FC2ブログ

『薔薇の殺意』ルース・レンデル 角川文庫

2018-10-29

☆☆☆

ロンドンまで1時間の静かな田舎町、キングズマーカム。この町の治安を預かるのが主任警部のウェクスフォードだ。詩的な一面を持つ初老の紳士だが、ときにはコワモテぶりも発揮する。被害者は30歳の平凡な家庭の主婦。器量も平凡、顔に化粧をしたこともなく、夫と二人、つつましく、ひっそりと暮らしていた。そんな彼女の絞殺死体が牧草地の茂みで発見された。暴行めあての犯罪ではなかった。有力な手掛かりは遺品の本にあった。余白に、彼女に寄せる想いが綿々とつづられていたのだ。このおよそ人目をひかない女に、これほどの想いを寄せる男がいたとは……。捜査はまずそこからスタートしたのだが— 内容紹介より



本書はウェクスフォード警部シリーズの最初の作品であり、作者の長篇処女作だそうです。ウェクスフォード主任警部は五十二歳です。事件の発端は、バーデン警部の隣人から、帰宅すると妻が自宅にいないという相談でした。バーデンはさほど重要視せず、隣人にしばらく様子を見るように伝えますが、その後も彼女の行方は不明なまま警察による捜索活動が始まり、町外れの牧草地の一画にある茂みで彼女の遺体が発見されます。放牧されていた牛によって踏み荒らされた現場からは、口紅と一本のマッチの燃えかすが発見されます。警察は被害者の夫を疑いつつ、口紅の販売先を突きとめるための聞き込みを始めます。やがて被害者の遺品のなかに、彼女が若い頃に贈られた想いを寄せるメッセージが記された書籍が何冊も発見されます。身持ちの固い、化粧っけのない地味で目立たない彼女に知られざる過去があったのだろうか、という具合に話は進みます。進行はオーソドックスであり目を引くような派手さはありませんが、新聞の三面記事に載るような事件の詳細を掘り下げたみたいなリアリティを感じました。登場人物たちそれぞれの心理を仔細に暴いていくような作者の描写が処女作からすでに確立されているどころかベテランの作風さえ感じます。被害者を含む女子校の同級生たちの過去と現在の有様を彼女たちの恩師を登場させることによって繋ぎ、彼女らの夢と現実を対比させて人生の儚さや虚しさを感じさせる構図を造り上げています。学業優秀で将来を嘱望されていたのに平凡な生活を送っているという校長の言葉が印象に残りました。

ユーザータグ:ルース・レンデル




商品詳細を見る




テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

カテゴリー

最近の記事

月別アーカイブ

12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

ユーザータグ

短編集 ホラー SF クリスマス・ストーリー アンソロジー ルース・レンデル アーロン・エルキンズ スティーヴン・キング キャロリン・G・ハート デイヴィッド・ハンドラー ローラ・チャイルズ ジョアン・フルーク マイクル・クライトン ドン・ウィンズロウ ジョージ・P・ペレケーノス ジョー・R・ランズデール C・J・ボックス ポーラ・ゴズリング レジナルド・ヒル エド・マクベイン ジェームズ・パターソン リチャード・マシスン ジル・チャーチル ヘニング・マンケル ローレンス・ブロック ジェイムズ・パタースン ジャネット・イヴァノヴィッチ カール・ハイアセン ピーター・ラヴゼイ スチュアート・ウッズ リリアン・J・ブラウン D・M・ディヴァイン S・J・ローザン ジョルジュ・シムノン アリス・キンバリー パーネル・ホール レックス・スタウト ジョー・ゴアズ レスリー・メイヤー マーガレット・ミラー ウィリアム・カッツ クレオ・コイル ジャック・カーリイ アイザック・アシモフ ジェフ・アボット ヒラリー・ウォー ルイーズ・ペニー マイケル・ボンド カーター・ディクスン ジェフリー・ディーヴァー ローラ・リップマン マーシャ・マラー ジョン・ディクスン・カー コリン・ホルト・ソーヤー エド・ゴーマン ロブ・ライアン ジェームズ・ヤッフェ G・M・フォード リタ・メイ・ブラウン キャロリン・キーン ポール・ドハティー ウィリアム・L・デアンドリア イーヴリン・スミス フレッド・ヴァルガス ケイト・ロス リン・S・ハイタワー ウイリアム・P・マッギヴァーン ジョアン・ハリス オーサ・ラーソン サイモン・カーニック レニー・エアース クリスチアナ・ブランド アン・クリーヴス ドナ・アンドリューズ アンドレア・カミッレーリ デイヴィッド・マレル アンソニー・ホロヴィッツ ファーン・マイケルズ エヴァン・マーシャル ジャン=クリストフ・グランジェ コニス・リトル スタンリイ・エリン レイ・ハリスン ジョン・クリード ウィリアム・ランデイ ジャック・フィニイ ウォルター・モズリイ ダナ・レオン ジェーン・ラングトン ビリー・レッツ リック・ボイヤー ウォルター・サタスウェイト エーリヒ・ケストナー イーサン・ブラック ユージン・イジー サキ スタンリー・エリン ポール・ドハティ トバイアス・ウルフ 

ブログ内検索

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

リンク

RSSフィード

最近のトラックバック

最近のコメント