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『憎しみの連鎖』スチュアート・カミンスキー 扶桑社ミステリー
2017-03-06
- Category : ☆☆☆☆
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シカゴの老刑事リーバーマンの身近で、事件は起きた。彼らが通うユダヤ教の教会堂が、無残な略奪を受けたのだ。犯人はネオナチ集団かと思われたが、事件後まもなくアラブ人の学生活動家が殺害され、ユダヤ教会堂の帽子が残されていた—平穏なはずの街にひろがる憎悪の炎。リーバーマンたちの捜査は、事件の背後にひそむ意外な真相をあぶりだしていく。人間の果てしない憎しみの連鎖を断ち切ることはできるのか?名匠が、困難なテーマに正面から取り組んだ、緊迫感あふれる警察小説の名作。 内容紹介より
〈刑事エイブ・リーバーマン〉シリーズの第五作目です。
イスラエルでユダヤ人のテロによって家族を亡くしたアラブ人の姉弟、白人至上主義者集団のメンバー、リーバーマンが属するユダヤ教会の信徒ら、これに加えて韓国系のギャング、メキシコ系ギャング、黒人イスラム活動家が登場し、さらにリーバーマンの相棒はアイルランド系であり、その婚約者は中国系、というまさしく人種も宗教も階層もさまざまなるつぼであるアメリカ社会を強く感じさせる作品に仕上がっている印象を受けました。そして根深い人種差別と人種間の対立がテーマに据えられています。各登場人物たちに起きるそれぞれの、まったく関連のないエピソードや密接に関係するエピソードを二人の刑事が核となって回していく訳ですが、主題とは関係のない私的な出来事を物語に上手く取り入れる手際がとても効果的に働いています。刑事としてさまざまな事を見聞きし、人生の機微に通じた主人公に降り掛かる困難や悩みなどをくぐり抜けていく様を、乾いたユーモアを交えつつ日常生活に則して現実味のある語り口で描いてみせる非常に味わい深い作品です。
『愚者たちの街』
『冬の裁き』
『人間たちの絆』
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
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