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『迷路』 フィリップ・マクドナルド ハヤカワ・ミステリ

2013-10-16

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☆☆☆

錯綜する謎また謎―知的ゲームの醍醐味
事件の状況は、まるで小説のようだった。現場はロンドン郊外の高級住宅地、著名な実業家が自宅の書斎で殺害されたのだ。警察の捜査の結果、外部からの侵入は不可能。したがって犯人は当夜屋敷に滞在していた十人の男女の中にいることになる。被害者の家族、友人たち、そして使用人。だが、さっそく開始された検死審問では、彼らの意外な動機が次々と明らかになり、真相の究明はかえって袋小路に入りこんでしまう。苦悩するロンドン警視庁は、名探偵ゲスリン大佐に泣きついた。休暇中のゲスリンが、証言記録だけをもとに推理した、事件の驚くべき真相とは……全篇が書簡と証言記録だけで構成され、読者は探偵とまったく同じ情報を与えられる。論理的に推理すれば真犯人に到達できるはずだ―読者に真っ向からフェアプレイの勝負を挑む、黄金時代の名作登場 内容紹介より



この作者のミステリには大時代な感じを受けるものがいくつかあって、本書はその典型みたいな作品だと思いました。特にそう感じるのが、「私はこの本に“推理の練習問題”という副題をつけた」と始まる序文の内容で、読者にすべてを提示(しかしながら、探偵が手に入れた証人たちの顔写真は読者には披露されていないし、その代わりとなる各人の容貌についての描写は不足気味だと思います)しているから、この事件の謎を解いてみろという挑戦文になっています。本文は検死審問の場での検視官と証人とのやり取り、および彼らの証言で大部分が構成されており、非常に簡潔で読みやすく仕上がっています。女好きだった被害者の性癖や証人であり容疑者である被害者の家族や友人、使用人たちとの間に抱えていた問題が証言によって明らかにされ、犯行動機を持っていた人物が判明していく部分はかなり面白く読めました。
その後、探偵ゲスリンによる推理の部分が始まり、真犯人の名を挙げて見せます。実に意外な人物なのですが、問題はその些細な根拠と想像たくましい動機の講釈なのです。自負心を持って大層に読者に挑戦状を突きつけたわりに、結果にはそれに見合う派手さが欠け、ぱっとしていない読後感でした。

『鑢 名探偵ゲスリン登場』フィリップ・マクドナルド 創元推理文庫
『ライノクス殺人事件』フィリップ・マクドナルド 創元推理文庫
『ゲスリン最後の事件』フィリップ・マクドナルド 創元推理文庫




迷路 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)迷路 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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