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『闇の天使』ジャック・ヒギンズ ハヤカワ文庫NV

2018-12-07

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☆☆☆

IRA、CIAなど相手を問わず無差別に暗殺を繰り返す謎のテロ組織〈一月三十日〉。彼らの政治的信条ばかりか、テロの目的もいっさい不明であった。やがて、北アイルランド和平の鍵を握る要人警護の命が英国特別情報機関に下り、元国際テロリストのショーン・ディロンがその任務に就いた。一方、情報をつかんだ〈一月三十日〉は、ディロンの裏をかき凶弾を放つべく、密かに暗殺者を差し向けるが……痛快冒険サスペンス 内容紹介より



〈ショーン・ディロン〉シリーズで、1995年に発表された作品。本書のなかでの政治状況は、北アイルランド問題の解決に向けて各勢力が交渉の席に着くかどうか、また、それに反対する勢力も影響力を持っているというところです。時の権力者はメージャー首相、クリントン大統領で、ソ連はすでに崩壊しています。主人公ディロンは英国首相直属の情報機関に所属しているという、かつて反体制側で泥沼の紛争に身を投じていた姿からは隔世の感があります。体制側に立った主人公の姿が、スパイごっこをしている、まるでお洒落じゃないジェームズ・ボンドみたいに見えてしかたありませんでした。ストーリーも安易に流れて緊張感に欠けている印象が残りました。話は〈一月三十日〉という暗殺組織が偶然に生まれた経緯が語られ、彼らがやがて北アイルランド和平への鍵を握る人物の警護を担当するディロンと対決するクライマックスへと動いていきます。ただ、この物語の要は、もうひとつの主役であるこの組織がなぜCIA、KGB、IRA、プロテスタントのテロ組織メンバー、ギャングのボス、アラブのテロリスト、これらの主義主張や立場も異なる人物たちを次々に暗殺していくのか、その訳が明かされていくところでしょう。そのひとつの理由が非常に英国らしくは感じますが、果して物語に効果的かというと疑わしい気がします。冷戦終結とソ連崩壊後のスパイ冒険小説は、その方向性が問われていた、あるいは模索が続いていたと思うのですけれど、その答えのひとつとして、伝統的英国冒険小説に必須な存在であるアマチュア、キム・フィルビーみたいな共産主義を信奉する知識人、そして子供時代に巻き込まれた事件によりトラウマを抱えた人物、この三者三様の動機付け(特に最後の人物)を設定している点は目新しい試みであると思います。

『非情の日』
『狐たちの夜』
『ヴァルハラ最終指令』ハリー・パタースン名義




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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