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『時の娘』ジョセフィン・テイ ハヤカワ文庫HM

2019-01-14

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☆☆☆☆

薔薇戦争の昔、王位を奪うためにいたいけな王子を殺害したとして悪名高いリチャード三世—彼は本当に残虐非道を尽くした悪人だったのか?退屈な入院生活を送るグランド警部は、ふとしたことから手にした肖像画を見て疑問を抱いた。警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード三世の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場!探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリの名作。 内容紹介より



たった一枚の肖像画の複製を目にした人たちがその人物に抱いたさまざまに異なる印象。ある者は善良な人物と言い、またある者は病気持ちなのではないかと言う、別の者は心に苦悩を抱えているように見えると語る。その肖像画の人物こそ、二人の幼少の甥を殺害し王位を簒奪したといわれるリチャード三世。とても人殺しをするような人相に思えないことに興味を抱いて調査を始めたのが脚の怪我で入院中のグラント警部です。彼は友人や担当の看護士に頼んで教科書や歴史本を手に入れ、事件についてつじつまの合わないところが気になり、さらにアメリカ人の青年を助手にして資料を集めて検討し始めます。リチャード三世は極悪人だったのか、それとも真犯人は別に存在するのか。
英国史に登場する王家の人名というのは同じ名前を持っていたり、別称があったりして、非常に混乱させられがちです。本書には王家の家系図が付いていますけれど、王家以外の関係者の一覧表がないためにかなり判りにくいです。一方、テーマはとても分かりやすく、知的好奇心がそそられる作品になっています。歴史は勝者によって書かれるとは良く聞く言葉ですが、それ以外に、チャーチルが内務大臣当時に起きた労働争議に対する軍隊による発砲事件の発生地である炭鉱町「トニイパンディ」みたいに、実際に起きた騒動に尾ひれがついて敵対勢力を貶めるために意図的に流布された偽史や誤解や曲解されて事実とは異なって伝承されている出来事がたくさんあり、しかも教科書にあたかも真実のように記載され教えられているものもあるというのはやや複雑な気持ちになってしまいました。2012年にリチャード三世の遺骨が発掘されて、その後の分析の結果、彼がやはり脊椎側弯症だったことや死因が判明したニュースとリンクして本書を再読してみたらさらに面白かったです。

『リチャード三世「殺人」事件』エリザベス・ピーターズ 扶桑社ミステリー




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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