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『アマガンセット 弔いの海』マーク・ミルズ ヴィレッジブックス

2018-12-10

Tag :

☆☆☆☆

かつては捕鯨でにぎわった風光明媚なアメリカ東海岸の保養地アマガンセット。二度の大戦の傷も癒えぬ頃、その波打ち際で、ひとりの若く美しい女性の溺死体が網にかかった。遺体の身元は隆盛をきわめるウォーレス家の末娘リリアンとわかったが、他殺なのか自殺なのかすらはっきりしない。副署長のホリスは粘り強く捜査を続ける。そうこうするうち、死体の発見者である孤高の漁師コンラッドが、リリアンのことを探っているのが発覚した。コンラッドの目的は何なのか?リリアンの死の真相は?美しい自然を背景に、ミステリアスな事件を叙情的に描きあげる、注目作家デビュー作! 上巻内容紹介より



本書は、イギリス人作家がアメリカ、ロングアイランドを舞台に描いた、2004年CWA賞最優秀処女長篇賞受賞作品です。第二次大戦の激戦を生き延びた主人公は寡黙な漁師、家の目の前にある海で、相棒の純真な青年とふたりだけで漁業を営んでいます。海岸沿いは保養地としての開発が始まりかけており、また都会から来る釣り人と地元漁師とのいざこざが持ちあがっている状況です。そんな時代を背景に、主人公たちが裕福な名家の娘の遺体を引き上げたところから物語が始まります。プロットもミステリもさして複雑なものではありませんし、主人公の造形も何か際立つものを備えているわけでもありません。しかし、過去と現在の出来事が寄せては返す波のように綴られていく進み具合、押し付けがましくない主人公の切ない感情表現、海の雰囲気を感じとれる自然描写、こういった趣向と筆致がとても効果的に働いている印象を持ちました。また、地元警察の副署長も重要な脇役を担い、彼のロマンスがともすれば暗くなりがちな物語に明るさを与えています。欲を言えば、故人の姉、地元署の警察官などにはもう少し話に重要な役割をつとめさせても良かったのではないかという感じも残りました。上下巻あわせて約六百ページ程になるにも関わらず、もう少し読んでいたい気持ちになる物語でした。とにかくデビュー作とは思えないほどの完成度と余韻が残る作品だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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