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「苦い林檎酒」ピーター・ラヴゼイ ハヤカワ文庫

2006-05-08

☆☆☆☆

アメリカ娘のアリスが英国へやってきた目的はこのわたしだった。
戦時下のリンゴ園で起こった殺人事件をめぐる裁判で、当時少年だったわたしは被告に不利な証言をした。それもあって米軍兵士が死刑となったのだが、アリスはその犯人の実の娘だったのだ。わざわざこの英国で、今は亡き父の無実を証明する気なのだった。リンゴ園の美しい娘にかかわる摩訶不思議な殺人……本格派の鬼才が贈る芳醇なヴィンテージ・ミステリ!                裏表紙あらすじより



死体入りラム酒の樽
のニュースを読んで、海外ミステリファンは真っ先にこの『苦い林檎酒』を思い浮かべたはずです。

このミステリは、おかしな味のするリンゴ酒の樽を開けてみたら、弾丸を撃ちこまれた頭蓋骨が見つかったことで事件が発覚します。おかしな味の原因は歯の詰めものによる金属汚染だったのです。弾丸はきれいに頭部を貫通していたので…。
リンゴ酒を仕込む過程で、「酵母の数をふやして発酵をさかんにする」ために、樽にマトンの脚を入れる習慣があったそうです。しかし、リンゴ酒は醸造酒ですが、ラム酒は蒸留酒なので酵母の作用は関係ありませんけどね。今回のケースは、あくまで死体防腐のためにラム酒樽詰めにしたようです。リンゴ酒の場合は酵母作用でマトンが骨だけになりますが、ラム酒漬けの死体はアルコール漬けの生物標本みたいだったのでしょう。あのネルソン提督の遺体もラム酒漬けにして本国に運ばれたそうなので。

本作品は、ドイツ空軍の空襲のために、ロンドンから田舎の農場へ疎開した少年が体験した殺人事件を、犯人とされた男の娘の求めに応じて二十一年前の出来事を回想し、事件を再検証するという話です。父親が戦死し、母親とも離ればなれになった少年の心情と疎開先の農場の美しい娘へ憧れる気持ち、優しく接してくれる米兵への慕情。そして、それらの感情が事件解明に及ぼした理由など。まさしく苦くて切ない物語です。

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

てん一さんのコメント

初めまして、くじらあたまさん。
コメント、ありがとうございます。
少しお役にたてたみたいで嬉しいです。
『偽のデュー警部』は凄くいいですよね。ラヴゼイの作品の中で一番好きな作品です。



くじらあたまさんのコメント

そうそう、この作品でした

ニュース読んだとき、どこかで読んだことがあるのに思い出せずに苦しんでいました。
おかげで問題解決しました(笑

久しぶりに海外ミステリを読み出したところなので、記憶にかなり欠損が生じてしまってて、もどかしい思いをしてるところです。

「偽のデュー警部」は賛否分かれるところのようですが、私は上手く一本背負いをくらったような爽快感を味わって喜んだ派です。
 そのノリでこの作品を手にしたら、全然違う世界で、そのギャップに驚いたものです。

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