『エルサレムから来た悪魔』 アリアナ・フランクリン 創元推理文庫

2017-05-25

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☆☆☆☆

1171年のイングランド。トマス・ベケット大司教殺害の衝撃もさめやらぬ王国を、ケンブリッジの町で起きた、子どもの連続失踪・殺害事件が揺るがしていた。事件はユダヤ人の犯行だとする声が強く、私刑や排斥運動が起きる。富裕なユダヤ人を国外に追放してしまえば国の財政は破綻し、かばえば教会からの破門は避けられない。進退窮まったヘンリー二世は、シチリア王国から優秀な調査官と医師を招聘し、事件を解決させようとする。若き女医アデリアは、血に飢えた殺人者の正体をあばくことができるのか。CWA最優秀歴史ミステリ賞受賞の傑作。 上巻内容紹介より



修道士カドフェル・シリーズが舞台にしている、女帝モードとスティーブン王が争った無政府時代が終わって、十数年後、ヘンリー二世によるプランタジネット朝が本書の舞台です。そのイングランドで起きた子どもが犠牲となる猟奇的連続殺人事件の捜査につかわされたシチリア王国の敏腕調査官シモン、彼に同行するヒロインのサレルノ医科大学の優秀な女医であり検死医でもあるアデリア、彼女の召使いで偉丈夫な宦官マンスールの三人組が登場します。サレルノでは女医という存在はさほど奇異に見られませんが、イングランドでは魔女扱いされる恐れがあるためにアデリアは身分を隠して活動せざるを得ません。開放的な生まれ故郷とそこで育まれた進取の気性に富み独立心旺盛なヒロインと宗教的な抑圧や頑迷な女性蔑視、そして根深いユダヤ人排斥がはびこるイングランド社会を常に対比させて、それらに臆することのないヒロインの爽やかな姿を鮮明に描き出している印象を受けました。その他の登場人物たちも個性的に描き分けられ、当時の習慣や風俗も面白く読むことができました。ただ、一点引っかかったのは、シチリアから来た三人組の構図が崩れてしまい、それにともなってストーリーのテンポも失速してしまったように感じたところです。非常にバランスのとれた良い三人構成だったし、シリーズ化するうえでも不可欠なチームだと思っていたのですが、これについては作者の意図が図りかねます。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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