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『渇いた警官』ウィリアム・J・コーニッツ 扶桑社ミステリー

2018-09-23

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☆☆☆

クリスマス間近の雪のニューヨークで、ふたりの黒人女性が殺された。目撃者も、犯人の遺留品もなく、喉を掻き切られて殺されているのに、血痕すらもないのだ。人種問題をはらんだこの難事件の扱いに苦慮した刑事部長は、特捜班のチーフにジョン・ビンダ警部補を据える。その苛酷な犯人逮捕のやり口から、マスコミに〈処刑隊長〉と呼ばれ、閑職に追いやられた辣腕の刑事だ。だが、チーフとなったビンダを嘲笑うように、殺人事件は連続する……警察小説に独自の作風を築いた名手が、NYに展開する大捜査線を描く力作! 内容紹介より



処女作『燃える警官』発表当時は現役の刑事だった作者の第四作目だそうです。わたしは本書がコーニッツ作品の初読になります。NYを舞台にした警察小説で、猟奇的な痕跡を残す殺害方法による連続殺人事件が発生します。発生当初はふたりの黒人女性が被害者だったため人種問題を恐れたNY市警は、力量はあるものの過去にマスコミに叩かれ閑職に配置転換されていた主人公の警部補を捜査の指揮を執らせます。しかしその後、事件の被害者は白人女性にも及び、ある事件に有名女優がかかわる事態になったためマスコミの注目を集めることになってしまいます。殺人事件においても被害者の人種の違いによって、警察やマスコミの扱い方が微妙に異なる傾向を皮肉った展開で始まり、たとえ有能であっても事件解決に万一問題が起きれば格好のスケープゴートととして矢面に立たされる立場になるという警察内部の権力闘争も描かれています。他の警察小説と異なるところは、警察無線コードや内部書類の符丁が多用されている点で、その独特の言い回しや使い方にリアリティがあり、警察官出身の作家らしさが感じられました。一方、人物造型に関しては、亡くなった妻の面影を引きずる以外に主人公の内面が代わり映えしなかったり、同僚たちにもこれといった個性が見られなかったのは残念でした。同じく警察官出身のジョゼフ・ウォンボーの諸作品における登場人物の多彩な面々、小さなエピソードを挿むスタイルに比べると変化に乏しくやや単調であり、もの足りなさが残ります。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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