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『マドンナ』クライヴ・バーカー 集英社文庫

2014-11-26

Tag : 短編集 ホラー

☆☆☆

《脈々と流れる伝統の血》
バーカーは、よく「読むスプラッタ・ムーヴィー」などと言われるように、伝統的な恐怖小説の系譜とは無縁な作家と思われがちだ。彼が起用する不気味な登場人物たちは、映画のスクリーンやヴィデオのモニターの方が似合いそうな顔ぶればかりである。だが、あにはからんやこの一見現代的なバーカーの方にこそ、十八世紀ゴシック・ロマン以来引継がれてきた恐怖小説の伝統の血が脈脈と流れているのだ。 解説・山下康彦 



[血の本Ⅴ]

「禁じられた場所」
社会学の見地から「落書き」についての論文を書こうとして、荒れ果てた公営団地に調査にやってきた女性。彼女はある無人の部屋の壁に描かれた不気味な絵に惹かれるとともに、団地の住人たちから聞いた残忍な殺人事件に関心を持った。しかし、彼女の同僚はその事件の内容から噂話という形を借りて、スリルを求めた住人のついた嘘ではないかと疑う。真相を知るために彼女はさらに住人たちに訪ねて回るが彼らは一転して事件が起きたことを否定し始めるのだった。
チョーキングドーベルマンみたいないわゆるアメリカ的都市伝説を絡ませたホラーで、他人に起きた悲惨な事故や事件について心の奥底ではそれを面白がったり、スリルを楽しんだりする歪んだ心理を描くとともに、そんな人間の心の中に棲んでいる殺人者が、都市伝説を疑う者の前に実体化して現れ出てくるという話。

「マドンナ」
閉鎖されたスイミングセンター。そこを棲家とし、子どもを産み落とす生命体とその子どもの世話をする美女たち。そしてスイミングセンターを《歓楽ドーム》という施設に作り変えようと計画する男と投資家の男。彼らが彼女たちと遭遇した結果……。単為生殖を行っているから“マドンナ”であり、彼女に仕えるのはメスばかりだから男たちがああいう風になってしまったのでしょうね。

「バベルの子供たち」
あてのない旅をしていた女性がイタリアの島で入り込んだ修道院。そこで彼女は修道女の格好をした男たちに銃をつきつけられ、監禁されてしまう。密かに彼女の部屋を訪れた老人から、彼女以外にも修道院に幽閉されている老人たちがいることを知らされる。
荒唐無稽な設定のブラックユーモアなのでしょうが、面白くなくて苦笑しかでてこない。

「夢の中」
刑務所で同房になった新入りの少年の面倒を見ることになった、マリファナの密売で収監された男。少年は彼の母親以外の家族を殺し、絞首刑になった祖父の埋葬された場所を探しているという。少年が来て以来、男は奇妙な夢を見るようになる。それは砂漠の中にある廃墟となった都市で、少年によるとそこは死者が住む街だと言う。男が無人の街の家々に入ってみると、どの部屋にも暴力の跡が刻みつけられた殺人現場なのだった。
殺人者の輪廻転生とでもいうものか。「凶行が終わった直後の状態」のままの殺人現場である様々な部屋が集まって成り立っている街というイメージが滅茶苦茶不気味なんですけど。

クライヴ・バーカー




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(1987/09)
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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

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