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『ローラーボール』ウィリアム・ハリスン ハヤカワ文庫NV
2015-12-01
究極の管理社会となった未来で、暴力を求めてやまない人間の本能的欲求を満たすために作り出されたスポーツ、ローラーボール。骨を軋ませぶつかり合う肉体、飛び散る血しぶき。血に飢えた観客のエスカレートする要求に、ルールは次々と改変されてゲームは過激さを増していった。その花型プレイヤーの悩める姿を描き、二度にわたって映画化された表題作他、斬新な想像力を駆使して描かれた作品12篇を収録する傑作短篇集。 内容紹介より
「ローラーボール」「戦士」「世捨て人」「青い穴の中へ」「暴食の至福」「ピンボール・マシン」「惹句王」「ある料理人の話」「よろこびの炎」「良き船 エラズムス」「床の下」「涅槃と神々の黄昏と砲丸投げ」「気象観測官―ある神学的独白」
主な感想、
「ローラーボール」
各国のコロシアムを転戦して行われる殺戮ゲームのスター選手。書物さえなくなった世界で、彼は精神が肉体に従属している今の現状に疑問を持ちはじめている。派手な戦闘シーンと空虚感が醸しだされる内省が対照的なバイオレンス作品。
「戦士」
傭兵として世界各地を渡り歩いた男の独白。良き妻と可愛い子どもに恵まれ、経済的にも裕福に暮らす彼が語るのは別荘地に集まった安寧を貪る人々に対する銃や爆弾を使う狂ったテロ計画。
「世捨て人」
殺人の罪で三十年間服役した後、父親が遺した雪深い無人の牧場に棲み着いた世捨て人。彼のことが気になって仕方がない日用雑貨店の自称世捨て人の店主。世捨て人の追想と店主の関心事を描いた作品。
「青い穴の中へ」
霊能者が多く住む小さな町。そのなかのひとりである“ぼく”は超常現象を起こして見せて金を貰っている。人生に孤独を感じる彼はしだいに消失術の時に降りていく〈青い穴〉に惹かれていく。
「暴食の至福」
無感動気味な“ぼく”がおばさんに感化され、椅子、ランプシェイド、絨毯、テレビ、ミニカー、鉄柵など、木や草以外のなにからなにまで食べ始める。奇想天外な話。
「ピンボール・マシン」
親戚を含めた大所帯を養う理髪店の主人。彼の困窮ぶりを見かねた馴染みの客が古いピンボール機を譲りたいと申し出る。かつてギャンブル三昧の生活をしていた理髪店主とその家族に起きた騒動を子供の目を通して描いた
キャッチフレーズやコピーライティングが持つ大仰さ、軽薄さ、胡散臭さを描いた「惹句王」。
「料理人」は、心のなかにある料理人ではない一面を打ち明け、話し合いたいと切望する主人公が若い人妻と交わす情事を描く文芸的な作品。
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