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『ラスト・ワン』アレクサンドラ・オリヴァ ハヤカワ文庫NV

2020-06-30

Tag :

☆☆☆

空前のスケールのリアリティショー番組『闇のなか』の収録が始まる。未開の荒野に集められた12名の参加者が、体力とアウトドア生活のスキルを試される。〈チャレンジ〉に挑み、賞金を争うのだ。単純なトレッキングを皮切りに徐々に困難な課題へと番組は進み、参加者たちは次々にふるい落とされていく。平凡な主婦のズーは粘り強く生き残るが、彼らの知らないうちに外の世界では……気鋭が放つ注目のサバイバル。スリラー 内容紹介より



以下、ネタバレ気味です。ご注意ください!


サバイバルを主題にしたリアリティ番組に参加した12名の男女が単独またはチームを組んでアウトドア生活に必要な道具や食料を賭けた〈チャレンジ〉を行う様子と参加者の一人であるズーが独りで行動する様子が交互に挿まれて物語が進んでいきます。チーム行動の場面では参加者の人となりから彼らのチームワークやいざこざが描かれるいかにもリアリティショーらしい情景が続き、ズーの視点では番組が用意したと思われる目的地へのヒントを探しながら体力を消耗した彼女の心理状態と異様な周囲の光景が描かれていきます。実は番組の収録が行われていた頃、世界では謎の疾病が流行して大勢の死者が出る状況に陥っており、ズーが番組が用意した舞台セットだと思い込んでいる荒廃した無人の町は、実際には住人たちが死に絶えた現実世界だったのです。
さて、ここで気になるのはリアリティショーとポストアポカリプスのそれぞれの物語の配合だと思うのですけれど、リアリティ番組で培ったサバイバル技術をポストアポカリプスの世界で発揮して生き抜く話じゃなく、番組内のエピソードの割合が大きめなところです。終末後のことはいささか添え物みたいな感じであり、ズーの想念は民家で見た人形だと思っていた瀕死の赤ちゃんと自宅で待っているであろう夫のこと、この二つの個人的な想いがしつこいくらい繰り返されています。この奇妙なアンバランスさが気になりました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『ツンドラの殺意 ロストニコフ捜査官シリーズ』スチュアート・M・カミンスキー 新潮文庫

2020-06-27

Tag :

☆☆☆☆

シベリアの寒村ツムスクで反体制医学博士サムソノフの娘が、何者かに殺害された。事件調査のために派遣された統制委員のラトキンも、数日後に殺されてしまった。現地に赴いたモスクワ民警の敏腕捜査官ロストニコフと部下のカルポがあらためて事件を洗い直す。住民たった15人の流刑の村で起きた連続殺人の背後に隠されたものは……’89年度エドガー賞を受賞したポリス・ストーリー。 内容紹介より



米国への亡命を間近に控える著名な反体制医師一家の幼い娘が遺体で見つかり、殺人事件と訴える父親の言い分によりモスクワから統制委員が派遣され事件の調査に当たります。しかし、その委員も審問会当日の早朝に他殺体で発見されます。その事件の捜査を任命されたモスクワ民警の主任捜査官ロストニコフと部下のカルポはシベリアの小さな村に赴くことになります。
主人公は検察局捜査官時代に有能なゆえに上から疎まれ、現在モスクワ民警に移動してきた経緯があり、また妻がユダヤ人のために微妙な立場にあります。物語はシベリアの村での殺人事件とモスクワに残した部下たちによる強盗事件の捜査活動の二つが描かれて進んでいきます。主人公の造形は、別シリーズのエイブ・リーバーマンに似ている気がしますが、一方の部下カルポはその死体のように無気味な容姿と生真面目な言動とでユニークさが際立って映ります。さらに公民館の管理人また登場機会は少ないものの原住民の呪術師も良い味を出し、作者の人物造形の巧さをあらためて感じさせています。278ページの小部な作品ですけれど、ソ連という異質な舞台設定でサスペンスも漂い、ミステリも適度に濃く、夫婦愛も交ざる良作だと思います。

スチュアート・カミンスキー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『天使の背徳』アンドリュー・テイラー 講談社文庫

2020-06-24

Tag :

☆☆☆☆

妻に先立たれ、ロンドン郊外で娘と暮らす牧師デイヴィッド。出版社を営む寡婦ヴァネッサに出会った彼はその魅力に惹かれ、やがて再婚を申し込む。幸せに満ち、穏やかに始まった新生活は、ある事件を境に次第に暗い翳りを帯びていく。聖なる場所で連続する不可解な死。CWA賞作家が放つ衝撃のミステリー! 内容紹介より



本書は、三部作、Rrequiem for an Angelの二作目にあたる作品です。わたしは間違えて、このシリーズを三作目から読み始めています。
本書でも『天使の鬱屈』同様に、十九世紀後半の聖職者であり詩人でもあったフランシス・ユールグリーヴと彼の作品が物語全体に暗い影を落としゴシック・ホラーの趣を添えています。そのフランシスの子孫にあたる旧領主邸の女主人から教区会の司祭として任命された「わたし」が『天使の鬱屈』に登場した人物であり本書の語り手になります。『天使の鬱屈』から十年後という設定で、一人娘のローズマリーは十七歳です。長らく男やもめだった「わたし」と出版社を経営するヴァネッサの出会いから物語が動き始め、彼らの隣人として若い兄妹が元ユールグリーヴ邸に引っ越してきたことから急展開を見せます。ミステリよりも重点を置かれているのは、壮年期の「わたし」の肉欲を始めとした煩悩とその感情に苛まれ流されていく心理を詳細に描くことです。言ってみればかなり俗物に描かれた彼の造形は英国人から見たら衝撃的なのかもしれません。一方、ミステリ小説としたらその部分がかなりのウェートを占めて、ミステリ部分のインパクトが追いついていないような印象が残りました。先に『天使の鬱屈』を読み犯人をすでに知っているので、その感じがさらに強くしたのだと思います。

『天使の鬱屈』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『チャイナ橙の謎』エラリー・クイーン 創元推理文庫

2020-06-21

Tag :

☆☆☆☆

宝石と切手収集家として著名な出版業者の待合室で、身元不明の男が殺されていた。しかも驚くべきことには、被害者の着衣をはじめ、その部屋の家具もなにもかも、動かせるものはすべて“さかさま”にひっくり返してあった。この“あべこべ”殺人の謎は何を意味するのか?犯人は何の必要があって、すべてのものを、あべこべにしたのだろう?ニューヨーク・タイムズはクイーン最大の傑作と激賞したが、事実、国名シリーズの中でも、卓抜した密室殺人事件として、特異の地位を占める名作である。 内容紹介より



以下、ネタバレ気味です。ご注意ください!

宝石や切手収集を趣味とする出版会社社長に面会に訪れた男が待合室で殺害されたうえに服を後ろ前に着せられた姿で発見されます。しかも室内の家具も前後が逆になった状態にわざわざ変えてあるという状態で。警察の捜査でも被害者の身元はまったく判明しないなか、当日留守にしていた出版社の社長をはじめとして、彼の父親、妹、その婚約者、共同経営者、秘書、新人女性作家、ホテルの宿泊者らが容疑者にあげられます。物語の冒頭で看護婦の独白で主な人物の人となりが語られるとともに、事件の動機につながる出来事が伏線として明らかにされているのですが、これが読み手にとっては容疑者の中から真犯人を巧みにそらしてしまう仕掛けにもなっているように感じました。犯人が“あべこべ”にした理由は、机上の空論みたいな頭の中でこねくり回した印象が強いし、またそれを解明するには、日本人には難易度が高すぎる気がします。別件で明らかにされる、詐欺師が企てる悪巧みとそれにまつわる出来事はあまり目くらましにはなっていない感じがしました。クイーン父子の振る舞いぶり、密室の仕掛けなど、あれやこれや古き良き時代の本格探偵小説といった印象が強く残る作品でした。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『脱出空域』トマス・W・ヤング ハヤカワ文庫NV

2020-06-18

Tag :

☆☆☆☆

「高度を維持せよ。いかなる状況においても上昇および下降を禁じる」そのメッセージを機に、何の危険もないはずの輸送任務は一変した。テロの負傷者をアフガニスタンからドイツへ空輸する輸送機に爆弾が仕掛けられ、着陸不可能となったのだ。機長のパースンは老朽機を必死に操り、わずかの可能性を求めて苦闘するが、その行く手には多くの障害が立ちはだかる……『脱出山脈』に続き、極限の闘いを熱く描く冒険小説の白眉 内容紹介より



前作の『脱出山脈』と同じくパースンとゴールドのコンビが登場しますが、今回はアフガンの猛吹雪の山岳地帯から輸送機の機内に舞台を移しています。場所が機内に限られているために、話をどう展開していくのか作者の技量が試される状況だと思いますが、まず視点を固定せずパースンとゴールドの交互に移すことでコックピットと貨物室の出来事を描き出して変化をつける工夫がなされています。さらに老朽機に仕掛けられた高度の変化によって起爆する爆弾、機械的なトラブル、ハリケーンや火山噴火による悪天候、テロ行為、非友好国の戦闘機による敵対行為などさまざまな災厄や危機がこれでもかと次々に降りかかってきます。作者自身が軍や民間の機関士や副操縦士の経歴を持っているために、良い具合に専門的な知見が入れられて臨場感が増していると思います。一方、前作ではロボットみたいだったゴールドは、タリバンによって犠牲になる国民などアフガニスタンの現状を憂う姿を描いて人間性を全面に出すことで存在感を打ち出しています。

『脱出山脈』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『そしてミランダを殺す』ピーター・スワンソン 創元推理文庫

2020-06-15

Tag :

☆☆☆☆

ある日、ヒースロー空港のバーで、離陸までの時間をつぶしていたテッドは、見知らぬ美女リリーに声をかけられる。彼は酔った勢いで、1週間前に妻のミランダの浮気を知ったことを話し、冗談半分で「妻を殺したい」と漏らす。話を聞いたリリーは、ミランダは殺されて当然と断じ、殺人を正当化する独自の理論を展開してテッドの妻殺害への協力を申し出る。だがふたりの殺人計画が具体化され、決行の日が近づいたとき、予想外の事件が起こり……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防が語られる鮮烈な傑作犯罪小説。 内容紹介より



若くして大富豪になったテッドは魅力的な妻ミランダが浮気をしていることを偶然知ってしまいます。彼は仕事先のロンドンからの帰国のため空港のバーで声をかけてきた女性リリーに妻の浮気と殺したいほどの怒りの気持ちを打ち明けてしまいます。意外なことに彼女はミランダは殺されて当然だと言い、殺人計画への協力を約束します。物語の大半はテッドとリリーの視点で交互に描かれて進み、後半に別の二人の人物の視点が加わります。
サスペンス小説の中でも一番はらはらどきどきしてしまう設定は、犯罪とは縁のないどこにも居そうな主人公が配偶者などの殺人計画を立て、それを実行しようとするものだと思います。だからこそそんなプロットの作品が多く書かれてきたわけで、新しく同様の作品を書く上においてはさらなるアイデアが求められる必要があります。何故リリーはテッドに協力を申し出たのか、という疑問を彼女の過去にさかのぼって人物像とともに解き明かしていきます。刻々と高まるサスペンス性よりも意外性に重きを置いたような、読者の意表を突く展開が二度仕掛けられ効果を上げています。ただ最後の事件は、それを起こした人物の性格を考えると性急過ぎて思慮が足りないような不自然な感じを受けました。最終部分もやっぱりそこかという予想できる帰結だったのでもうひと捻りが欲しかった気がします。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『午前二時のグレーズドーナッツ』ジェシカ・ベック コージーブックス

2020-06-12

Tag :

☆☆

午前二時にスザンヌのドーナッツ作りは始まる。ダウンタウンの端っこにある、ここ〈ドーナッツ・ハート〉は手作りドーナッツとコーヒーの店。深夜から始まる仕事は大変だけど、大切なお客さんのためならなんのその。ところがその日、平和な暮らしが一転、看板の照明をつけようとしたところ、夜の闇にまぎれて店の前に死体を投げ捨て走り去った一台の車が!被害者はお店の常連客で、銀行員のパトリック。一体誰がこんなひどいことを?スザンヌは無料のドーナッツを片手に捜査を開始。美味しいドーナッツに思わず口がゆるんだ人々から明らかになっていく真相とは……!?ドーナッツが思わず食べたくなる、まるくて最高に美味しいシリーズ第一弾! 内容紹介より



ドーナッツ事件簿シリーズ。
午前二時から材料を仕込み、営業時間は朝五時から正午まで、オーナーのスザンヌは三十歳前後、浮気が原因で離婚した夫からの慰謝料で元ドーナッツ店を買い取って新たに店を開いています。ある日、店の前に何者かが死体を投げ捨てる現場を目撃し、被害者が常連客だったことから事件を調べることになるという流れです。ヒロインの地元はノースカロライナ州にある人口五千一人の田舎町で、寡婦である母親と同居しています。店は彼女とアルバイト店員の二人で切り盛りし、常連客のなかに元警官がいます。また、元夫がしつこく復縁を求めている状況です。彼女は親友や元警官ともに調査を始めるのですが、何者かが調査を止めるよう脅迫の電話をかけてきます。
復縁を求めてくる元夫、州警察の捜査官の存在も用意してあり、ミステリ面では被害者の公私両面で容疑者が取り揃えられ、動機は色恋沙汰と金銭問題です。全体として見るとコージミステリのフォーマットに沿った設定が忠実になされている感じがします。今のとことは、目新しい趣向や取り立てて目立った特徴、あるいはユニークなキャラ付けがなされているわけではなので魅力は薄めです。飲食店が乱立するコージー商店街で、本シリーズが繁盛するには、これから常連客に色々なキャラの人物をもってきて脇役で華を添えるのが定番の方向性だと思いました。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『鈎』ドナルド・E・ウェストレイク 文春文庫

2020-06-09

Tag :

☆☆☆

きみの小説をおれの名前で出版しよう。ベストセラー作家の提案に、中堅作家ウェインの心は揺れた。収入は山分け、55万ドルが手に入るのだ。だが条件がひとつあった―ウェインはその作家の妻を殺さねばならないのだ。殺しに狂わされ、徐々に荒廃してゆく人間の内面を描き、傑作『斧』に続いて名匠が放つ戦慄の犯罪サスペンス。 内容紹介より



以下、ネタバレを含んでいます。ご注意ください!

この作品のテクニック上の肝は、読者の意表を突く、わざと狙いを外すという点のような気がします。まず25ページ目で早くも妻殺しの話を持ちかけるところ。妻に殺人の依頼があったことを打ち明けたこと、さらに、それに対する妻の反応。そして殺人がいきなり始まってしまうところ。殺しを成し遂げた後の感情の変化。このように本来であれば、読者をじらすなり効果を高める目的で割と長めに時間をかけて持っていくキーポイントとなる場面をいきなり提示してしまう手法です。依頼者側からのアプローチにもためらいや不安を絡めて描き、普通なら殺人の場面は依頼された側の動揺や逡巡などの心理描写をかなり書き込んだ後、後半過ぎたあたりで実行させるのが常道な気がしますが、本書では約四分の一ページ目で行われています。このように読み手の予想を上手くそらす技術が巧みに効いている印象が残りました。さらに罪悪感を抱く人物もこちらの思い込みをはずして意外性を持たせている点も特徴になるのでしょう。個人的には心が壊れていく様がもっと強く描かれていたら良かった気がします。とにかく『斧』みたいな悪夢的な衝撃度は心配したほどにはありませんでした。

『逃げだした秘宝』ハヤカワ文庫
『弱気な死人』ヴィレッジブックス
『悪党パーカー/エンジェル』 ハヤカワ文庫HM




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『策謀と欲望』P・D・ジェイムズ ハヤカワ・ミステリ

2020-06-06

Tag :

☆☆☆☆

少女は必死に走った。最終バスに乗り遅れると、門限に間に合わない。だが、バスは無情にも目の前を走り去っていく。翌朝、少女は死体となって発見された。ノーフォークの連続絞殺魔カッコの四番目の犠牲者だった……。ダルグリッシュ警視長は、亡くなった叔母の遺産を整理するため、休暇をとってノーフォークの海沿いの寒村を訪れた。青い海を背景に、午後の光を受けて金色に輝く松林や修道院廃墟。そしてその向こうには、ラークソーケン原子力発電所の巨大な灰色の建物が、岬を睥睨するように聳え立っている。この平和な光景に、カッコの影などどこにも感じられない。だが、それはたんなる幻想にすぎず、死の脅威がこの岬にも襲いかかろうとしていることを、ダルグリッシュは知る由もなかった。現代本格ミステリの頂点に立つ著者が人間の心に巣くう策謀と欲望を重厚な筆致で描きあげた話題に本格巨編。 内容紹介より



以下、少々ネタバレ気味です。ご注意ください!


ダルグリッシュが叔母の遺した家を訪れた土地ノーフォークでは、折しも絞殺魔が犯行を重ね、地元にある原子力発電所の女性職員もその犠牲者の一人だった。さらにもう一人、発電所の管理部長代理の女性も絞殺魔の犯行である痕跡を残した姿で発見されるが……。
最後の犠牲者にかかわる重要な容疑者たちは、絞殺魔が被害者に残した、警察が外部に伏せている犯行のサインを聞き知っている五人に絞られます。そこでその容疑者たちそれぞれに視点を移して、当然彼らの被害者との関係や個人的な感情をあぶり出していく流れになるのですが、ここに原子力発電所という特異な大道具を据えて、その発電所に反対する人物を登場させるという巧妙なプロットを仕立てています。さらに重要な容疑者たちとは別に、犯行時のアリバイについて口裏合わせを行った人物が相手に抱いた猜疑心からとった行動により、事態があらぬ方向へと動いてしまう経緯(非常にシニカルでブラックなユーモアを帯びた)を添えて、もう一つのストーリーを作り上げていく巧みさあり、まさに細部まで計算が行き届いた印象を受けました。とにかく縦横に緻密に組み立てられた人物の構図と心理の描写力が際立った堅牢なミステリだと思います。 




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『石の猿』ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫

2020-06-03

☆☆☆☆

中国の密輸船が沈没、10人の密航者がニューヨークへ上陸した。同船に乗り込んでいた国際手配中の犯罪組織の大物“ゴースト”は、自分の顔を知った密航者たちの抹殺を開始した。科学捜査の天才ライムが後を追うが、ゴーストの正体はまったく不明、逃げた密航者たちの居場所も不明だ―果たして冷血の殺戮は止められるのか。 上巻内容紹介より



このリンカーン・ライムシリーズに登場する主敵たちは冷酷で用意周到な天才的犯罪者、いわばスーパーモンスター化しているイメージが強いのですけれど、今回の敵はかなり人間臭い感じがしました。文化大革命で家族を喪ったという背景付もしてあり、計画通りの犯罪というより場当たり的な行動が目立ちます。これは犯人がホームタウンではなくてニューヨークという異国の地にいるために仕方のないことなのでしょうが、これまでの悪役たちに比べて迫力に欠け、やや小ぶりな印象が残りました。しかし一方、味方役の中国公安局の刑事の造形は、中国の伝統文化を絡ませてとても魅力的に描かれています。また密航者である政治犯の家族についても、同じく固有の文化に触れながら特徴的に描写してあり、全体のバランスは非常にとれている感じです。ただ二転三転どころか四転五転くらいするトリッキーな展開が、こちらが思っていたほどにはなかったのが意外でした。それからもうひと家族と密航船の船長が後半に話に何らかの役割を果たして来るのかと思っていました。

ユーザータグ:ジェフリー・ディーヴァー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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