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『警視の週末』デボラ・クロンビー 講談社文庫

2018-10-05

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☆☆☆☆

スコッチウィスキーの聖地スペイサイドへ週末旅行に出かけたジェマ。だが同行の友人には旅先で不倫相手との逢瀬をという隠れた目的があった。怪しい雲行きは何者かの殺意を呼び、美しい風景に一発の銃声が轟く。その頃、ロンドンに残ったジェマの恋人キンケイド警視の元には、家族の愛を脅かす知らせが—。 内容紹介より



〈ダンカン・キンケイド&ジェマ・ジェイムズ〉シリーズの第九作目。
スコットランドにあるB&Bで催される料理教室に参加するため、良き相談相手であるセラピストの友人と共に週末旅行に出かけたジェマは、友人の旅の隠れた目的が昔の婚約者との密会であることを知ります。その宿には彼女たちの他に、地元のウィスキー蒸留所のオーナーである元婚約者、蒸留所の経営責任者とそこを傘下に収めたいフランス人実業家、B&Bの主人のわけありの異父弟が泊まっています。宿での夕食時に元婚約者の女友だちが現われ、ふたりの間でいざこざが起きた翌朝、彼は射殺死体で発見されます。一方、ロンドンに残ったキンケイドの元に子供の親権を巡る手紙が届きます。ストーリーはこの二つの話に、十九世紀末の蒸留所を舞台にした出来事を挿んで進んでいきます。
内容紹介文には「不倫相手」と記されていますが正確には違います。ひとりの男をめぐっての愛憎劇になっていて、夫と娘がいながら元婚約者との間に焼けぼっくいに火がつきそうなジェマの友人の行動が、彼女のみならず周りの人間にも思わぬ惨事を引き起こしてしまうというよくある話です。しかし、登場人物たちの多視点による、各人の微妙な心理描写で謎が謎を呼ぶ状況を作り出していく手法は相変わらず非常に巧いと思います。キンケイドを見舞った親権問題も波乱を呼び、テーマの一つである家庭、家族というもののあり方を考えさせるエピソードになっています。ただ、真犯人へ至る伏線の弱さと強引さは気になるところでした。余談ですが、本書の登場人物も身に付けているキルトやタータンという民族衣裳は十八世紀初めか後半から十九世紀初めまでの間に創り出されたものであって、「古代・中世に起源を遡る古い歴史はない」(『スコットランド 歴史を歩く』高橋哲雄著 岩波新書)という記述を思い出しました。

『警視の偽装』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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