だが、私には断れない。依頼主のマーカスに、私は大きな借りがあるからだ。5年前、クアラルンプール。金庫破り師、詐欺師、逃走ドライバー、脅迫担当の大男ら、犯罪のプロが招集された。標的は高層ビル最上階の銀行―襲撃し、金庫を破り、カネを奪い、脱出する。マーカスの綿密な計画に沿って、私たちは着々と準備を進めてゆく……。現在と過去、二つの大仕事はいかに決着するのか?精密なプロット、クールな文体、非情な世界観、ジェイムズ・エルロイを育てたエージェントが発掘し、ハルキ・ムラカミを担当するカリスマ文芸編集者を酔わせ、世界一の辛口批評家をうならせて、英米のミステリ賞やミステリ・ランキングを席巻した25歳の天才による驚愕のクライム・ノワール。今世紀最もカッコいいノワール・ヒーローの登場。 内容紹介より



アトランティックシティのカジノに運び込まれる現金を奪った二人組の武装強盗は、何者かの妨害により一人は死亡し、もう一人は怪我を負いながらも車で逃走します。その強盗計画の立案者に命じられてカネの行方を追うことになったのがゴーストマンです。彼には五年前に立案者が企てた銀行強盗計画が自身のミスによって失敗したという借りがあったのです。アトランティックシティに乗り込んだ彼は早速FBI捜査官に目をつけられ、さらに地元の大物麻薬ディーラーに追われることになります。奪われた札束には染料が仕込まれ、48時間後に爆薬が炸裂して紙幣を使えなくする仕掛けが施されているために、彼は時間内にカネを見つけ出さなくてはなりません。
変装を得意とする一匹狼を主役とするタイムリミット型の犯罪小説で、スピーディかつバイオレンスな趣向になっています。ただし、全米の捜査機関と謳う割に事件の捜査に関わってくるのはFBIの捜査官一人だけで、他に名前のある警察官すら登場しません。そのFBIには早々に注意をひかれ居所を突き止められたり、ギャングには尾行をゆるしたり、ゴーストマンと名乗るほどには脇が甘い感じです。さらに古代ギリシャの古典文学を翻訳する趣味を持つというスノッブ臭も匂わせるやや饒舌系のキャラクターでもあります。どうもイメージするプロの姿から微妙にずれている気がしました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『僕は、殺す』ジョルジョ・ファレッティ 文春文庫

2020-05-07

Tag :

☆☆☆☆

治安の良さを誇るモンテカルロで起きた猟奇的な連続殺人事件。犠牲者は、F1レーサー、大富豪、天才バレエ・ダンサーなど著名人ばかり。犯人は、ラジオの深夜番組に予告の電話をし、犠牲者をほのめかす音楽を流した―。イタリアで発表されるや350万部のベストセラーとなった鮮烈なるデビュー作。ハリウッド映画化決定。 上巻内容紹介より



人気DJが担当するラジオの深夜番組中に、「僕は、殺す…」というメッセージとともにある音楽を流す電話がかかってきます。翌日、港に停泊中の大型ヨットの船室で顔と頭の皮膚を剥がされた男女の遺体が発見されます。更に番組宛ての電話によるメッセージと被害者を暗示する音楽は続き、モナコ警察の捜査官は当地で静養中のFBI捜査官に協力を求めて捜査にあたるのですが……。中村文・村上圭輔両氏の訳者あとがきによると、モナコ公国は、「国土は東西およそ三キロ、南北わずか数百メートルで、面積はおよそ二平方キロ。」(p410)人口は約三万二千人なのだそうです。そんなユニークで華のある国を舞台にしたサイコ・サスペンス作品ですが、コメディアンや作詞家など多才なイタリア人のデビュー作で、しかも350万部売り上げた作品と聞くと、大衆受けを狙った上っ面なミステリなのかと思って読んでみたら良い意味で裏切られました。文学的な表現がありながらくどくなく、主役の一人に据えたアメリカ人の造形にブレがなく警察小説としてもしっかりしています。ただ彼(ならびに殺人犯)の類型的な人物背景や短絡的なロマンスの進展などの粗が気になるものの、その他に大きな破綻は見られません。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『クッキング・ママの告訴状』ダイアン・デヴィッドソン 集英社文庫

2020-05-04

Tag :

☆☆☆

郡の衛生局検査官が抜き打ちに現れ、一時休業を言い渡されたゴルディ。キッチンを見ながら心配するのは夫トムも同様。愛蔵の歴史的価値のあるスキーを売ることにした。息子アーチの親友トッドのママも大協力。テレビの料理番組出演も決めてくれた。しかも収録は高級スキー・リゾート地。トムのスキーもそこで売ることにして出かけたが……。人気料理ミステリー第9弾! 内容紹介より



自宅のキッチンが衛生検査に引っかかり、衛生局から休業を言い渡されたヒロインは、クリスマス・シーズンを前にしてケータリングの仕事ができなくなってしまいます。そこで息子の親友の母親からの口利きで公共放送の料理番組を担当することになります。またキッチン改修の資金にと夫が所有するいわれのあるスキー板を過去にデートしたことがある男性に売却することに。しかし、彼はスキー・リゾートのコース外で撲殺死体となって発見されます。そのリゾートでは、過去に未解決殺人事件と雪崩による死亡事故が発生しています。美術評論家で仮釈放審査委員会長でもあった被害者にはいかがわしい噂と恨みを持つ人物の存在が明らかになります。ヒロインの元夫がDVで服役中ということもあって、あらぬ疑いをかけられないか心配する彼女は関係者に聞き込みを始めます。被害者が二つの顔を持っていたことから、容疑者とその動機の幅も広げるなかなかのプロットで、料理番組の場面も良いアクセントになっていると思います。コージー・ミステリというのは、普段うかがい知れない海外の文化や日常生活とか仕事とかを読んで楽しめるところが一番の魅力なのだという気が最近になってしてきたこのシリーズです。

ダイアン・デヴィッドソン





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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『殺人オン・エア』ウィリアム・L・デアンドリア ハヤカワ・ミステリ文庫

2020-05-01

☆☆☆

開局50周年の記念番組を週末にひかえたテレビ局で、不穏な事態が、次々と起こった。資料室の係員が何者かに殴打され、大量の古いフィルムとある女優のシンボルともいえるボーリング・ボールが盗まれたのだ。誰が、何のために?数日前には、今回の番組に出演予定のコメディアンの自宅のプールで、作家の溺死体が見つかっていた。特別企画部のマット・コブは、一連の事件の究明に乗りだしたが、やがて、数千万の視聴者が見守るなか、記念番組を放送中のスタジオで、ついに大事件が……!MWA賞受賞作『視聴率の殺人』に続くシリーズ第2弾。 内容紹介より



マット・コブ・シリーズ第二作目。
テレビ会社〈ネットワーク〉でトラブルの予防と処理を担当する部署である特別企画部担当副部長が主人公です。テレビ局の歴史を振り返り、大物ゲストも大勢登場する開局50周年記念番組の準備で大わらわの局内では、ボーリングのボールと古いフィルムを狙った強盗事件や発火事件と盗まれたボールの落下事件が立て続けに起きます。さらに記念番組に出演予定のコメディアンも殺人事件に関連しており……。テレビや映画界を舞台にしたミステリでは、俳優やコメディアン、監督やプロディーサーなどの製作者たち、奇人変人が大勢出てきて賑やかだけど割と煩わしかったりしがちですが、本書では登場人物が絞ってあってごちゃごちゃした雰囲気はありませんでした。そのため容疑者の数も限られているので目星は付けやすいです。ハードボイルドと本格ものの謎解きを融合させたみたいな内容で、主人公の軽口がやや気になりつつも気楽に読める作品でした。

ユーザータグ:ウィリアム・L・デアンドリア




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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