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『グリーン・サークル事件』エリック・アンブラー 創元推理文庫

2018-09-20

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☆☆☆☆

中東世界を震撼させた“グリーン・サークル事件”に実業家マイクル・ハウエルが関わることになったのは、不幸な偶然の結果だった。中東で同族企業を営む、一介の民間人にすぎないハウエルが、ゲリラ組織〈パレスチナ行動軍〉の指導者サラフ・ガレドに全面的な協力を強要されたとき、自由な東地中海人(レヴァンター)としての誇りが心中で頭をもたげる。困難な状況をかいくぐり、みずからと会社を守りぬくため危険な賭けに出るハウエル。当事者自身が詳らかにする、事件の真相とは。スパイ小説の大家が円熟の筆致で描く、1972年度CWA最優秀長編賞受賞作。 内容紹介より



シリアを舞台にした巻き込まれ型国際謀略小説です。パレスチナ対イスラエルの紛争という定番の状況設定ですけれど、そこにアンブラーらしくまったくの素人であり部外者の会社経営者を主役に仕立てているところがユニークなところです。多国籍に商売を営み、海運業の他に製造業も行っている点に目を付けられた主人公の会社に、イスラエルへのテロ攻撃を企てるパレスチナの分派組織が入り込み、主人公を脅してテロ計画に協力させる、という話です。主人公は商売のためにシリアの要人と関わるくらいにすぎず、なんらかの政治的な指向が強い訳ではないという三代に渡る商売人気質の持ち主です。そういう主人公が突如としてテロ計画に協力させらる立場に陥ったら、どういう行動をとり何を考えるのかがテーマになっています。テロ組織の指導者から彼自身と会社を意のままに扱われる屈辱と反発心、そして「パレスチナ解放という正義の闘争を進めるかぎりにおいて、無辜の局外者など存在しない」と民間人を犠牲にするのも厭わないことを公言する指導者への嫌悪感を抱きながら協力せざるを得ず、場合によって商売人らしい抜け目のないしたたかさを見せたり、一方ではイスラエルの情報機関に接触したりするなど、主人公に内在する様々な人格的な側面が巧緻に描かれていると思います。派手な演出はないものの、大御所らしい隙のないどっしりした作品という印象を受けました。

『あるスパイへの墓碑銘』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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